著者
鈴木 恵子 梅原 幸恵 井上 理絵 秦 若菜 清水 宗平 佐野 肇 中川 貴仁 山下 拓
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.240-247, 2019-06-30 (Released:2019-07-17)
参考文献数
16

要旨: 目的: 通所リハビリテーション (以下デイケア) 利用中の居宅高齢者の難聴の実態を明らかにする。対象: 介護老人保健施設のデイケア利用者74例 (78±8.1歳; 男42女32; MMSE 25.5±5.3, FIM 103.1±17.8)方法: 老健内で i. 耳内診察 ⅱ. 純音聴力検査を行い, ⅲ. 聞こえにくさの質問紙に本人, 家族が別個に回答した。結果: i. 耳垢栓塞を22例30%に認め, うち 7例は施設内で除去困難であった。 ⅱ. 58例78%に難聴があり (軽度31中等度27), 聴力と年齢に中程度の正の相関を認めた。検査では標準法に加え机上ボタン法, 玉おとし法を用い再現性ある反応を得た。玉おとし法群の MMSE, FIM 得点が他群と比べ有意に低かった。ⅲ. 悪条件下の語音で中等度群が他群と比べ聞こえにくさを強く感じていた。考察: 聴覚評価における耳垢への対応, 認知機能に応じた反応法の重要性が示唆された。中等度群が軽度, 正常群より聞こえにくさを認識しており, 補聴に向けた介入の可能性が示唆された。
著者
小汲 佳祐 藤巻 康人 中川 貴文 松尾 豊
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.647-651, 2018-11-05 (Released:2018-12-07)
参考文献数
17

In organic semiconductor materials, investigating the energy levels is very important. For example, the combination of the donor’s and acceptor’s energy levels affects the performance of organic solar cells (OSCs). The HOMO and LUMO levels are generally determined by cyclic voltammetry or differential plus voltammetry, which require the solution state. However, these methods are influenced by the purity, solvent, solubility, vibration, and temperature. In this work, we employed photoemission yield spectroscopy and UV-vis-NIR spectroscopy in the thin-film state to measure the energy levels of magnesium porphyrin derivatives for OSCs. The results explained that the energy levels were correlated with a substituent introduced in the porphyrin core. In the case of electron-withdrawing substituent porphyrin, the HOMO and LUMO levels were lowest and the HOMO-LUMO gap was narrowest. On the other hand, electron-donating substituent porphyrin showed high-energy levels and a wide energy band gap. It is noteworthy that the energy levels were lower and the band gaps were narrower in the thin-film state compared with the solution state. This result explains that strong π-stacking derived from intermolecular interaction in thin films. We concluded that measurements of the energy levels in thin film state by PYS and UV-vis-NIR spectroscopy are beneficial for investigating organic semiconductor materials.
著者
中川 貴裕 笠原 知子 齋藤 潮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.535-540, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
13

横浜旧居留地である中区山下町に位置する、横浜中華街は、その隣接地区と対照的な都市景観を形成している。建物用途と敷地規模は都市景観を特徴づける基礎的な要因であり、この2地区の差異を形成していると考えられる。そこで、本研究では、両地区の空間的差異の形成過程を明らかにする。1916年から1960年における山下町の土地台帳を用いて、土地所有や敷地分割・統合の変化を追跡した。その結果、2つの事柄が2地区の空間的差異を形成したことが明らかになった。第一に、関東大震災後の土地区画整備事業である。これによって土地の分割が進んだが、現在の中華街の外側である、山下町北部の海側で見られ、ほとんどが法人所有地や官有地となった。第二に、第二次大戦後の接収を中華街が免れたことである。これによって、中華街の辺りで土地の分割と個人所有化が進んだ一方、接収を受けた隣接地区は敷地が凍結された。これによって、空間的差異の原型が形成された。
著者
杉山 宏 吉田 健作 足達 広和 中川 貴之 安田 陽一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1296-1311, 2015 (Released:2015-05-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1

前処置不良下で行う通常内視鏡では大腸憩室出血の診断は困難である.高率に診断するためには洗腸と透明フードが不可欠である.病歴,薬剤歴,直腸診所見から憩室出血を疑ったらまず造影CTを行い,そして速やかに洗腸し,フードを装着した内視鏡を行う.フードを憩室周囲に軽く押し当て憩室を吸引,反転することで内部の観察ができる.また,フードを憩室周囲に軽く押し当てたまま鉗子孔より水を注入すると,非責任憩室では内部に凝血塊や血液があっても洗浄にて容易に除去されるが,責任憩室では容易には除去されず,鑑別できる.露出血管を有するびらんを認めた憩室が責任憩室である.憩室出血の止血には組織傷害が軽微なクリップ法を第1選択にすべきである.クリップ法ではできるだけクリップにて露出血管を把持するように試みる.循環状態が不良で洗腸が困難な重症例や,内視鏡的止血術の抵抗例にはIVRが有効であるが,偶発症に注意が必要である.
著者
渡邊 学 チェン アイリス 森 美香子 上野 絵美 中村 好孝 薮本 恵美子 阿部 佳澄 椿 真理 今村 清美 関森 悦子 西澤 理絵 若栗 浩幸 中川 貴之 望月 学 西村 亮平 佐々木 伸雄 鈴木 穣 菅野 純夫
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-6, 2012-04-10 (Released:2013-01-25)
参考文献数
15

イヌ舌組織における遺伝子発現、味覚受容体の構造の検討を行うため、遺伝子発現頻度解析および味覚受容体の構造解析を行った。正常イヌ舌組織よりRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いてシークエンスを行った。シークエンスタグをイヌゲノムへのマッピングを行い各遺伝子の発現頻度を解析した。味覚受容体にマップされたシークエンスタグをもとに味覚受容体TAS2R40遺伝子およびアミノ酸配列を解析した。RNA-seq解析の結果、984,903シークエンスタグを得た。これらを用いてイヌゲノム上へのマッピングを行った。同定された遺伝子の中で、S100 calcium binding protein A8がもっとも高い発現を示した。また、骨格筋系遺伝子、心筋系遺伝子や解毒系遺伝子群の発現が認められた。味覚受容体をコードする遺伝子構造解析を行ったところ、TAS2R40、TRPV1、PKD1は既存の遺伝子構造よりも5' 端側にマップされるタグが認められ、これまでの遺伝子配列情報よりも完全長に近い遺伝子構造が推測された。また、TAS2R40遺伝子がコードするアミノ酸配列の相同性はヒトと76%マウスと62%であった。
著者
加藤 あすか 今井 智也 大槻 武志 加藤 隆義 小沢 建斗 斉藤 友貴哉 高橋 雄太 中川 貴博 山崎 礼華 和多田 昇平 渡辺 俊也 渡邉 逸人 和田 雅昭 長崎 健
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.5, pp.1-6, 2010-08-02
被引用文献数
1

近年,水産資源の保護管理が重要視されていることを受け,著者らはマリンブロードバンドを構築し,ナマコのリアルタイム資源評価を実施している.本研究では,リアルタイム情報と親和性の高いデジタルサイネージを用いて開発した資源評価情報配信システムと,稚内水産試験場★1 および中央水産試験場★2 への導入事例について報告する.In recent years, it has been necessary to manage the aquatic resources, we have constructed a marine broadband framework and have been carried out the real-time resource assessment of the sea cucumber. In this paper, we report on the development of real-time aquatic resource assessment system by using the digital signage system and the introduction case to fisheries experiment stations★1★2.
著者
中川 貴雄 塩谷 圭吾 小谷 隆行 GUYON Olivier
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

太陽系外惑星(系外惑星)の直接観測は、惑星の誕生から進化、多様性、また究極的には地球外生命の兆候にも迫る、人類の宇宙観に関わる重要な研究テーマである。しかし、主星光と惑星光のコントラストが極めて大きいことが直接観測の障壁となっている。大気の影響のないスペースから、コントラストの点から有利となる赤外線領域で、我々の太陽系外の惑星を直接検出することを目指して、ステラー・コロナグラフの開発に取り組んだ。その結果、今までにない高いコントラスト達成の実証実験に成功し、波面補償の基本アルゴリズムを開発し、赤外線実験用環境を構築し冷却実験に成功するなどの成果を上げられた。これらの成果は、将来のスペースからの系外惑星観測の貴重な基礎技術獲得となる。
著者
松原 英雄 中川 貴雄 和田 武彦 有本 信雄 児玉 忠恭 川良 公明
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、最先端のスペース及び地上望遠鏡を用いて、可視光から電波領域にわたる多波長サーベイ観測を連携させることにより、「超極赤銀河」(遠方の大きな赤方偏移を受けたスペクトルを持つ銀河で、宇宙の星形成史を解明する上で重要な天体)を多数発見し、さらにその正体を探ることにある。これにより宇宙誕生から現在にいたる宇宙の星形成の歴史の解明に挑む。そこで本研究では、天空の1-5平方度の領域について可視光域〜電波領域にわたる多波長サーベイを連携的に行った。波長2-160ミクロンでのサーベイは、平成18年2月に打ち上げられた赤外天文衛星「あかり」で行った。この特徴は「広く・かつ深く、地上からできない波長をカバー」であり、これによりこれまでに知られている超極赤銀河の数に比べて桁違いに大きいサンプルを得ることができた。「あかり」は、Spitzer宇宙望遠鏡に比べて多数の連続したフィルターバンドを持つおかげで、「あかり」でしか検出不可能な、「PAH高輝度銀河」、「シリケイトブレーク銀河」といった新天体の発見や、700個にも及ぶ「極赤中間赤外線天体」(ERMOs)を検出した。PAH高輝度銀河は中間赤外線で選択した銀河サンプルの約1%に過ぎないけれども、星形成の年齢の極めて若い大変重要な段階にある銀河と考えられる。一方ERMOsは中間赤外線で選択した銀河サンプルの約10-15%存在し、そのかなりの割合が、星形成銀河というよりもむしろ塵に埋もれた活動的銀河核をエネルギー源とするような天体であることがわかってきた。今後このような天体の正体をさらに詳しく調べていくことで、銀河進化の描像に新たな知見を加えることができるであろう。
著者
岡部 篤行 佐藤 俊明 岡部 佳世 中川 貴之 今村 栄二 松下 和弘 長野 一博 石渡 祥嗣 飴本 幸司 林 良博 秋篠宮 文仁
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.30-39, 2006-09-30 (Released:2009-02-13)
参考文献数
5

当報告書は,無線LAN位置システム(以下システム)を放し飼いニワトリの軌跡追跡に適用可能かどうかを調べた結果を報告するものである。システムは,連続的な地面上にいるニワトリの位置を1 mのグリッド交差点上の点として表し,ニワトリの軌跡はその点列として表す。システムは,ニワトリの位置を1秒ごとに記録することができる。実験は8羽のニワトリと2羽のホロホロチョウを170 m×90 mの広さの公園に放って5日間にわたりその軌跡を観察した。分析に利用可能なデータは3日間得られた。システムによって得られる位置のデータは雑音を含むため,位置データは確率変数として扱った。データ分析により,位置の精度は,確率0.95で2.6 m,すなわち,真の位置が,観察された位置を中心に半径2.6 mの円の中にある確率が95%であると判明した。ニワトリの生活圏は,その場所にニワトリがいた確率密度関数として表現した。その関数はバンド幅が2.6 mのカーネル法で推定をした。軌跡は移動平均で推定した。実験の結果,システムは放し飼いニワトリの軌跡追跡に適用できることが判明した。
著者
中川 貴雄 JEONG Woong-Seob
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

現代の天文学における大きな課題の一つは、宇宙における大規模構造の形成の原因を解明することにある。我々はその大きな課題に赤外線天文衛星「あかり」を活用して、その謎の解明に挑んだ。「あかり」打ち上げ前には、数値シミュレーションにより、「あかり」の観測戦略を検討し、打ち上げ後は、そのデータ解析活動において、中心的な役割を果たしてきた。宇宙における大規模構造の形成の原因の情報は、積分された形でCosmic Infrared Backgroundの中に埋もれている。我々は、赤外線天文衛星「あかり」のデータを解析し、「あかり」の優れた空間分解能により、Cosmic Infrared Backgroundのかなりを点源として分離できることを示した(Jeong, et. al.2007)。さらに、「あかり」の多色サーベイを用いることにより、さまざまなタイプの銀河を抽出し、銀河の進化を観測的に追うと同時に、極めて珍しい種族の銀河も抽出できることを、数値シミュレーションにより明らかにした(Pearson & Jeong, et. al.2007)。さらに、「あかり」のデータ解析、観測に関して、多くの共同研究を行った。それには、小マゼラン雲において、初めて中間赤外線で超新星残骸を検出(Koo, et. al.2007)、過去の宇宙における星形成史を「あかり」遠赤外線による観測から解明(Matsuura, et. al.2007)、さらに中間赤外線15μmで検出された天体と光学観測との同定(Matsuhara, et. al.2007)など、多くの研究論文が含まれている。
著者
中川 貴之
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

依存性薬物による精神障害に重要なドパミン神経を、ラットの脳切片を培養することで再現し、覚醒剤、コカイン、モルヒネなど異なるタイプの依存性薬物の反復処置によって、共通してドパミン神経の活動が異常に高まることを明らかにした。また、違法ドラッグMDMAの主な作用点であるセロトニン神経を、同じく脳切片を用いて再現し、MDMAを長期間処置しておくと、急性処置時とは異なるメカニズムでセロトニンの遊離が顕著に高まることを発見し、そのメカニズムを明らかにした。
著者
中川 貴雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.133-141, 1991-03

赤外線観測による星形成領域の最近の研究について, 概説を行う。太陽程度の質量を持つ星は, 分子雲中の高密度コア内で生まれる。高密度コアは乱流によっては支えられてはおらず, 10^5年程度の自由落下時間でつぶれて, 星を形成する。こうして形成された星は, 最初はダスト雲に包まれているために, 可視光ではみることができないが, 進化が進むにつれてダストが晴れ上がり, 可視光で見ることができるようになる。これらの若い星には, ディスク上の濃い雲が付随している。このディスクの存在は, 近赤外域での偏光観測や, 赤外域でのエネルギー分布などから要請される。IRASによって観測された若い星のエネルギー分布の変化は, ディスクをもった星のシステムが, 周りのダストを吹き飛ばしながら進化していくと考えれば説明することができる。中心星の周りのディスクは, 惑星系の形成に決定的な影響があるはずである。次世代の観測装置により, このディスクの直接的観測が可能になるであろう。