著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.147-157, 1983-03-15
被引用文献数
1

黒川洞穴出土の自然遺物, とくに哺乳類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物の総重量は, 20455.5g(貝類を除く)で, そのうち哺乳類が全体の99%である.2.動物種や骨の種類を同定できたものは, 2059個の骨片で, それらはイノシシ, シカ, カモシカ, ツキノワグマ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, テン, イタチ, ノウサギ, ムササビ, モグラおよびサルの6目14種である.3.出土骨片数は, イノシシがもっとも多く(66%), ついでシカ(21%)であり, そのほかは13%である.オオカミ, ツキノワグマ, カモシカの出土は, 極めて貴重なものである.4.骨の形状は, 各動物ともに現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさは, シカ, イノシシ, ノウサギで, 現生種より幾分大きい傾向を示した.5.以上の観察から, 縄文後期から晩期の鹿児島地方には, 少なくとも14種以上の哺乳類が生息していたことが伺われ, また, 縄文人がイノシシ, シカをよく狩猟し, 食べていたことが示唆された.
著者
大塚 閏一 豊満 義邦 西中川 駿
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.113-127, 1981

キュウシュウノウサギ (以下<I>Lepus</I>) , アマミノクロウサギ (以下<I>Pentalagus</I>) および家兎JW-NIBSの前肢骨・後肢骨を骨計測学的に検索した。<BR>1) 肩甲骨, 寛骨以外の四肢の各骨の長さは, 第一中手骨, 膝蓋骨, 前・後肢の末節骨を除いて, <I>Lepus</I>が最も大きく, ついでJW-NIBSで, <I>Pentalagus</I>が極端に小さい。<BR>2) 肩甲骨, 寛骨以外の四肢の各骨の幅は, 全般的に<I>Pentalagus</I>がやや人きい傾向を示し, <I>Lepus</I>とJW-NIBSの間には顕著な差異は認められない。.<BR>3) 四肢の各骨の関節面の面積は, 骨の長さとの比率でみると, <I>Pentalagus</I>が広い。<BR>4) <I>Pentalagus</I>の末節骨の長さおよび中節骨との関節面の幅は, 最も大きく, 強大で, また, 内側の指または趾列が外側よりも大きい。 JW-NIBSの末節骨は幅狭く, 弱小である。<BR>5) <I>Lepus</I>およびJW-NIBSの寛骨の幅は, 雌が雄よりも明らかに大きいが, <I>Pentalagus</I>ではこの差異は明確ではない。
著者
日高 祥信 松元 光春 臂 博美 大迫 誠一郎 西中川 駿
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.161-167, 1998-02-25
被引用文献数
24

遺跡出土骨の同定のための基礎資料を得るために, 現生の鹿児島県産のタヌキ(雄35例, 雌45例)とアナグマ(雄16例, 雌8例)の頭蓋骨, 下顎骨を肉眼的, 計測学的に検索した。肉眼的観察による雌雄差は, アナグマの側頭骨頬骨突起と後頭鱗のみにみられた。頭蓋骨の実測値は, 24の計測部位中タヌキは5部位, アナグマは12部位で, また, 下顎骨は, 11部位中タヌキは9部位, アナグマは10部位でそれぞれ有意な雌雄差がみられた。両種の比較では, 頭蓋骨の長さに関する計測部位と下顎骨の殆どの計測部位でタヌキが有意に大きかった。雌雄判別式の判別効率は, タヌキでは低いがアナグマでは高く, また, 種の判別式の効率は100%であった。最大骨長推定式は, 頭蓋骨では長さ, 下顎骨では長さと高さの計測値から得られた式の決定係数が高かった。これらの結果は, タヌキとアナグマの遺跡出土骨を同定する基礎データになることが示唆された。
著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.83-93, 1984-03-15

高橋貝塚出土の自然遺物, とくに陸棲哺乳類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物の総重量は, 40963,0gで, そのうち, 陸棲哺乳類が全体の85.7%を占める.2.動物種や骨の種類を同定できたものは, 2811個の骨片で, それらはサル, ノウサギ, イヌ, タヌキ, アナグマ, テン, イノシシ, シカ, ウシ, ウマの5目10種である.3,出土骨片数は, イノシシでもっとも多く(60)%, ついでシカ(37%)であり, そのほかはわずか3%である, 4.骨の形状は, 各動物ともに現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさは, シカ, イノシシ, ノウサギで, 現生種より幾分大きい傾向を示す.5.以上の観察から, 高橋貝塚を遺した人々は, イノシシ, シカをよく狩猟し, 食料としていたことが示唆された.
著者
日高 祥信 松元 光春 大迫 誠一郎 豊島 靖 西中川 駿
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.323-326, 1998-03-25
被引用文献数
15

遺跡出土骨同定のための基礎資料を得るために, 現生の鹿児島県産のタヌキとアナグマの上腕骨, 橈骨, 大腿骨および脛骨を用い, 骨幹中央部を計測学的ならびに組織計測学的に検索した.各骨の骨幹中央部の幅や前後径, 髄腔面積には種差がみられた.また, タヌキでは緻密骨の厚さと面積が, アナグマでは骨幹中央部の幅, 前後径および髄腔面積が, 全ての骨で雄が大きい傾向を示した.各骨間の組織構造に相違は認められなかったが, オステオン層板の形状に種差がみられた.即ち, タヌキでは3〜5層の層板からなるほぼ円形のオステオンが, アナグマでは3〜8層の層板からなる大小様々で, 円形もしくは楕円形を呈するオステオンがみられた.組織計測でオステオンの占める割合は, 全ての骨でタヌキが大きかった.タヌキ, アナグマの両種とも, 雄はオステオンの短径が大きく, オステオンの占める割合も大きい値を示した.一方, 雌ではオステオンの短径が小さく, その数は雄よりも多かった.以上の観察結果から, 両種の長骨の組織構造に種差および雌雄差のあることが分かり, 今後古代遺跡から出土する骨を同定する際の十分な基礎データになることが示唆された.
著者
西中川 駿 大塚 閏一 林田 重幸
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.91-98, 1966-03-14

家畜の乳房血管系の研究として, さきに山羊28例の乳房血管分布について報告したが, 今回は乳牛(Holstein)14例の乳房血管分布を肉眼的に精査し, その走行および分岐状態を明らかにした.1.乳房に分布する動脈はA.pudenda ext.とA.perinealisがある.しかしこのA.perinealisの乳房実質への分布はほとんどみられなく, 乳房後部および乳鏡の皮膚に分布し, 乳房上リンパ節枝からの分枝と吻合する.A.pudenda ext.は一般に, A.subcutanea abdominisを分岐して, A.mammariaになると記されているが, 検索した乳房全例ともこのA.subcutanea abdominisはA.mammaria cranialisの移行枝としてみられた.2.A.mammariaは後乳区の乳房基底部で乳房実質に入り, 直ちにA.mammaria cranialisとA.mammaria caudalisとに分かれる.A.mammaria cranialisは後乳区の実質と後乳頭に達する枝を分け, さらに前乳区実質および前乳頭に分布する内側乳腺動脈を分けて, A.subcutanea abdominisに移行する.A.mammaria caudalisは乳房上リンパ節へ枝を分け, 後乳区実質に広く分布して, 後乳頭に達する.前後の乳区間の動脈吻合枝として, A.mammaria cranialisからの後乳頭枝がみられ, 左右乳区間には内側乳腺動脈からの分枝と乳房上リンパ節枝からの分枝がみられた.3.A.mammariaからの枝の分かれ方に4つのTypeがあり, そのTypeと出現頻度についてはFig.5に示した.4.静脈はおおよそ動脈に随伴して走り, 外径は同名の動脈の約2〜3倍の大きさで, 乳房基底面および腹面では左右の静脈が連絡し, いわゆる静脈輪を形成している.5.従来, 血液の流出する径路にはV.pudenda ext., V.subcutanea abdominisおよびV.perinealisの3つの径路があると記されている.しかし, 静脈弁の位置と構造からして, V.perinealisは乳房から血液の流れ去る径路とはならず, むしろ乳鏡付近でこの静脈に入つた血液は乳房に向い, 会陰静脈吻合枝, V.mammaria caudalisを通り, V.pudenda ext.へ流れると考えられ, また乳房を環流した血液はV.subcutanea abdominisよりもV.pudenda ext.へ流れ去るものが多いと考えられる.
著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 出口 浩
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.19-27, 1992-03-30

縄文後期の草野貝塚出土の哺乳類の骨を肉眼的および計測学的に検索し, 動物種や骨の種類を明らかにした.1.自然遺物の総重量は, 157.843kg(貝類を除く)で, そのうち哺乳類が152.983kgで, 全体の96.9%を占めている.2.哺乳類の種や骨の種類を同定できたものは, 16,323個の骨片で, それらはニホンザル, ムササビ, ネズミ, ノウサギ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, カワウソ, テン, イタチ, イノシシ, シカ, カモシカ, イルカおよびクジラの6目16種である.これらのうちイノシシ(11,590個), シカ(4,155個)が全体の96.5%を占める.3.骨の形状は, 各動物ともに現生のものとほとんど差はないが, 大きさは出土骨の方が幾分大きい.4.以上の観察から, 草野貝塚を遺した人々は, イノシシ, シカを中心に狩猟していたことが示唆され, また, オオカミ, カワウソなどの出土は, 当時の動物相を知る上に貴重な資料である.
著者
西中川 駿 臂 博美 松元 光春 大塚 閏一 中島 哲郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.105-113, 1987-03-16
被引用文献数
1

縄文後期の麦之浦貝塚出土の自然遺物, とくに哺乳類の出土骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物の総重量は, 72,174.2g(貝類を除く)で, そのうち哺乳類が99%を占めている.2.哺乳類の種や骨の種類を同定できたものは, 3,865個の骨片で, それらはニホンザル, ムササビ, ネズミ, ノウサギ, ツキノワグマ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, カワウソ, テン, イタチ, アシカ, イノシシ, シカ, カモシカ, ウマ, イルカおよびクジラの7目19種である.これらのうち, 出土骨片数の多いものは, イノシシ(2,414個), シカ(1,310個)で全体の89%を占め, ほかのものはわずか11%である.3.骨の形状は, 各動物ともに現生のものとほとんど差異はなく, また, 骨の大きさは, イノシシ, シカ, タヌキ, アナグマ, ノウサギで, 現生のものより大きい.4.以上の観察から, 麦之浦貝塚を遺した人々は, イノシシ, シカを中心に狩猟していたことが示唆され, また, オオカミ, ツキノワグマ, カワウソなどの出土例は, 動物地理学上貴重な資料となるであろう.
著者
大塚 閏一 山入端 正徳 西中川 駿
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.277-281, 1973-03-24

1)ラットの耳下腺, 下顎腺および単孔舌下腺について, 血管分布密度を組織切片一定面積中の血管断端数で検討した.2)血管分布密度は耳下腺が最も高く, 下顎腺がこれにつぎ, 単孔舌下腺が最も低かった.3)下顎腺においては, 雌の血管分布密度が雄よりも高かった.
著者
松元 光春 西中川 駿 九郎丸 正道 林 良博 大塚 閏一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.937-943, 1992-10-15
被引用文献数
6

妊娠および泌乳期のマウス乳腺における毛細血管の微細構築の変化を血管鋳型で走査電顕により, また微細構造の変化を透過電顕および形態計測を用いて検索した. 血管鋳型の走査電顕観察では, 妊娠に伴って導管周囲の毛細血管叢から盛んに血管が新生され, 分岐と吻合を繰り返しながら, 導管や腺胞を密に取り囲み, 籠状の構築を形成していた. 泌乳期でもこの血管構築は維持され, しかも毛細血管は蛇行していた. 透過電顕観察と形態計測学的検索から, 内皮細胞内の飲小胞の密度は妊娠18日目から泌乳5日目に処女期の約2倍に, さらに泌乳10〜20日目には3倍に増加し, 離乳期に漸減した. 辺縁ヒダや微絨毛様突起の長さは妊娠に伴って漸増し, 泌乳5〜15日目に最大となり, その後漸減した. また, 毛細血管は妊娠末期から泌乳期にかけて壁が薄く, しかも腺胞に極めて接近していた. さらに腺胞の上皮細胞では, 泌乳期に基底陥入がよく発達していた. これらの所見から, 乳腺の毛細血管ほ乳汁産生に必要な物質の輸送に重要な役割を果たしていることが示唆された.
著者
西中川 駿
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-55, 1970-03-25

乳腺に分布する血管の起源, 走行, 分布域などを, 乳牛, 山羊, トカラ山羊, めん羊, 馬, 犬, 猫, 家兎, モルモット, ハムスター, マウスおよびラットの12種類の動物について, 比較解剖学的に精査し, その詳細を明らかにし, 図および表に示した.また, 処女, 妊娠, 泌乳および退行の各時期におけるマウス乳腺の実質の消長と, これらに分布する血管系の消長との相互関係を検討した.さらにこれらの点についてはホルモンを用いた実験を加わえて追究し, また, これらの結果はさらに, アイソトープを用いて, 乳腺に分布する血管の形態学的観察と乳腺を灌流する血液の流量との相互関係について比較検討を行なった.以上の結果は以下のように要約される.1.乳腺への動脈系の分布状態から上記動物は5型に分類出来た.すなわち, 乳牛, 馬, 山羊, トカラ山羊, めん羊およびモルモットの乳腺は鼠径部にあり, その動脈系は外陰部動脈に由来し(Type I), 従来, 成書に記載されている会陰動脈の乳腺実質への分布はみられなかった.乳牛は1側に2つの乳腺域をもち, 血管も前後の乳腺動脈に分かれて分布し, これらの血管は互いに吻合している.また, 左右乳区間の血管吻合については特に山羊, トカラ山羊, めん羊で明らかに認められた.犬, 猫の前位乳腺には内胸, 外胸動脈が, 後位乳腺には外陰部動脈がそれぞれ主流として分布し, これらは互いに吻合している(Type II).家兎乳腺は胸部から腹部にあり, 動脈系は犬, 猫の主流動脈に浅腹壁動脈が加わり, 外陰部動脈より強枝で, 腹部乳腺に広く分布する.また, 外胸動脈は内胸動脈よりも強枝であり, 乳腺への分布域も広い(Type III).ハムスターの乳腺は胸部から腹, 鼠径部にあり, 内胸動脈は乳腺枝をもたず, 外胸, 浅腹壁, 外部の3動脈系が関与する(Type IV).マウス, ラットでは胸部乳腺に外胸, 浅頸動脈が, 腹鼠径部乳腺に浅腹壁, 腸腰, 外陰部動脈が主流をなして分布する(Type V).2.静脈系はいずれの動物においても, その大部分がほぼ動脈に伴行して走る.反芻家畜の静脈系の主流は外陰部静脈であるが, 馬の場合, 乳房後部から大腿深静脈に入る主要乳腺静脈が主流をなし, 本来の外陰部静脈は非常に細いという特徴を示した.腹皮下静脈は乳牛で最もよく発達してみられた.従来, 乳房の静脈路として記載されている会陰静脈は静脈弁の配置と構造からみて, 血液の流れの方向は乳房より流れさるのではなく, むしろ乳房に向かって流れるものと考えられた.犬, 猫の前位の乳腺の静脈は内胸, 外胸静脈へ, 後位のものは外陰部静脈へ流れ, 家兎の場合, 動脈は浅腹壁動脈が強枝であってその分布域は広いが, 静脈は外陰部静脈が太い.また, ハムスターでは浅腹壁静脈が太く, 血液はこの方へ流れるものが多いと考えられる.3.乳腺血管の分布状態は動物の生理的変化に伴う乳腺の機能状態に応じて変化するが, マウスでは, それぞれの主な血管系の本幹には大差はなかった.しかし, 導管や腺胞に分布する血管には特徴的な差がみられた.すなわち, 処女期においては導管やBudに分布する血管網の発達は弱いが, 脂肪組織への分布は多い.奸娠期には乳腺の血管分布は密になり, 特に妊娠初期から中期にわたって, Budや腺胞の付近の脂肪組織中にルーフ状の特徴的な毛細血管網があらわれ, 妊娠が進むにつれてこれらの血管網の中に腺胞が発達, 侵入するのが認められた.また, この像は分娩後3日目の乳腺にも少数認められた.これらの血管叢の起源は導管に沿って伸びた血管と, 導管とは無関係に脂肪組織に分布していた血管からであり, 明らかに腺胞系の発育のために脂肪組織の中に確立していた血管が妊娠により, 活発化したものと推測される.泌乳期では導管および腺胞は毛細血管で密にとりかこまれ, 小葉間導管と腺胞の一部に, 分娩3日目頃から蛇行した血管が出現し, 12日目最高に達して, 以後次第に退化した.この蛇行血管は特に泌乳中のみに発達している点から, 乳汁の生成および導管や腺胞中の乳汁の貯留および排出とも関係があるものと考えられる.離乳期における腺胞の退化はすみやかであるが, 血管は原型に近い形でそのまま退縮後も残り, そののち次第に退縮して付近の脂肪組織に分布するのが確認された.4.未成熟, 成熟および卵巣除去マウスにEstradiol, Progesteroneを同時に14日間投与すると奸娠前期から中間にほぼ準じた血管分布像がみられ, Budや腺胞の付近にはルーフ状に特異的に吻合した血管網がよく発達していた.この様な血管像はまた, Progesterone単独投与でもみられたが, Estradiol単独投与のものでは少なく, むしろ乳頭や導管周囲の血管がよく発達していた.5.胸部乳腺の血液の流量をIsotopeを用いて測定したが, 流量は妊娠開始と共に増加し, 分娩後12日目で最高となり, 以後下降した.これらのことは乳腺の血管分布密度の発達の程度とほぼ一致した結果を示した.
著者
西中川 駿 松元 光春 鈴木 秀作 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.157-166, 1982-03-19

南九州の古代にどのような動物が生息し, また, 古代人がどのような動物を狩猟し食していたか, さらには現生種との間に骨学的差異があるかなどを知る目的で, 今回は鹿児島県片野洞穴出土の哺乳類, 鳥類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物は, 縄文後期から晩期の土器と共に出土し, 総出土量約10547gで, そのうち哺乳類が7204g(68%)で, 鳥類はわずか0.8gであり, その他貝類などであった.2.動物種や骨の種類を同定出来たものは, 773骨片で, それらはイノシシ, シカ, ツキノワグマ, イヌ, タヌキ, アナグマ, ノウサギ, ムササビ, サルおよびキジの6目10種であった.3.動物別出土骨片数をみると, イノシシが最も多く(53%), ついでシカ(38%)であり, その他の動物はそれぞれ2〜5%にすぎなかった.ツキノワグマの出土は貴重なものであり, 最大長186mmで, 両骨端の欠如していることから若い個体と推定した.4.骨の形状は, 各動物共に現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさはシカ, ノウサギで現生種より幾分大きい傾向を示した.5.以上の観察から, 縄文後期から晩期の鹿児島県大隅地方には, 少なくとも6目10種以上の動物が生息していたことが伺われ, また, 古代人がイノシシ, シカをよく狩猟し, 食べていたことが示唆された.
著者
大塚 閏一 山入端 正徳 西中川 駿
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.167-179, 1972-03-30

1)29頭の犬を用い, 51例の下顎腺および耳下腺に分布する動脈を肉眼的に観察した.2)下顎腺に分布する主要動脈は, A.facialis(顔面動脈)よりのRamus glandularis(腺枝)およびA.auricularis caud.(後耳介動脈)より起こるRami glandulares(腺枝)であった.このほか, A.thyroidea cran.(前甲状腺動脈)より起こるRamus sternocleidomastoideus(胸鎖乳突筋枝)の分枝およびA.parotidea(耳下腺動脈)の分枝が分布する例も認められた.なお, A.thyroidea cran.のRamus sternocleidomastoideusが, A.thyroidea cran.より起こらず, A.occipitalis(後頭動脈)の基部より分岐して, その分枝が下顎腺に分布する例が1例認められた.3)下顎腺への動脈分布状態は5型に分類でき, それらの頻度はTable 1のようで, A.facialisのRamus glandularisおよびA.auricularis caud.のRami glandularesのみが分布する型が41.2%と多かった.4)耳下腺に分布する主要動脈は, A.parotidea, A.auricularis caud.より起こるRamus auricularis lat.(外側耳介枝)の分枝およびA.temporalis sup.(浅側頭動脈)より起こるA.auricularis rost.(前耳介動脈)の分枝の3動脈であった.このほか, A.auricularis caud.のRami glandulares, A.temporalis sup.よりのA.transversa faciei(顔面横動脈)の分枝およびA.masseterica(咬筋動脈)の分枝が耳下腺に分布する例も認められた.5)耳下腺への動脈分布状態は7型に分類でき, それらの頻度はTable 2のようで, 主要3動脈のみが分布する型が45.1%と最も多かった.6)A.parotideaはA.carotis ext.より起こる例のほか, A.auricularis caud.またはA.temporalis sup.より起こる例が31.3%も認められた.7)A.auricularis caud.は一般に耳介の輪状軟骨の基部でA.carotis ext.より起こるが, 9.8%にあたる5例において, A.carotis ext.が舌下神経と交叉する部位より起こっていた.
著者
西中川 駿
出版者
動物考古学研究会
雑誌
動物考古学 (ISSN:1342100X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.3-10, 2000-05
著者
大塚 潤一 豊満 義邦 西中川 駿
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.441-455, 1980
被引用文献数
1

キュウシュウノウサギ (以下<I>Lepus</I>) , アマミノクロウサギ (<I>Pentalagus</I>) および家兎JW-NIBSの頭蓋骨・胴骨を形態学的ならびに骨計測学的に検索した。<BR>1) 尾椎数は<I>Lepus</I>が10~12個, <I>Pentalagus</I>が10~11個およびJW-NIBSが15~17個である。<BR>2) <I>Pentalagus</I>の上顎臼歯数が5個という従来の記載は, この種属の識別用形質とは認められない。<BR>3) <I>Pentalagus</I>の眼窩および鼓室胞は極端に小さい。<BR>4) JW-NIBSの脳頭蓋の長さおよび頸椎, 胸椎, 腰椎の椎孔の幅は, 他の二者より小さい傾向を示す。<BR>5) 腰椎の棘突起および横突起の形状および大きさは, 三者間に明白な差異がある。<BR>6) 骨の計測値の変異係数は, JW-NIBSが最も小さい。