著者
中村 亮
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.26, pp.215-240, 2010-07-15

東アフリカのスワヒリ海岸はアフリカでも有数のマングローブ面積を保有する地域である。ここのマングローブは、紀元前よりのインド洋交易をつうじて、木材資源が少ないアラブ・ペルシャ地域へ建築材として輸出されてきた歴史背景をもつ。スワヒリ海岸のなかでも、タンザニア南部のルフィジ川流域とキルワ沿岸部は、国内のマングローブ面積の64%(69,785ha)を保有する海資源の豊かな地域である[Wang et al.2002]。本論文の目的は、タンザニア南部のキルワ島を事例に、住民によるマングローブ資源利用の現状について、「直接利用」と「環境利用」にわけてその多面的利用法を解明することと、居住空間と資源が限定されている海村社会(とくに島嶼部)におけるマングローブ資源の重要性を提示することである。キルワ島は中世のインド洋交易において金交易を独占することにより興隆した海洋イスラーム王国であったが、現在は1000人弱の住民が、マングローブとサンゴ礁に囲まれた海で主に半漁半農の生業形態でくらす小海村である。キルワ島は、島と大陸との間のマングローブに囲まれた内海と、インド洋に面してサンゴ礁が発達した外海という、自然環境が対照的な二つの海をもつ。その海環境は、生態海域1:マングローブ内海、生態海域2:サンゴ礁をもつ外海、生態海域1と2の自然条件を兼ね備えた生態海域3(境海)、の三生態海域に分かれる。生態海域1に面する場所に、キルワ王国時代(10C半)から居住空間が歴史的に形成されてきた。ここは北モンスーンの影響を受けて、暑気に涼しくマラリア蚊の少ないことより居住空間として適しているばかりではなく、キルワ王国にとっては、外海から奥まった遠浅の海に面しているので、外敵からの防衛という点でも適していた。また、キルワ島の半数近くの漁場が生態海域1に集中しており(30/66)、かつ、全漁法の半数以上が生態海域1でおこなわれることより(23/41)、マングローブ環境が生業空間としても適していることがわかる。キルワ島には8種類のマングローブが自生している。その利用は、マングローブを建築材や燃料などとして使用する「直接利用」と、マングローブが作り出す環境を漁場や塩田として使用する「環境利用」に大別される。七通りの直接利用(建築材、船材、漁具材、燃料、薬、飼料、玩具)と五通りの環境利用(漁場、航路、塩田、養蜂、防波風林)が確認された。この二つの利用法の関係は、微妙なバランスの上に成り立っているといえる。マングローブの過度な伐採はマングローブ環境を壊してしまうし、マングローブ環境の保全のために伐採を禁止してしまうと、マングローブの直接利用に依拠した住民生活に支障をきたしてしまうからである。しかし現在までのところ、人びとがマングローブの重要性を伝統的な知識をつうじて理解しており、また、この地域の人口密度が少ないこともあって、キルワ島周辺のマングローブ資源は良く保全されているといえる。キルワ島におけるマングローブは、材料や生業空間としの重要性だけではなく、キルワ沿岸部の地域社会を形成する媒介の場所としての重要性ももっている。マングローブ内海には住民が日常的に移動する航路が網の目のように張り巡らされており、このマングローブ内海を媒介としてキルワ島周辺地域には、親族関係、友人関係、近距離交易などをつうじた親密な地域関係が存在している。マングローブ資源が歴史的に果たしてきた役割、同時に、現在の住民によるマングローブ利用法をしっかりと認識することが、近年の沿岸部開発や観光化によって海環境への人的圧力が高まってきたタンザニア南部沿岸地域における、人と自然との持続可能な関係を模索するために必要不可欠である。
著者
島田 佳門 山田 哲靖 中村 亮一 須永 聡
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.96, no.61, pp.7-12, 1996-05-24
被引用文献数
1

本稿では、ソフトウェアの再利用と効果的なファイル作成を支援するソフトウエア開発環境について述べる この開発環境は、我々のノンストップサービス拡張型プラットフォームの開発の中で提案されたものである ソフトウェアの再利用性を向上するため、我々のプラットフォームは、基本電話、ISDN、ATM、IN等の種々の通信システムに適用できる。プラットフォーム内のソフトウェア部品も、オブジェクト指向設計手法に基づいて開発されており、簡易に再利用可能である。また、ファイル作成のターンアラウンドタイムを短縮するために、種々のファイル化手法を提案している。これらの部分的ファイル変更手法は、定性的かつ定量的に比較評価する。その結果より、我々のプラットフォームおよびソフトウェア開発環境が有用であることが示される。
著者
赤坂 将 柳沢 達矢 中村 亮太 市村 哲
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.21, pp.1-6, 2010-03-11
被引用文献数
1

現在,インターネット上には情報発信の場として Web ページが多数存在しており,企業等では商品情報を公開し更なる顧客獲得のために使用している.Web ページの使いやすさによって商品の売上が左右されるということなどから,より多くの人に Web ページを見てもらうようにするため,Web ユーザビリティの向上が重要となっている.Web ユーザビリティを評価するためにユーザがクリックしたログの解析など様々な手法が考えられているが,その中の一つの手法として,視線を使用した評価方法がある.しかし従来の視線を用いた評価手法では,ユーザが具体的に何を見ていたかわからない,また分析に手間がかかるなどといった問題があった.そこで本研究では,従来行われていなかった Web ページの評価方法を考え,より簡単に評価できるツールを提案した.そして,Web ページ上でユーザが何を見ていたかという情報を取得するツールと,取得した情報を解析し Web ページの改善を手伝うためのツールを開発した.A lot of Web pages exist on the Internet, The Web pages are used for sending advertisement and acquiring customers. Because companies want more people to see the advertisement about their merchandise, the improvement of the Web usability is important. Various methods like the analysis of the log that the user clicked were proposed.There was an evaluation method using the glance.However, there was a problem that people didn't understand what the user was concretely looking at. Moreover, there was a problem of taking time to analyze. Then, the paper proposed the method of evaluating the Web page that had not been done in the past.
著者
中村 亮介 網野 梓 一野瀬 亮子 柄川 索 玉本 淳一
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp."2P1-I03(1)"-"2P1-I03(2)", 2008-06-06

We are developing a human-symbiotic robot, called "EMIEW2", designed to support human activity. We set the following three features in the EMIEW2. The first is speed. The robot's moving speed is faster than human walking at 6km/h. The second is the safety. It weighs 13kg the same as a two-year old child. The third is its minimum size for office work. The robot's height is 800mm, which is taller than most office desk. This allows the robot to detect objects on them. To expand on the robot's range of motion, the EMIEW2 has three modes. In "two-wheeled mode", the EMIW2 can move nimbly at 6km/h. In the "four-wheeled mode", the EMIEW2 can move stably. In "step mode", the EMIEW2 can walk up a 3cm step. This paper describes the EMIEW2's mechanism and system constitution.
著者
柄川 索 一野瀬 亮子 中村 亮介
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp."2P1-I04(1)"-"2P1-I04(2)", 2008-06-06

This paper describes the software architecture of the humanoid robot "EMIEW 2." In order to increase efficiency of software development of robotic and mechatronic systems, which often requires complicated software comprised of many real-time tasks running on multiple processors, the authors have developed a message-driven software component framework. The software of EMIEW 2 is comprised of 28 software components such as motor control, path planning, and localization. The component framework transmits a message containing 1024 bytes of data in 18μs when it is executed on a 500 MHz CPU. It can currently be used with four operating systems and is expected to be applied to other robotic and mechatronic systems.
著者
中村 亮一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

本年度は昨年に引き続き、医療用メカトロニクスシステムを中心とする外科手術支援システムに必要不可欠なシステム構成要素である術中情報獲得(モニタリング)システム及び術中戦略支援(ナビゲーション)システムといったソフトウエアの研究開発を行った。今年度は対象とする術式を腹部領域(主として肝・腎)でのMR誘導下冷凍治療(Cryotherapy)に絞り、この術式を支援するモニタリングおよび及び治療戦略支援システムの構築を行った。今年度のシステム開発においては、システムを構成する大きな要素として次の3つの要素技術を開発した。1.術中に逐次撮像されるMRI画像から術中の氷球形状を三次元的かつ定量的に自動抽出するオートセグメンテーション法2.1.により得られた定量的な氷球形状の経時的変化からオプティカルフロー法を用いて氷球成長速度を推定し、この速度情報を利用して近未来の氷球形状を予測する治療効果予測法3.1.、2.により得られたリアルタイム/将来の氷球情報を基に、治療の進捗・安全性等の評価指標を医師に提示する治療モニタリング法さらにこれらの要素技術を組み合わせ、3次元画像表示ソフトウエアとユーザインタフェースをあわせたMR誘導下冷凍治療支援システムの構築を行った。5例の動物実験と数例の臨床データを用いたオフラインでの実験の結果、本システムで提示されるリアルタイム/近未来の表球データは医師の作成した氷球データとの比較の結果高い精度を持ち、またMR画像取得/計算/描画に要する時間も2秒程度と、精度・リアルタイム性共に高い能力を有し、将来的な臨床への応用が可能であると考えられる。本年度開発したモニタリング・ナビゲーションシステムと、初年度に開発した能動鉗子システムを組み合わせることにより、低侵襲手術を実現する総合的外科支援メカトロニクスシステムの臨床応用が可能となると考えられる。
著者
中村 亮一
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では安全で高度な内視鏡下胎児手術をサポートするシステムとして、低侵襲性の向上と術具機能の確保を両立させるために、腹腔内で先端部が変形することで内視鏡手術用デバイスとしての機能を持つエンドエフェクタ「変形駆動」機能を開発し,挿入時φ8mmから体内でφ14mmに大型化する把持鉗子を開発した.また3次元超音波画像診断装置と手術ナビゲーションを用いて、手術ナビゲーションとしての術野情報・術具位置姿勢提示機能のみならず、子宮内組織と術具との距離(接近度)を術者に提示する「近接覚」提示機能を備えたリアルタイム3D超音波ナビゲーションを開発した.
著者
中村 亮一 村垣 善浩 伊関 洋
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.248-255, 2005-05-01
被引用文献数
2

はじめに -術中情報の可視化- 精密かつ安全な手術を遂行する上で最も重要な事項の一つは, 患者, 病変に関しての質の高い情報をいかに確保するかということである. 「敵を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」とは孫子の言葉であるが, 手術においてもまさしくこの言葉が当てはまる. すなわち, 対象となる病変の情報を多く獲得し, かつ自分が手術という一連のプロトコルの中で現在どういう状態にあり, これから何をするべきかを決断するための情報を獲得することが, よりよい手術結果を獲得するために必要なことである. 肉眼で確認できない患者体内の病変についてのより質の高い情報を獲得するための試みが古くより多くの医学者, 科学者によりなされてきた. Roentgenが1895年11月8日にX線を発見し12月22日に夫人の手指骨の透過写真を撮影したのが, 非侵襲的な(切開等の直接的侵襲を伴わない)体内情報の画像化の最初である. その後, HounsfieldによるX線CTの開発(1968), 和賀井敏夫らによる超音波診断装置の開発, そしてLauterbur, Mansfieldらにより開発された核磁気共鳴画像(MRI)(1971)の登場により, 体内の多品質, 高品質な画像情報の獲得が可能となった.
著者
市村 哲 谷 寛之 中村 亮太 井上 亮文 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-25, 2005-01-15

近年,デジタルビデオカメラは小型化・軽量化しており,運動会や結婚式の撮影,旅行先での撮影など,きわめて幅広い分野で用いられている.しかしながら,いざ一般の人がビデオ編集をしてみてもなかなか満足できるような映像にならず,単調な映像の連続に感じられることが多い.一般撮影者の作成する映像は,単一角度から撮影した映像がほとんどであり,また,ビデオ編集に使う映像素材も自分自身が撮影した映像のみを用いていることが主たる原因の1 つである.本論文では,同じイベントに参加した複数撮影者の映像をサーバに集めて共有し,インターネット経由で映像編集できるようにするWeb システム「MediaBlocks」を提案する.MediaBlocks を利用すれば,同じイベントを撮影した人たちが映像素材を交換しあうことが容易にできるようになるため,たとえば,自分が撮影できなかったシーンを取り込むことや,プロフェッショナルの映像技法にそった多彩なビデオ編集が可能となる.MediaBlocks は,複数の撮影者が撮影した映像をサーバに集め,自動時間同期処理を施して整理し,Web ブラウザを利用してインターネット経由で映像編集できるようになっている.本論文では,システムの設計,実装,評価,改良について述べる.Recently, the spread of portable digital video cameras enabled us to easily record various family events. Although videotaping and video editing have got quite popular recently, the quality of the produced video has not been improved much. For instance, movies edited by nonprofessionals are likely to be a sequence of monotonous scenes. When editing home movies, users usually use video sources from their own single camcorder. This is one of the significant reasons why nonprofessionals can not create high-quality home movies. We developed MediaBlocks,a web-based video editing system for sharing personal video clips. In the system,video sources are collected from multi-users' camcorders via the Internet, shared among the users, and edited through each user's web browser. The system allows users to use other users' video clips, each of which is spontaneously videotaped by different digital video camcorder, and also enables them to create home movies according to the professionals' important editing rules. The system can extract the date and time information of video-recording from the digital video clips, and synchronize them automatically. Through evaluations of the system, we verified the effectiveness of our system.
著者
中村 亮一 平澤 貴宏 田中 昌也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.402, pp.19-24, 1999-10-28
被引用文献数
1

本稿では、近年のデータ系トラヒックの急増に応える、高処理能力のマルチプロセッサATM交換システムの呼処理分散方式について述べる。具体的には、マルチプロセッサ上の「入出分離型呼処理モデル」と「交換OS/上位APL分離型呼処理モデル」の2種類の分散方式について、性能や保守性など様々な面から比較・評価を行う。分散方法の優劣は、適用先のネットワークの特性に依存し、性能や品質に優れている前者は安定期のネットワークに適しており、需用(トラヒック量)の変動やソフトウェア処理量増に耐久性の高い後者は、発展期のネットワークに適している。
著者
石谷 和久 四七 秀貴 中村 亮一 稲守 久由
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1999, no.2, 1999-03-08
被引用文献数
1

多様なマルチメディア通信の需要の増大に対応するために、マルチプロセッサ構成の分散型通信ノードシステムが提案されている。分散型通信ノードシステムでは、プロセッサ間通信方式として分散オブジェクト指向を採用することで、柔軟なソフトウェア配置と容易なプロセッサ追加を実現している。一般に、通信ノードシステムでは、処理の効率化を達成するためにRealtime OSを備えて、呼処理、保守運用処理など様々な要求品質(処理遅延、損失率など)の異なる処理をその優先順位に従って処理している。一方、分散オブジェクト指向では、サーバ側(ターゲット側)の実行環境とクライアント側の実行環境とは、独立に決定されている。本稿では、分散型通信ノードシステムにおいて、Realtime OSの特性を活かして多様な要求品質の異なる処理を、分散環境で実現するプロセッサ間通信方式を提案する。
著者
中村 亮 Nakamura Ryo
巻号頁・発行日
2008-03-25 (Released:2008-06-20)