著者
坂本 淳哉 真鍋 義孝 弦本 敏行 本田 祐一郎 片岡 英樹 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0517, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】股関節疾患患者では患部を起源とした関連痛が膝関節前面にみられることが多く,その発生機序の仮説の一つとして二分軸索感覚ニューロンの関与が考えられているが,この点に関する解剖学的な根拠はこれまでに十分に示されていない。一般に,股関節および膝関節前面の知覚は大腿神経ならびに閉鎖神経から分岐する関節枝が支配するとされているが,これらの関節枝の分布状況を同時に検討した報告はこれまでになく,前述したような関連痛の発生機序を明らかにするためには股関節枝と膝関節枝の分布状況を同時に検討する必要がある。そこで,本研究では日本人遺体における大腿神経ならびに閉鎖神経から分岐する股関節枝および膝関節枝の分布状況について検討した。【方法】対象は平成24年度ならびに平成26年度に所属大学の歯学部人体解剖学実習に供された日本人遺体9体9肢(男性5体,女性4体,右側1肢,左側8肢)で,各遺体における大腿神経および閉鎖神経から分岐する股関節枝と膝関節枝を剖出・観察した。なお,観察は所属大学内の定められた解剖学実習室でのみ行い,実習室の管理者の管理・指導のもと,礼意を失わないように実施した。【結果】大腿神経から分岐する股関節枝には①恥骨筋枝から分岐して前内側に達する枝(4肢,44.4%),②腸骨筋枝から分岐して前外側に達する枝(3肢,33.3%)が認められ,閉鎖神経から分岐する股関節枝には①前枝から分岐して股関節前内側に達する枝(3肢,33.3%),②後枝から分岐して股関節前内側に達する枝(2肢,22.2%)が認められた。一方,大腿神経から分岐する膝関節枝には①内転筋管内を下行した後に膝蓋骨内側に達する枝(2肢,22.2%),②内側広筋枝から分岐して膝蓋骨内側に達する枝(5肢,55.6%),③膝関節筋枝から分岐して膝蓋上包に達する枝(6肢,66.7%),④外側広筋枝から分岐して膝蓋骨外側に達する枝(1肢,11.1%)が認められた。また,閉鎖神経から分岐する膝関節枝は前枝から分岐して伏在神経と併走して膝蓋骨下内方に達する枝(1肢,11.1%)が認められた。加えて,各遺体における分布状況を検討したところ,大腿神経の恥骨筋枝から分岐して股関節前内側に達する枝と内側広筋を貫通して膝関節前内側に達する枝を同時にもつ所見が3体で認められた。【結論】以上の結果から,股関節および膝関節の前面は主に大腿神経から分岐する関節枝により支配されることが明らかになった。そして,先行研究を参考にすると,股関節および膝関節の前内側を大腿神経が同時に支配している所見は両関節を支配する二分軸索感覚ニューロンの存在を示す肉眼解剖学的所見とも考えられ,股関節を起源とした膝関節の痛みの発生に関与している可能性が推察される。
著者
本田 祐一郎 梶原 康宏 田中 なつみ 石川 空美子 竹下 いづみ 片岡 英樹 坂本 淳哉 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.I-112_1-I-112_1, 2019

<p>【はじめに,目的】</p><p>これまでわれわれは,骨格筋の不動によって惹起される筋性拘縮の主要な病態はコラーゲンの増生に伴う線維化であり,その発生メカニズムには筋核のアポトーシスを契機としたマクロファージの集積ならびにこれを発端とした筋線維萎縮の発生が関与することを明らかにしてきた.つまり,このメカニズムを踏まえ筋性拘縮の予防戦略を考えると,筋線維萎縮の発生を抑止できる積極的な筋収縮負荷が不可欠といえ,骨格筋に対する電気刺激療法は有用な方法と思われる.そして,最近は下肢の多くの骨格筋を同時に刺激できるベルト電極式骨格筋電気刺激法(Belt electrode-skeletal muscle electrical stimulation;B-SES)が開発されており,従来の方法より廃用性筋萎縮の予防・改善効果が高いと報告されている.そこで,本研究では動物実験用B-SESを用い,不動後早期からの筋収縮負荷が線維化の発生を抑制し,筋性拘縮の予防戦略として有用かを検討した.</p><p>【方法】</p><p>実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット16匹を用い,1)無処置の対照群(n = 4),2)ギプスを用いて両側足関節を最大底屈位で2週間不動化する不動群(n = 6),3)不動の過程で動物実験用B-SESを用い,後肢骨格筋に筋収縮を負荷する刺激群(n = 6)に振り分けた.刺激群の各ラットに対しては大腿近位部と下腿遠位部にB-SES電極を巻き,後肢骨格筋に強縮を誘発する目的で刺激周波数50Hz,パルス幅250µsec,刺激強度4.71 ± 0.32mAの条件で,1日2回,1回あたり20分間(6回/週),延べ2週間,電気刺激を行った.なお,本実験に先立ち正常ラットを用いて予備実験を行い,上記の条件で刺激強度を漸増させ,足関節中間位での最大等尺性筋力を測定した.そして,最大筋力の60%の筋力を発揮する刺激強度を求め,これを本実験の刺激強度に採用した.実験期間中は1週毎に麻酔下で各ラットの足関節背屈可動域を測定し,実験期間終了後は両側ヒラメ筋を採取した.そして,右側試料はその凍結横断切片に対してH&E染色を施し,各筋につき100本以上の筋線維横断面積を計測した.一方,左側試料は生化学的検索に供し,コラーゲン特有の構成アミノ酸であるヒドロキシプロリン含有量を定量した.</p><p>【結果】</p><p> 足関節背屈可動域と筋線維横断面積は不動群,刺激群とも対照群より有意に低値であったが,この2群間では刺激群が不動群より有意に高値を示した.また,ヒドロキシプロリン含有量は不動群が対照群より有意に高値であったが,刺激群は対照群と有意差を認めなかった.</p><p>【考察】</p><p> 今回の結果から,刺激群には筋線維萎縮の進行抑制効果ならびに骨格筋の線維化の発生抑制効果が認められ,このことが足関節背屈可動域制限,すなわち筋性拘縮の進行抑制効果に影響していると推察される. </p><p>【結論】</p><p> 不動後早期からの筋収縮負荷は線維化の発生を抑制し,筋性拘縮の予防戦略として有用であることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本実験は長崎大学動物実験委員会で承認を受けた後,同委員会が定める動物実験指針に準じ,長崎大学先導生命科学研究支援センター・動物実験施設で実施した.</p>
著者
関野 有紀 濵上 陽平 中願寺 風香 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100383, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】近年,ギプス固定などによる四肢の一部の不動が慢性痛の発生因子になることが指摘されており,我々の先行研究においても,ラット足関節を8 週間ギプスで不動化すると不動解除後も痛覚過敏の状態が継続し,慢性痛を呈する可能性が示唆されている。一方,不動期間が4 週間の場合は痛覚過敏の発生は一過性であり,加えて不動4 週目の足底皮膚において表皮の菲薄化や末梢神経密度の増加が生じていたことから,痛みの発生原因は中枢神経系の変化というよりはむしろ末梢組織の変化にあると推測している。我々は,この末梢組織由来の痛みの発生メカニズムについて解析を進め,これまでに末梢神経密度の増加には表皮の構成細胞であるケラチノサイトが産生する神経成長因子(NGF)の増加が関与する可能性を報告した。しかし,不動による皮膚の組織学的変化がどの時期から進行するのかは不明のままであり,課題が残されていた。加えて,近年の研究によれば侵害刺激受容体が神経細胞のみならずケラチノサイトにおいても発現・機能していることが明らかとなっており,末梢における痛覚伝達系への関与が注目されている。そこで,本研究では侵害刺激受容の中心的分子であるTRPV1 およびP2X3の発現変化を含む皮膚の組織学的変化の経時的推移を明らかにすることを目的とした。【方法】実験動物には8 週齢のWistar系雄性ラット60 匹を用い,不動期間を1・2・4 週に設定した不動群(n = 30)とそれぞれに週齢を合わせた対照群(n = 30)に振り分けた。不動群は右足関節を最大底屈位でギプス固定した。不動期間中は,週1 回の頻度で機械的刺激に対する痛み反応をvon Frey filament(VFF)を用いて評価し,具体的には足底部にVFFで刺激(4,15 g ;各10 回)を加えた際の逃避反応をカウントした。また,熱刺激に対する痛み反応の評価として足背部の熱痛覚閾値温度を測定した。各不動期間終了後,ラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し,足底部中央の皮膚組織を採取した。組織試料は急速凍結させた後に凍結切片とし,以下の検索に供した。まず,組織学的解析としてHE染色を施した切片を用いて表皮厚を計測した。次に,免疫組織化学的解析として末梢神経(A線維,C線維)をABC法に従って可視化し,真皮上層に分布する末梢神経密度を半定量化した。さらに,NGF,TRPV1 およびP2X3に対する蛍光免疫染色を行い,表皮層における発現強度を半定量化した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は長崎大学動物実験委員会が定める動物実験指針に基づき,長崎大学先導生命体研究支援センター・動物実験施設において実施した。【結果】不動群のVFF刺激に対する逃避反応回数は,4 gでは不動2 週より,15 gでは不動1 週より対照群に比べ有意に高値を示し,また,不動群の熱痛覚閾値温度は不動1 週より対照群に比べ有意に低値を示し,これらの行動学的変化は不動期間に準拠して顕著になった。足底皮膚を解析した結果,不動群の表皮厚は不動1 週より対照群に比べ有意に低値を示し, A 線維の末梢神経密度は不動1 週より,C線維のそれは不動2 週より対照群に比べ有意に高値を示した。また,TRPV1 およびP2X3発現量はともに不動2 週より不動群が対照群に比べ有意に高値を示し,これらの変化はすべて不動期間に準拠して顕著になった。一方,NGF発現量は不動1 週より不動群が対照群に比べ有意に高値を示したが,その発現レベルは不動期間を通じて一定であった。【考察】今回の結果から,表皮の菲薄化,末梢神経密度の増加,ケラチノサイトに発現する侵害刺激受容体の発現増強は不動1 〜2 週という早期から発生し,その程度は不動期間に準拠して顕著になることが明らかとなった。また,それらの推移は痛みの行動学的変化と同様であったことから, 不動に伴う痛みの発生に皮膚の組織学的変化が深く関与することが示唆された。NGFは神経成長因子としての役割に加え,一次知覚神経に発現するTRPV1 やP2X3などの発現あるいは機能増強を誘導する内因性メディエーターとしての機能を持つ。NGFの増加自体が痛みの直接的な原因になっていることも十分に考えられ,今後さらに検討を進めたい。【理学療法学研究としての意義】本研究は,不動に伴う痛み発生メカニズムにおいて皮膚組織がその責任組織の一端を担っている可能性を提示した。われわれ理学療法士は皮膚組織を含む末梢組織に対して直接的に介入可能であることから,本研究の進展は,不動に伴う痛みに対する理学療法学的な介入方法の開発につながると期待でき,理学療法学研究として十分な意義がある。
著者
関野 有紀 濵上 陽平 田中 陽理 坂本 淳哉 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ae0045, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 不動によって痛みが発生することはヒトおよび実験動物モデルを用いた報告等により周知の事実となりつつある.また,慢性痛の病態のひとつである複合性局所疼痛症候群(CRPS)に関する国際疼痛学会(IASP)の診断基準には患肢の不動の有無が掲げられている.所属研究室の先行研究により,ラット足関節不動化モデルにおいて不動期間が8週間におよんだ場合,中枢神経系の感作を含む慢性痛を呈するが,不動期間が4週間の場合は痛覚過敏のみで,中枢神経系の感作は認められないことが明らかとなっている.このことから,不動に伴う初期の痛みの原因は皮膚,末梢神経を含む末梢組織にあると推測され,実際に,ラット足関節不動化モデルの足底において表皮の菲薄化や末梢神経密度の増加が認められたことをこれまでに報告した.しかし,これらの皮膚組織の変化と不動に伴う痛み発生との関連性は未だ明らかにできていない.よって,本研究の目的は皮膚組織に着目し,その変調をさらに詳細に解析することにより,不動に伴う痛み発生メカニズムを探索することである.【方法】 実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット20匹を用い,4週間通常飼育する対照群(n=10),右側足関節を最大底屈位にて4週間ギプス固定する不動群(n=10)に振り分けた.実験期間中、機械的刺激に対する痛みの指標としてvon Frey filament testを実施し,足底部にfilamentで刺激(4,15g ;各10回)を加えた際の逃避反応をカウントした.また,熱刺激に対する痛みの指標として足背部の熱痛覚閾値温度を測定した.すべての測定とも週1回の頻度で経時的に行い,測定は覚醒下でギプスを除去して行った.実験期間終了後,ラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し,足底部中央の皮膚組織を採取した.組織試料は急速凍結させた後に凍結切片とし,以下の検索に供した.まず,HE染色を施した切片を用いて表皮厚を計測した.次に,免疫組織化学的染色により末梢神経(A線維,C線維)を可視化し,表皮層下におけるそれぞれの末梢神経密度を半定量化した.さらに,Nerve growth factor(NGF)に対する蛍光免疫染色を行い,表皮層の染色輝度を測定することにより表皮におけるNGF産生を半定量化した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は長崎大学動物実験委員会が定める動物実験指針に基づき,長崎大学先導生命体研究支援センター・動物実験施設において実施した.【結果】 不動を開始して1~2週目から,不動群において4g,15gのvon Frey filament刺激に対する逃避反応回数は増加し,また,足背部の熱痛覚閾値温度は低下した.そして,これらの変化は不動期間に準拠して顕著になり,不動2週目以降のすべての測定において対照群との有意差を認めた.次に,不動4週目の足底皮膚を組織学的に観察した結果,不動群において表皮の菲薄化,角質層の乱れが観察され,表皮厚は対照群のそれより有意に低値を示した.また,不動群の末梢神経密度はA線維,C線維ともに対照群のそれより有意に高値を示し,神経線維が表皮層へ進入する所見が観察された.さらに,不動群の表皮におけるNGF産生は対照群のそれより有意に高値を示した.【考察】 本研究では,4週間の不動に伴い機械的刺激に対する痛覚過敏および熱痛覚閾値の低下が観察され,この結果は先行研究とほぼ一致する.また,足底皮膚においては表皮の菲薄化や角質層の乱れ,表皮に分布する末梢神経の増加が観察された.先行研究によれば,末梢神経の増加は痛覚閾値に関与するとされており,不動に伴う痛覚閾値の低下の一因となっている可能性が高い.一方,皮膚組織の末梢神経の分布や密度に対しては,表皮の主要構成細胞であるケラチノサイトから産生されるNGFが関与するとされている.よって,不動群に認められた末梢神経密度の増加は,ケラチノサイト由来のNGF産生の増加に起因する変化であると推察される.加えて,NGFは痛みの内因性メディエーターとしての機能も知られており,NGF産生の増加自体が痛みの直接的な原因になっていることも十分に考えられる.以上のことから,不動に伴う痛みの発生には皮膚の組織学的変化が深く関与していると推測でき,今後さらに検討を進める必要がある.【理学療法学研究としての意義】 本研究は,不動に伴う痛み発生メカニズムに皮膚組織がその責任組織の一端を担っている可能性を提示している.われわれ理学療法士は皮膚組織を含む末梢組織に対して直接的に介入可能であることから,本研究の進展は,不動に伴う痛みに対する理学療法学的な介入方法の開発につながると期待できる.したがって,本研究は理学療法学研究として十分な意義があると考える.
著者
吉村 俊朗 中野 治郎 本村 政勝
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

抗アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)および抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体(抗MuSK抗体)共に陰性で筋無力症が疑われる患者の中に筋萎縮性側索硬化症もある。誘発筋電図でもWaningが認められ、テンシロンテストも陽性と判断されることがあり、抗体陰性の重症筋無力症の鑑別に重要と結論した。運動終板に補体C3の沈着が認められ、postsynaptic foldの減少も認められた。αバンガロトキシンの減少も認められる例もある。意義付けが困難であるが、眼筋型MGでは、AChR抗体が陰性のことが多く補体の沈着があることがある。測定感度以下のAChR抗体が関与する可能性や、AChR抗体以外の抗体の関与が考えられる。補体の沈着もなく、postsynaptic foldの減少があり、臨床像は、四肢近位筋の筋力低下があり、他の抗体もしくは、先天性の可能性など、今後の検討が必要である。ヒト抗MuSK抗体は、ラットの再生筋の運動終板においてもいても、ヒト運動終板と類似の変化をもたらす。 抗MuSK抗体は Postsynaptic areaの形成に影響を及ぼす。抗ラミニン抗体は抗体陰性の筋無力症の原因でありうる可能性を否定できないが、電気生理学的な検討も含めて、今後の検討が必要である。ラミニンも運動終板の形成に関与している可能性がある。
著者
坂本 淳哉 片岡 英樹 吉田 奈央 山口 紗智 西川 正悟 村上 正寛 中川 勇樹 鵜殿 紀子 渋谷 美帆子 岩佐 恭平 濱崎 忍 三村 国秀 山下 潤一郎 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C4P1138, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】大腿骨近位部骨折(以下、近位部骨折)術後の多くの症例では、痛みは骨折部や術創部がある股関節周囲に発生し、骨癒合と術創部の治癒が進むに従い消失する。しかし、これらの治癒が進んでも痛みが残存する症例や、股関節周囲の遠隔部に痛みが発生する症例も存在し、このような症例では痛みが理学療法プログラムの進行の阻害・遅延因子となることがある。このような近位部骨折術後の痛みの実態に関しては経験的には把握しているものの、痛みの発生率や発生部位、程度などの基礎資料を提示した報告は非常に少ない。そこで、本研究では近位部骨折術後の痛みの実態把握を目的に理学療法開始時からの痛みの発生状況を調査した。【方法】対象は、2008年7月から2009年8月までに当院整形外科にて観血的治療を受け、理学療法を行った大腿骨頚部骨折23例、大腿骨転子間骨折3例、大腿骨転子部骨折22例、大腿骨転子下骨折5例、大腿骨転子部偽関節1例の計54例(男性9例、女性45例、平均年齢83.1歳)で、術式の内訳は人工骨頭置換術11例、ガンマネイル12例、compression hip screw (以下、CHS)15例、鍔つきCHS 6例、ハンソンピン7例、その他 3例である。なお、理学療法は平均して術後8.3日から開始した。調査項目は1)安静時痛(背臥位)、動作痛(起き上がり、立ち上がり、歩行)を有する対象者の割合(以下、有痛者率)、2)安静時痛、動作時痛の発生部位、3)安静時痛、動作時痛の発生部位の中で最も痛みが顕著であった部位(以下、最大疼痛部位)の痛みの程度とした。なお、痛みの発生部位については対象者がその部位を身体図に提示した結果を用い、川田らの報告(2006)に準じて腰部、鼠径部、臀部、大転子部、大腿前面、大腿外側、大腿内側、大腿後面、膝部以下の9箇所に分類した。また、痛みの程度はvisual analog scale(以下、VAS)で評価した。調査期間は理学療法開始時から12週後までとし、上記の調査項目の経時的変化を捉えるため2週毎に行った。そして、対象者を理学療法開始時の改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点により21点以上の非認知症群と20点以下の認知症群に分け、分析を行った。【説明と同意】本研究は、当院臨床研究倫理委員会において承認を受け、当院が定める個人情報の取り扱い指針に基づき実施した。【結果】安静時痛の有痛者率は理学療法開始時、非認知症群が約20%、認知症群が約47%であったが、4週後には非認知症群が約5%、認知症群が約11%に減少した。また、安静時痛の発生部位のうち鼡頚部、大転子部といった股関節周囲が占める割合は理学療法開始時、非認知症群が約20%、認知症群が約7%であったが、これは4週後にほぼ消失した。一方、動作時、特に歩行時痛の有痛者率は理学療法開始2週後で、非認知症群が約70%、認知症群が約83%で、6週後でも両群とも約40%までしか減少せず、それ以降も増減を繰り返した。また、理学療法開始時の動作時痛の発生部位は両群とも、大腿後面・内側・外側・前面および膝部以下で全体の約60%以上を占め、この傾向は12週後でも変化なかった。痛みの程度として、非認知症群の安静時痛のVASは理学療法開始時から12週時まで1以下であったが、認知症群は理学療法開始時から2週後まで2~3と非認知症群より高値を示した。また、動作時痛のVASは理学療法開始時、非認知症群が4.6、認知症群が6.5と認知症群が高値を示し、両群とも経時的に減少したが、12週後でも非認知症群が3.0、認知症群が4.6と認知症群が高値であった。【考察】今回の結果から、安静時痛の有痛者率は経時的に減少し、特に股関節周囲に存在する痛みが消失した。つまり、安静時痛は近位部骨折の受傷、あるいは手術侵襲といった組織損傷に伴う炎症に起因した痛みであると推測できる。一方、動作時痛、特に歩行時の有痛者率は経時的に減少するものの、残存する傾向があり、その発生部位も骨折部位から離れた大腿部や膝部以下に認められることから、炎症に起因したものとは考えにくい。次に、非認知症群と認知症群を比較すると安静時痛、ならびに動作時痛の有痛者率やその発生部位について違いは認められず、このことから痛みの発生状況に関しては認知症の影響は少ないといえる。ただ、痛みの程度に関しては認知症群が非認知症群より高いことから、情動面が影響しているのではないかと推察される。【理学療法学研究としての意義】近位部骨折術後の痛みについて、有痛者率、発生部位、ならびにその程度といった実態の一部を明らかにしたことは今後の理学療法を考える上でも貴重な基礎資料になると考えられる。
著者
馬渡 耕史 大野 朗 徳田 潔 春田 弘昭 中野 治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.172-181, 2012 (Released:2013-09-30)
参考文献数
20

肺血栓塞栓症は, 診断手順の確立により日本においても広く認識されるようになり, 向精神薬服用者で静脈血栓や肺塞栓症の合併が多いことも報告されている. そのほとんどは急性肺血栓塞栓症といわれているが, 慢性の場合は長い経過と非特異的な症状のせいもあって多くは見逃されている可能性がある. 今回, われわれは, 向精神薬の長期にわたる服用歴を持ち, 肺血栓塞栓症を合併した症例5例を経験したので報告する. 男性2例, 女性3例, 年齢は39~67歳で, 向精神薬の内服期間は4~25年であった. 1例は急性発症で起立時に急にショック状態となり心肺停止にいたっている. 残り4例は数カ月から数年にわたる息切れや呼吸困難で慢性の反復性の病型であったが, 長期の臥床や悪性腫瘍などの誘因となるものはなかった. 胸部X線写真では, 全例肺動脈の拡大を認め, 心電図は4例で右室負荷所見を認めた. 心エコードプラ, または右心カテーテル検査による肺動脈圧は急性発症の1例を除いて収縮期圧が72~128mmHgで著しく高値であった. 下肢から下大静脈にかけての静脈エコーでは5例とも血栓を認めなかった. 全例下大静脈フィルターは使用せず, 抗凝固療法のみを行い, 肺動脈圧の低下をみた. 心肺停止後の蘇生例は歩いての退院となったが, 入院中の急変で1例を失った. 向精神薬内服中の患者が, 呼吸困難や息切れを訴えた場合は, 肺血栓塞栓症の鑑別が必要である.
著者
中野 治郎 石井 瞬 福島 卓矢 夏迫 歩美 田中 浩二 橋爪 可織 上野 和美 松浦 江美 楠葉 洋子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.277-284, 2017 (Released:2017-09-08)
参考文献数
21
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した造血器悪性腫瘍患者における運動機能,倦怠感,精神症状の状況を把握することである.【方法】対象は化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した入院中の造血器悪性腫瘍患者 62名とし,運動療法の介入時と退院時の握力,膝伸展筋力,歩行速度,日常生活動作能力,全身状態,倦怠感,痛み,不安,抑うつを評価した.そして,各項目の介入時から退院時への推移を検討した.【結果】介入時と退院時を比較すると,膝伸展筋力は一部の患者では低下していたが,歩行速度,ADL能力,全身状態は9割以上の患者で維持・改善されていた.また,女性では倦怠感,不安,抑うつの改善傾向が認められたが,男性では認められなかった.【結論】化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した造血器悪性腫瘍患者の運動機能は維持・改善しており,倦怠感,不安,抑うつの変化には性差が認められた.
著者
中野 治房
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.654, pp.281-287, 1941

予ハ昭和十二年七月札幌ニ於ケル日本植物學會大會ノ折, 此問題ニ就イテ少シク講述スル所ガアツタガ, 今ヤ予ノ知見モ増進シ稍完備ニ近ヅイタト思バレルノデ此篇ニ纒メテ見タ次第デアル。<br>偖前囘ハ荒川沿岸ノをぎ-のからまつ基群叢ニ就イテノ統計ニ基イタノデアルガ, 今囘ハ更ニ之レニ加フルニ信州霧ケ峯ノすすき-みつばつちぐり基群叢ニ就イテノ研究ヲ以テシタノデアル。ソシテ前囘ハ一々個體ヲ數ヘタガ, 今囘ノモノハ頻度ノ統計カラ個體密度ヲ概算ニ依リ算出シテ見タノデアル。爰ニ斷ラネバナラナイコトハ個體ト云ツテモよし, をぎノ樣ナ各莖個々ニ分離シテ居ルモノハタトヒ地下莖デ結合シテ居ルトハ云へ個個ノ莖ヲ一個體ト見做シタノデアルガ, 之ニ反シすすきノ樣ナ束状植物ハ其一束ヲ一個體ト見做スノデアル。<br>本報告ノ主目的ハ<b>ヅリエー</b>ノ恆存種ナルモノノ新定義ノ當, 不當ニ對スル批判ニアルガ, 研究ノ結果新定義モ亦舊定義ト同ジク完全ナモノデナク, 要スルニ恆存種ナルモノハ植物群落學上其儘デハ存立スルコトガ出來ナイト云フ結論ニナルノデアル。今其理由ノ主ナルモノヲ云フト同氏ノ新定義ニ依ル「恆存種」ナルモノハ, 基群叢内ニ規則正ク出現スル種類ト定メラレテ居ルガ, 頻度 (恆存度) ノ非常ニ小イ種類ガ規則正ク, 換言スルト「正常的分散」ヲシテ居ルコトガアルカラ, 氏ノ「規則正ク」ヲ此「正常分散」ノ意味ニ解釋スルト恆存種ハ種々ノ個體密度ノモノニ相當シ又氏ノ定義ヲ好意的ニ解釋シテ特ニ頻度ノ傑レタノニ當テルト, 之ハ優占種ト略同ジ意味ニナリ, 何レニシテモ恆存種ナルモノハ不可解ナモノニナルト云フニ歸着スルノデアル。
著者
馬渡 耕史 大野 朗 徳田 潔 春田 弘昭 中野 治
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.172-181, 2012

肺血栓塞栓症は, 診断手順の確立により日本においても広く認識されるようになり, 向精神薬服用者で静脈血栓や肺塞栓症の合併が多いことも報告されている. そのほとんどは急性肺血栓塞栓症といわれているが, 慢性の場合は長い経過と非特異的な症状のせいもあって多くは見逃されている可能性がある. 今回, われわれは, 向精神薬の長期にわたる服用歴を持ち, 肺血栓塞栓症を合併した症例5例を経験したので報告する. 男性2例, 女性3例, 年齢は39~67歳で, 向精神薬の内服期間は4~25年であった. 1例は急性発症で起立時に急にショック状態となり心肺停止にいたっている. 残り4例は数カ月から数年にわたる息切れや呼吸困難で慢性の反復性の病型であったが, 長期の臥床や悪性腫瘍などの誘因となるものはなかった. 胸部X線写真では, 全例肺動脈の拡大を認め, 心電図は4例で右室負荷所見を認めた. 心エコードプラ, または右心カテーテル検査による肺動脈圧は急性発症の1例を除いて収縮期圧が72~128mmHgで著しく高値であった. 下肢から下大静脈にかけての静脈エコーでは5例とも血栓を認めなかった. 全例下大静脈フィルターは使用せず, 抗凝固療法のみを行い, 肺動脈圧の低下をみた. 心肺停止後の蘇生例は歩いての退院となったが, 入院中の急変で1例を失った. 向精神薬内服中の患者が, 呼吸困難や息切れを訴えた場合は, 肺血栓塞栓症の鑑別が必要である.
著者
中野 治房
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.911, pp.159-167, 1964
被引用文献数
8 1

1. 本論交は1913年ドイツ国の植物雑誌(Bot.Jahrb.<b>50</b>(4)440)に公表された研究の追加補足を目的とするものであるが, また訂正を志すものでもある. 研究方法は前著におけるように培養試験により, 諸器官の発生を調べ, また特に果実の遺伝性を観察したが, さらに諸外国の博物館や膳葉館における該当種の標本との比較研究にもよった.<br>2. 前論文においてはヒメビシ (<i>Trapa incisa</i> S.et Z.) にふたつの形(Formen)(小形と大形)を含むとしたが, その後の研究によると小形が実はヒメビシで, 大形はオニビシの変種 <i>Trapa natans</i> var. <i>pumila</i> auct. (コオニビシ) であることがわかった. この二形の間には推移はなく葉も異なり, また果実の大きさも違うほか, ヒメビシの果実の竪角にはほとんど逆刺が認められない. 培養の結果ではこれが全く認められなかったが, 自然の場合では2~3% くらい,しかも不完全の逆刺 (前後の竪角のうち1本だけにあったり,また1本の逆刺で代表されるという不完全さ) が認められるにすぎない.<br>3. 2本角のヒシの場合2本の横角 (lateral) の存在がその特徴であるが,まれに前後の面 (transversal sides) に角状の突起が成立することが特にvar. <i>Jinumai</i> に見られ奇異の感にうたれるが, これはよく見ると決して逆刺を具えず, また4本角のもののようにとがってもいないのでこれを擬角と命名した. 実にこの擬角はがく片から発生する四角ヒシの竪角とは発生が異なり, がく片脱落後そのこんせきから生ずる特殊の突起にすぎない. 著者の経験によれば二角ビシの5形が見られるが, この角の反曲性(recurving)のコウモリビシ(<i>T</i>. <i>bicornis</i> L.f.)が代表種と認められ, 他の4形はその変種と認めるのを妥当とするのである.<br>4. 4本角の外国種 <i>T. natans</i> L. の標本を種種しらべたが, これにもいろいろ変化があるとはいえ, 邦産のオニビシ' <i>T. quadrispinosa</i> Roxb. とシノニマスであることがわかった. また邦産のオニビシの三角のものが間々現われるが, これは子の代に皆四角に返えり安定性を持たないことを明らかにした. すべて四角性のヒシ, すなわち, オニビシ, コオニビシ, ヒメビシはがく全部が角を構成するが, ヒメビシの竪角には逆刺の発達が不完全で二角性のヒシに, ある連関性があるように見える.<br>5. がく片の全部が脱落して,無角のヒシが形成されることが中国上海附近嘉興南湖産のもので証明され, これを <i>T.acornis</i> Nakanoとした.<br>6. 不連続ながら長年の研究で本邦および隣接地域のヒシ属には少なくとも4種, 5変種が存在することが明らかにされた.
著者
沖田 実 中居 和代 片岡 英樹 豊田 紀香 中野 治郎 折口 智樹 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-69, 2004-02-20
被引用文献数
9

本研究の目的は,温熱負荷ならびに温熱負荷と持続的筋伸張運動を併用した場合の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を明らかにすることである。実験動物は,7週齢のWistar系雄ラットで,1週間の後肢懸垂によってヒラメ筋に廃用性筋萎縮を惹起させるとともに,その過程で約42この温熱ならびに持続的筋伸張運動,両者を併用した方法を負荷し,筋湿重量とタイプI・II線維の筋線維直径の変化,Heat shock protein 70(Hsp70)の発現状況を検索した。温熱負荷によってHsp70の発現が増加し,タイプI・II線維とも廃用性筋萎縮の進行抑制効果を認めた。そして,これはHsp70の作用によってタンパク質の合成低下と分解完遂が抑制されたことが影響していると考えられた。一方,持続的筋伸張運動でも廃肝吐筋萎縮の進行抑制効果を認めたが,温熱負荷と併用した方法がより効果的であり,これはHsp70の作用と機械的伸張刺激の作用の相乗効果によるものと推察された。
著者
中田 彩 沖田 実 中居 和代 中野 治郎 田崎 洋光 大久 保篤史 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-5, 2002-02-20
被引用文献数
10

本研究では, 臥床によって起こる拘縮を動物実験でシミュレーションし, その進行過程で持続的伸張運動を行い, 拘縮の予防に効果的な実施時間を検討した。8週齢のIcR系雄マウス34匹を対照群7匹と実験群27匹に振り分け, 実験群は後肢懸垂法に加え, 両側足関節を最大底屈位で固定し, 2週間飼育した。そして, 実験群の内6匹は固定のみとし, 21匹は週5回の頻度で足関節屈筋群に持続的伸張運動を実施した。なお, 実施時間は10分(n=8), 20分(n=7), 30分(n=6)とした。結果, 持続的伸張運動による拘縮の進行抑制効果は実施時間10分では認められないものの, 20分, 30分では認められ, 実施時間が長いほど効果的であった。しかし, 30分間の持続的伸張運動でも拘縮の発生を完全に予防することはできず, 今後は実施時間を延長することや他の手段の影響を検討する必要がある。
著者
森 定雄 西村 泰彦 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 清田 光晴 高田 かな子 森 佳代 杉本 剛 葛谷 孝史 清水 優 長島 功 長谷川 昭 仙波 俊裕 大島 伸光 前川 敏彦 中野 治夫 杉谷 初雄 太田 恵理子 大関 博 加々美 菜穂美 上山 明美 中橋 計治 日比 清勝 佐々木 圭子 大谷 肇 石田 康行 中村 茂夫 杉浦 健児 福井 明美 田中 鍛 江尻 優子 荻原 誠司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.497-504, 1995-06-05
被引用文献数
9 9

サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量測定において, 異なる測定機関における分子量測定値がどれくらい異なるかを知る目的で, 傘下26測定機関で共同測定を行った.試料はポリスチレン(PS)3種, ポリメタクリル酸メチル(PMMA)2種で, 被検試料の測定条件と較正曲線作成条件は各測定機関で用いている要領で行った.その結果, 各測定機関での相対標準偏差は1〜3%と良好であったが、26測定機関による全平均値の相対標準偏差は13〜32%となった.測定データを吟味し, 望ましい測定条件からかけ離れているデータを除外した場合, PSのRSDは数平均分子量で13.6〜15.5%, 重量平均分子量で6.0〜9.4%となり.又PMMAではそれぞれ14.3〜16.0%, 7.8〜12.2%であった.