- 著者
-
佐藤 裕哉
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
平成22年度は,以下の3点について取り組んだ。1)地図のラスター/ベクター変換と修正,2)データベース構築と修正,3)デジタル地図と被爆者データのGIS上での結合と修正である。1)については,爆心地から2~2.5kmの範囲のデジタイジングと属性入力を行った。結果として,約15,000軒分の家屋ポリゴンを作成し,1,000軒の地番コードと500軒分の世帯主名を家屋ポリゴンの属性として入力した。そのほか,道路線(ラインデータ)を作成した。また,平成21年度に作成した家屋ポリゴンと鉄道線,市内電車線,河岸線について,他の地図資料を参考に修正した。2)については,原爆放射線医科学研究所が保有する「原爆被爆者データベース」の被爆住所(地番)をコード化した。データベース内の地番まで住所が確認できる約20,000人分について,10桁の数字を附しデータベースに格納した。3)については,家屋ポリゴンとデータベースに附した地番コードにより,GIS上で自動的にマッチングできるように作業を行った。長屋など複数の建物に同一の地番が割り当てられている場合は,うまくマッチング出来ないことが明らかとなった。そのほか,昭和初期の広島市中心部のデジタル地図が成果として得られ(平成21年度と22年度の合計で約62,000軒分),貴重な地図資料を劣化しない形で保存することができた。また,このデジタル地図を作成したことにより,今後,他の空間データと重ねあわせて分析することが容易となり,原爆被害の実相解明につながる新たな知見へと結びつく可能性を持つ。一方で,家屋の高さや材質など入力する属性を増やすなど改善の余地も残されている。