著者
竹内 沙和子 佐藤 裕二 北川 昇 下平 修 原 聰 磯部 明夫
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.70-77, 2010-04-10 (Released:2010-07-08)
参考文献数
27
被引用文献数
2 5

目的:有床義歯補綴治療のための適切な診断を行う上で,義歯支持粘膜のバイオメカニクス特性の評価は重要である.当教室では粘膜の硬さと厚さの両者の関連を明らかにするため超音波による粘膜厚さの計測と,周波数の減衰を応用し弾性率の計測を行った.しかし,厚さと弾性を別々に測定することは操作が煩雑で臨床応用が難しく,義歯支持粘膜の粘弾性的性質を総合的に評価できない.そこで,義歯支持粘膜の粘弾性的特性を客観的に評価するために,荷重量と厚さを同時計測する新システムを開発した.本報では,荷重と粘膜厚さの変化量の同時測定手法の確立を目的とする.方法:超音波厚さ計の90°の探触子と45°角度付探触子の柄にひずみゲージを貼付し,厚さと荷重量の同時計測を行った.測定条件は最大荷重量3.0 N,測定時間15秒とした.測定対象は,擬似粘膜として想定した厚さ3.0 mmの軟性裏装材と有歯顎者の口蓋粘膜にて弾性率の計測を行った.結果:擬似粘膜において弾性率を比較したところ,45°角度付探触子に水準器を付与することで,90°の探触子とほぼ同等の計測値が得られた.したがって,口腔粘膜においては臨床応用範囲の広い45°角度付探触子の使用が可能であることが示された.結論:45° 角度付探触子を用いた新システムにおいて荷重量と厚さの同時計測を行うことで,口腔粘膜の粘弾性について評価できる可能性が示唆された.
著者
日高 勇一 小玉 彬人 田村 亮太 伊藤 誠文 小池 貢史 平井 卓哉 佐藤 裕之 萩尾 光美
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.6-11, 2014-07-05 (Released:2014-07-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

5歳、雌のミニチュア・ダックスフントが腹囲膨満および呼吸困難を主訴に来院した。身体検査、エックス線検査および超音波検査により腹腔内腫瘤と胸水の貯留が認められた。腫瘤と胸水の細胞診により、腫瘤は胸腔内転移を伴う卵巣由来の悪性腫瘍であることが示唆された。手術により腹腔内腫瘤は摘出され、病理組織学的に卵巣の乳頭状腺癌と診断された。術後、肺転移に伴う胸水の制御を目的にパクリタキセルと白金製剤併用の化学療法が合計9回行われ、手術から623日目に死亡した。剖検により肺は腫瘍組織に侵されていたことが確認された。パクリタキセルと白金製剤併用の化学療法は、犬の転移性卵巣癌症例に対する化学療法の選択肢の一つになりうるかもしれない。
著者
関根 義彦 川股 信一 佐藤 裕一
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.190-196, 1992-02-29

伊勢湾の沿岸フロントについて1989年12月および1990年11-12月にCTDによる断面観測を行った.1989年12月の観測は海底までの混合層が形成された後に行われ,知多半島の南と神島東の2つの場所に水温・塩分フロントが観測された.神島東のフロントでは密度の極大が認められた.1990年11-12月の観測は台風28号の到来前後に行われ,わずか3日の間に海況の大きな変化が認められた.特に台風に伴う河川水の流出で湾奥部の低塩分化が著しく,低塩分水が幾つかの塩分躍層を形成しながら沖側に拡散していく過程が観測された.神島東は1989年12月と同様に水温・塩分フロントが認められ,台風の影響が小さい前半の観測では密度の極大域が確認された.また,観測中木屑が20-40m程度の間隔で列をなして海面に浮いている様子がこのフロント域で目視されており,密度の極大域の形成と考え合わせて,このフロントは熱塩フロント的性格が強いことが示唆された.
著者
佐藤 裕之
出版者
弘前大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

(1)バルクナノメタルのマクロな残留応力の評価:残留応力と残留ひずみの評価方法について検討した。バルクナノメタルのように小型の試験材を対象として残留応力を測定する方法を検討するため,X線を用いた残留応力の測定方法について,東北大学の協力を得つつ,2D-XRD法の適用可能性について検討し,測定した。また,穿孔法によるひずみ-残留応力測定法についても実験した。提供を受けたバルクナノメタルの残留応力テンソルの測定を試み,残留応力の主応力と主軸の評価を行い次の結果を得た。ARB法により作成したバルクナノメタルの残留応力の主軸は,圧延方向と一致しており,熱処理によって主応力の大きさは変化するものの主軸の方向は変化しない。残留応力から見積もられるひずみは,バルクナノメタルの作成方法にも依存する。(2)マクロな変調組織を持つ合金の強化法の検討結晶粒径や硬度に分布や変調構造を作り込む方法として複合負荷による方法を実験的に検討し,室温強度と高温強度とマクロ組織の様相との関係を検討した。アルミニウム合金では,室温強度と高温強度(クリープ強度)を同時に改善できる場合のあることを見いだした。ホールペッチの関係やいわゆるDornの式からは,結晶粒の微細化による強度変化は,室温と高温では相反する依存性を持ち,広い温度範囲で強度を改善することは困難と予想されるが,組織の不均一さを積極的に生かすことによる室温強度と高温強度の同時改善の可能性を示した。高温強度の評価法として,代表者が提唱している「ひずみ加速指数」を用いる方法を改善して用いた。
著者
小菅 正裕 池田 仁美 鎌塚 吉忠 佐藤 裕
出版者
日本測地学会
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.290-302, 1987-03-25 (Released:2011-07-05)
参考文献数
17

A fault model of the 1983 Nihonkai-chubu (Japan Sea) earthquake (MJMA 7.7) was investigated on the basis of aftershock distributions, crustal deformation, and tsunami data. Since the earthquake took place under the sea off the coast of northwestern Tohoku District, there are a few land observation of crustal movement near the source area. We, therefore, have estimated the static fault parameters by comparing the wave form of observed tsunami with that of calculated from the static fault model. Trial fault parameters were derived from seismic data: focal mechanism solutions, seismic moment, and aftershock distributions with reference to the rupture process of the main shock. Our model was characterized by three fault planes trending NNE-SSW in the southern and the middle parts and NNW-SSE in the northern part, and by their low dipangle of 25°. The tsunami wave form was simulated numerically by a finite difference method. The fault model derived from seismic data reasonably explains the geodetic data and tsunamis. The calculated vertical deformation of land was consistent with the observed subsidence of 30-40 cm at Kyuroku island situated near the source area, and those of a few centimeters at Oga peninsula and Fukaura. The tsunami wave form observed at tide-gage stations along the coast of the Japan Sea was well simulated by our model as well as the model with higher dip angle. The data of strain step observed by extensometers installed in northern Japan support the low angle thrust event.
著者
坂戸 慶一郎 松島 雅人 川崎 彩子 横田 祐介 岩上 真吾 佐藤 裕美 田中 忍 平塚 祐介 竹内 一仁
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.104-108, 2012 (Released:2012-10-05)
参考文献数
10

要 旨目的 : 地域中規模病院における経皮内視鏡的胃瘻造設術 (percutaneous endoscopic gastrostomy, 以下「PEG」) 施行患者の長期生存率を明らかにする. 対象・方法 : 2004年1月1日∼2006年9月1日の期間にあおもり協立病院にてPEGを施行した患者を対象とし, 過去の診療録を用いて調査した. 累積生存率を生命表分析 (Kaplan-Meier法) にて推定し, その95%信頼区間を算出した. 後ろ向きコホート研究である. 結果 : 対象者332名, 平均年齢77.5±9.5歳 (中央値78歳). 24名は転帰不明であり追跡が可能だった日までを解析に組み入れた (追跡率92.8%).  累積生存率は30日90.3%, 1年61.8%, 2年47.9%, 3年37.6%, 5年21.5%であった. 結論 : 地域中規模病院におけるPEG後の長期生存率は高次機能病院と同程度であったが, 原因疾患は異なる可能性がある.
著者
小林 左千夫 小林 弘樹 池田 弘 橋間 正芳 佐藤 裕一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.78, no.796, pp.3894-3903, 2012 (Released:2012-12-25)
参考文献数
16

In this paper, we present a new thermo fluid simulation method by using reduced-order models, enabling large, real-time, detailed thermal flows with continuous user interaction. Our method is ideally suited for real-time simulation of high-resolution thermal fluid dynamics because our simulator is still fast even in the case of large problems expressed by using more than one million meshes. Our results indicate that one thousand times faster simulation can retain same level of accuracy as conventional methods. In addition, our method provides continuous user interaction in real-time. It allows that we can immediately assess how a thermal field changes when controlling air-conditioning equipment in a data center.
著者
今井 浩三 豊田 実 佐藤 裕信 篠村 恭久
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.362-367, 2006-02-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10

遺伝子のメチル化は, シトシンとりわけCpG配列に特異的に起こるDNA修飾である. 遺伝子のメチル化は遺伝子変異, 欠失とならび, 癌抑制遺伝子不活化の第三の機構として重要である. 異常メチル化により, 細胞周期調節遺伝子やアポトーシス関連遺伝子, DNA修復酵素など様々な遺伝子が不活化を受ける. メチル化の網羅的解析から, 一部の腫瘍ではCpG island methylator phenotype (CIMP) を示し, 癌においてメチル化の制御機構が破綻していることが示唆される. メチル化の標的遺伝子が明らかになるにつれ, 異常メチル化を腫瘍マーカーや抗癌剤感受性の指標として用いる試みもなされている. また, メチル化を阻害することにより不活化されている遺伝子を再発現させ, 癌細胞に分化やアポトーシスを誘導することが可能になりつつある.
著者
佐藤 裕治
巻号頁・発行日
2012

筑波大学博士 (工学) 学位論文・平成24年3月23日授与 (甲第6078号)
著者
武田 育郎 西野 吉彦 深田 耕太郎 佐藤 裕和 宗村 広昭 森 也寸志
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

自然水域の底質とともに存在する鉄バクテリア集積物は,リン吸着能を持つ鉄化合物を多く含むので,リン資源の循環利用に重要な役割を果たすことができる。しかしながら自然水域の鉄バクテリア集積物は,容易に水流によって流されてしまう事,また,嫌気性の泥を含む底質からの収集が困難である事などから,有効な利用が行われていない。本研究では,鉄バクテリア集積物を収集する担体を水中に浸漬させ,鉄バクテリア集積物をリン酸肥料又はリン吸着材として利用できる形態で効率的に収集する方法の開発を行った。
著者
佐藤 裕一 木村 耕三 小畠 克朗
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.62, no.500, pp.75-82, 1997
被引用文献数
9 28

CFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastics) sheet has been used for the retrofitting of a number of existing concrete buildings and structures because of its excellent properties (high strength, lightness and high durability). To be an effective retrofitting system, however, bond effectiveness between CFRP sheet and concrete should be verified, and understanding of the peeling mechanism is especially important. This study employed both the experimental and the analytical methods to quantify the maximum bond stress τ_y and the effective bond length l_u, where the bond stress distributes. Here the interface is modeled as an interphase of 1 mm thickness, that is, a composite which consists of epoxy resin and concrete. The values of τ_y and l_u are finally proposed, and they are 4.56MPa and 45.2mm, respectively.
著者
宇佐美 幸彦 佐藤 裕子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ベルリンの大衆と芸術について、その具体的な例として、ハインリッヒ・ツィレおよびビルダーボーゲンという大衆的芸術活動の特徴をまとめた。ツィレが生涯一貫して風刺画のテーマとして描き続けたのは、彼が「第5階級」と呼ぶ社会の底辺で生きる人々の姿である。ビルダーボーゲンに関しては、グスタフ・キューン社の出版物を中心にその特徴の推移を検討した。この絵物語が20世紀に発展する漫画の先史となっていることは、大衆的芸術研究にとっては重要である。
著者
宇田川 拓雄 辰己 佳寿子 浜本 篤史 鈴木 紀 佐藤 寛 佐野 麻由子 黒川 清登 RAMPISELA Dorothea Agnes 鯉沼 葉子 島田 めぐみ 片山 浩樹 斎藤 文彦 佐藤 裕 KIM Tae Eun KIM So-young 多田 知幸 MULYO Sumedi Andorono 中嶋 浩介 RUSNADI Padjung YULASWATI Vivi
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

開発援助では様々な社会調査が実施され評価に利用されている。参加型調査、民族誌作成、フォーカスグループディスカッションなど標準的な調査法以外の手法も使われている。JICAの評価システムは構造上、広汎な長期的インパクトの把握が難しい。また、質の高い調査データが必ずしも得られていないため、評価団がポジティブな現状追認型評価を行なった例も見られた。調査の倫理をしっかりと踏まえた評価調査法の開発と普及が望まれる。
著者
佐藤 裕子 中木 高夫 濱田 悦子 川島 みどり 木村 義 齋藤 彰 平木 民子 奥原 秀盛
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は看護学生の論理的思考を育成する教育方法の1つとして、看護方法学の授業教材として使用できるコンピューター・ソフトウェアの作成を目指した。このソフトウェアの基盤を構築するために未だ明らかにされていない看護者に特有な推論構造を解明する目的で平成10年度に予備調査を実施した。結果、経験の厚い看護者の推論をより密着して詳細に調査することが必要となり、平成11年度には本調査を実施した。結果、手がかりから仮説へと至る看護者の推論プロセスの特徴、対・患者場面で看護者の即座の行為を導く推論の特徴、さらに看護者に追加される情報によって推論が発展していくことが明らかとなった。得られた資料を土台として、平成12年度から平成13年度にかけて、ソフトウェアの主軸となるルールセットを構築していった。このルールセツト作成作業では現象データからどのような推論が生まれてくるかをシミュレーション化したうえで、現象→推論→根拠→否定手段の4要素のルールからなるセットを蓄積していった。これらをシステムに組み込む作業を経たうえで、ユーザーインターフェイスを開発、ソフトウェア化していった。これと平行し本研究で作成するソフトウェアの適用対象となる看護学生の思考発展調査を平成12年度から13年度にかけて行った。結果、看護学の専門的知識を学習する前の時期は自らの生活体験や身近な家族・親戚、ぞして講義などの影響が大きい学生の思考は、基礎実習を経ることによって、さらに看護過程や看護専門知識の学習を経ることによって、現象を見る視点が多様化し語彙量が増え、表現豊かになっていくという思考の発展が明らかとなった。学生の思考発展に応じた適切な時期と活用法を考慮に入れながら論理的思考を育成することを目指す本ソフトウェアの授業教材化と評価が今後の課題である。