- 著者
-
加藤 征江
- 出版者
- 日本食生活学会
- 雑誌
- 日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.1, pp.47-54, 2009-06-30 (Released:2009-07-23)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
-
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揚げ物調理において, 食材, 揚げ方法の条件が揚げ油の劣化に如何に影響するかを, 過酸化物価 (POV) と酸価 (AV) により経時的に調べた。更に, 揚げ油としてはサラダ油と大豆胚芽油とを用いて, 揚げ油の劣化の経時的な変化とその揚げ物 (鶏から揚げ) に対する嗜好を官能評価により比較した。1) 食材としては, 薄切りじゃがいも50gの素揚げ用試料を500gのサラダ油で170℃, 3分間揚げを, 10回繰り返し30分間行い, じゃがいもの総重量500gを1セットと数えた。同様に, 鶏肉のから揚げ試料の場合もまた, 100gの試料を500gのサラダ油で165℃, 6分間揚げを5回繰り返し30分間行い, 鶏肉の総重量500gを1セットとした。いずれの試料もこの操作を繰り返し連続6セット行い1セット毎にPOVとAVとを求めた。 POVでは, 2種類の食材を用いた試料間に違いがあり, じゃがいもの試料ではPOVは高低の変動を示したが, 鶏肉の試料では高くなるのみであった。統計的には, 食材からの試料間に5%の危険率で有意差があり, 鶏肉試料の揚げ油の方は高いPOVであった。 一方, AVでは, 食材からの試料間に有意差はなかったが, 揚げ油使用時間の長さには有意差があった。2) 揚げ方法については, 鶏肉の試料をサラダ油により, 6セットの連続揚げと間歇揚げを行い, それらを比較した。その結果は間歇揚げの方がPOVとAVともに, やや高い値の傾向を示したが, 2つの揚げ方法の間には有意差は見られなかった。3) サラダ油と大豆胚芽油を揚げ油として, 鶏肉の試料を間歇揚げの方法で揚げた時, POVでは, 2種類の揚げ油間に5%の危険率で有意差があり, サラダ油は大豆胚芽油よりもその値は高かった。しかし, AVでは, 2種類の揚げ油間には有意差が見られなかった。一方, サラダ油と大豆胚芽油で揚げた鶏から揚げの官能評価において, 各セットにおける2種類の揚げ物間の比較では, 揚げ色, ジューシー, おいしさの項目ではほとんど同じ評価であった。しかし, 油っぽさの項目のみ, 揚げ時間が長くなるに従い, POVの低かった大豆胚芽油による揚げ物の方がサラダ油による揚げ物よりも油っぽくないと評価された。4) じゃがいもと鶏肉とを通常用いられるサラダ油で連続揚げ, 又は間歇揚げした時, 6セット180分間の揚げ操作でも, その揚げ油はPOVおよびAVにおいて食の安全を保ち, またその鶏から揚げの官能評価では適度な品質を保持していた。