著者
匂坂 芳典 佐藤 大和
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09135713)
巻号頁・発行日
vol.J66-D, no.7, pp.849-856, 1983-07-25

日本語テキストからの音声合成で必要な韻律情報(アクセント,イントネーション)の生成規則を確立するため,アクセント句を構成する単語の性質からアクセント核の位置を決定する規則を検討した.本規則化では従来の個別的な記述の整理,分析を行い,単語間アクセント結合において,後続単語のアクセント属性として結合アクセント価とアクセント結合様式を提案する.これにより付属語アクセント結合の統一的な規則化を行うと共に,複合単語についても同様の規則化を図った.また,これらの規則の妥当性を示すため,自立語に付属語が複数個連なる文節3445文節,複合単語4877語を用いた推定実験を行った.この結果,各々98.3%,95.4%の正解率が得られ,本規則の有効性が確認された.さらに,これら推定実験結果の分析から,アクセント決定には句を構成する語の性質,句の構造,語の用法と意味等が種々に反映されることが示された.
著者
中村 静 加藤 宏明 匂坂 芳典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.99, pp.45-50, 2009-06-17

我々は、日本人学習者の英語音声におけるリズム制御に対する客観評価法について研究してきた。この研究の経過で、日本語を母語とする学習者の潜在的なモーラ・タイミングの習慣が,英語のストレス・タイミングの生成に悪い影響を及ぼしているらしいことに注目した。そこで、本研究ではこの影響を調べるために、主にリズム制御に関与する音節の強弱の対比の観点から、母語話者音声に対する学習者音声の対応する種々の音声区分(強勢/弱勢音節,強/弱母音,内容語内/機能語内音節)の持続時間の差異について検討した。その結果,このような持続時間の差異が,英語教師である評価者による主観評価値を大きく左右していることを、両者の相関分析により確認した。
著者
加藤 宏明 津崎 実 匂坂 芳典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声
巻号頁・発行日
vol.97, no.587, pp.15-22, 1998-03-06

聴取実験により, 促音, 撥音, 無声化母音, 長母音などいわゆる特殊拍を含むセグメントの時間長変動に伴う知覚的な歪みがどの程度許容されるかを調べた.特殊拍を特徴付ける2つの要因, つまり母音・子音などセグメントのタイプと, 拍数の違いなどによるセグメント持続長のバリエーションに着目し, 通常拍との比較を行なった.その結果, 前者の要因の効果が, 母音, 鼻音, 摩擦音と無音の順に許容される変動の範囲が広がるという傾向で, 後者は, 短い持続長より長い持続長の方が許容範囲が広いという傾向として現れた.さらに, セグメントタイプと持続長の要因の交互作用も見られた.母音タイプの方が摩擦音タイプよりも持続長の効果が大きかった.以上の結果に介在する知覚メカニズムを, 音韻固有のラウドネスや持続長の違いに基づく時間長弁別能の違いと, 拍数など音韻論上の構造の内的処理との関係において論じる.
著者
定延 利之 キャンベル ニック 森 庸子 エリクソン ドナ 金田 純平 坂井 康子 匂坂 芳典 朱 春躍 砂川 有里子 友定 賢治 林 良子 森山 卓郎 大和 知史 犬飼 隆 杉藤 美代子 藤村 靖
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本プロジェクトは、書きことば研究に比べて立ち遅れの目立つ、日本語の話しことば(韻律を含む)の研究を進めるものである。「人物像」を重視した前研究(基盤A(H19-22))において、日本語の主な話し手像(発話キャラクタ)を分析したように、本プロジェクトでは日本語話しことばに見られる主な「状況」を考察し、「状況」に基づく話しことばの姿を分析する。特定の「状況」において「どのような立場の者が、どのような立場の者に対して、どのような発話の権利を持つのか」を明らかにし、それを活かした資料を作成する。
著者
菅谷史昭 竹澤 寿幸 隅田 英一郎 匂坂 芳典 山本 誠一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.2230-2241, 2002-07-15
被引用文献数
12

ATR音声翻訳通信研究所(ITL)が研究開発した音声翻訳システムATR-MATRIXのシステム概要,コーパス収集,評価結果などについて,研究開始当初の目標や研究経緯に則して述べる.コーパスベースの技術を全面的に取り入れたATR-MATRIXの要素技術の詳細については文献を参照し,システムに特徴的な技術について本論で述べる.対話実験による総合評価を実施し,利用分野は限定されるものの,タスク達成率が90%となることを確認した.また,対話実験において実験を重ねるに従って,同一タスクに対する性能が向上するなど,ATR-MATRIXを介した対話実験結果について述べる.ATR-MATRIX speech translation system was developed at ATR Interpreting Telecommunications Research Laboratories (ATR-ITL).In this paper we explain the system's outline and its development process including the initial objective, corpus collection and its overall evaluation.Each of three major components of the system: speech recognition, language translation, and speech synthesis, introduced an innovative corpus-based technology.In the paper, however the explanation is focused to major topics in the overall system, while rendering appropriate references to detail explanations of specific technology.We also explain some experimental results: additional sessions improve the performance of the same task.
著者
グリーンバーグ 陽子 加藤 宏明 津崎 実 匂坂 芳典
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.65-74, 2011-02-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

対話音声の合成を目指して,対話韻律生成の方法を提案した。対話場面において出現する発話内容自体が,その取り得る対話韻律を限定することに着目し,提案方法では,入力となる語彙が与える印象によって制約される韻律特徴量を用いて,従来の読み上げ韻律を修正する対話韻律生成を行う。これまでに行った一語発話「ん」のパラ言語分析が示した,3次元の知覚的印象空間(確信-疑念,肯定-否定,好印象-悪印象)と韻律制御(基本周波数の平均値と時間変化形状,発話時間長)の関係を用いて,同じ印象空間で典型的な座標を持つ語彙に対して,対応する対話韻律を付与した。得られた合成音声に対する自然性評価実験により,提案した方法の妥当性を確認した。
著者
谷垣 宏一 徳本 修一 撫中 達司 匂坂 芳典
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 自然言語処理研究会報告
巻号頁・発行日
vol.2015, no.5, pp.1-8, 2015-01-12

語彙を限定しない語義曖昧性解消 (all-words WSD) のための新しい教師なし学習モデルを提案する.all-words WSD は,辞書知識を言語処理に活用する基礎技術として実用化が期待されるが,識別対象である語義は種類が膨大でかつ分布がドメインに強く依存する性質があり,ラベル付きコーパスの構築を前提とする教師あり学習では実用化を見込むことが難しい.提案法は,ラベルなしコーパスの語と膨大な語義の間に自然な対応を推定するため,2 つの制約をモデル化する: 1) 類似した文脈に出現する語群の語義は,互いの語義からの外挿に従う.2) 同じ語の各出現における語義は,単語タイプ毎の事前分布に従う.これらの相補的制約を単一の階層ベイズモデルに統合し,教師なし all-words WSD を実現する.SemEval データセットを用いた実験結果より提案法の有効性を示す.
著者
小窪 浩明 匂坂 芳典 鈴木 紀子 岡田 美智男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声
巻号頁・発行日
vol.96, no.93, pp.81-88, 1996-06-14
被引用文献数
1

自然な発話における多様な挙動をとらえるために,有機的な振る舞いに基づいたパージングアーキテクチャ,Situated Parserを提案Lた.このSituated Parserは,局所的な制約間での協調/競合作用の中から有機的に創発される秩序によって,次にとる動作が動的に決定されるという特徴をもつ.したがって,従来のパーザのように言語の多様性に合わせた手続き的な記述を必要とせず,より柔軟なパージングを行うことが可能となる.本稿では,このSituated Parserの動作メカニズムを説明するとともに,この特徴として,局所的な制約に基づく有機的な振る舞いと多重ゴールについて述べる.また,実験による動作例を検証し,局所的な制約による自律的な振る舞いによって,複数の仮説の中からいちばん尤もらしい仮説が優先的に生成され,手続き的な制御なしにパージングが行われることを示す.
著者
グリーンバーグ 陽子 加藤 宏明 津崎 実 匂坂 芳典
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.65-74, 2011-02-01
参考文献数
15
被引用文献数
1

対話音声の合成を目指して,対話韻律生成の方法を提案した。対話場面において出現する発話内容自体が,その取り得る対話韻律を限定することに着目し,提案方法では,入力となる語彙が与える印象によって制約される韻律特徴量を用いて,従来の読み上げ韻律を修正する対話韻律生成を行う。これまでに行った一語発話「ん」のパラ言語分析が示した,3次元の知覚的印象空間(確信-疑念,肯定-否定,好印象-悪印象)と韻律制御(基本周波数の平均値と時間変化形状,発話時間長)の関係を用いて,同じ印象空間で典型的な座標を持つ語彙に対して,対応する対話韻律を付与した。得られた合成音声に対する自然性評価実験により,提案した方法の妥当性を確認した。
著者
平井 俊男 岩橋 直人 樋口 宜男 匂坂 芳典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1572-1580, 1995-11-25
被引用文献数
15

日本語合成音の自然性向上を目指して,音声の基本周波数(以下,F_0)制御のための規則を自動的に抽出する方法を提案した.本方法は,(1)十分な量の音声データのF_0時系列パターンを藤崎モデルによりパラメータ化し,(2)このパラメータの値を言語情報から推定する規則,すなわちF_0制御規則を統計分析手法により抽出する,という二つのステップからなる.この方法を話者1名による読上げ文200文に適用し,得られたF_0制御規則を解析することで,言語情報とパラメータ値との関係を導出した.その結果,(1)先行フレーズのモーラ数が少なくなるほど当該フレーズ指令は小さくなること,(2)アクセント句内の高く発音される部分のモーラ数が多くなるほどアクセント成分が小さくなるという関係があること,が明らかとなった.(2)の関係は,従来少数サンプルの分析結果で得られていた知見を詳細化したものとなっており,本手法によって妥当なF_0制御規則の抽出を自動的に行える可能性があることを示したものと考えられる.
著者
小林 哲則 中川 聖一 菊池 英明 白井 克彦 匂坂 芳典 甲斐 充彦
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

今年度の成果は以下の通りである。a)対話のリズムと韻律制御前年度までの成果に基づいて、対話における話題境界の判別を題材に、韻律情報におけるアクセント句単位でのパラメータを用いて統計的なモデルを学習し、オープンデータに対しても人間と同程度の判別精度が得られることを確認した。(白井・菊池)自然な対話システムを構築する上で重要なシステム側の相槌生成と話者交替のタイミングの決定を、韻律情報と表層的言語情報を用いて行う方法を開発した。この決定法を、実際に天気予報を題材にした雑談対話システムに実装し、被験者がシステムと対話することにより主観的な評価を行い、有用性を確認した。(中川)b)対話音声理解応用対話音声における繰り返しの訂正発話に関する特徴の統計的な分析結果を踏まえ、フレーズ単位の韻律的特徴の併用と訂正発話検出への適用を評価した。また、これらと併せた頑健な対話音声理解のため、フィラーの韻律的な特徴分析・モデル化の検討を行った。(甲斐)c)対話音声合成応用語彙の韻律的有標性について程度の副詞を用い、生成・聴覚の両面から分析を行い、自然な会話音声生成のための韻律的強勢制御を実現した。また、統計的計算モデルによる話速制御モデルを作成し、会話音声にみられる局所話速の分析を進め、自由な話速の制御を可能とした。さらに、韻律制御パラメータが合成音声の自然性品質に及ぼす影響を調べた。(匂坂)d)対話システム上記の成果をまとめ,対話システムを実装した。特に,顔表情の認識・生成システム,声表情の認識・生成システムなどを前年度までに開発した対話プラットホーム上に統合し,パラ言語情報の授受を可能とするリズムある対話システムを構築した。(小林)