著者
ガイタニディス ヤニス 小林 聡子 西住 奏子 和田 健 吉野 文
出版者
千葉大学国際教育センター
雑誌
国際教育 = International education (ISSN:18819451)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-73, 2016-03

[要旨] 本稿は、筆者ら5名が共同で取り組んだ、参加者の言語的文化的多様性を前提とした協働学習に関する実践研究を報告するものである。「日本」を題材とする4つの学部生向け教養科目(「時事から日本を考える」、「現代日本の宗教と社会」、「バイリンガリズムと言語学習」、「異文化交流演習」)を取り上げ、担当教員がどのように学習の場を設定したか、またその結果どのような気づき、学びがあったかを談話データ、コメントシート、フォローアップインタビューなどをもとに分析した。本研究では、協働学習を学生間の対話のプロセスを重視する学習形態を表すものとして捉え、知識、言語、経験など参加者の多様性・差異を肯定的に見なすとともに、それによって生じる学習過程における葛藤にも注目した。「座談」、「協働論証」と名付けた対話の手法、対等な参加を促すための仕掛けの必要性と具体例を紹介するとともに、今後の課題について述べた。[Abstract] This paper is a report of a joint research project on collaborative learning in a multilingual andmulticultural class environment. The report is composed of four case-studies of liberal arts coursesat undergraduate level. Each course convener uses records of in-class student discussions, commentpapers and follow-up interviews to analyse how the learning locus set up in advance impacted onthe learning experiences and outcomes of the course participants.In this research project, collaborative learning is considered to be a form of learning that 1)emphasizes the process of student interaction, 2) takes an affirming stance towards student diversityin terms of linguistic, experiential and knowledge levels and differences, and 3) pays particularattention to the tensions arising from such diversity in the process of learning. Through specificexamples, the report discusses methods of interaction such as zadan (round-table conversation) orcollaborative argumentation and focuses on the necessity of introducing learning techniques thataim for student participation on even grounds.
著者
金子 芳樹 浅野 亮 井上 浩子 工藤 年博 稲田 十一 小笠原 高雪 山田 満 平川 幸子 吉野 文雄 福田 保
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究のASEANを①拡大と深化の過程、②地域横断的イシューの展開 、③域内各国の政治社会変動分析という観点から「国際・地域・国内」の3次元で捉え直すという目的に沿って、第1年目の平成29年度においては、各担当者が現地調査や文献調査を中心に国別、イシュー別の調査を進めた。また、本研究のもう一つの特徴である「ASEANとEUとの比較」という観点については、その第1歩としてEU研究者を報告者に招聘して研究会を複数回開催し、EUの組織や地域統合のあり方などについて研究分担者・協力者の理解を深める活動を行った。その際、ASEANとEUの両研究分野の相互交流や共同研究を今後進めていくことについても、その体制造りなどを含めて意見交換を行い、具体的な段階へと歩を進める準備を行った。さらに、本研究の研究成果を逐次社会に公表していくという目的と、研究の新たな展開と蓄積のために他国や他分野の研究者との情報・意見交換を進めるという目的に沿って、国内の公開シンポジウムや学会ならびに他国開催の国際研究集会に研究分担者・協力者を派遣もしくは参加支援を行った。また、各研究分担者・協力者は、本研究のテーマもしくは関連テーマに関する論文および書籍の発表・刊行を積極的に行った。これらを通して、研究成果の公表とフィードバック、新たな研究知見の獲得、国内外での研究人脈の形成といった面でそれぞれに成果を得ることができた。上記のような諸活動を通して、1年目の目標であった本研究の基盤作りを着実に進めることができ、2年目以降のステップアップに向けた準備を整えることができた。
著者
後藤 乾一 塩崎 弘明 山田 満 吉野 文雄 玉木 一徳 山崎 功
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成18年5月、本研究グループは、平成15-16年度の基盤研究B(課題番号 15330034)の研究成果を『東ティモール『国民国家』を巡るエスニシティと国際・地域環境』として上梓し、その成果をさらに深めることを本年度の課題とした。その概要は以下のとおりである。(1)独立後最初の深刻な内部対立(地域差が主因)が発生したが、その直後に現地調査を行い、権力構造、経済事情に関する基礎的資料を収集した。(2)混迷する経済の活性化には、一定の外国援助・投資が必要であり、特に日本の関与が『期待』されている。その観点から日本政府、企業。NGOの体東ティモール政策・関与の実態を聞き取り調査を含め実施した。(3)日本との関係においては、今なお戦時期の軍事占領に起因する微妙な対日感情が見られるが、この点につき前年度に現地で行った聞き取り調査のテープ記録を起こし分析した。(4)東・東南アジアでは経済分野における域内関係が密接化しているが、東ティモールも経済規模はきわめて弱体ではあるものの、こうした潮流に加わることを課題としている。そのような観点から、アセアンさらにはAPECなどの地域協力機構、その加盟国はどのような東ティモール政策を準備しているかについて実態調査を行った。(5)2002年5月の独立に際しては最大の宗教勢力であるカトリック教会が重要な役割を演じたが、今回の政治的・社会的・文化的な亀裂の修復にはどのような役割を果たしたのか(あるいは果たせなかったのか)につき、教会側の動きについて、主に現地で活動する日本のカトリック系NGOからの聞き取り調査を行った。以上の諸活動およびそこから得られた情報・資料・データについては、現在のきわめて流動的な状況が一段落をした時点で分析を行い、平成20年3月をめどに最終報告書を取りまとめる予定である。
著者
黒柳 米司 浅野 亮 稲田 十一 小笠原 高雪 金子 芳樹 菊池 努 佐藤 考一 玉木 一徳 吉野 文雄 山田 満
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

(1)米国の対ASEAN政策の積極化、(2)中国の存在感の顕著な増幅、(3)日本の存在感の長期的凋落、および(4)「地域としての東アジア」の顕在化などという方向で変容する地域国際環境の下でASEANは、(1)「ASEAN憲章」の採択・発効、(2)インドネシア民主主義の確立などの成熟を示したものの、(3)タイの軍事クーデター、(4)タイ=カンボジア武力衝突、(5)ミャンマー軍政の民主化停滞など、後退局面がこれを上回りつつある。