著者
平井 遥 入江 英嗣 五島 正裕 坂井 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.88, pp.43-48, 2006-07-31
被引用文献数
1

スーパスカラ・プロセッサの命令パイプラインにおいて、命令ウインドウより上流をフロントエンドと呼び、命令ウインドウおよびその下流をバックエンドと呼ぶ。従来のスーパスカラ・プロセッサでは演算器はバックエンドに配置され、命令の実行はバックエンドのみで行われる。これに対して我々はフロントエンド実行という手法を提案している。フロントエンド実行とはバックエンドに加えてフロントエンドにも演算器を配置し、実行可能な命令をフロントエンドでも実行することである。フロントエンド実行には従来のプロセッサに比べクリティカル・パス上の命令の実行間隔を狭める効果がある。本稿ではフロントエンド実行の考え方を押し進め、改良手法としてツインテール・アーキテクチャと呼ぶ手法を提案する。ツインテール・アーキテクチャはフロントエンド実行ステージを通常のパイプラインから独立させたものであり、これによってフロントエンド実行ステージによるパイプライン段数の増加はなくなる。この手法はフロントエンド実行において難点であった部分を改善してさらなる性能向上を図ることを目的とした手法である。The front end (or back end) of the pipeline in a superscalar processor refers to the pipeline before (or after) the instruction window. Traditionally, physical locations of ALUs, as well as instruction execution belong to the backend. We have proposed front end execution (FEE). In FEE, ALU allocation and instruction execution also take place in the front end. By early executing instructions with ready source operands, execution time of critical instructions can be reduced. This work proposes an enhanced FEE, called twintail architecture. In twintail architecture, the stages responsible for FEE are separated from the main pipeline. By which, the overheads previously caused by additional FEE stages can be removed.
著者
堀尾 一生 亘理 靖展 塩谷 亮太 五島 正裕 坂井 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.75, pp.7-12, 2008-07-29

本論文はツインテール・アーキテクチャの改良案を提案するものである.ツインテール・アーキテクチャには発行幅や命令ウィンドウ・サイズを実質的に増加させる効果があり,ウェイ数の大きなスーパスカラ・プロセッサの実現に貢献する技術である.本論文が新たに提案するハーフパンプ FU アレイは,ツインテール・アーキテクチャの消費電力を削減するための機構である.ハーフパンプ FU アレイは,ツインテール・アーキテクチャの命令のスループットを保ちながらも,消費電力を抑えることを可能にする.シミュレーションによる評価では,ハーフパンプ FU アレイを実装したツインテール・アーキテクチャは通常のツインテール・アーキテクチャと比べ,2.4% の性能低下にとどまり,ベースモデルのスーパスカラ・プロセッサに対して,平均で 10.7% の性能向上が得られた.This paper proposes a new inplementation of Twintail Architecture. Twintail Architecture is a technique which qives effect similar to increasing issue width and instruction window size, but at low hardware cost. It is expected to contribute to a practical implementation of ultra-wide super scalar processor. This paper's proposal, Half-pumped FU Array, reduces power consumption of Twintail Architecture at minimal performance cost. Our evaluation showed that Twintail Architecture with Half-pumped FU Array improves IPC of base model super scalar processor by 10.7%, a 2.4% performance loss from conventional Twintail Architecture.
著者
岡本 一晃 松岡 浩司 廣野 英雄 横田 隆史 坂井 修一
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.80(1995-ARC-113), pp.201-208, 1995-08-23

我々は、スレッド制御を自然に行える実行モデルとして、コンティニュエーション駆動実行モデルを考案し、それに基づいてマルチスレッド処理を最適化する並列処理アーキテクチャRICA(educed Interprocessor?Communication Architectur)を提案している。現在開発を進めているRWC?1のプロセッサは、RICAに基づくマルチスレッド処理機構を有しており、通信や同期のオーバヘッドを削減することで大域的な並列処理性能の向上を図っている。本稿ではRWC?1プロセッサのマルチスレッド処理機構について述べ、RWC?1におけるスレッドレベル並列処理の基本動作を示す。
著者
浜田 玲子 井手 一郎 坂井 修一 田中 英彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.79-89, 2002-01-01
参考文献数
19
被引用文献数
23

筆者らは, マルチメディアの中でもテキストの付随するマルチメディアに注目し, テキストからの情報を画像・音声解析に反映させることで, 実用的な精度のマルチメディア統合技術の実現を目指している.特に, 現在はテキスト教材の付随する料理番組に着目し, 料理映像とテキスト教材の対応付けシステムを開発している.本論文では, このような対応付けシステムの一部分であるテキスト解析部に焦点を当て, 調理手順の構造解析手法を提案した.本手法では, 解析対照の特徴を最大限に利用し, 実用的な処理を目指す.そのため, 対象に固有の辞書を構築し, これを利用した構造解析を行う.本論文では, 評価実験とその結果から, 本手法により高精度で調理手順の構造解析が可能であることを示した.なお, 本手法は付随する映像の存在しない調理手順文書などにも適用可能である.調理手順のような説明的文書は, 調理にとどまらずテキスト教材やインターネット上など様々なメディアから大量に入手可能であるが, それぞれが独自の書式で互いに独立に存在している.本手法は, 従来は難しかったこれらの膨大な情報の活用にも役立つものと考えられる.
著者
坂井 修一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.768-771, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)

インターネットの利便性をこれまでになく享受し,ネット上に拡散する情報の力が革新的な発想を後押しすることも多い21世紀初頭は,同時に情報漏えいや権利侵害,依存といった弊害や危うさを露呈し始めた時代でもある。不可視だが確実に存在する脅威,ネットにつながっているゆえの不自由さをも見極める必要がある。現代の環境を冷静に認識し,今起きていることに対してどうふるまうべきか。現代思想・法曹・警察行政・迎撃技術・情報工学・サイバーインテリジェンス等のスペシャリストが,6回に分けて考える。第5回は情報理工学者で歌人の坂井修一氏が,「ソフトウェアに手足(アクチュエーター)と目鼻(センサー)がついたもの」という現在の世界を解析し,そこにおける人間のありよう,備えるべき教養,そして幸福を考える。
著者
亘理 靖展 堀尾 一生 入江 英嗣 五島 正裕 坂井 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.79, pp.7-12, 2007-08-01

本研究室で提案しているツインテール・アーキテクチャでは,発行幅を増やさずにスーパスカラ・プロセッサに演算器を追加することで実質的に発行幅が増えたような効果が得られる.ツインテール・アーキテクチャでは並列にメモリ・アクセス可能なロード命令が増えることで大きな性能向上が得られる.しかし,プロセッサ内のロード命令の数を増やすためにはロードストア・キューのサイズを大きくする必要があり,配線遅延の増大を招く可能性がある.本論文では,ロードストア・キューからアクセス・オーダ・バイオレーションの検出機構を分離し,アクセス・オーダ・バイオレーションの検出をするバッファを別途設けることで,ツインテール・アーキテクチャにおいて,配線遅延の増大を招くことなく,同時にメモリ・アクセスできるロード命令を増加させるモデルを提案する.シミュレーションによる提案モデルの評価では,ツインテール・アーキテクチャにおいてアクセス・オーダ・バイオレーション検出時の再実行方法を理想的にしたモデルとほぼ同等のIPCの向上が得られた.We propose Twintail Architecture, an architecture which gives effect similar to widening issue width but does not lead to greater latency. Twintail Architecture contributes to superscalar processor's throughput by enabling paralell memory access. However, it seems to provoke wiring delay with enlarging the size of load/store queue for the purpose of increasing in-flight load instructions. In this paper, we propose an reasonable model which increases the number of in-flight load instructions, by decoupling the function of access order violation detection from the load/store queue and enlarging a buffer which detects access order violation. Evaluation showed proposed model improves IPC as well as ideal re-execution model.
著者
道上 和馬 中村 朋生 小泉 透 入江 英嗣 坂井 修一
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2020-ARC-240, no.31, pp.1-9, 2020-02-20

Approximate Computing は,計算精度と引きかえに実行時間と消費電力の双方を削減する技術である.この技術の適用範囲を広げる上での課題のひとつは,誤差を許容範囲内に収めることである.本論文では,この許容範囲がしばしばユーザの主観によって動的に変化することに着目し,計算精度を動的制御可能なアーキテクチャと計算精度の段階的制御が可能なループ近似手法「Loop Body Switching」を提案する.近似の積極度合いを指示する近似レベルを,Control and Status Register(CSR)に保持し,その値で Loop Body Switching の計算精度を制御する.提案するアーキテクチャをシミュレータ上に実装し,4 つのベンチマークを用いて評価をおこなう.近似レベルの増加に対して実行サイクル数は段階的に減少し,専用の分岐命令とハードウェア装置によりさらに実行サイクル数が減少した.
著者
野村 隼人 入江 英嗣 坂井 修一
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.76-86, 2019-07-29

プロセッサへのデータ供給能力は性能上最も重要な要素の1つであり,これを支えるため近年のプロセッサは大容量のLast Level Cache(LLC)を備えている.キャッシュ容量が大きくなるほど,再参照間隔のより長いキャッシュラインを的確に残すようなキャッシュマネジメントが求められるが,これは簡単なハードウェアで行うには難しい課題であり,現状,LLCには多くのデッドブロックが含まれている一方で,追い出しによるミスが発生していることが知られている.本研究では,ライン追い出しを一時的に凍結し,長期保持による統計的なヒット数向上を可能とするStubborn戦略をベースとして,その活用タイミングを適応的に決定する手法を提案し,性能向上を最大化させながら,性能低下の発生を抑えることを実現する.SPEC CPU 2006からメモリセンシティブな12本のベンチマークをシミュレーションした評価では,LRUに対して最大42.3%,幾何平均で3.8%の性能向上を示した.
著者
武藤 誠 半田 伊吹 坂井 修一 田中 英彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.76, pp.25-30, 2000-08-05
参考文献数
14
被引用文献数
5

楽曲の感性情報抽出の従来研究では主に相関分析の手法が用いられてきたが、有効な特徴量の設定が困難であることなどの問題から十分な抽出精度が得られていない。本研究では人間の音楽認知と情緒反応をモデル化し、そのモデルに適切な計算手法と考えられるニューラルネットワークモデルを用いて感性の計算モデルを得た。その際、音楽の段階的構成構造の特性や人間の知覚特性を考慮してニューロン間の結合に適当な制約を設け、また中間層に適切な競合系を設けた。この計算モデルが通常のニューラルネットワークモデルに比べ、より正確で効率的な学習能力を有することと、感性情報処理一般に有効であることを示す。To detect sentimental-information of musical songs, multivariant analysis or neural network model have been used for analyzing the correlation between musical parameters and music listener's subjective report. But these methods are improper for Sentimental-information detection. So we use a music cognition model for sentimental information detection. The computational model is 3 layer neural network model - input layer represents perception of musical components, output layer represents the sentimental reaction evoked by the musical songs. Network structure is properly organized as to learn more precisely and effectively. In this paper, we discuss the modeling of music cognition and computational model of sentimental reactions.
著者
田仲 史周 宮永 瑞紀 入江 英嗣 坂井 修一
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2018-ARC-231, no.21, pp.1-6, 2018-06-07

コンテンツ管理システム (CMS) の利用増加などによりインジェクションアタックヘの対策が重要になっている.インジェクションアタックに対する一般的な対策は既知のアタックをデータベース化して入力と照合する事で侵入を検知するものであるが,未知のコードによる攻撃を検出しにくい欠点がある.攻撃コードの既知 / 未知に関わらず包括的なインジェクションアタック検出を可能とする手法として,SWIFT (String Wise Information Tracking) が研究されている.これは,外部入力の文字列がその後どのように使わるかをチェックすることで,攻撃成立の前に実行を停止させる手法である.SWIFT の実証実装 PHP-SWIFT では最新の SQL インジェクション攻撃をデータベース無しで検出できることが確認されているが,この検出部は SQL インジェクションのみをターゲットとしていた.本研究では,他の性質を持つ主要なインジェクション攻撃としてディレクトリトラバーサル攻撃に着目し,PHP-SWIFT 用に同様に検出部を提案する.この拡張によって SWIFT-PHP の実用可能範囲を広げると共に,更に包括的な攻撃検出に向けたフレームワークを開発する.Wordpress プラグインの脆弱性を対象としたディレクトリトラバーサル攻撃を再現し行った評価では,用意した全ての攻撃を検出する事に成功した.
著者
横田 隆史 松岡 浩司 岡本 一晃 廣野 英雄 坂井 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1600-1609, 1995-07-15
参考文献数
12
被引用文献数
4

超並列計算機の実現,特に,通信レイテンシンの隠蔽や並列性の自然な抽出において優位性を持つマルチスレッド・アーキテクチャでの超並列計算機を考える場合,細粒度・高頻度で非整列なパターンの通信に対する耐性や,通信レイテンシンの短縮について相互結合方式を検討しなければならない.また一方でOSなどの運用面での検討も必要である.本論文では,まずこのような超並列向けの相互結合網の要件を整理し,次に,間接多段網のスイッチを演算ノードに置き換えて得られるサーキュラ・オメガ網の特質に着目し,その定義を一般化することにより直接網のクラスDCE(Directed Cycles Ensemble)を定義する.そして,任意のDCE網の直積を考えることで多次元に拡張できることを示し,これによって得られる結合網のクラスMDCE(Multidimensional DCE extension)を提案する.代表的なDCE網,MDCE網について直径ならびに平均距離の解析を行い,さらに,シュミレーションにより5種類の通信パターンについて動的な転送特性の測定を行った結果,本稿で想定している超並列計算機に適用する場合のMDCE網の優位性が示される.
著者
三浦 宏一 浜田 玲子 井手 一郎 坂井 修一 田中 英彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:18827810)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.21-29, 2003-07-15
被引用文献数
14

近年,マルチメディア情報を有効に活用する重要性が増すにつれ,テレビ映像の自動要約に関する研究がさかんに行われつつある.本論文では,料理映像を対象にした自動要約手法を提案し,検討する.我々は料理映像要約の目的を,調理の全体的な流れを視覚的・直感的に理解するのに十分な映像を作成することとしている.要約映像を作成する際には,映像の重要部分を抽出することが必要となるが,料理映像においては,調理動作および料理や食材の状態を示す部分が特に重要である.これらは画像全体の動きの激しさと関連があることから,オプティカルフローによりこれらの重要部分を検出する手法およびカメラワーク(パン)を除去する手法を提案し,評価実験によりその有効性を示した.さらに,この手法によって抽出された重要部分と,調理動作の中でも特に重要な繰返し動作部分から料理映像要約を生成するアプリケーションを実装した.放送局の異なる複数の料理番組に提案手法を適用し,要約映像を自動生成した結果,要約映像は十分に調理手順の内容を保ちつつ,元の映像の1/8 から1/12 の時間に短縮できた.また,自動要約した映像の一部を,番組制作者によって作成された要約映像と比較することにより,本手法の有効性を確認した.Re flecting the increasing importance of handling multimedia data efficiently, many studies are made on automatic abstraction of television broadcast video. In this paper, we propose a method to abstract cooking videos. We de fine cooking video abstraction as shrinking videos maintaining sufficient understandability of general cooking procedures visually and intuitively. To abstract a video, important sub-shot segments need to be extracted from the original video. Important segments in a cooking video are considered as cooking motions and appearances of foods, since visual information that represents essential cooking operation is exceptionally important. These segments have typical motion-related features. Thus,a method to extract such important segments referring to the intensity of motion in the image is proposed. Effectiveness of the method is shown through evaluation experiments. We also implemented an abstracted cooking video browser that assembles important segments detected by the proposed methods and repetitious motions that is especially important among cooking motions. The resultant abstracted videos were about 1/8 to 1/12 of the original videos in time, maintaining the understandability of cooking procedures. And the validity of the abstraction method was checked by comparing some automatic abstracted videos with abstracted videos provided from the broadcaster.
著者
五島 正裕 坂井 修一
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

情報漏洩は情報化社会が本質的に抱える問題であり、技術的な解決が必要である。マイクロプロセッサの制御方式を含めて情報漏洩を検討している研究は少ない。データがどのように扱われるべきかは、本来プログラムが任意に酌量することではなく、データそのものに付加されるべき属性である。その上でプログラムがデータをどのように扱うかを監視することができれば、プログラムの出所に関わらず、情報漏洩防止を実現することができる。このような情報フロー追跡は計算コストが膨大なことから、これまであまり検討がされてこなかった。我々はマイクロプロセッサの処理スループットを向上させる研究を数多く行ってきており、情報フロー追跡を利用して情報漏洩を防ぐことは少ない性能オーバヘッドで可能であると考えている。本研究では柔軟かつ堅牢な情報漏洩防止アーキテクチャの実現を目指す。すべてのデータにはどのような使用を許可するかというライセンス条件が付加される。ライセンス条件は、プログラム中のデータ処理において、ソースからディスティネーションへと伝播し、情報漏洩を検出し、プログラムを停止させることができる。本年度は、分岐によって生じる暗黙的情報フローによる情報漏洩をも防止できるプラットフォーム技術を提案した。この方式に則れば、たとえアプリケーションに脆弱性があったとしても、情報漏洩を完全に防止することができる。
著者
入江 英嗣 荻野 健 勝沼 聡 清水 一人 栗田 弘之 五島 正裕 坂井 修一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.49-54, 2006-04-07
被引用文献数
3

今日のコンピュータシステムのディペンダビリティは、多くの層に渡る多様な技術を必要とし、維持することが難しくなっている。本論文では、システムの一元的なディペンダビリティ維持を支援するプロセッサとして、一つ一つの命令実行をチェックするプロセッサモデルを提案し、必要となる機能を列挙する。更に、それらの機能を統合したときのオーバヘッドと今後の最適化を概観する。
著者
五島 正裕 坂井 修一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

SIMDは,ベクトル処理の方式として中心的な地位を占めているが,プログラマビリティに問題があり,複雑化するアプリケーションに対処することができない.本研究は,プログラマビリティと最大性能を両立することを目標とする.Switch-on-Future-Eventマルチスレッディングは,プログラマビリティを犠牲にすることなく,最大で33.5%の性能向上を達成することができる.マルチスレッディングのために生じるレジスタ・ファイルの大型化は,非レイテンシ指向レジスタ・キャッシュ・システムによって緩和することができる.シミュレーションにより,回路面積は24.9%にまで削減できることが示された.
著者
坂井 修一 五島 正裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

次世代省電力マイクロプロセッサの実現に向けて、次のような成果を得た(主な成果のみを記す)。ベースとなるマイクロプロセッサのサイクルレベルシミュレータを、チップ・マルチ・プロセッサ方式とクラスタ型スーパスカラ方式の2種類について作成した。次に、省電力要素技術として、システムレベルにおける低消費電力化技術の研究と、低消費電力のソフト・エラー対策の研究を行った。システムレベルにおける低消費電力化の要素技術として、(1)分岐予測器を利用したホット・パス検出器の開発、(2)Signatureに基づくプログラム・フェーズ検出の改良、(3)OSのサポートによるスレッドレベル並列の動的見積もり、(4)オンチップ・バスの直列化による電力削減、(5)チップ・マルチ・プロセッサの不均質キャッシュ共有などの研究を行い、それぞれ詳細レベルシミュレーションなどによって性能と省電力の両立が示され、これらの有効性が検証された。低消費電力のソフト・エラー対策として、(1)縦横パリティーを利用したキャッシュでのソフト・エラー対策、(2)連想メモリにおけるソフト・エラー対策、(3)ソフト・エラーとプロセスばらつきの対策などの研究を行い、それぞれCADによるデザインや詳細レベルシミュレーションによって、プロセッサの低消費電力化と高信頼化が両立する技術の確立に成功した。以上を総合して、次世代プロセッサにおける省電力化・高性能化の方法論を知見としてまとめあげることができた。
著者
木下 智義 坂井 修一 田中 英彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.1073-1081, 2000-04-25
被引用文献数
19

音響信号により外界の事象を理解する聴覚的情景分析に関して, 従来多くの研究がなされてきた.特に対象を音楽に絞った場合, 自動採譜等の実現を目指し, いくつかの研究例がある.その一つとして, 筆者らはこれまでに音楽音響信号を対象とした聴覚的情景分析の処理モデルOPTIMAを提案し, その実験システムを構築した.しかしながら, その認識精度は実用上十分とはいえず, その改善が課題となっている.本論文では, 従来の処理の問題点である周波数成分の重なりに対する脆弱性を改善するための新たな処理を提案する.本手法では, 周波数成分が重なったときの特徴に合わせて特徴量を分類し, それに応じて重なりのある周波数成分の特徴量を適応的に変化させ, 音源同定処理を行う.また, 各特徴量の音源同定の際の手掛りとしての重要度を計算し, 同定処理に導入した.評価実験の結果, 処理精度の向上が認識され, 提案する処理の有効性が明らかになった.