著者
福原 淳示 住友 直方 谷口 和夫 市川 理恵 松村 昌治 阿部 修 宮下 理夫 金丸 浩 唐澤 賢祐 鮎沢 衛 麦島 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement4, pp.28-33, 2008-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

15歳,女性.3歳時にWPW症候群と診断され,6歳時より動悸を自覚,7歳時に当院でカテーテルブレーション(RF)を行い,顕性の右室後中隔ア副伝導路(RPSAP)を介するorthodromic房室回帰性頻拍(AVRT)で,RFに成功した.13歳時に再度動悸を訴えた.心臓電気生理学的検査(EPS)ではISP1μg/分投与下の右室高頻度刺激で頻拍が誘発された.頻拍は減衰伝導を有するRPSAPを順伝導するantidromic AVRTであり,頻拍中の心室最早期興奮部位への通電でRPSAPの途絶に成功した.通電直後一過性に2:1房室ブロックを認めたが1:1伝導に回復したため,1分間の通電を加えRFを終了したが,その後II度房室ブロックが再出現した.約3カ月後に房室ブロックは自然に消失した.Antidromic AVRTを起こした機序として副伝導路に対する通電により,副伝導路もしくはその周辺組織に減衰伝導特性を与えた可能性が示唆された.房室ブロックを起こした機序としては,後中隔部位への通電がcompact AV nodeに影響を与えたことが考えられた.同部位へのRF時には,His束との距離のみならず,わずかな心電図変化にも細心の注意が必要と思われる.
著者
加藤 貴雄 八島 正明 髙橋 尚彦 渡邉 英一 池田 隆徳 笠巻 祐二 住友 直方 植田 典浩 森田 宏 平岡 昌和
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.5-13, 2021-02-26 (Released:2021-03-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

【背景】心電図自動診断はすでに半世紀を超える歴史があり,健診や臨床の場で広く用いられている.各心電計メーカーの汎用心電計には,それぞれ最新の自動解析プログラムが搭載されているが,その診断精度は決して十分とはいえず,実臨床の場ではいまだに専門医によるオーバーリードが不可欠である.【目的】近年,臨床的意義が高まっている心房細動を取り上げ,不適切自動診断の現状とその問題点ならびに不適切診断をもたらした要因について検討することを目的とした.【方法】有志の集まりである「心電図自動診断を考える会」会員から収集した,匿名化心房細動関連不適切診断心電図計145例について,世話人間で詳細解析を行った.【結果】①一般健康診断(会員A)における不適切自動診断は,健診心電図連続50,000例中1,108例(2.2%)に見られ,そのうち心房細動関連は54例(約0.11%,誤診43例,読み落とし11例)であった.一方,循環器専門外来(会員B)の調査では,さまざまな不適切診断連続272例中51例(18.8%)で心房細動の読み落としが見られた.②心房細動を読み落とした計62例では,f波を洞性P波と誤認したのが42例(67.7%),異所性P波としたのが5例(8.1%),心房粗動としたのが8例(12.9%),心房波を読み取れなかったのが7例(11.3%)であった.③心房細動と誤診した計83例では,洞性P波を見落としたのが38例(45.8%),異所性P波を認識できなかったのが37例(44.6%),粗動波をf波と誤認したのが8例(9.6%)であった.【結論】心房細動の不適切診断に関しては,誤診が不要な再検査や専門医受診を招く一方,読み落としによる治療の遅れが脳梗塞や心不全の発症など,重大な合併症を引き起こす危険性をもたらす.波形計測や診断アルゴリズムのさらなる改良に加え,適切な心電図所見のビッグデータを用いた人工知能(AI)の導入など,より精度の高い自動診断システムの構築が求められる.
著者
住友 直方
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.702-705, 2020-07-15 (Released:2021-07-16)
参考文献数
20
著者
桜田 春水 住友 直方 難波 研一 家城 恵子 江尻 成昭 徳安 良紀 渡辺 浩二 本宮 武司 平岡 昌和
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.18, no.8, pp.975-981, 1986

症例は74歳の女性で,頻拍の精査目的で入院した.毎分140の頻拍で,心電図上,II・III・aV<SUB>F</SUB>・V<SUB>3</SUB>~V<SUB>6</SUB>で陰性P波を呈しており,PR時間とRP時間の関係は,PR<RPであった.頸動脈洞圧迫やベラパミル静注により, 一たん, 頻拍の停止を見たが,数拍の洞収縮後,PR時間の延長なしに頻拍が再出現し持続しており,いわゆるincessant型の上室性頻拍であった.<BR>本例に,電気生理学的検査を施行した.頻拍中の心房内興奮順序は,冠静脈洞入口部が最も早期であった.頻拍中の順伝導路は,房室結節・ヒス束を利用していた.逆伝導A波を伴わない右室早期刺激にて頻拍は停止したが,洞収縮から再度頻拍が出現していた.また,頻拍中のヒス束の不応期に加えた右室早期刺激にて,心房補捉が認められた.<BR>以上より,順行性には房室結節・ヒス束を逆行性には副伝導路を利用する房室回帰性頻拍(atrioventricular reciprocating tachycardia)と診断した.逆伝導路には,著明な伝導遅延と,房室結節類似の減衰伝導の性質が認められた.<BR>この様なincessant型の房室回帰性頻拍例は,著者らの知る限りでは本邦初例と思われるので,その発生機序の考察を加えて報告した.
著者
阿部 百合子 住友 直方 大熊 洋美 福原 淳示 市川 理恵 平井 麻衣子 中村 隆広 松村 昌治 金丸 浩 七野 浩之 鮎沢 衛 陳 基明 麦島 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.2, pp.S2_64-S2_68, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
8

背景:抗真菌薬には種々の副作用が報告されている.抗真菌薬使用後QT延長に基づくtorsade de pointes(TdP),無脈性心室頻拍(VT),心室細動(VF)に対し静注用アミオダロンの効果が認められた小児例を報告する.症例:15歳,男児.再発急性リンパ性白血病(ALL)の化学療法後の骨髄抑制期間に深在性真菌感染をきたし,抗真菌薬であるアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)を投与した.L-AMBの副作用と考えられる低カリウム血症を認め,補正を行ったが低カリウム血症が続いた.その後,真菌感染の増悪を認めたため,アゾール系抗真菌薬であるボリコナゾール(VRCZ)の追加投与を行った.VRCZ投与6日後から副作用と考えられるQT延長を認め,7日後からTdP,無脈性VT,VFをきたした.抗真菌薬の副作用と診断し,薬剤を変更して,さらなる低カリウムの補正を行い,メキシレチン,プロプラノロール,ニフェカラント,リドカインを投与したがVT,VFのコントロールは非常に困難であった.その後,アミオダロン1.6mg/kgの単回静注したところ,TdP,VTは停止し,アミオダロンの持続静注を開始したところVT,VFはコントロールされた.VT,VFは消失したが,抗真菌薬の変更を余儀なくされ,真菌感染の増悪を招き死亡した.結語:低カリウム血症を認めた場合に,ボリコナゾール(VRCZ)などQT延長を認める可能性のある薬剤の使用には注意が必要である.このような場合,アミオダロンの使用には注意が必要であるが,一部の症例では有効と考えられた.