著者
大谷 哲
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.55-65, 2009

「物語」の力とは、自分で始まり自分で終わることを許さない。いまなお今日の読者が、夏目漱石『夢十夜』「第三夜」に解釈行為の足止めをくわされるばかりでなく、様々な解釈への誘惑を断ち切れずにいるとするならば、われわれは未だその<ことば>の際立ちが発揮する意味作用、この物語の既視感の真の所以を対象化しえていないためである。『夢十夜』発表同時代、文壇を席捲していたのは自然主義的な素朴実在論の潮流。奇しくも、われわれは物語世界内の「自分」からしておよそ「百年後」-「私語り」の蔓延する-「いま」にある。本論は、「第三夜」の構造論理の析出に歴史的・時代的な文脈を加味した上で、「物語」の近代性を証する試みである。
著者
大谷 哲
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.34-45, 2011-02-10

「山椒大夫」では、典拠としての説経節の残酷性や復讐譚的要素は捨象され、現代的社会政策が加味された。これには「歴史小説」としての挫折との評価、鴎外の認識の結論として、そこに歴史的批判が加えられた。その後、語り手の領域の対象化の地平が拓かれた経緯はあるものの、説経節との対立構図により硬直化した「山椒大夫」の小説としての可能性については未だ一考の余地がある。例えば「山椒大夫」を論じる際にしばしば引かれるのが柳田國男「山荘太夫考」であるが、本稿は「近代」「文学」「物語/歴史」に纏わるものとして鴎外と柳田の言説、その論理性や戦略性を再確認する観点からも発している。「伝説と歴史の関係に対する認識」の両者の位相の落差とその内実を看過すれば、「山椒大夫」の小説としての可能性も見え難くなるだろう。両言説がいかに重なり、いかに背きあうのかについての整理分析、<読み>に主要な影響を及ぼすパラテクスト的関与性として鴎外「歴史其儘と歴史離れ」の再考も要件となるが、最重要事は小説の<語り>の分析と新たな<読み>の提示にある。これは、小説のディテール、表層を支える深層構造に踏み込み、プロットをプロットたらしめている内的必然性に迫るものである。
著者
橋本 由利子 大谷 哲也 小山 洋 岩崎 基 笹澤 吉明 鈴木 庄亮
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.792-804, 2007 (Released:2014-07-03)
参考文献数
41
被引用文献数
1

目的 花粉症発症には花粉への曝露の他に様々な修飾要因が関わっていると考えられているが,その詳細は未だ十分に明らかにされていない。そこで「花粉症有り」の人の宿主要因を中心に花粉症の修飾要因を広範囲に調べることにした。方法 1993年に開始した群馬疫学コホート(こもいせ)調査結果およびその第 2 波として2000年に行った47-77歳の男女住民10,898人の生活と罹病・死亡リスクについての調査結果を利用した。既往歴の「花粉症有り」を目的変数として,その他の基本属性,生活習慣・行動,既往症,職業などの項目を説明変数として,ロジスティック回帰分析によって検討した。この分析では,性・地域・年齢で調整した。結果 花粉症の既往がある者は全回答者の17.1%であった。「花粉症の既往有り」は男性より女性の方が多く[調整オッズ比(aOR)=1.31, 95%信頼区間(CI):1.17-1.46],村より市の居住者の方が多かった(aOR=1.56, 95% CI:1.39-1.76)。40歳代より70歳代の方が花粉症は著しく少なく(aOR=0.19, 95% CI:0.15-0.24),花粉症の最近 1 年の寛解者は年齢が高くなるにつれ増加した(傾向検定 P 値<0.001)。 健康面では,「花粉症有り」は,寝つきが悪い・眠りが中断されること,および心臓病・高脂血症・喘息・消化性潰瘍・腰痛・うつ病有りとの間に有意な関連がみられた。糖尿病有りとは逆の関連がみられた。 生活面では,「花粉症有り」は,収入のある仕事をしている,サラリーマンである,仕事で精神的ストレスが多い,間食をよくする,お腹一杯食べる,食事が規則正しい,甘いものをよく食べる,日本酒・ワインを月 2, 3 回飲む,ビール・発泡酒を飲む,焼酎・ウイスキーをほぼ毎日飲む,よく長い距離を歩く,よく運動をする,よく家の掃除をする,芝居・映画・コンサートなどに行く,食料品・衣類などの買い物に行く,結婚経験がある,子どもが問題を抱えている,年収が1,000万円以上であることと有意な関連が見られた。農業従事者,たばこを吸っていること,パチンコやカラオケによく行くこととは有意な逆の関連がみられた。 過去の食生活では30歳代の頃パンを摂取したことと弱い関連がみられた。結論 花粉症の既往と生活習慣・行動など多くの要因との間に関連性がみられた。花粉症は,老年より比較的若年層に,農村より都市地域に,農業従事者よりサラリーマンに,ストレスの多いことや食べ過ぎあるいは洋風の食生活に,生活水準が高く近代化の進んだ生活により強く関係しているなど,宿主・環境に関る一群の修飾要因とその重みが明らかにされた。
著者
大谷 哲弘 木村 諭史 藤生 英行
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.127-137, 2013 (Released:2016-03-12)
参考文献数
42
被引用文献数
1

本研究では,就職を希望する高校3年生(N=1,064)を対象に,進路意思決定の際の進路選択におけるソーシャルサポートに対する知覚(以下,進路選択サポート知覚)の影響について検討を行った。重回帰分析を行った結果,「親のサポート」「先生のサポート」から進路意思決定への正の有意なパスがみられた。次に,進路選択サポート知覚の組み合わせと進路意思決定に及ぼす影響について検討を行った。その結果,進路選択サポート知覚の組み合わせとして「友人・教員知覚型」「友人・親知覚型」「全般的知覚型」「友人未知覚型」「平均的未知覚型」の5つの解釈可能な型が抽出された。さらに,進路意思決定を従属変数とした1要因分散分析を行った結果,「全般的知覚型」の者は,他のどの型の者より進路意思決定得点が有意に高かった。以上のことから,進路意思決定に対して,進路選択サポート知覚を促進することの重要性が示唆された。
著者
大谷 哲
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.14-26, 2012-03-10 (Released:2017-09-29)

現在、ポスト・ポストモダンの強い自覚と共に、「神話の再創生」を鍵語に掲げる村上春樹。製作者が、小説の「ヴァージョンアップ」によって「またひとつ違う可能性を追求してみたかった」と言うのが二一年振りに改編された『ねむり』である。読書行為においては、それは〈語り〉のヴァージョンアップであり、相関的に〈読み〉のヴァージョンアップの契機として、この小説は現前している。村上春樹の文学が世界的に読まれるようになった今日。デビュー時の七九年はもちろん、オリジナル「眠り」が発表された八九年とて、もはや同時代とは言い難い。製作者が述べるように、ストーリーで読まれることを拒絶するのが春樹文学だとすれば、従来はストーリーでしか読まれてこなかった傾きの中にある春樹文学に纏わる言説群。その研究も、一見盛況に見えて、実は〈読み〉のヴェクトルの定まらない混迷の中にあるのではないか。小説の分析をとおして、オリジナル「眠り」が同時代に担ったであろう文脈と、今日の新『ねむり』の可能性を見定めたい。さらに、そこに文学研究の「八〇年代問題」(田中実)を重ね合わせて見た時に、あらたに見えてくるものとは何か。ポストモダニズムの影響を被り、表層に止まった八〇年代。〈読み〉の根拠を原理的に問い直し、〈深層批評〉の実践に向けての認識を深めたい。
著者
大谷 哲弘 山本 奬 OHTANI Tetsuhiro YAMAMOTO Susumu
出版者
岩手大学大学院教育学研究科
雑誌
岩手大学大学院教育学研究科研究年報 = Research Journal of the Iwate University Professional School for Teacher Education (ISSN:2432924X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.85-94, 2018-03-30

本研究は,いじめ発見に資する観点に裏づけされた具体的ないじめの予兆を収集することを目的に行われた。大学生62人に対して,自由記述により,教師には見えにくい,わかりにくいいじめ発見のポイントについて回答を求めた。その結果,325項目が収集された。重複する項目を整理したところ128項目になった。内容分析を行い,いじめの態様として「能動的攻撃」「使役」「忌避」「受動的攻撃」「ストレス反応や失敗している対処およびその結果」にまとめることができた。次にこれらの態様の軸に発見の機会となる場面や学校生活上の注目すべき要点の軸を加えて2 軸でとらえ分類した。収集した項目は,従来の視点では見られなかった具体的な項目が収集できた。
著者
大谷 哲弘 山本 奬 OHTANI Tetsuhiro YAMAMOTO Susumu
出版者
岩手大学大学院教育学研究科
雑誌
岩手大学大学院教育学研究科研究年報 = Research Journal of the Iwate University Professional School for Teacher Education (ISSN:2432924X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.85-94, 2018-03-30

本研究は,いじめ発見に資する観点に裏づけされた具体的ないじめの予兆を収集することを目的に行われた。大学生62人に対して,自由記述により,教師には見えにくい,わかりにくいいじめ発見のポイントについて回答を求めた。その結果,325項目が収集された。重複する項目を整理したところ128項目になった。内容分析を行い,いじめの態様として「能動的攻撃」「使役」「忌避」「受動的攻撃」「ストレス反応や失敗している対処およびその結果」にまとめることができた。次にこれらの態様の軸に発見の機会となる場面や学校生活上の注目すべき要点の軸を加えて2 軸でとらえ分類した。収集した項目は,従来の視点では見られなかった具体的な項目が収集できた。
著者
仲座 舞姫 伊藤 大輔 小関 俊祐 大谷 哲弘 鈴木 伸一
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究
巻号頁・発行日
vol.32, pp.41-49, 2017

<p>The purpose of the present study was to examine depression and social disability among Japanese high school students who experienced the Great East Japan Earthquake and tested if cognitive behavioral factors were related to depression and social disability. Two hundred and five students (160 female, <i>M age</i> = <i>16.2 years</i>, <i>SD</i> = <i>0.4</i>) who experienced the Great East Japan Earthquake were administered the Impact of Event Scale–Revised, Center for Epidemiologic Studies Depression scale, Sheehan Disability Scale, Automatic Thoughts Questionnaire–Revised, Behavioral Activation for Depression Scale, and Environmental Reward Observation Scale(EROS). More participants had depression than post-traumatic stress disorder(PTSD) symptoms. Partial correlation analysis found that depression was positively correlated with social disability. Multiple regression analysis found that, regarding cognitive factors, "negative evaluation of the future" was positively correlated with depression and social disability, whereas "positive thinking" was negatively correlated with depression. Regarding behavioral factors, "avoidance/rumination" and "social impairment" were positively correlated with depression, "school impairment" was positively correlated with social disability, whereas EROS was negatively correlated with depression and social disability. These findings suggest that interventions to reduce depression are necessary after natural disasters. Specifically, interventions should target cognitive behavioral factors to reduce depression and improvement of social disability.</p>
著者
成田 匡大 花田 圭太 松末 亮 畑 啓昭 山口 高史 大谷 哲之 猪飼 伊和夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.513-520, 2017-07-01 (Released:2017-07-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

目的:慢性疼痛は,成人鼠径ヘルニア術後晩期合併症として認識されてきているが,その治療法は確立していない.本研究の目的は,当科にて作成したアルゴリズムを用いて難治性慢性疼痛の治療を行い,その妥当性を実際の治療成績を下に検証することである.方法:2013年3月から2016年8月の間に,術後3か月以上たっても鎮痛剤内服でコントロールできない疼痛を有する難治性慢性疼痛症例に対して当科で作成したアルゴリズムに従って治療を行った.結果:体性痛6例,神経因性疼痛4例,精巣痛1例の11症例に対してアルゴリズムに従って治療を行い,8症例で疼痛が消失した.8症例のうち5例はトリガーポイントもしくは腸骨鼠径および腸骨下腹神経ブロック注射による侵襲的内科的治療で治癒し,3例は手術にて治癒した.結語:鼠径ヘルニア術後難治性慢性疼痛の治療では,疼痛の種類(体性痛と神経因性疼痛)を診断し,積極的な治療介入を行うが重要である.当科で作成したアルゴリズムを使用することにより,複雑な病態である鼠径ヘルニア術後難治性慢性疼痛症例に対しても外科医主導で治療することが可能である.
著者
橋本 由利子 大谷 哲也 小山 洋 岩崎 基 笹澤 吉明 鈴木 庄亮
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 = JAPANESE JOURNAL OF PUBLIC HEALTH (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.792-804, 2007-11-15
被引用文献数
2

<b>目的</b> 花粉症発症には花粉への曝露の他に様々な修飾要因が関わっていると考えられているが,その詳細は未だ十分に明らかにされていない。そこで「花粉症有り」の人の宿主要因を中心に花粉症の修飾要因を広範囲に調べることにした。<br/><b>方法</b> 1993年に開始した群馬疫学コホート(こもいせ)調査結果およびその第 2 波として2000年に行った47-77歳の男女住民10,898人の生活と罹病・死亡リスクについての調査結果を利用した。既往歴の「花粉症有り」を目的変数として,その他の基本属性,生活習慣・行動,既往症,職業などの項目を説明変数として,ロジスティック回帰分析によって検討した。この分析では,性・地域・年齢で調整した。<br/><b>結果</b> 花粉症の既往がある者は全回答者の17.1%であった。「花粉症の既往有り」は男性より女性の方が多く[調整オッズ比(aOR)=1.31, 95%信頼区間(CI):1.17-1.46],村より市の居住者の方が多かった(aOR=1.56, 95% CI:1.39-1.76)。40歳代より70歳代の方が花粉症は著しく少なく(aOR=0.19, 95% CI:0.15-0.24),花粉症の最近 1 年の寛解者は年齢が高くなるにつれ増加した(傾向検定 <i>P</i> 値<0.001)。<br/> 健康面では,「花粉症有り」は,寝つきが悪い・眠りが中断されること,および心臓病・高脂血症・喘息・消化性潰瘍・腰痛・うつ病有りとの間に有意な関連がみられた。糖尿病有りとは逆の関連がみられた。<br/> 生活面では,「花粉症有り」は,収入のある仕事をしている,サラリーマンである,仕事で精神的ストレスが多い,間食をよくする,お腹一杯食べる,食事が規則正しい,甘いものをよく食べる,日本酒・ワインを月 2, 3 回飲む,ビール・発泡酒を飲む,焼酎・ウイスキーをほぼ毎日飲む,よく長い距離を歩く,よく運動をする,よく家の掃除をする,芝居・映画・コンサートなどに行く,食料品・衣類などの買い物に行く,結婚経験がある,子どもが問題を抱えている,年収が1,000万円以上であることと有意な関連が見られた。農業従事者,たばこを吸っていること,パチンコやカラオケによく行くこととは有意な逆の関連がみられた。<br/> 過去の食生活では30歳代の頃パンを摂取したことと弱い関連がみられた。<br/><b>結論</b> 花粉症の既往と生活習慣・行動など多くの要因との間に関連性がみられた。花粉症は,老年より比較的若年層に,農村より都市地域に,農業従事者よりサラリーマンに,ストレスの多いことや食べ過ぎあるいは洋風の食生活に,生活水準が高く近代化の進んだ生活により強く関係しているなど,宿主・環境に関る一群の修飾要因とその重みが明らかにされた。