著者
長井 千春 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.83-92, 2007-07-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
37

明治政府が遂行した殖産興業及び輸出振興政策において、明治20年頃迄は、陶磁器製造業が日本の在来産業の主役として重要な役割を果たした。1873(明治6)年に政府が正式に参加したウィーン万博に附随した海外伝習の結果、日本の陶磁器産業は飛躍的な成長を遂げることとなる。本稿では、陶磁器分野の最新技術習得をめざして日本から派遣された伝習生、納富介次郎、川原忠次郎、丹山陸郎の3名の研修地オーストリア・ボヘミア地方の磁器産業に焦点を当て、産地としての特徴を分析し、同地での研修の意義について考察を試みた。ドイツ文化圏の磁器産地の中でも後発のボヘミア地方は、セーブル窯、ミントン社などが競合する同時代のヨーロッパ陶磁器業界において、重830年代から優れた量産技術力で注目され、廉価な磁器製造、多様な海外需要への対応力に秀でていた。同地方はウィーン万博でも特に注目された産地の一つであった。日本政府は、既に自信を持っていた美術装飾品分野ではなく、日用品としての陶磁器量産工業技術の習得を目指し、研修地をボヘミア地方に決定したものと考えられる。
著者
近藤 祐一郎 青木 弘行 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.37-44, 1998-09-30 (Released:2017-07-21)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究は籾殻の炭化法を変化させることによって得られる性状の変化を確認し, それに基づいて稲作農村地域における水質浄化材などへの有効利活用法について探求したものである。実験では, 熱重量測定実験, 比表面積測定実験, 細孔分布測定実験を行い, 以下の知見を得た。1)籾殻燻炭は, 活性炭と比較して炭素分は少ない反面, 灰分(ミネラル分)は多い。しかし, 稲作農村地域では排水処理材の他にもさまざまな応用・展開が可能であり, 十分に利用価値のある資源である。 2)野焼き法で製造した籾殻燻炭は単位価格あたりに対する比表面積が高く, 活性炭や木炭と比べて経済的である。 3)被吸着物質に応じた細孔径を有する籾殻燻炭を, 炭化条件を変化させることにより製造することができる。 4)稲作農村地域では生活雑排水が水質汚染源であり, 野焼き法と320℃, 520℃で炭化した3種類の籾殻の併用が最も効果的である。
著者
大鋸 智 渡邊 広範 樋口 孝之 植田 憲 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.100, 2006

本研究は山形県飯豊町中津川地域をフィールドとして、草木活用の知恵を活かして自然と共生する山里の姿を現地調査および文献調査に基づき明らかにすることを目的とした。草木活用の知恵はいずれも草木を採取し、加工、利用、さらに転用、修理していくところに表れていた。利用した後は、自然に還元され、再度採取可能な一連の資源循環型の生活を表している。これは自然と共生するための一つの重要な要素である。調査より、草木を活用する知恵には、資源を上手に活用する知恵と自然に対するこころづかいを育む知恵があり、互いにしっかりと結びついたときに初めて自然との共生した生活が形成されたといえる。「こころ」や「活用の知恵」が代々、親から子へ伝わり受け継がれ、自然に対する一定の作法をつくりあげた。そして、草木活用の知恵を全て利用し、困難を乗り越え、ときには楽しみである行事が行われていた。現在、私たちの生活では簡単に見過ごされてしまっている「豊かさ」が、中津川地域ではっきりと確認することができた。今研究では、人と自然が一体となった草木活用文化を明らかにし、中津川地域の草木活用文化が生み出す「豊かさ」を提示ですることができた。
著者
山中 美沙 藤村 謙次郎 寺田 和正 小原 伸夫 宮崎 清 嘉村 聡志 小松 孝 筒井 智子 兵藤 裕貴 宮原 寿明
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.294-297, 2019-03-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
11

目的:整形外科手術は手術手袋のピンホール発生率が他の科よりも高率であるとする報告4)8)10)がある.今回,当院整形外科手術での術者と助手における手術手袋のピンホール発生状況について調査したので報告する.方法:2017年11月から2018年3月までの当院での人工股関節全置換術(THA),人工膝関節全置換術(TKA),腰椎・胸椎椎弓切除術(除圧),腰椎・胸椎椎体後方固定術(固定)における術者と第一助手(助手)の手術手袋を調査した.結果:手袋の片方でも穴あきがあれば「ピンホールあり」とした場合,術者ではTKA(100%),固定(62%),THA(35%),除圧(20%)の結果であった.部位は,術者,助手ともに非利き手の母指,示指で多かった.考察:今回の調査においては,人工物を挿入するTKA・THA・固定でピンホール発生率が高かった.手術部位感染や医療者側の感染対策において,二重手袋及び手術中の定期的な外側手袋の交換は必須の事項と考えられる.
著者
樋口 孝之 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.101-110, 2003
参考文献数
84
被引用文献数
1

今日の日本で,デザインということばは日常語として用いられている。西洋概念の受容以前に,「たくむ」「たくみ」は,デザイン行為の概念と重なる意味を含んだ日本語として存在した。本文では,その語義の形成と変遷について検討を行った。「たくむ」「たくみ」はヤマトコトバであり,もとは手わざを意味するものではなく,「考え出す」「工夫する」「計画する」という思考を意味する概念を有していた。語源は確定されないが,「手組」として理解されていたことがわかった。「たくみ」は,漢字の移入によって,「匠」「工」「巧」などの単字,「工匠」「工人」「匠者」などの熟字と対応関係を築いた。また,律令制度のなかで官職や雇役民の名称となり,職能や人の身分を示すことばとして定着した。近代以後,「たくむ」「たくみ」とも仕様される度合が減じた。日常的な話ことばにおいても,意味を代替する漢語(および漢語サ変動詞)が用いられることが顕著になったことによる。これらのことばが元来有する語義を,あらためて認識することの重要性が示唆された。
著者
宮崎 清孝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.112-124, 1980-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
81
被引用文献数
2 2
著者
宮崎 清 青木 弘行 田中 みなみ
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.72, pp.67-74, 1989-03-31 (Released:2017-07-25)

本小論は、「伝統的工芸品・椀の意匠に関する研究(1)」に続いて、日本における椀の発生と歴史的発展過程に注目し、室町時代までの椀の造形的展開について、遺跡資料および絵画史料を手がかりとして、観察と解析を行ったものである。その結果、筆者は次の諸点を明らかにした。(1)日本における漆塗椀の原型は縄文時代に誕生し、弥生時代の轆轤技術、鉄器の導入を経て、挽物としての基本的な椀の制作技術がほぼ完成された。(2)飛鳥・奈良・平安時代には、大陸の食様式の導入ならびに主食副食分離の発展と対応してさまざまな形状の椀が制作され、現代の椀の造形文化がほぼ形成された。(3)鎌倉・室町時代に入ると、漆の塗分けや漆絵などの装飾技術が発達し、椀形状のバリエーションも一層豊かになった。桃山時代には、大陸の造形文化から独立した、日本固有の椀の造形文化が確立された。
著者
王 海冬 宮崎 清 植田 憲
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.45-54, 2008-09-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

中国の少数民族のひとつであるオロチョン族は、狩猟を生業とした移住生活のなかで、きわめて特徴的な生活文化を形成してきた。なかでも、白樺の樹皮である「樺皮」を材料としたさまざまな生活用具には、彼らが長い歴史のなかで培ってきた生活の知恵が豊かに内包されている。本稿では、伝統的な樺皮活用品に関する資料の収集に基づき、機能による分類を行い、形状、材料、作り方、内容物の相互関係から、伝統的な「樺皮」を用いたものづくりの意匠特質を考察し、以下の特質を導出した。(1)白樺を不必要に伐採しないことや枯らさないための掟が遵守されており、樺皮活用品にはオロチョン族の自然と人間の「共存」「共生」を願う生活哲学・生活文化が表出している。(2)日常生活用の樺皮活用品は使い方と機能により「住」「行」「遊」「食」「衣」「業(狩猟)」「業(採集)」「神」の8つに分類される。共通する特徴は、「変形しない」「割れない」「防湿性が高い」「軽量である」「耐久性が高い」などである。(3)樺皮活用品は単に日常生活に必要で欠かせないものであるのみならず、それにはオロチョン族の人びとの審美意織や生活理念、信仰などの諸側面における象徴的意味が包含されている。
著者
趙 英玉 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.35-44, 2000-09-30 (Released:2017-07-21)
参考文献数
44
被引用文献数
2

満州族の支配下におかれた清時代には、漢民族の被服文化に大きな変容が生じた。本研究では、清時代に書かれた小説『紅楼夢』にみられる被服の記述を抽出し、清代民族文化の出会いによる新しい文化創生の物語を、被服形態と着衣観念の側面から考察した。1)被服形態における特徴 : 外出服には満州族の被服がそのまま導入されているのに対し、在宅服には満州族の被服をそのまま導入する場合と、丈が短い上衣やほっそりとした仕立ての上衣など満州族の被服特質の一部を取り入れた新しい被服が着装される場合とがある。2)着衣観念における特徴 : 漢民族の古代思想は、陰陽観念をその基本に据え、被服においても陰陽の両面から解釈された。たとえば、上衣は「〓」より高貴な存在とみなされ、貴族は「〓」を露出せず、下着としてのみ着用した。しかし、『紅楼夢』には、「〓」を表に着用する場面が数ヶ所に現われる。このことは、清代中期における漢民族の衣生活にあっては、陰陽の観念に基づいた儒教観念の影響が薄らぎ、新しい被服文化が創生されつつあることを意味している。
著者
范 以欣 田中 みなみ 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.400-401, 2000

The marriage preparation is the substance used for marriage ceremonies. The marriage preparation is arranged by a bride or her household. And it is conceived that is the foundation of a family's daily life. Based upon the field survey taken from Taipei and Tainan, the usage of marriage preparation at different eras-Japanese colonial period (1895-1945), the period of KUOMlN Administration (1946-1979) and present (1980-). Historical transition of marriage preparation has been related to their status in wedding life as well as reflecting the social circumstances at each period.
著者
頼 瓊〓 趙 英玉 田中 みなみ 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.47, pp.148-149, 2000-10-16

This is one of the results of a series study, color image survey in Asian countries. This paper reports study result of vivid, pale and dark tone color image perceived by Asian country students, including Taiwan, Japan, Korea and five cities in china. Results show that there are basic similar feelings toward different tone colors among subjects, nevertheless the Country, such as vivid color is active, pale color is passive and soft yet subtle differences exist too. The researchers assumes the former is the basic mutual color feeling and the later is the cultural influence imposed on subjects.
著者
郭 全生 宮崎 清 植田 憲
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.103-112, 2009-03-31
被引用文献数
1

本稿は、現地調査・文献調査を通して、洛陽地域南石山村における唐三彩工芸の生成から今日までの変遷を分析するとともに、唐三彩工芸を支えた職人たちの実像を明らかにしたものである。以下が判明した。(1)南石山村の唐三彩は、19世紀末の鉄道敷設工事の際に〓山で出土した唐三彩を、高氏族が瑠璃瓦焼成技術を活かして修復したのが起源である。職人たちは、墳墓から本物の唐三彩を盗掘し、その修繕ならびに複製を手がけるようになった。(2)南石山村の唐三彩職人たちは、唐三彩焼成技術を身につけたばかりか、漢代や北魏時代の出土品をも複製・鑑定した。(3)南石山村における唐三彩職人は、「家族伝授」ならびに「合作社伝授」の形態で、師徒制に基づく技術伝承を行ってきた。(4)「文化大革命」「改革開放」「計画生育」などの時代の潮流の中で、職人に対する歴史的・社会的侮蔑も相まって、村民の都市志向が急速に高まり、今日の南石山村唐三彩工芸文化は質的低下と後継者の激減に遭遇している。
著者
深澤 琴絵 植田 憲 朴 燦一 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.49, pp.170-171, 2002-11-05

This paper describes The Furoshiki (Japanese wrapping cloths) and is development. The Emakimono (Japanese picture scrolls) and some remains are regarded on the designs including functions, forms, and ways of utilizations as living tools. It is obtained : (1) The Furoshiki was initiated in the late 6th century, the Asuka period. Two kinds of design are found in the remains of the prince Shotoku. (2) The Emakimono in Nara until Muromachi era, contains varieties of designs which were tightly connected to social backgrounds and temporal rules. Beyond the difference of sexes, generations, and social positions, it has been used widely to represent feelings of prey, respect with utilities of package, transportation and ceremonies.