著者
池本 桂子 駒沢 大輔 村尾 亮子 小山 敦
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.143-147, 2011-04-15 (Released:2015-04-02)
参考文献数
4

2011年3月11日の東日本大震災後の3カ月間に,第一原子力発電所に最も近い中核総合病院である,いわき市立総合磐城共立病院(819床)の3次救命救急センターを受診後入院し,リエゾン科にコンサルトされた自殺企図症例11例(男性2例,女性9例)の臨床像を検討した。女性症例が男性の4.5倍を占め,年齢的には20歳代が6例と半数を占めた。神経症圏の20歳代女性の過量服薬(急性医薬品中毒)と自傷が多く(4例),中高齢者のケース(3例)では,縊頸・農薬服毒など成功率の高い手段が用いられていた。関連する状況と要因は,過労と家庭内トラブルの表面化(4例),異性間の問題(3例),飲酒(3例),農業・自営業の先行きと放射能への不安(3例),不眠の長期化と抑うつ(3例),不安障害・心的外傷後ストレス障害の再燃・発症(3例)など,多岐にわたっていた。昨年同時期と比較すると,自殺企図による同センター受診例は,女性の急性医薬品中毒がいずれも最多であり,既遂自殺者は,男性は1例と変化がなかったが,女性は0から4例に増加していた。
著者
梶原 都香紗 松岡 弘道 小山 敦子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.460-466, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
13

はじめに : パニック症に対するEMDR (眼球運動による脱感作と再処理法) が報告されているが, 今回EMDRを実施することなく, EMDR導入前に用いる安定化技法のみでパニック症の軽快と自己コントロール感への影響が認められた症例を経験したので報告する.  症例 : 20代女性. パニック症. 抑うつ状態. 受診時の胸のざわつき, 電車乗車時のパニック症状出現に対する不安に対し, それぞれ安定化技法の 「拡張版コンテイナー・テクニック」 を実施し, SUDs (主観的障害単位) の減少が認められた. 本人も効果を実感し, 自己にて練習することとなった. 「安全な場所」 を実施し, 新幹線にも乗ることが可能となった. 本人も自信がついたと語り, その後の心理面接では過剰適応に対する気づきが認められた.  考察 : 安定化技法は, パニック症状の軽減, 自己コントロール感の向上を促し, 過剰適応な対人関係のパターンにも影響を与える可能性がある.
著者
佐居 由美 松谷 美和子 山崎 好美 中山 久子 大久保 暢子 石本 亜希子 三森 寧子 多田 敦子 印東 桂子 瀬戸山 陽子 村松 純子 小山 敦子 岩辺 京子 森 明子 有森 直子 今井 敏子 原 瑞恵 菱沼 典子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.116-124, 2007-06

本稿は,聖路加看護大学21世紀COEプログラムの一環である『第7回COE国際駅伝シンポジウム『子どもと学ぼう,からだのしくみ』の概要を記述し,その運営実施過程を分析評価することにより,People-centered Careの構成要素について考察することを目的とする。第7回駅伝シンポジウムは,5歳児がからだを学べる方法を提示し一般市民と有意義な意見交換を行うことを目的とし,5歳児と両親,保育士や幼稚園教諭,看護師・養護教諭など5歳児にかかわる専門家を対象として開催された。シンポジウムの企画運営は市民との協働で行われた。シンポジウムは,(1)子どもが「からだを学ぶ」ための教材としてのテーマソング「からだフ・シ・ギ」の歌と踊り,(2)人間の消化機能を解説した紙芝居「リンゴがウンチになるまで」の上演,(3)子どもとからだのしくみを学ぶことについてのシンポジウム「子どもと学ぼう,からだのしくみ」から構成された。プログラムは,1プログラム20分以内とし,紙芝居・歌・踊りなどを取り入れ,子どもが飽きない工夫を行った。シンポジウムの運営実施における市民との協働過程においては,これまでのCOE活動から得られたPeople-centered Careの要素〔役立つ健康情報の生成〕〔異なる視線でのつながり〕等が確認され,「コミュニティに潜伏しているニードを湧きあがらせ(互いに確認し)顕在化させ,活動を専門家との協働へと移行し発展させる」過程を経験し,新たに〔互いに確認する過程〕という要素を見いだした。また,駅伝シンポジウムにおいて,当初,模索されていた市民との協働(2004年)が,湧きあがったコミュニティとの協働(2005年)へと視点を移し,さらに,協働が進行しているコミュニティと専門家が活動のさらなる展開を共に模索するシンポジウム(2006年)へと,市民との協働のプロセスが発展していることが確認された。コミュニティとのさらなる協働のあり様,「5歳児がからだを学べる方法」の具体的評価方法,などが,今後の課題として再確認された。
著者
前田 裕弘 松田 光弘 森田 恵 正木 秀幸 白川 親 堀内 房成 小山 敦子 濱崎 浩之 藤本 卓也 入交 清博 堀内 篤
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.118-125, 1993-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

成人T細胞白血病(ATL)患者の血清を健常人の末梢血単核細胞(PBMC)に添加し,そのPBMCのCD 3抗原の発現を観察した. CD 3抗原の発現が低下している急性型ATL患者の血清を添加したときのみ健常人PBMCのCD 3抗原の発現が低下した.しかし, CD 3抗原の発現が正常の慢性型ATL血清では,この現象はみられなかった.同様の結果が細胞培養上清添加時にもみられた.細胞培養上清をSephacryl S-200を用いて分画し,健常人PBMCのCD 3抗原を低下させる活性を分子量40-60 kDの分画に認めた.各種抗サイトカイン抗体を用いた中和実験および各種サイトカイン添加実験より,この可溶性因子が既知のサイトカインとは異なる因子と考えられた.この因子が臨床的に急性型ATLに認められ,くすぶり型および慢性型ATLに認められないことより, crisisに関与している可能性も考えられた.
著者
松岡 弘道 村上 佳津美 小山 敦子
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of center for clinical psychology Kinki University (ISSN:21868921)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.3-17, 2014-11-01

[要約] 心療内科で扱う心身症の患者によくみられる特徴に, (1)失感情症, 失感情言語化症 (Alexithymia) : 自分の内的な感情ヘの気づきとその言語表現が制約された状態, (2)失体感症(Alexisomia) : ホメオスターシスの維持に必要な身体感覚 (空腹感, 満腹感, 疲労感など)への気づきが鈍い傾向, がある. このために過剰適応となり, 様々な身体の不調をきたす心身症ヘと発展していく. したがって, 心身症治療の中心は, これらの病態--「心身相関」への気づきを促し, 患者自身に新しい適応様式を獲得してもらい, セルフコントロールできるようにすることである. 代表的な心理療法として, 自律訓練法, 交流分析・ゲシュタルト療法, 認知行動療法について概説するとともに, 日本ではまだあまり知られていないが, 最近, 筆者らが渡独し, 開発者から直接研修を受けたオートノミートレーニングについても詳述する. 近畿大学では, 今後, 幅広い患者ヘ心身医療を提供していく.
著者
高瀬 徹 小山 敦弘 内田 武
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.858, pp.17-00489-17-00489, 2018 (Released:2018-02-25)
参考文献数
8

In order to design a rotating shaft, it is necessary to investigate the fatigue characteristics under the variable amplitude loading by using a rotating bending fatigue machine. However, the stress amplitude cannot be changed frequently in a commercial rotating bending fatigue machine. Therefore, the automatic loading apparatus was manufactured in order to perform the fatigue test under the repeated two-step variable amplitude loading by using the commercial rotating bending fatigue machine. In this apparatus, the load was changed by loading or unloading the weight using air pressure. The high stress amplitude and the low stress amplitude were alternately applied to the specimen in the rotating bending fatigue test under repeated two-step variable amplitude loading. Rotating bending fatigue tests were performed using heat-treated 0.45%C steel specimens. Before the fatigue tests, the performance test of the automatic loading apparatus was conducted and it was found that the apparatus was available for fatigue tests. Next, the fatigue tests under the repeated two-step variable amplitude loading were carried out based on the results in the Hi-Lo two-step loading fatigue test and then the cumulative fatigue was investigated. The total fatigue lives to failure of low stress amplitude under the repeated two-step variable amplitude loading are almost same as lives under the Hi-Lo two-step loading, but they have the longer lives as the low stress amplitudes decrease. Finally, the life prediction method for the specimens subjected to repeated two-step variable amplitude loading was proposed. The results estimated based on the proposed method were in good agreement with the experimental ones.
著者
西山 ゆかり 小山 敦代 岡田 朱民 糀谷 康子 新田 利子 岩郷 しのぶ
出版者
四條畷学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2014年の全国調査において、「看護におけるCAM/CAT 」とは、目の前で苦しむ対象者の痛みを緩和し・癒し・心とからだの安らぎを生み出し、その人らしさを維持し、人生を豊かなものにするために、対象者自らが意思決定し、自らの力でよりよく生きることを支えることが看護におけるCAM/CATの機能であることが明らかになった。この全国調査を元に、次の段階である、より具体な実践内容・現象から補完代替医療/療法を概念化するために、質的研究に取り組んでいる。本年度は、インタビューを2名行った。この2名から芋ずる式サンプリング法にて次の研究対象者をリクルートしている。現在7名の方が本研究に賛同し、同意を得て、日程調整中である。これら研究対象者の内訳は、臨床で補完代替医療/療法を実践者している看護職者3名、看護教育の場で、補完代替医療/療法を教育に取り入れている、研究している、大学教員7名である。データの偏りがないように、臨床での看護実践者と教育者が同数になるように現在リクルートしている段階である。その他の研究活動としては、日本看護科学学会学術集会で「自然の回復過程を調える看護の探究ー統合医療における看護の位置づけを求めて」の交流集会において、今まで明らかにしてきた、補完代替医療/療法の認知度や実践状況、補完代替医療/療法についての看護職者の考えを報告し、会場の方と「統合医療(補完代替医療/療法を含む)において看護が果たすべき中心課題である「自然の回復過程」を調える視点から、看護師の身体ツールと全人格的なアプローチの可能性に関して、討論した。
著者
藤本 真記子 坂江 千寿子 佐藤 真由美 上泉 和子 角濱 春美 福井 幸子 木村 恵美子 小山 敦代 杉若 裕子 秋庭 由佳
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.321-329, 2005-12-28

看護における新しい考え方、方法の普及速度に差が見られることから、普及に関する影響要因を検討する目的で、全国47都道府県から規模別に抽出し、調査協力が得られた141施設の看護部責任者及び各施設10名のスタッフに質問紙調査を行った。看護部責任者、スタッフそれぞれに質問紙を作成し、個人の属性、施設の状況に加え、革新性(知的興味、上司の姿勢など普及に影響すると考えられるもの)に関する質問に4段階の尺度で回答を得、返送された看護部責任者の有効回答124部、ナースの有効回答886部を対象に、属性と革新性との関係を分析した。その結果、看護部責任者で、「新しいことを取り入れ広める時、チームや委員会を組織する」「リーダークラスの看護師に根拠を説明する」「学会や看護協会などの情報を活用する」などで平均得点が高く、「降格人事をしている」が低かった。スタッフは、「研修の参加者は、内容を伝達し広める使命がある」「病棟では協力体制がある」「病棟責任者は積極的に研修を勧める」などで、低い項目は、「新しいことを取り入れるのは提案者が誰かによる」「新しいものを受け入れにくい理由として『時間がとれない』『面倒だ』と感じることがある」「病棟責任者は『トラブルは引き受けるから』という姿勢である」などであった。属性との関係では、「研修伝達の使命感」は、学会・研修参加回数、講読雑誌数が多い群が高く、20代が低かった。「面倒、時間がない」は、高い年代の群がやや高かったが、全体として低い点数であり、研修伝達と同様、看護者としての使命感が強く自覚されているのではないかと考えられた。学会・研修会、雑誌など、情報へのアクセスと革新性の関連が確認でき、これを普及にうまく活用していくことの重要性が示唆された。
著者
坂江 千寿子 秋庭 由佳 上泉 和子 佐藤 真由美 藤本 真記子 福井 幸子 木村 恵美子 角濱 春美 小山 敦代 杉若 裕子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.341-348, 2005-12-28

看護師がイノベーションと認識し、かつ、研究的根拠が明白な看護技術の採用程度とその看護師が所属する看護部の組織的要因との関連性について探求することを目的に、病床数規模別に無作為抽出した看護部責任者141名、及び、各病院10名のスタッフナース計1410名を対象に調査した。スタッフには根拠のあるイノベーティブ看護技術22項目について、E.M.Rogersの普及決定過程における段階モデルを用い質問し採用度を算出した。責任者には、個人的特性の他、雇用状況、研修費用、病院の管理運営会議への参加、研修機会、情報収集の手段、地域交流、専門看護師の勤務形態等、24項目の組織特性を質問し、返送された127部(90.1%)中、有効回答124部、スタッフナースの有効回答886部を分析対象とした。その結果、イノベーティブ看護技術の採用度と看護部の組織特性の関連では、「専門看護師や認定看護師の配置」*、「病院機能評価をうけている」*、「教育・研究機関の併設」**、「院内教育プログラムやセミナーの公開」**、「院内情報ネットワークの整備」*、「文献検索手段としてのインターネットの利用」*、「院外研修の伝達共有の場」**の質問項目で、有意な関連が認められた。さらに、「看護部の意志決定を委員会に委譲することがある」*、「専門性の高い看護師の勤務形態の工夫」***という回答は、組織特性であると同時に、その組織特性を形成する責任者個人の特性としても解釈でき、改めて、看護部責任者の姿勢の重要性が明らかになった。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001