著者
畑山 満則
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

災害のイメージを共有し,災害後の対応も含めたリスク・コミュニケーションを実現にするため,災害想定下での訓練として各地で盛んに行われている防災訓練が有効であると考える.現状の防災訓練では,災害想定自体が参加者にとってわかりにくいものであり,さらに長期にわたって固定化されている場合が多いため,有効なリスク・コミュニケーションにつながりにくい状況にある.本研究では,この災害想定から住民参加型で行うことを提案する.このためには動的なシミュレーションと,その時空間での分析が必要となる.そこで,従来のGISでは対象とされていなかった動的なオブジェクトの記述と,時空間での接続関係のハンドリングを可能にし,さらに,複数の災害想定をパラレルワールドとして書き込める時空間GISの開発を目的とし以下の研究を行った.1)時空間地理情報スキーマの定義と概念モデルの構築空間スキーマ,時間スキーマについては,国際標準化がすでになされているが,時空間スキーマに関しては未だ検討段階である.時空間スキーマの理論的考察を行い,時空間情報の概念モデルを構築した.2)時空間接続関係のデータベースへの記述形式とソフトウエアへの実装1)での研究結果をうけて,時空間スキーマを構成する重要な要素である時空間の接続関係について,課題抽出を行った.3)時空間地理情報データ構造:KIWI+に関する考察時空間GISを構築するためのデータ構造として,提案しているKIWI+フォーマットに関して,上記の1)2)の結果を踏まえた見直しを行い,実装上の課題に関する知見をまとめた.
著者
田中 裕美子 前川 喜久雄 石田 宏代 入山 満恵子 柴 玲子 兵頭 昭和
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

H21年度は、これまでに作成した発話誘発課題を用いて文法習得を評価するための具体的な指標を構築し、さらに、臨床像を掘り下げるために新しい発話誘発法を作成し、検討を試みた。1.ナラティブのミクロ構造指標の構築と躓きの判定成人(10名)、学童(10名)、幼児(10名)の「カエルの話Frog,where are you?」(Mayer,1969)の再生発話の分析に用いてきた構造指標T-unitに加え、従属節などのComplexity指標や、語の総数や異なる語数などのproductivity指標を加えるとともに、5人の分析者が95%の一致を認めるためのトレーニング作業を行った上で、ナラティブ再生発話を分析した。その結果、学童期から発話に関係節や従属説などの複雑指標が増すこと、また、productivityは幼児<学童<成人となり、文法発達の躓きを判定するための指標が得られた。2.受動態・使役態文を誘発する課題を用いた文法の問題特性の解明臨床家が印象として持つ「文法の問題」とは具体的にどういうことかを検討するために、斎藤氏の構文検査(試案)を応用し、複数の言語発達障害児から受動態・使役態文を誘発した。その結果、学齢期になっても受動態・使役態文を構成する際に、動詞の活用に音韻の誤りもしくは不確かさが認められる場合、文法の問題に音韻が介在する可能性が示唆された。また、構造化された誘発課題では受動態・使役態文が言えるが、ナラテイィブの中ではできないなど、文脈によるパフォーマンスの違いが明らかになり、日常の場面で使用できるかどうかを確認するための誘発方法を作成することが今後の課題である。最後に、人物の特性や状況を加味した受動態・使役態の理解課題を考案し、健常児・障害児への実施を行い、表出できないときの背景を探り始めた。
著者
田中 完爾 木室 義彦 山野 健太郎 平山 満 近藤 英二 松本 三千人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1759-1770, 2005-09-01
被引用文献数
20

ロボットが作業環境内における自己位置を推定するために, 安価かつロバストなランドマークが望まれる. 本論文では, このような要求を満たすものとして, RFIDタグを利用する自己位置推定法を提案する. 従来の位置推定用RFIDシステムでは, 空間配置が既知のタグを用いたり, 各タグに位置情報を記録したものが多い. これに対し, 本手法では, オフィスや家庭などでユーザが多目的に使用するタグを想定し, タグの配置が不規則かつ未知の場合を対象とする. タグの発信時刻や発信強度のばらつき, 障害物による電波遮へい, 不測のタグの配置変更などの不確かさのもとで, タグの信号と自己位置との関係をサポートベクタマシンを用いてロバストに学習する方法を示す. また, 提案した自己位置推定法を利用して, ユーザがタグに関する専門的な知識を必要とせずに, 最適なタグ配置作業を行うための方法を提案する.
著者
森垣 孝司 九郎丸 正道 金井 克晃 向山 満 本道 栄一 山田 純三 アグングプリヨノ スリハディ 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.773-779, s・iii-s・iv, 2001-07
被引用文献数
14

ジャワオオコウモリとコキクガシラコウモリの精上皮周期を光学顕微鏡下で観察し, 両種の精子形成における特徴を比較した. ジャワオオコウモリでは精上皮周期は11ステージに分類され, 精子形成は13ステップに区分されたのに対し, コキクガシラコウモリでは精上皮周期は10ステージに, 精子形成は13ステップに区分された. また, 形態にわずかな違いが見られるものの, 両極の先体の形成における特徴は非常によく似たものであった. ジャワオオコウモリではステップ7以降で先体が徐々に伸長, 扁平化し, 最終的にスコップ状の形になるのに対し, コキクガシラコウモリではステップ8以降に先体が伸長, 扁平化してわずかに退縮し, 精子放出直前には先体が細長いへらのような形になった. この両種で見られた先体の伸長と扁平化は食虫目の動物種でも認められており, この特徴は翼手目と食虫目の近縁性を反映するものだと推測された.