著者
佐藤 実 山口 敏康 中野 俊樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

水産加工品および加工原材料の多くを世界各地から輸入している我が国では、原産地での安全性確保に力を注ぐべきである。安全性を確保することの一歩として、諸外国水産物の品質を把握するため、我が国に輸出実績のある諸外国、フィジー、中国、フィリピン、タイ、カンボジア、オランダ、ドイツ、ノルウェー、ペルー、アメリカ、ポルトガルに直接出向いたり、取り寄せたりして水産物(魚類)とその加工品を入手し、ヒスタミンを分析した。平成15年度から平成18年度までの4年間に216検体を分析した。分析した全試料216検体中40検体で、魚粉を除いた試料210検体では34検体でヒスタミンが検出された。ヒスタミン検出率はそれぞれ18.5%、16.2%であった。高濃度のヒスタミンが検出された検体は、オランダの新鮮マグロ(1,439ppm)、タイの塩蔵品(1,964ppm)、フィリピンの鰹節(1,530ppm)であった。それらの魚およびその加工品を摂取すればほぼ確実にヒスタミン食中毒を発症すると考えられた。その他、ドイツ、オランダ、タイ、カンボジア、フィリピンの検体から100〜1,000ppmの範囲でヒスタミンを検出した。それらも大量に摂取した場合、ヒスタミン食中毒を発症する可能性が高いと考えられた。今回の調査結果は各国で経年的に報告されたヒスタミン中毒例を裏づける結果であった。ペルー産フィッシュミールでは全ての試料でヒスタミンが検出された(ヒスタミン検出率100%)。本調査研究では、世界各地で「魚類の化学的危害因子ヒスタミン、ヒスタミンチェッカーによる簡易・迅速測定法」の講演と、ヒスタミンチェカーのデモンストレーションを行い、漁業、水産加工従事者にヒスタミンに関する情報を提供し、魚類ヒスタミン管理に役立てるための啓蒙活動を行った。本調査研究により、水産物の品質管理の重要さ、ヒスタミンによる魚類品質管理の実践などを提案した。安全な水産物供給を実現するために大きく貢献したと考える。
著者
日本産業衛生学会アレルギー免疫毒性研究会 土橋 邦生 吉田 貴彦 森本 泰夫 上田 厚 伊藤 俊弘 和田 裕雄 香山 不二雄 佐藤 一博 佐藤 実 柴田 英治 菅沼 成文 竹下 達也 角田 正史 西村 泰光 柳澤 裕之 李 卿
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-8, 2023-01-20 (Released:2023-01-25)
参考文献数
22

健康障害は遺伝要因,環境要因,および両者のinteractionで説明される(Genetic and Environmental interaction),職域における健康障害はinteractionも含めて,環境要因の関与が重要である.と考えられる.その代表的疾患の一つとして職業性喘息が挙げられるが,同疾患は,「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン(日本職業・環境アレルギー学会)」により診療の標準化が推進された.本ガイドラインによると,作業関連喘息は職業性喘息と作業増悪性喘息に分類され,さらに,職業性喘息は感作物質誘発職業性喘息と刺激物質誘発職業性喘息に分類される.診断は,まず,作業関連喘息の可能性を疑い就業に関連した問診を実施することが重要であり,そのうえで必要に応じて原因の可能性がある物質を用いた吸入試験を含めた複数の検査結果を基に総合的に判断を下すことになる.治療は,喘息薬物療法に加えて職場環境整備と防護具装着あるいは配置転換等による曝露回避を行う.さらに,災害補償や労災補償に関する社会的リソースの活用も検討を要する.近年,産業技術の発展の結果,新たに人工的に合成された低分子化合物が開発され呼吸器感作性について未知の物質が利用され,あるいは感作性を持つ既存の物質が新たな用途に供されることによるアレルギーが問題となり始めている.例えば,イソシアネートは,NCO基を有する化合物の総称であり,以前より職域における刺激性や喘息様症状等の健康障害が問題として認識されていたが,近年,イソシアネートの用途拡大により日常生活の場でのアレルゲンとしてイソシアネート喘息の原因となることが明らかになりつつある.一般に低分子量化合物は自己蛋白質と結合するため,IgE抗体を特異的に検出することが困難となるが,イソシアネートは例外的に検出可能である.そしてイソシアネートによるアレルギーの事例は,今日の新規化合物への曝露,あるいは既知の化合物の新たな用途による予想外の曝露がもたらす感作と症状誘発する未知のアレルギー反応を含めた様々な健康障害の問題点を啓示している.こうした事実は,作業関連喘息の診断に至る最初の過程である原因物質への曝露と就業状況との関連を「疑うこと」で問診しようとする着想を困難にすると予想される.その解決策として,職域における環境曝露に誘発されるアレルギー,免疫,毒性を機序とする健康障害を扱う領域の研究を遂行するためには,エピゲノムを含む遺伝要因に着目した疫学的アプローチなど多様な研究展開が求められる.
著者
加藤 貴彦 佐藤 実
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.20005, 2020 (Released:2020-11-05)
参考文献数
69
被引用文献数
1

Immunity, which denotes the protection of multicellular organisms against various bacterial and viral infections, is an essential protective mechanism for living organisms. Allergy is a reaction to a foreign substance existing in the environment that is basically not a component of the self. Additionally, autoimmune diseases are associated with the dysfunction in the recognition of self and non-self, and are pathological conditions caused by immune cells attacking their own tissues and cells. In this paper, we outline the current status of immunity with respect to the environment from the epidemiological perspective with regard to the following: (1) evolution and immunity, (2) allergy, (3) autoantibodies, (4) autoimmune diseases, (5) relationships of immunity with the environment, allergy, autoantibodies, and autoimmune diseases, and (6) celiac disease.
著者
佐藤 実
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.82-90, 1990-02-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
23
被引用文献数
4 6
著者
下田 元 佐藤 実 城戸 幹太 猪狩 俊郎 岩月 尚文
出版者
The Japanese Society of Reanimatology
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.18-21, 2004-02-20
被引用文献数
2

術前の内科的心循環器系機能評価で特に異常を認めない患者の顎口腔再建術中に, 発作性に心室性頻拍が発生し心室細動に移行した。胸骨圧迫心マッサージを継続しながら電気的除細動を繰り返したが奏功しなかった。リドカイン, エピネフリン, アトロピンなどの薬剤併用にも反応せず蘇生し得なかった。病理解剖学的診断の結果, 特に右室に著明な菲薄化・拡張を認め拡張型心筋症の病態を呈していた。潜在していた心筋障害が, 薬剤・DCショックに反応性を示さなかった致死性不整脈発生の原因と考えられた。<BR>潜在性の病的心筋に対する内科的評価の限界を痛感させられ、無症候性症例の術前のリスク評価方法が当面する課題であると思われた。
著者
丸山 恵理 佐藤 実 小松 博史 澁谷 斉 清水 力
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.55-63, 2016-01-25 (Released:2016-03-10)
参考文献数
19

症例は65歳男性。2011年5月特発性心室細動の診断で植込み型除細動器(ICD)を装着し社会復帰。2012年9月自宅で突然意識消失,10数秒後に意識回復するも,ICD植込み後初の意識消失であったため入院。12誘導ホルター心電図により心室細動とICDの作動が確認された。心室細動のトリガーとなる心室期外収縮は左脚ブロック上方軸であり,このことから起源を右室下壁と推定し,アブレーションを施行した。さらに治療前後に12誘導ホルター心電図で認めた心室期外収縮について連結期と先行RR時間によるプロット解析を試みた。治療前後で回帰直線を比較すると勾配が明らかに異なり,治療効果の判定に有効であることが判明した。また,連結期/先行RR時間比を時間軸に並べることにより次の事が明らかとなった。本症例の心室細動発症前2時間には,さらにその前2時間と,心室細動発症後2時間に比較して,先行RR時間が有意に長く,かつ,連結期/先行RR時間比が有意に小さい心室期外収縮が繰り返されていた。先行RR時間の延長により再分極相に不安定要素が生じ,次の連結期/先行RR時間比が小さいことにより受攻期への刺激が続き,受攻性が高まり,心室細動発症に至ったのではないかという発症機序を推察した。更なる症例の集積と解析が望まれる。
著者
水田 文子 猪狩 俊郎 安田 真 水田 健太郎 城戸 幹太 下田 元 佐藤 実 高橋 雅彦
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.24-30, 2005-06-30

歯科診療室においては, 患者が厚着していることが多いため, 裸腕に代えて脱衣せずに利用できる血圧測定方法がないか, 健康成人40人に対し, オシロメトリック式自動血圧計を用いて検討した。着衣の状態や測定部位は, 上腕裸腕, ワイシャツ, 薄手のセーター, 薄手のセーターを捲り上げ, 厚手のセーター, 厚手のセーターを捲り上げ, ジャケット, 裸腕前腕, 下腿とした。その結果, ワイシャツやワイシャツに2mm程度のセーターの重ね着程度ならば, 裸腕の血圧測定に代えて利用できることが明かとなった。着衣での頻回あるいは長時間におよぶ血圧測定は望ましくはないが, 健康成人で日常の歯科診療室における血圧測定には十分に利用できるものと考えられた。一般に着衣の上からの測定は駆血に要する圧が高めとなるので測定値が高く出, セーターなどを捲りあげての測定では低くなると言われているが, オシロメトリックメトリック方による測定では必ずしもそうとは限らなかった。
著者
榊田 希 佐藤 実佳 貫洞 里美 鹿島 かおり 島田 慎一 石井 里枝
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.151-157, 2022-08-25 (Released:2022-08-30)
参考文献数
32

埼玉県内の市販国産鶏肉および市販国産豚肉を対象として,Campylobacter jejuni/coli,サルモネラ,腸管出血性大腸菌(EHEC),腸管毒素原性大腸菌(ETEC), Yersinia enterocolitica,Escherichia albertiiによる汚染状況を調査した.カンピロバクターは鶏肉の35.7%(60/168検体),豚肉の7.3%(14/190検体)から検出された.鶏肉においてはC. jejuniが優勢であり,豚肉においてはC. coliが優勢であった.サルモネラは鶏肉の58.1%(100/172検体),豚肉の19.9%(41/206検体)から検出された.検出率の高い血清型は,鶏肉由来株においてはS. Schwarzengrund,豚肉由来株においてはS. Typhimuriumの単相変異株であった.EHECは鶏肉82検体および豚肉124検体からは検出されなかった.ETECは鶏肉の0.6%(1/160検体),豚肉の2.4%(5/206検体)から検出された.Y. enterocoliticaは鶏肉83検体からは検出されず,豚肉の9.3%(18/193検体)から検出された.特にタンの検出率が21.0%(13/62検体)と高かった.E. albertiiは,鶏肉49検体,豚肉59検体からは検出されなかった.鶏肉はカンピロバクターおよびサルモネラによる汚染率が高いこと,また豚肉はカンピロバクター等に加え,ETECおよびY. enterocolitica血清型O3により汚染されていることが確認された.
著者
中野 孝教 荒矢 大輔 飯田 史哉 石本 達成 伊戸 康清 猪嶋 清文 今村 智子 江川 勇飛 小澤 弘幸 帰山 寿章 片瀬 靖規 酒井 元哉 佐藤 実 澤田 誠司 下島 浩平 野田 博幸 松田 智幸 松本 高志 山田 明弘 山田 佳裕 山下 勝行 岡野 修 岸本 圭祐 勝見 尚也 山中 勝 城間 吉貴 大河内 博
出版者
日本地学教育学会
雑誌
みんなの地学 (ISSN:24356441)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.10-15, 2020-06-30 (Released:2021-12-02)
参考文献数
10

人間社会は岩石や水,生物,大気などの様々な自然資源を開発し利用することで発展してきたが,それに伴い環境は変化し時に汚染や災害など生存にかかわる問題を引き起こしてきた.地学は持続可能な社会を支える必須な学問であるにもかかわらず,高校地学の履修者は少なく,教師も研究者も減少している.人間と自然の関係は複雑だがシームレスにつながっており,共に地域的な多様性に富むという特徴がある.地球環境研究は社会変革につながる学際研究,大学は地域貢献,自治体は地域創生が求められるようになってきた.ここでは健全な水循環の実現に向けて,大学と小学校が連携しながら,地域性が強い水資源を観測・調査している福井県大野市の例を紹介し,生徒の環境リテラシーの向上と地学研究を協働して推進する地学教育の可能性を考えてみたい.
著者
佐藤 実 佐藤 美和 土屋 靖彦
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1605-1608, 1981
被引用文献数
2

In the strongly acidic amino acid fraction of the muscle extract of abalone <i>Hariotis discus hannai</i> several acidic ninhydrin positive substances were detected by paper electrophoresis and paper chromatography. They were purified by ion exchange chromatography. One of them, which gave a yellow color with ninhydrin reagent and a blue color with isatin, was obtained as colorless crystals. Its chemical structure was established as L-pyrrolidine-2, 5-dicarboxylic acid (IV) by means of mass, NMR, ORD and IR spectrometries. IV has only been found in a red algs <i>Shizymenia dubyi</i> but not in animal tissues until now.
著者
佐藤 実
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.371-402, 2000-12

The purpose of this paper is to put into some kind of logical order blockprinted editions of the early Qing period scholar Liu Zhi 劉智's Tian-Fang Dian-Li 天方典禮 and Tian-Fang Zhi-Sheng Shi-Lu 天方至聖實錄 that were transmitted to Japan and examine the conditions under which the Islamic works written by Muslims of the late Ming / early Qing period were circulated and handed down.The oldest extant edition of Tian-Fang Dian-Li was published by Yang Fei-lu 楊斐菉 in 康煕 49 (1710) and that of Tian-Fang Zhi-Sheng Shi-Lu was published in Cheng-du 成都 by Huan-chun-tang 還淳堂 in 道光 7 (1827).There are three different extant editions of Tian-Fang Dian-Li: the Tong Guo-xuan, Dian-nan 滇南 and Jiang-zhang-tang 絳帳堂 editions. There was also a Huan-chun-tang edition, as seen in a preface by Huan-chun-tang's Ma Da-en 馬大恩 appearing in the Dian-nan and the Bao-zhen-tang 寶眞堂 Huang-chun-tang edition.There are two different editions of Tian-Fang Zhi-Sheng Shi-Lu: The Huan-chun-tang and Zhen-jiang Mosque editions. The list of Islamic literature contained in the Tong-zhi 同治 13 / Guang-xu 光緒 1 (1874) printings of the latter is important for knowing about publication of that genre during the late Ming / early Qing period.After many Islamic works written by Muslims at that time were published by Ma Da-en in Cheng-du during the Dao-guang 道光 era (1830s and 40s), similar publication continued during the Tong-zhi era (1860s) in Yunnan 雲南, and then by Yuhaiting 余海亭 in Cheng-du. Therefore, in southeast China, the publication of Islamic books followed a route from Cheng-du to Yunnan, then back to Cheng-du, with Ma Da-en playing the pioneering role.In addition, Islamic works preserved in Zhen-jiang and Guang-dong 広東 became very valuable after the loss of many books due to the Muslim risings of the Tong-zhi era.Finally, the author points out that there is no evidence that the works of Liu-Zhi were published or printed by either the Shan-xi 陝西 or Shan-dong 山東 Schools.
著者
奚 印慈 山口 敏康 佐藤 実 竹内 昌昭
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.310-316, 1998-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
12
被引用文献数
8 15

ステビア茎粗抽出物は強い抗酸化活性を示した.その活性は抗酸化指数で葉に比べ5倍程度高く,現在ほとんど利用されていない茎の新たな利用価値を提示した.ステビア抽出末はマイワシ油およびリノール酸に対して100ppmの添加で抗酸化効果を発現した.その効果は同濃度のBHT,α-Tocに匹敵する強さを示した.ステビア抽出末はα-Tocおよびクエン酸を併用することにより抗酸化効果が増強された.ステビア抽出末の抗酸化有効成分は主として透析外液(分画分子量500)に存在した.外液濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー.薄層クロマトグラフィーで分画し,複数の有効画分を認めた.その多くは,ポリフェノール化合物であったが,最も強い効果を示した成分にはカリウムが高濃度で存在した.