著者
右田 正澄 丸山 仁司 山本 澄子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.138-142, 2020-04-01 (Released:2021-04-15)
参考文献数
16

脳卒中患者の短下肢装具装着に着目して,装具の種類と身体機能が装着時間に影響しているのかを明らかにするために本研究を実施した.生活期の脳卒中患者19名に対して,Shoe Horn Braceと継手付短下肢装具,Gait Solution Design (GSD)の3種類の短下肢装具を用いて装着時間を測定した.利き手による影響を確認後,Brunnstrom Recovery Stageごとに各装具の装着時間を算出した結果,継手付短下肢装具が最も装着時間が短く,装具の足関節の可動性の有無と下腿ベルトの位置が装着時間に影響していることが示唆された.GSDは装着のために時間を要し,使用する際は装着指導も必要であった.
著者
田中 惣治 本島 直之 山本 澄子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11359, (Released:2018-06-07)
参考文献数
23

【目的】片麻痺者の麻痺側膝関節の動きによる歩行パターン分類を基に,歩行パターン別に歩行各相の割合が短縮,もしくは延長するかを調べ,その運動学・運動力学的要因を分析した。【方法】回復期片麻痺者121 名を対象とし,三次元動作分析装置と床反力計を用いて歩行を計測した。【結果】歩行パターンにより違いがみられた時間因子は単脚支持期と前遊脚期時間であった。前遊脚期時間はこの時期に膝関節が十分屈曲するかが重要となり,足底屈モーメントによるPush off の減少が膝屈曲角度の低下に影響している。特に荷重応答期に膝関節が過伸展する歩行パターンは,前遊脚期で膝屈曲モーメントが大きく膝関節が屈曲しにくくなり,前遊脚期時間が延長するのが特徴である。【結論】片麻痺者の歩行パターンにより前遊脚期時間に差がみられ,その運動学・運動力学的要因は歩行パターンで異なることが明らかになった。
著者
井川 達也 勝平 純司 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-38, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
17

〔目的〕高齢者と若年者の平地歩行・階段昇降動作時の筋の同時活動の筋電図学的相違を分析し,その要因を明確にすることとした.〔対象〕高齢者と若年者を各々14名とした.〔方法〕筋電計測の対象はヒラメ筋,前脛骨筋とした.床反力計および表面筋電計を用い,平地歩行・階段昇降動作中に計測された位相ごとの筋活動を分析し,高齢者と若年者との間で比較した.〔結果〕歩行立脚後期および階段昇降の全周期において,高齢者は若年者に比べ前脛骨筋活動量が有意に高値を示した.〔結語〕高齢者は前脛骨筋活動量を増大させ,足関節の剛性を高めていることが示唆される.
著者
山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.3-10, 2002 (Released:2002-07-24)
参考文献数
3
被引用文献数
16 4

3次元動作分析システムを用いて1名の片麻痺者(下肢Br.stage 4,発症後18週)の歩行を計測し,結果を正常歩行と比較しながら片麻痺歩行に共通した特徴について述べる。計測項目は,体重心の動き,麻痺側と非麻痺側の床反力,関節角度,関節モーメント,関節パワーである。正常歩行では両脚支持期に低い位置にあった体重心が単脚支持期に向けて上昇していくが,片麻痺者の麻痺側接地時にはこの動きが見られない。これは麻痺側の接地時に足関節背屈筋と股関節伸展筋の活動が正常に行われないことが原因と考えられる。これらのことから,非麻痺側から麻痺側への体重移動の重要性について考察した。
著者
朝原 早苗 山本 澄子
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
福祉工学シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.17-20, 2006

本研究は手動車いす駆動時の重心位置計測を試み、その妥当性を検証することを目的とした。8名の非車いす使用者を対象とした。三次元動作分析装置及び床反力計を使用し、平地・上り勾配条件でそれぞれ前後4種類の車軸位置で静止時・駆動中の動作計測を行った。車いす-身体合成重心位置(COG)を運動学的モデルを使って算出した。静止坐位において前後方向成分のCOG計算値とCOP値は非常に高い相関を示した(r=.99、p<.05)。COP値とCOG値の誤差は平均約4mmであった。静止時及び平地駆動時の車軸-COG間距離(AX-COG)は車軸の前方移動に伴い、各被験者とも有意に減少した(p<.05)。しかし、上り勾配駆動時は車軸位置間のAX-COGの有意差は示したが平地に比べると被験者によるばらつきが若干あり、車軸位置前方移動に伴ってAX-COGが減少しない例もみられた。上り勾配駆動では平地駆動より大きな姿勢変化が要求され、誤差が大きくなる傾向が示唆された。
著者
本島 直之 関屋 昇 山本 澄子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11570, (Released:2019-09-28)
参考文献数
34

【目的】立位での大腿拳上運動は日常生活動作と密接な関わりがある。そこで,立位大腿拳上運動を三次元的に解析し,大腿挙上,骨盤傾斜および体幹運動の関係と,それらへの加齢の影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人20 名(若年者,高齢者各10 名)とし,運動課題は静止立位と立位からの片脚大腿拳上運動とした。三次元標点計測により体幹傾斜,体幹屈曲,骨盤傾斜,大腿傾斜角度および骨盤と体幹の位置を,床反力計測により足圧中心位置を求め,それらの関係を検討した。【結果】立位姿勢は両群に差は認められなかった。骨盤後傾,骨盤側方傾斜および体幹前屈運動は若年者,高齢者ともに大腿挙上角度に対して一定の割合で直線的に増大し,その割合は高齢者において小さかった。【結論】立位での大腿挙上運動における体幹・骨盤・大腿リズムの存在と加齢の影響が明らかとなり,大腿挙上運動を評価する際に体幹も含めて行う必要性が示唆された。
著者
平野 博文 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.335-339, 2020 (Released:2020-06-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

〔目的〕座位上肢リーチ動作の際の重心移動・殿部~下肢の床反力や胸郭~骨盤角度を運動学・運動力学的に分析し,その特性を明確にすることである.〔対象と方法〕若年健常者20名とした.座位姿勢で前方方向へ右手を伸ばす課題を行った.開始姿勢から目的物把持姿勢までの重心位置・床反力上下成分・体幹角度や骨盤角度の変化量を計測した.〔結果〕目的物の方向へ重心移動を行っていたが,床反力は非リーチ側の殿部へ留めて動作を行うことがわかった.角度の変化量では胸郭角度は,前傾・右側方傾斜・左回旋,骨盤角度は,前屈・右側方傾斜・左回旋,骨盤胸郭相対角度は前傾・右側方傾斜・左回旋とほとんどが共通した結果となった.〔結語〕健常者の前方リーチ動作は,非リーチ側殿部の床反力変化量を残存させながらそれらを基盤とし,動作戦略が図られることが示唆された.
著者
石井 慎一郎 山本 澄子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0515, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】膝関節は屈曲位から伸展する際にスクリューホームムーブメント(以下SHM)と呼ばれる外旋運動が受動的に起こる.SHMの詳細な運動動態については個人差や加齢による変化,靭帯の弛緩性による影響など,依然として不明な部分が多い.そこで本研究では生体膝の自動運動下におけるSHMの動態特性を明らかにするため,三次元運動計測により,SHMの加齢変化を調べた.【方法】対象は本研究に同意した下肢に既往の無い20~79歳までの成人男性26名,女性 33名の計59名とした.計測課題は,股関節と膝関節が90度屈曲位となる端座位からの膝屈伸自動運動とした.開始肢位より膝関節のみを自動的に完全伸展位まで伸展させ,再び開始肢位まで戻す動作を連続して10回行わせた.膝関節の三次元運動計測には,Andriacchiらが考案したPoint Cluster法(以下PC法)を用いた.被験者の体表面上のPC法で定められた所定の位置に,赤外線反射標点を貼り付け,課題動作中の標点位置を三次元動作解析装置VICON612(VICON-PEAK社製)により計測した.得られた各標点の座標データをPC法演算プログラムで演算処理を行い,膝関節の屈伸角度,回旋角度,ならびに大腿骨に対する脛骨の前後方向移動量を算出した.各被験者の10試行のデータから, Tokuyamaの報告した最小二乗法に基づいた位相あわせによる平均化手法を用い各被験者の平均波形を抽出した。得られたデータから,各被験者の膝最終伸展位における脛骨の回旋角度ならびに脛骨の前後移動距離を調べ,年齢との関係をSpeamanの相関係数を算出して調べた.統計学的有意水準は危険率p<0.05とした.【結果】膝最終伸展位における脛骨の外旋角度は,年齢が高くなるにつれ小さくなる傾向にあった(p>0.05).60歳以上の被験者では27名中14名の被験者が内旋位になっていた.また,脛骨の前後移動距離と年齢との間には統計学的有意差は認められなかったが,60歳以上の被験者を対象に,脛骨の回旋角度と前後移動距離との関係を調べたところ,脛骨が内旋する被験者では脛骨の前方移動距離が大きくなる傾向にあった(p>0.05).【考察】60歳以上の被験者で,SHMが逆転し脛骨の内旋運動が起きる被験者が多く観察されたのは,加齢変化に伴う靭帯の緊張状態の変化の影響によるものと考えた.ま,SHMが内旋する被験者では,脛骨の前方移動が大きいという結果からも,何らかの原因で脛骨が前方へ変位し,それが原因となって伸展に伴い脛骨が内旋すると考察した.SHMの逆回旋は,関節の伸展運動を制限し,関節の安定化にも重大な問題を引き起こす.変形性膝関節症の有病率が60歳以上で急激に多くなること,SHMの逆回旋が60歳以上で多く見られるようになることに因果関係が存在する可能性が考えられた.
著者
江戸 優裕 柿崎 藤泰 山本 澄子 角本 貴彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2115, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 体幹は身体質量の50%以上を占め(松井1956)大きな慣性を有することから、その運動が動作に与える影響は小さくない。それを裏付けるように、体幹の特異的な運動が腰痛や下肢の整形外科的疾患に結び付くことや、動作の効率性を損ねる要因になり得るという主張は散見される。 体幹運動の中でも特に回旋に関する報告は多く、古くから様々な知見が得られている。しかし、それらのほとんどは三次元的に生じる体幹運動から回旋角度のみを抽出して分析したものであり、回旋に伴う副次的な運動を含めて分析した研究は少ない。臨床的には体幹の回旋動作に側屈等が伴ってくることで、あたかも骨盤に対して胸郭が前後左右に並進してくるような動きを呈することが多い。また、物理学的にも剛体の運動は回転と並進で表わされるため、体幹運動についても回旋のみでなく、並進を加えて分析することによって、より本質的な動態を把握できるものと考える。 そこで、本研究では体幹の回旋に伴って生じる骨盤に対する胸郭の並進運動を計測し、若干の知見を得たので報告する。【方法】 対象は健常成人12名(男性8名・女性4名、平均年齢25.8±4.1歳)とした。 計測課題は静止立位と、立位での身体回旋動作とした。回旋については左右交互に4回ずつ、一定速度で無理のない範囲で行った。計測には三次元動作解析装置VICON-MX(VICON PEAK社製)を使用し、両側のASIS・PSIS・烏口突起、そして第1胸椎棘突起の計7点に貼付した赤外線反射標点の三次元位置座標を計測した。得られた標点の位置データから、骨盤に対する胸郭の相対的な回旋角度と、左右・前後への並進量を算出した。尚、並進については骨盤の局所座標系(両ASISの中点と両PSISの中点を結ぶ線の中点を原点とする)に胸郭中心(両烏口突起の中点とT1を結ぶ線の中点)を投影させて算出した。 そして、回旋方向別にXを回旋角度[°]・Yを並進量[mm]とする散布図を求め、更に最小二乗法により一次方程式に近似した。得られた直線の傾きを、回旋に伴う並進の割合を示す並進率(並進量/回旋角度)として分析に使用した。 統計学的分析における検定方法については結果に記した。尚、有意水準は全て5%とした。【説明と同意】 対象者には研究の主旨を口頭で説明し、参加に同意を得た。【結果】・体幹の回旋に伴って、回旋とは反対方向への胸郭の並進が生じた(側方並進率-0.58±0.44)。また、回旋に伴い前方への胸郭の並進が生じた(前方偏位率0.42±0.31)。これらの並進率は、例えば10度の体幹右回旋に約6mmの胸郭左方並進と4mmの前方並進が伴うことを意味する値である。・回旋動作における側方並進率と前方並進率の関係において、ピアソンの相関係数を求めた結果、有意な正の相関が認められた(p<0.05・r=0.46)。・静止立位での体幹肢位(回旋側及び側方偏位側)により分類した右回旋動作と左回旋動作における並進率の比較について、対応のあるt検定を用いたところ、前方・側方共に有意な差は認められなかった。【考察】 体幹の回旋動作は純粋な軸回旋運動ではなく、回旋とは反対方向及び前方への胸郭の並進が伴う運動であることを確認した。 また、前方並進と側方並進は相関関係にあり、互いに補完的に生じていることが示唆された。つまり、回旋時に対側並進が大きければ前方並進は小さく、逆に前方並進が大きければ対側並進は小さいという関係にあることが分かった。このことは、臨床において対側並進と前方並進のどちらか一方の動きに対して介入を加えることで、他方の動きをコントロールできる可能性があることを示唆していると考える。こうしたアプローチの妥当性に関しては、今回の分析に含めていない骨盤・胸郭の傾斜等が結果への交絡となっている可能性もあるため、更なる検討が必要である。 立位時の体幹肢位と回旋動作時の並進率については、今回は一定の関係を認めなかったが、建内ら(2010)は立位姿勢と体幹回旋可動域には関連があることを報告している。このことから、立位時の体幹肢位は動作時の回旋量の指標にはなり得るが、回旋に伴う胸郭の並進を反映するものではないことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 体幹の回旋動作は、臨床的にも研究的にも回旋角度のみを指標とされる場合が多いが、実際には前後左右への並進を伴う三次元運動である。そして、副次的に生じる前方並進と側方並進の間に一定の関係が認められたことは、体幹運動の評価にとって有益な情報であると考える。
著者
田邉 紗織 渕 雅子 山本 澄子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0271, 2008 (Released:2008-05-13)

【はじめに】脳卒中片麻痺患者の歩行において、麻痺側立脚期の短縮は揃型歩容を呈する原因の一つとなる。今回、脳卒中片麻痺患者1症例について、約1ヶ月間の経過の中で揃型から前型に至るまでの歩容を経時的に計測し、力学的側面から考察を加えたので報告する。【方法】対象は脳梗塞(右被殻)により左片麻痺を呈した69歳女性。発症後116日目以降2週毎に計3回、独歩での自由歩行を三次元動作解析装置(VICON MX13 カメラ14台)、床反力計(AMTI社製)6枚を用いて計測し、1歩行周期の重心、前後方向床反力(以下Fy)、下肢の各関節角度とモーメント(以下M)、パワー、及び歩行速度、cadence、step lengthを算出した。同時に初期時と4週目にFugel-Meyer-Assesment(以下FMA)を用いて身体機能を評価した。【結果】FMAは初期時162点、4週目は164点であった。歩容は2週目まで揃型を呈していたが、4週目以降前型へと変化し、歩行能力も杖歩行軽介助から杖歩行見守りへと漸次改善した。歩行速度とcadenceは初回0.46m/秒、111.43歩/分、4週目0.45m/秒、96.4歩/分であり、麻痺側下肢のstep lengthも経時的に増加を認めた。歩行時の身体重心は初期時に上下へ大きくばらついた動揺を認め、非麻痺側へ変位していたが、振幅は経時的に収束し、非麻痺側への過剰偏倚も消失した。麻痺側立脚期のFyは終始後方成分を呈していたが、4週目にはその最大値が減少しており、同時期の非麻痺側下肢において前方成分の減少も認められた。麻痺側足関節は初期接地(以下IC)で底屈位を呈し、荷重応答期(以下LR)にかけて底屈Mで遠心性の筋活動が認められたが,4週目にはICの底屈角度が減少していた。麻痺側膝関節ではICで屈曲位を呈し,屈曲Mで求心性の筋活動が認められたが,経時的に屈曲Mは減少していった。麻痺側股関節では、ICで屈曲位を呈し、LRにかけて屈曲Mで遠心性の筋活動が認められたが、4週目には屈曲Mが減少していた。麻痺側骨盤帯はLRにかけて後方回旋と前遊脚期から遊脚初期の挙上が減少した。【考察】本症例の初期時の歩行は、麻痺側ICの過剰な足関節底屈と股関節屈曲による前足部接地により、LRの股関節、膝関節屈曲Mの増大が生じ、代償的な骨盤帯の後方回旋によって身体重心の前方推進が阻害され、結果的に揃型歩容を呈していたものと考えられた。そのため、遊脚期において代償的な骨盤挙上による下肢の振り出しが要求され、非麻痺側下肢の過剰なFy前方成分と身体重心の上下動揺を生じていたと思われた。4週目においては、麻痺側ICにおける足関節底屈及び股関節屈曲角度の減少が認められたことにより、LRにおける股関節、膝関節、及び骨盤帯の過剰な後方回旋に改善が得られ、円滑な前方への推進が可能となったと考えられた。
著者
肥田 直人 石井 慎一郎 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.815-818, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
9

〔目的〕本研究では,ランニングにおける前足部接地と後足部接地の推進特性の違いを調べた.〔対象と方法〕対象は健常成人18名.三次元動作解析装置を用いて前足部から接地したランニングと,後足部から接地したランニングを計測した.〔結果〕後足部接地では立脚期に重心前方移動が大きく,前足部接地では遊脚期に大きかった.後足部接地では立脚前半における床反力鉛直成分が大きく,前足部接地では立脚後半における床反力鉛直・前方成分が大きかった.後足部接地では,立脚前半に大きな後方への回転力が生じた.〔結語〕後足部接地では衝撃を減らすことで前に進み,前足部接地では地面を強く蹴ることで前に進むという特性がみられた.
著者
仲保 徹 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.697-701, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
18
被引用文献数
13 12

〔目的〕脊柱後彎が胸郭運動に与える影響を明らかにするため,前かがみ座位による脊柱後彎位で,3次元動作解析装置を用いて吸気に伴う胸郭の運動を測定した。〔対象〕対象は健常成人14名とした。〔方法〕深呼吸時の胸郭運動を体表に貼付したマーカーの変位量にて測定し,直立座位と前かがみ座位の2姿勢の比較を行った。〔結果〕その結果,腹側の上位胸郭の運動が直立座位に比べ前かがみ座位で有意に少なかった。〔結語〕脊柱後彎位では,上位胸郭の吸気に伴う前上方への運動が制限されることが明らかになり,換気障害の1要因になりえることが示唆された。
著者
斎藤 均 萩原 章由 北川 敦子 小川 明久 溝部 朋文 石間伏 彩 金子 俊之 福王寺 敦子 熊木 由美子 阿部 成浩 渡邉 沙織 尾﨑 寛 前野 豊 山本 澄子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B0701, 2008

【目的】我々は,三次元動作解析装置を用いて,片麻痺者の立ち上がり動作を主に重心・COPの左右方向の動きと麻痺側・非麻痺側の荷重に着目し分析を行ってきた.今回,過去に94回測定した中から,同一測定中に立てたときと,立てなかったとき(離殿したものの立ちきれずに座っていた台に殿部をついてしまうこと)があった6例を対象に,この動作の成否における重心の動きを,床反力鉛直成分との関係から明らかにすることを目的とする.<BR>【方法】<対象>左片麻痺・男性5名,右片麻痺・女性1名.随意性Br.StageIII:3名,IV:2名,V:1名.(全例,本研究の主旨を説明し同意を得た)<測定条件>下腿長に合わせた台からの上肢を使用しない自由な立ち上がり動作.<測定装置>三次元動作解析装置(Vicon512),床反力計(KISTLER社製).<解析項目>重心の左右方向の動き,両側の床反力鉛直成分(Fz).立てたとき(成),立てなかったとき(否)の重心・Fzを比較・分析した.<BR>【結果】開始から離殿までの重心の左右方向の動き:(否)では開始位置より非麻痺側方向が2例,4例は麻痺側方向.(成)では1例を除き開始位置より非麻痺側方向.この1例は開始位置で非麻痺側にあった重心が離殿時,麻痺側方向(ほぼ正中)に動いた.離殿時の重心位置(開始位置を0とする):各対象の(否)と(成)の比較では,(成)では上記1例を除き離殿時の重心位置は,(否)より(1.4,2.7,3.6,3.7,4.2cm)非麻痺側方向であった.離殿時のFz:静止立位の麻痺側・非麻痺側の合計を100とした時のFzの値を(麻痺/非麻痺側)で示す.<U>(否):(成)</U>,<U>(47/55):(45/59)</U>,<U>(45/55):(26/79)</U>,<U>(34/71):(33/76)</U>,<U>(48/63):(49/66)</U>,<U>(37/71):(40/72)</U>,<U>(35/60):(29/81)</U>.各対象の(否)と(成)の比較では,(否)では麻痺側Fzは4例で大きく,また,非麻痺側Fzは全例で小さかった.<BR>【考察】離殿時の重心の動きを左右方向から見ると,(成)では非麻痺側方向であった.(否)では概ね直進か麻痺側方向であり,そのまま動作が継続すると麻痺側に能力以上に荷重しなければならなくなり,非麻痺側の力も十分に使えず立つことは困難である.また,離殿時,重心が麻痺側方向であった例は,ほぼ正中での離殿となり,非麻痺側の力も弱く麻痺側の力も使わないと立てなかった症例と考える.今回の対象のような立ち上がり動作に成否があり,麻痺側下肢の支持能力が不十分な段階では,非麻痺側方向に重心を動かし,非麻痺側に多く荷重をして立つほうが動作の失敗が少ないといえる.また,立てたときではFzが非麻痺側で大きかったことから,非麻痺側からのさらなる力が加わることで,重心が上方に向かい立ち上がることができたと考える.<BR>