著者
波多野 元貴 鈴木 重行 松尾 真吾 後藤 慎 岩田 全広 坂野 裕洋 浅井 友詞
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100755, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 スタティック・ストレッチング(static stretching:SST)は、柔軟性の改善をもたらすとされ、臨床場面やスポーツ現場などで広く用いられる。他方、SST後は最大発揮筋力や単位時間あたりの筋力発揮率であるrate of force development(RFD)などに代表される筋パフォーマンスの低下が生じるため、最大限の筋力発揮を要するパフォーマンスの前にはSST実施を避けるべきであるとする報告が多い。また、SST後の筋パフォーマンス低下の要因のひとつとして、筋電図振幅の減少など神経生理学的な変化が報告されている。SST後の発揮筋力や瞬発的なパフォーマンスの変化を検討した先行研究を渉猟すると、少数ながらSST後に動的な運動や低強度・短時間の等尺性収縮を負荷することで、筋パフォーマンスの低下を抑制できる可能性が示唆されている。しかし、SST後の運動負荷による筋パフォーマンス低下抑制と神経生理学的変化の関連性について比較検討した報告はない。よって、本研究はSSTおよびその後に行う低強度・短時間の等尺性収縮が最大等尺性筋力、RFDおよび筋電図振幅に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】 被験者は健常学生7名(男性4名、女性3名、平均年齢21.4±1.0歳)とし、対象筋は右ハムストリングスとした。被験者は股関節および膝関節をそれぞれ約110°屈曲した座位をとり、等速性運動機器(BTE社製PRIMUS RS)と表面筋電計(Mega Electronics社製ME6000)を用いて測定を行った。評価指標は6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮時の最大等尺性筋力、筋収縮開始時から200 msec間の時間-トルク関係の回帰直線の傾きであるRFD、等尺性収縮中の内・外側ハムストリングスの筋電図平均振幅(root mean square:RMS)とした。実験は、まず6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行い、15分間の休憩の後、膝関節を痛みの出る直前の角度まで伸展し、300秒間保持することでハムストリングスに対するSSTを行った。その後は、直ぐに6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行う場合(SST群)、または30%maximum voluntary contraction(MVC)の強度で6秒間の等尺性収縮を行った後に6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行う場合(SST-30%MVC群)のいずれかを行い、被験者はこの2種類の実験をランダムな順番に行った。統計処理は反復測定2元配置分散分析および対応のあるt検定を行い、有意水準は5% とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験は本学医学部生命倫理審査委員会および共同研究施設倫理審査委員会の承認を得て行った。被験者には実験の前に実験内容について文書及び口頭で説明し、同意が得られた場合のみ研究を行った。【結果】 最大等尺性筋力は、SST群では介入後に有意に低下し(介入前:64.5±19.7 Nm、介入後:57.0±18.7 Nm)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:63.9±20.3 Nm、介入後:65.70±19.8 Nm)。また、介入方法と介入前後との間に交互作用を認め、両群の介入後の値に有意な差を認めた。RFDはSST群で介入後に有意に低下し(介入前:238.5±61.6 Nm/msec、介入後:160.0±63.8 Nm/msec)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:215.0±88.5 Nm/msec、介入後:194.7±67.3 Nm/msec)。また、外側ハムストリングスのRMSは、SST群で介入後に有意に低下し(介入前:280.0±92.3 μV、介入後:253.9±97.0 μV)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:270.6±62.3 μV、介入後:258.9±67.1 μV)。内側ハムストリングスのRMSは、両群とも介入前後の値に有意な差を認めなかった。【考察】 本研究結果より、SST後には最大等尺性筋力、RFD、外側ハムストリングスのRMSの低下が生じるが、SST後に低強度・短時間の等尺性収縮を負荷することで、これらの低下を抑制できることがわかった。先行研究にて、筋活動が低下した状態で30%MVCの等尺性収縮を負荷すると、筋紡錘の自発放電頻度が増加することが示されている。本研究では外側ハムストリングスのRMSの変化が最大等尺性筋力およびRFDの変化に同期していることから、SST後に低下した神経生理学的な興奮性が等尺性収縮の負荷によって高まり、筋パフォーマンス低下が抑制されたものと推察する。【理学療法学研究としての意義】 本研究から、理学療法士がスポーツ現場でウォームアップとしてSSTを行う際に危惧してきた筋パフォーマンス低下が、低強度・短時間の等尺性収縮により抑制できる可能性が示唆された。理学療法士が頻繁に行うSST効果に関する基礎的データの集積は、理学療法介入の科学的根拠に基づく理学療法介入の確立・進展につながるとともに、有効なSST実践に向けた方法論構築に寄与するものと考える。
著者
安達 拓 吉野 克樹 北目 茂 猪飼 哲夫 林 雅彦 後藤 慎一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D3P2522, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】呼吸筋機能は腹部臓器を初め身体各臓器重量の作用方向の影響を受け、これが体位による換気メカニクスの違いとなる.我々はこうした体位による呼吸筋メカニクスの違いを利用して呼吸リハビリに応用する方策を検討しているが、今回主要吸気筋である横隔膜の体位を利用したトレーニング法を検討するため頭低位における横隔膜機能を調べた.【原理】横隔膜筋力強化法として従来吸気回路に粘性抵抗を負荷する方法や腹壁に砂嚢などの重し袋を載せて呼吸するいわゆるabdominal pad法がある.一方腹腔内臓器重量は横隔膜筋力に対して、立位では補助的に作用し横隔膜収縮力を軽減するが、仰臥位では拮抗的に作用し横隔膜にとっては負荷となり、頭低位では腹部重量が横隔膜に対して腹壁に載せた砂嚢と同様の働きをする.【方法】本研究に同意が得られた健常成人を対象として、ティルトテーブルを利用し臥位(0°)より各10°間隔でー30°まで頭低位姿勢をとり各角度で測定した.測定パラメーターは、ニューモタコメーターによる一回換気量・気流量.また胸部および腹部に装着したインダクタンスプレスチモグラフ(レスピトレース)による胸・腹壁の動きからrib-cage volume.(Vrc)abdominal volume(Vab)Chest wall volume(Vcw)を測定しiso volume法にて補正後、Konno-Meadダイアグラムでchest wall configurationを解析した.胃・食道バルーン法により食道内圧Pesと腹腔内圧Pgaを測定し経横隔膜筋力Pdi(=Pga―Pes)を計測した.比較対象として仰臥位でabdominal pad法(0kg~2kg)行い同パラメータを検討した.【結果】頭低位では換気運動においてVrcに対してVabの寄与度の割合が多くなり、FRCの低下が認められた.換気量に対する横隔膜出力(ΔPdi/ΔV)は-10°以下で増大した.同様にabdominal pad法ではΔPdi/ΔVは砂嚢1.0~1.5kg重量から増加した.【結論】臨床的にabdominal pad法で用いられる1.0kg加重による横隔膜負荷は頭低位-10°~-20°で達成され、この程度の頭低位姿勢では自覚症状は見られず呼吸を維持できた.頭低位姿勢を利用した横隔膜トレーニング法の可能性が示された.
著者
小沢 聖 桑形 恒男 藤巻 晴行 一柳 錦平 登尾 浩助 後藤 慎吉 徐 健青
出版者
独立行政法人国際農林水産業研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

この原因を解明するとともに、この地下水を有効に利用する栽培システムを開発することである。東北タイの落水水田の土壌水の同位体比(δ18O/δ16O)は、深さ50cmで0時と12時に低下し、深さ70cmでは逆に0時と12時に増加する日変化を示した。この結果は、水蒸気態で深さ30-50cmの土壌水分が0時と12時ころ増えることを示唆する。作物根を深く伸ばすことで12時ころ上昇する土壌水を有効に利用でき、この方法として、溝栽培、穴栽培が有効なことを、石垣、東北タイの圃場実験で証明した。落水水田に存在する地下水は周辺の地下水とは独立しており、雨期に凹地に蓄積されたローカルな資源であった。したがって、その場の落水水田で有効に利用することが望ましい。深さ50cm を対象に、水フラックスを計算したが、水蒸気態による移動は極めてわずかと推察され、水移動の原因、フラックスの解析法等を再検討する必要がある。
著者
根本 幸人 後藤 慎弥 金井 敦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.3, pp.55-60, 2009-01-15

近年,多様に変化し,膨大に増加し続ける Web ページの中で,価値ある情報が埋没する問題が出てきている.その中で, Web ページ間の link 構造を利用した従来の Web ページ評価手法だけでは必ずしも欲しい情報が得られなくなっている.そこで本稿では, Web ページ評価のために, Web ページ間の link 構造だけでなく,ユーザ, Web ページ及びそれらの関連情報を考慮したモデルを提案する.また,本モデルを用いて,実際のソーシャルブックマーク上で Web ページに対して付加されているタグを利用してユーザおよび Web ページの評価値を算出し,本モデルの性質を明確化する.Useful Web page is buried under huge number of Web pages which keep increasing explosively in recent years. Evaluation methodologies of Web pages, which are used at present based on link structure between Web pages, unfortunately do not work very well. Therefore, social bookmark services where bookmarks are shared and grouped using tags become popular. In this paper, a Web page evaluation model is proposed. The model consists of users of Web and related information as well as link information. Then, evaluation values of Web pages based on the model are calculated using actual Web pages and characteristics of this model are clarified and discussed.