著者
野上 道男
出版者
The Association of Japanese Geographers
巻号頁・発行日
pp.100009, 2014 (Released:2014-03-31)

中国史書によれば2世紀末に倭国に「乱」があり、それを契機に卑弥呼が国王に共立された、という.日本の歴史における古代はここに始まると見て良いであろう.結論を先にすると「倭国乱」は冷夏による2年続きの飢饉で起きた社会不安と食を求める民衆の流浪が実態であり、戦乱ではない.冷夏の原因はタウポ火山(NZの北島)の大噴火である. 以下の項目について、検証した(ここでは内容の詳細は省略).1)氷床コアの記録: 2)中国史書の記録:3)古事記・日本書紀の記事: 崇神7年は豊作だった.豊作で2年続きの「疾疫」が治ったのであるから、それが栄養失調症であったことをうかがわせる.さらに崇神12年の条には天皇が回顧して言う言葉の中に「寒さ暑さ序を失えり.疾病多に起こりて、百姓災を蒙る」とある.つまり疾疫が農と関係する栄養失調症であり、その原因は異常気象であったことがさらに明確に述べられている. 伝染病の大流行によって土地を捨てる流民は発生しないだろう.食を求めて「百姓流離」と解釈する方が自然である.魏志韓伝の同時代にも、後漢が植民地支配していた楽浪郡の郡県から韓人の流民が起こったとの記事がある.中国の黄巾の乱(民衆蜂起)や流民の発生は凶作飢饉が原因である.民衆は課税の対象である水田を捨て、冷夏に強いドングリなどの果実が豊富でヒエ・アワなら稔る落葉広葉樹林帯に疎開したのであろう. 非農業人口が多く稲作依存率が高い地方(弥生時代の先進地域、すなわち九州地方北部)ほど冷夏飢饉の影響は深刻だったはずである.クラカタウ火山大噴火による宣化元年(536年)の飢饉の際にも、各地の屯倉の米を那の津(博多港)の倉庫に集めるよう、勅令が出されている.
著者
前島 郁雄 鈴木 啓介 田上 善夫 岡 秀一 野上 道男 三上 岳彦
巻号頁・発行日
1987 (Released:1987-04-01)

本年度は、3年間の研究計画の最終年度であり、研究成果をまとめると以下の通りである。1.全国19地点の日記の天候記録をもとに、1771-1840年の70年間について、夏季4ケ月(6〜9月)の毎日の天候分布図を完成した。次に、北海道を除く全国を5つの地域に区分し、各地域毎に降雨の有無の判定を行なった。降雨の有無を1と0とで表現し、その組み合せから、全32タイプの天候分布型を設定して毎日の天候分布型の分類を行なった。その結果を天候分布型カレンダ-としてまとめた(成果報告書参照)。2.一方、現在の天候デ-タを用いて、上記と同様の方法で1975〜84年の10年間について、天候分布型の分類を行なった。気圧配置型については、吉野ほか(1967、1975、1985)による分類法を若干修正して用いることにした。各天候分布型に対応する日の気圧配置型を集計して、両者の対応関係を検討した。その結果、一つの天候分布型に対して必ずしも一義的に気圧配置型が対応しないことが明らかになった。3.最終的に、次の手順で気圧配置型の復元を試みることにした。(1)歴史時代の毎日の天候分布図を作成し、上述の方法で32通りの天候分布型に分類する。(2)現在の観測デ-タに基き作成した各天候分布型に対応する前線と高低気圧・台風中心位置の合成図を参考に、ワ-クシ-トを作成する。ワ-クシ-トには、想定される概略的な前線と高低気圧の中心位置を書き込む。この場合、連続性や高低気圧の移動速度等を考察する。(3)完成したワ-クシ-トをもとに、毎日の気圧配置性を吉野らによる分類法にしたがって復元する。本研究では、実際に1783年(天明の飢餓年)の6〜7月の気圧配置型の復元を試みた。
著者
野上 道男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.86-101, 1981-02-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
40
被引用文献数
3 1

平野(1966a)によって提案されたモデル, ut=auxx+buxを河川縦断面形の発達過程に適用し,土砂流量 J=-(aux+bu)の面から検討を加えた.上の2階偏微分方程式は移流を伴う拡散過程を表わす式でもある.高度(拡散問題では濃度に相当)を構成するすべての粒子がブラウン運動を行なっているとするか,あるいは土砂流量が勾配に正比例するということを前提として認めるか,このいずれかであれば地形発達過程を(移流のない)拡散過程でアナロジーすることができる.上に凹である河川縦断面形において,上の式の拡散項が堆積を表わし,移流項が侵蝕を表わす.移流項による土砂の流れはその方向が勾配の向きとは逆であり(拡散流はもちろん順方向),移流に相当するものとして,高度に比例するような流量を生じさせるどのような強制力を想定すればよいのか,地形的あるいは物理的解釈が難しい.このように拡散相当項については大きな仮定または前提があり,移流相当項についてはその強制力が何であるか特定できないなど,モデルとしての物理的根拠が薄弱であるという欠点がこの数学モデルにはある.しかし,数学的な形式は整っておりその定常解が,河川の平衡縦断面形として最もふさわしい指数曲線, u=C1+C2 exp(-rx) (ただし, r=b/a; C1, C2……定数)になるという大きな利点がある.そこで,このモデルを多摩川の段丘発達のシミュレーションに適用してみた.段丘面の縦断面形については寿円(1965b)のデータを用い,武蔵野面のそれを初期条件とした.境界条件としては定点である上端の土砂流量で与えることが望ましいのであるが,そうすると問題が不適切となるので,定点の勾配を時間の関数として指定することにした.下端は河口にとったが,河口における勾配一定という条件のもとで,海面高度を時間の関数で指定するという方法によった(自由境界値問題).係数a, bと平衡縦断面形の形状係数rの間にはr=b/aという関係があるが, aまたはbの値は現在の平衡土砂流量の推定値から計算で求め,各時代のaまたはbの値はこの値を基準にしてシミュレーションをくりかえし,平衡土砂流量が不合理な値とならないような値を選んだ. シミュレーションの結果は良好で現実の河川縦断面形の発達をよく表現することができた.たとえば,最上流部のfill-strathing,更新世末の中上流部における古い面へのoverflow,下流部における海面低下に起因する谷地形の形成,後氷期の海面上昇による溺れ谷地形の形成,そして最近7,000年間の堆積の進行による河口の前進などがうまく表現されている.
著者
西川 治 田村 俊和 太田 勇 新井 正 氷見山 幸夫 野上 道男
出版者
立正大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993 (Released:1992-04-01)

本総括班の主たる任務は、本研究の領域全体にわたる研究推進上の企画と運営、および各班間の連絡と調整、ならびに研究成果の公表等にある。平成5年度の具体的事項を以下に示す。1.総括班会議を1回、計画研究班長会議を6回開催して、研究成果のまとめ方と公開の方法について検討した。2.本年度行ったシンポジウムは次のとおりである(予定のものを含む)。(1)第5回公開シンポジウム「GIS教育(ワークショップ)」(於 慶應義塾大学)1993年5月15日講演者数6名、参加者約100名。(2)第6回公開シンポジウム「数値地図と環境」(於 東京都立大学)1993年7月7日講演者数7名、参加者約120名。(3)第7回公開シンポジウム「地域環境変化と地理処理システム」(於 慶應義塾大学・明治大学)1994年4月3〜5日(予定)3.本年度発光した印刷物は次のとおりである。(1)NCGIAのCoreCurricilumより、GIS技術論を翻訳し(383頁)、1993年5月に刊行した。(2)本重点領域研究の研究成果総括報告書(195頁)を1993年10月に刊行した。(3)GIS技術資料のNo.3とNo.4(合本で123頁)を1994年3月に刊行した。(4)研究成果をまとめたCD-ROM(2巻)を1994年3月に完成・配布を開始した。4.本重点領域研究の成果をもとにまとめたアトラス「日本の近代化と環境変化」の執筆と編集を行なった。刊行は1994年6月の予定である。加えて、研究成果に関する概説書の編集を行なっている。5.本研究の成果を踏まえて、IGBPの第7領域との関連をもたせた次期研究計画の策定を行なっている。
著者
野上 道男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.5, 2006

研究の目的と問題の所在:<BR> 未来の地形を予測することは地形学の最終目標である.過去を調べるのも現在を知り、未来を予知するためであろう.地球気候モデルが50年後、100年後の気候をシミュレーションによって予測しようとしているように、ここでは10万年後の地形を予知するという目標を立てた.これまでに蓄積された地形学の知識は数式あるいはロジックで表現されているというわけではないので、いろいろ困難は多いが、比較的知識の蓄積が多い過去10万年を目標とした.さらに単なる形態模写ではなく、物質の移動に基礎をおくシミュレーションを目指すことにした.シミュレーションに必要なのは地形変化現象の数値モデル化、モデルとは独立な初期条件・境界条件、およびモデルの中で使われるパラメータの値である.このパラメータは位置が持つ属性やその時間変化として具体的に、その値が与えられる必要がある.<BR><BR>初期条件:<BR> 筑波山および周辺地区の10m-DEM(北海道地図作成)から一辺10mの正六角形DEMを作って使用した.筑波山を200m水没させて架空の島とし、初期条件とした.海面低下時に陸上と同じ詳細な地形データが必要なためである. <BR><BR>境界条件:<BR> 海面変化(気候変化)、地殻運動、火山灰降下を境界条件とした.いうまでもなく海面変化および気候変化は局地的な地形発達とは独立であり、過去10万年の変化がもう一度繰り返されるとした.これはかなり蓋然性の高い仮定であると考えている.一般に地殻運動は段丘形成・分布に大きな影響があることが知られているので、その効果を見るために、間欠的ではあるが長期的には定速な傾動運動を与えてみた.火山灰の降下はこのシミュレーションには必須ではないが、地形面の年代確定のために、間欠的に起こるとした.<BR> 地形変化現象のモデリングとパラメータ: 斜面では拡散モデルで表現される従順化と間欠的かつ確率的な斜面崩壊があるとした.河川では河床礫の摩耗を伴う拡散現象としての砂礫セディメント移動と間欠的に起こる洪水による移動があるとした.海岸付近では波の方向と離岸流の方向、波食限界深などを仮定した.また海食崖の後退については、受食される海食崖の高さ・崖前面の水深の限界などに仮値を与えた.離岸流による物質移動については深さに反比例する拡散係数を持つ拡散現象であるとした.<BR> なお陸上の拡散現象にかかわる拡散係数は岩相と気候で変わるものとした.岩相は基盤岩と軟弱層堆積物に2分し、気候は氷期と間氷期の2時期に分けそれぞれ異なる値を与えた.斜面および河川の堆積物については、現実地形についての計測値を取り入れた.間欠的に起こる現象については台風や梅雨の集中豪雨の頻度を参考に妥当な値を与えた.<BR><BR>シミュレーションの実施:<BR> このシミュレーションでは質量保存則は厳重に守っているので、物質移動によってのみ地形変化(高度変化)が起こるという地形学の大原則は満たされている.そこで、斜面から河川・海へ領域を越えて移動する砂礫フラックス、および河川から海に移動するフラックスを集計してモニタリングした.これらの量は陸地の平均浸食深(速度)そのものである.また拡散係数が基盤岩と堆積物で大幅に変わることから、斜面および河床における基盤岩露出率もモニタリングした. <BR> 斜面および河川における拡散現象については計算を毎年行うことにし、それに先立ち落水線の探査と流域面積の計算を行い、斜面・河川・海岸の3領域を設定した.隔年発生現象については該当年に達したとき、その現象を記述する関数を呼び、それによる地形変化を計算し、500年ごとにそのときの地形、陰影図などを出力させた.<BR><BR>結果:<BR> 陰影図は201枚となるので、これを動画化して10万年間の地形変化を観察した.時間を短縮して、普段は「動かざる大地」を変化するものとして観察するメリットは大きい.もちろん、シミュレーションプログラム開発の過程で、この観察に基づいて、地形学的に許せない変化が起きていないかなどを観察しながら、試行錯誤的にアルゴリズムやパラメータを修正してきた.最終的には不自然なフラックス調整は必要なかった.
著者
野上 道男
出版者
Japan Cartographers Association
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.20-26, 1991-09-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
6
著者
野上 道男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100012, 2015 (Released:2015-04-13)

対馬海峡の流速は0.5m/sec程度であり(九州大応用力学研WEB公開データ)、速さがその4倍以下の人力船は大きく流される.海図も羅針盤もなく航路距離は測定不可能な値である.そこで倭人伝に記述されている里数は測量による直線距離であると判断される.つまり天文測量である1寸千里法(周髀算経)で得られた短里による数値である. 帯方郡(沙里院)から狗邪韓国(巨済島)まで七千余里、女王国(邪馬台国)まで万二千余里、倭地(狗邪韓国と邪馬台国の間)は(周旋)五千里と記述されている.これらの3点はほぼN143E線上にある.この方位線は子午線と、辺長比3:4:5のピタゴラス三角形を作る(周髀算経と九章算術で頻繁に使われている) .帯方郡での内角は36.78度であり(N143.22E)、東南(N135E)あるいは夏至の日出方向を東とする方位系での南(N150E)の近似である可能性が高い. 1.2万里は斜め距離であり、南北成分距離は、1.2万里x4/5=9600里である.1寸千里によると日影長の差は9.6寸となる.帯方郡は中国の行政内であるので、日影長による定位が行われていたはずである.現在の知識では郡(沙里院)の緯度は38.5Nであり、日影長は21.53寸と計算できる.それより9.6寸短い11.93寸という値が得られる緯度は31.92Nである.方位N143E線と合わせると郡から1.2万里の点は宮崎平野南部となる. 測定誤差に配慮すれば、倭人伝では邪馬台国は九州南部にあったと認識されていたといえる.それより詳しい比定は考古学の問題である.漢文法に時制はなく、「邪馬台国女王之所都」は文意を補って、邪馬台国はかって(倭)女王(卑弥呼)が都して(治めて)いたところである、と読むべきであろう.邪馬台国が倭国の首都であるとするのは明らかに誤読である.
著者
野上 道男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.133-146, 2005-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

地図は現実世界のモデルである.したがって地図上で行われるすべての営為は広義のシミュレーションと呼ばれてしかるべきである.このような地理的シミュレーションは地図のデジタル化,GISによって改新された.私の以前の研究から,日本列島における植生の帯状分布に関する地理的シミュレーションを事例として取り上げた.1km解像度の植生と気候のグリッドマップを用いて,常緑広葉,落葉広葉,常緑針葉,高山低木などの天然森林帯を分ける熱的閾値を求めた.これらの値を使い,人間活動によって本来の植生が失われた場所の潜在植生を推定し,また気温が7°C低下した気候,2°C上昇した気候下における潜在植生を推定した.現在の地理的分布とそれを決めている制約要因の空間的相関は,過去の鍵であると同時に未来の鍵でもある.さらに他の分野と共通する意味の,すなわち狭義のシミュレーションを私の以前の研究から事例として二つ取り上げた.一つは小流域の地形発達に関するものである.流域は斜面と河川プロセスの領域に2分割され,異なる発展方程式(時間を含む偏微分方程式)をモデルに採用した.このスキームを採用したことで,二次元モデルに,岩石制約と気候的影響をセットにして拡散係数として,また海面変化を境界条件として組み込むことができた.これからの10万年はこれまでの10万年と同じ気候変化や海面変化があるという仮定の下で,正六角形DEM上でシミュレーションを行った.もう一つの事例は排水網の確率的モデルに関するものである.排水網ネットワークシステムは基本的に二分木である.シミュレーションモデルは再帰関数群から成り,一つは乱数によって新しい分岐を発生させて(モンテカルロ法)水路網を作り出す.もう一つは水路網の特性(流域面積,ホートン・ストレーラの次数,分岐比など)を計算する.シミュレーションという用語によって,地理学は何であるか,地理学とはどのようなものであるかを語ることが,地理学を広く知ってもらう最良の方策であると思っている.なぜなら科学はその予知能力によって評価されるからである.
著者
野上 道男
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.95-102, 1998-03-15 (Released:2009-05-29)
参考文献数
14
被引用文献数
4 2 13

We developed a flooding-type algorithm for drainage network extraction and show a full program source in the language C. The program generates automatically Drainage Direction Matrices (DDMs) from Digital Elevation Models (DEMs) with sink holes. By using a random technique of random walk type, the drainage networks are processed adequately in flat plains or alluvial fans.
著者
野上 道男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.121-126, 2008-03-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

河川の縦断形が凹形であることの理由として, 礫径の下流への指数的減少が原因であるとの説が妥当である. 野上 (1981) は拡散係数を距離の指数関数とすることで, 平野 (1972) と同じように定常解が指数関数となるモデルを提案した. これら二つのモデルは局所的に, 砂礫流量の入出力の差が地形変化となるという保存則を満足しない. 流量レベルにおける質量欠損は凹形縦断形の発現と維持のための不可欠な条件である. そこで野上 (1981) のモデルを次のように解釈することにした. 礫径は下流へ指数関数的に減少し, 拡散係数はそれに比例して増大する. 一方, 上流からある区間に供給される砂礫流量から摩耗による欠損を除いた分が入力となり, それと拡散係数と勾配の積で表される出力との差がその区間の標高変化 (地形変化) となる. これがこの小論で提出したモデルである. したがってこのモデルの有効性は礫床河川に限定される.
著者
野上 道男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.23-29, 1999-01-01
被引用文献数
17

北海道を除く日本列島全域について,50m-DEMから250mメッシュごとの地形特性値(高度,険しさ,凸斜面率)を計算し,それと250m解像度の地質データをクロス集計して,地質と地形特性の関係を明らかにした.地形特性値は,地形を作る地質の時代にっれて完新世から新第三紀へと変化するが,その傾向は古第三紀で中断する.このことは,現在の地形を作る隆起運動が古第三紀直後に始まり現在まで続いていることを意味する.<br> 中生代・古生代の地層を刻んで形成されている現在の山地地形の地形特性は地層の時代との相関が薄い.このことは低地に堆積した状態を初期条件として,それが隆起しっっ谷が刻まれることで山地地形が形成されるという地形発達史を考えるとき,初期条件の影響を受けるステージがすでに過ぎていることを意味しているので,日本列島の山地地形は理論的には地層の侵食されやすさ(相対的な岩石特性)と隆起速度で決まる定常状態に近づいているか,すでに達していると解釈される.