著者
河原 大輔 黒橋 禎夫
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.109-131, 2005-03-31 (Released:2011-03-01)
参考文献数
19
被引用文献数
8 6

本稿では, 格フレーム辞書を漸次的に自動構築する手法を提案する.カバレージの高い格フレーム辞書を構築するために, 大規模コーパスから徐々に確からしい情報を抽出する.まず, コーパスを構文解析し, 構文的曖昧性のない述語項構造のみを抽出・クラスタリングすることによって, 1次格フレーム辞書を得る.次に, 1次格フレーム辞書を用いてコーパスを格解析し, 新たに分かる確実な情報を抽出し, 2次格フレーム辞書を構築する.このように徐々に新たな情報を加えていくことによって, 高次格フレーム辞書を構築する.結果として得られた格フレーム辞書は, 二重主語構文, 連体修飾の外の関係, 格変化といった複雑な言語現象を解析することを可能にする.新聞記事26年分, 約2600万文のコーパスから格フレーム辞書を構築し2種類の評価を行った.1つは, 得られた格フレームを人手で評価するものであり, もう1つは得られた格フレーム辞書を用いた構文・格解析実験による評価である.これらの結果, 本手法の有効性が確かめられた.
著者
萩行 正嗣 河原 大輔 黒橋 禎夫
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.213-247, 2014-04-18 (Released:2014-07-17)
参考文献数
12
被引用文献数
2 3

現在,自然言語処理では意味解析の本格的な取り組みが始まりつつある.意味解析の研究には意味関係を付与したコーパスが必要であるが,従来の意味関係のタグ付きコーパスは新聞記事を中心に整備されてきた.しかし,文書には多様なジャンル,文体が存在し,その中には新聞記事では出現しないような言語現象も出現する.本研究では,従来のタグ付け基準では扱われてこなかった現象に対して新たなタグ付け基準を設定した.Webを利用することで多様な文書の書き始めからなる意味関係タグ付きコーパスを構築し,その分析を行った.
著者
渡邊 健一 神尾 友信 大河原 大次 馬場 俊吉 八木 聰明
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.46-51, 1998-02-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19

バンドノイズマスカーによる耳鳴抑制治療を行い, マスカー装用前後でSOAEを測定した。SOAE検出例のマスカーによる耳鳴抑制効果とSOAEの変化について検討を行った。耳鳴周波数およびラウドネスとSOAEの周波数および大きさには有意な相関関係は認められず, 非耳鳴耳でもSOAEが検出された。また, マスカー装用前後でSOAEの周波数および大きさに有意な変化は認められなかった。これらの結果より耳鳴とSOAEの関連性は低いと考えられた。
著者
大島 祥央 浦辺 幸夫 前田 慶明 河原 大陸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.199-202, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

〔目的〕林業従事者の転倒災害防止の一助とするためにチェンソーの駆動が立位バランス能力におよぼす影響を検討することとした.〔対象〕健常成人男性12名とした.〔方法〕安静時とチェンソー把持直後,5分後,10分後の静的・動的立位バランス能力(足圧中心の単位軌跡長,外周面積,重心前方移動距離)を平衡機能計で測定した.チェンソーの把持はエンジンを駆動しない非駆動条件と,エンジンを駆動する駆動条件に分けた.〔結果〕足圧中心の単位軌跡長と外周面積は,チェンソー把持前後で両条件とも有意な変化はなかった.重心前方移動距離は,駆動条件のみ安静時と比較してチェンソー把持直後,5分後でそれぞれ有意に低下した.〔結語〕本研究は,チェンソーを駆動させることで,即時的に立位バランス能力が低下する可能性が示唆された.
著者
矢野 桂司 磯田 弦 中谷 友樹 河角 龍典 松岡 恵悟 高瀬 裕 河原 大 河原 典史 井上 学 塚本 章宏 桐村 喬
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.12-21, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
30
被引用文献数
10

本研究では,地理情報システム(GIS)とバーチャル・リアリティ(VR)技術を駆使して,仮想的に時・空間上での移動を可能とする,歴史都市京都の4D-GIS「京都バーチャル時・空間」を構築する.この京都バーチャル時・空間は,京都特有の高度で繊細な芸術・文化表現を世界に向けて公開・発信するための基盤として,京都をめぐるデジタル・アーカイブ化された多様なコンテンツを時間・空間的に位置づけるものである.京都の景観要素を構成する様々な事物をデータベース化し,それらの位置を2D-GIS上で精確に特定した上で,3D-GIS/VRによって景観要素の3次元的モデル化および視覚化を行う.複数の時間断面ごとのGISデータベース作成を通して,最終的に4D-GISとしての「京都バーチャル時・空間」が形作られる.さらにその成果は,3Dモデルを扱う新しいWebGISの技術を用いて,インターネットを介し公開される.
著者
矢野 桂司 中谷 友樹 磯田 弦 高瀬 裕 河角 龍典 松岡 恵悟 瀬戸 寿一 河原 大 塚本 章宏 井上 学 桐村 喬
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.464-478, 2008-04-25
被引用文献数
2 19

バーチャル京都は,歴史都市京都の過去,現在,未来を探求することを目的に,コンピュータ上に構築されたバーチャル時・空間である。本研究では,最先端のGISとVR技術を用いて,複数の時間スライスの3次元GISからなる4次元GISとしてのバーチャル京都を構築する。本研究は,まず,現在の京都の都市景観を構築し,過去にさかのぼる形で,昭和期,明治・大正期,江戸期,そして,京都に都ができた平安期までの都市景観を復原する。<br> バーチャル京都を構築するためには以下のようなプロジェクトが行われた。a)京都にかかわる,現在のデジタル地図,旧版地形図,地籍図,空中写真,絵図,景観写真,絵画,考古学資料,歴史資料など位置参照可能な史・資料のGIS データの作成,b)京町家,近代建築,文化遺産を含む社寺など,現存するすべての建築物のデータベースおよびGISデータの作成,c)上記建築物の3次元VRモデルの構築,d)上記GISデータを用いた対象期間を通しての土地利用や都市景観の復原やシミュレーション。<br> バーチャル京都は,京都に関連する様々なデジタル・アーカイブされたデータを配置したり,京都の繊細で洗練された文化・芸術を世界に発信したりするためのインフラストラクチャーである。そして,Webでのバーチャル京都は,歴史的な景観をもつ京都の地理学的文脈の中で,文化・芸術の歴史的データを探求するためのインターフェイスを提供する。さらに,バーチャル京都は,京都の景観計画を支援し,インターネットを介して世界に向けての京都の豊富な情報を配信するといった重要な役割を担うことになる。
著者
松村 真宏 河原 大輔 岡本 雅史 黒橋 禎夫 西田 豊明
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.93-102, 2007 (Released:2007-01-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

To overcome the limitation of conventional text-mining approaches in which frequent patterns of word occurrences are to be extracted to understand obvious user needs, this paper proposes an approach to extracting questions behind messages to understand potential user needs. We first extract characteristic case frames by comparing the case frames constructed from target messages with the ones from 25M sentences in the Web and 20M sentences in newspaper articles of 20 years. Then we extract questions behind messages by transforming the characteristic case frames into interrogative sentences based on new information and old information, i.e., replacing new information with WH-question words. The proposed approach is, in other words, a kind of classification of word occurrence pattern. Qualitative evaluations of our preliminary experiments suggest that extracted questions show problem consciousness and alternative solutions -- all of which help to understand potential user needs.
著者
吉越 卓見 河原 大輔 黒橋 禎夫
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2020-NL-244, no.6, pp.1-8, 2020-06-26

言語を理解するには,字義通りの意味を捉えるだけでなく,それが含意する意味を推論することが不可欠である.このような推論能力を計算機に与えるために,自然言語推論(NLI)の研究が盛んに行われている.NLI は,前提が与えられたときに,仮説が成立する(含意),成立しない(矛盾),判別できない(中立)かを判断するタスクある.自然言語推論を計算機で解くには数十万規模の前提・仮説ペアのデータセットが必要となるが,これまでに構築された自然言語推論データセットは言語間でその規模に大きな隔たりがある.この状況は,自然言語推論の研究の進展を妨げる要因となっている.このような背景から,本研究では,機械翻訳に基づく,安価かつ高速な自然言語推論データセットの構築手法を提案する.提案する構築手法は二つのステップからなる.まず,既存の大規模な自然言語推論データセットを機械翻訳によって目的の言語に変換する.次に,翻訳によって生じるノイズを軽減するため,フィルタリングを行う.フィルタリングの手法として,評価データと学習データに対し,それぞれ別のアプローチをとる.評価データは,正確さが重要となるため,クラウドソーシングを用い,人手で検証する.学習データは,大規模な自然言語推論データセットでは数十万ペアの問題が存在するため,翻訳文の検証を自動的に行い,効率的にデータをフィルタリングする.本研究では,機械翻訳を用いた逆翻訳による手法と,言語モデルによる手法の二つを提案する.本研究では,SNLI を翻訳対象とし,日本語を対象言語として実験を行った.その結果,評価データが 3,917 ペア,学習データが 53 万ペアのデータセットを構築した.このデータセットは BERT に基づく自然言語推論モデルによって 93.0 %の精度で解くことが可能である.
著者
萩行 正嗣 河原 大輔 黒橋 禎夫
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.563-600, 2014-06-16 (Released:2014-09-16)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

日本語では用言の項が省略されるゼロ照応と呼ばれる現象が頻出する.ゼロ照応は照応先が文章中に明示的に出現する文章内ゼロ照応と,明示的に出現しない外界ゼロ照応に分類でき,従来のゼロ照応解析は主に前者を対象としてきた.近年,Web が社会基盤となり,Web上でのテキストによる情報伝達がますます重要性をましている.そこでは,情報の送り手・受け手である著者・読者が重要な役割をはたすため,Web テキストの言語処理においても著者・読者を正確にとらえることが必要となる.しかし,文脈中で明確な表現(人称代名詞など)で言及されていない著者・読者は,従来の文章内ゼロ照応中心のゼロ照応解析では多くの場合対象外であった.このような背景から,本論文では,外界ゼロ照応および文章の著者・読者を扱うゼロ照応解析モデルを提案する.提案手法では外界ゼロ照応を扱うために,ゼロ代名詞の照応先の候補に外界ゼロ照応に対応する仮想的な談話要素を加える.また,語彙統語パターンを利用することで,文章中で著者や読者に言及している表現を自動的に識別する.実験により,我々の提案手法が外界ゼロ照応解析だけでなく,文章内ゼロ照応解析に対しても有効であることを示す.
著者
木下 恵美 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里 笹代 純平 岩田 昌 河原 大陸 沼野 崇平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.227-231, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
15
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,片脚着地動作時の前・後足部運動と膝関節外反運動の関係を明らかにすることである.〔対象〕対象は健常成人女性13名とした.〔方法〕課題動作は高さ30 cm台からの非利き脚での片脚着地動作とし,台より30cm前方に着地させ,片脚立位を保持させた.課題動作中の膝関節外反角度,前足部回内角度,後足部外反角度,アーチ高を算出し,膝関節外反角度と各足部角度,アーチ高との相関関係を調べた.〔結果〕片脚着地動作時の前足部回内運動と膝関節外反運動に有意な相関関係は認められなかった.一方,後足部外反運動と膝関節外反運動には有意な正の相関が認められた.〔結語〕片脚着地動作での膝関節外反運動を予防するためには,後足部外反運動を少なくすることが重要であることが示唆された.
著者
橋本 力 黒橋 禎夫 河原 大輔 新里 圭司 永田 昌明
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.175-201, 2011 (Released:2011-09-28)
参考文献数
22
被引用文献数
5 7

近年,ブログを対象とした情報アクセス・情報分析技術が盛んに研究されている.我々は,この種の研究の基礎データの提供を目的とし,249 記事,4,186 文からなる,解析済みブログコーパスを構築した.主な特長は次の 4 点である.i) 文境界のアノテーション.ii) 京大コーパス互換の,形態素,係り受け,格・省略・照応,固有表現のアノテーション.iii) 評価表現のアノテーション.iv) アノテーションを可視化した HTML ファイルの提供.記事は,大学生 81 名に「京都観光」「携帯電話」「スポーツ」「グルメ」のいずれかのテーマで執筆してもらうことで収集した.解析済みブログコーパスを構築する際,不明瞭な文境界,括弧表現,誤字,方言,顔文字等,多様な形態素への対応が課題になる.本稿では,本コーパスの全容とともに,いかに上記の課題に対応しつつコーパスを構築したかについて述べる.
著者
玉澤 基良 稲山 正弘 青木 謙治 落合 陽 河原 大 稲田 勲保
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.26, no.63, pp.525-530, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
10

Wood bracing shear walls are usually installed in not only residential houses but also medium or large-scale wooden buildings. It is no problem to provide bracings in residentials. But, in case of providing bracings in medium or large-scale wooden buildings, it will be difficult that the bracings exert its strength of shear walls which is prescribed in Japanese Building Code. The purpose of this study is to clarify the specification for exerting its strength in medium or large-scale wooden buildings throughout the racking test of full-size shear wall. And the purpose was achieved by this experiment.
著者
須藤 竜大朗 河原 大 落合 陽 青木 謙治 稲山 正弘
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.128-139, 2020-07-25 (Released:2020-07-30)
参考文献数
14

釘接合部の耐力の推定式にはヨーロッパ型降伏理論(EYT)によるものと,釘の頭部径をパラメータにしたものがある。また降伏後の荷重の上昇について理論的に考察した例は少ない。本報ではMDFの釘接合部を対象に,降伏耐力と最大耐力の推定を試みた。釘頭がMDFに回転しながらめり込むことで発生するモーメントを考慮したEYT式を降伏耐力の推定に用いた。またロープ効果を考慮したビス接合部の最大耐力の推定式を本研究に適用した。その結果釘頭の回転めり込みモーメントを考慮しEYT式を改良することで推定精度の向上がみられた。またビス接合部の設計式でも釘接合部のロープ効果を推定できる可能性が示された。一方釘の塑性ヒンジより先の支圧耐力が降伏耐力の推定値と実験値の誤差へ影響している可能性が示唆された。また最大耐力時の釘引抜耐力を実際より低く,釘頭貫通力を実際より高く推定している可能性も見受けられた。
著者
河原 大輔 黒橋 禎夫
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.67-81, 2007-07-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

本稿では, 格フレームに基づき構文・格解析を統合的に行う確率モデルを提案する.格フレームは, ウェブテキスト約5億文から自動的に構築した大規模なものを用いる.確率モデルは, 述語項構造を基本単位とし, それを生成する確率であり, 格フレームによる語彙的な選好を利用するものである.ウェブのテキストを用いて実験を行い, 特に述語項構造に関連する係り受けの精度が向上することを確認した.また, 語彙的選好がどの程度用いられているかを調査したところ, 60.7%という高い割合で使われていることがわかり, カバレージの高さを確認することができた.
著者
須藤 竜大朗 河原 大 落合 陽 青木 謙治 稲山 正弘
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.201-211, 2019-10-25 (Released:2019-11-02)
参考文献数
22

MDFは加工性・均質性・環境性能に優れた木質系面材料であり,その構造利用が望まれている。しかし構造利用される時に想定される釘一面接合部の性能については基礎データが不足している。基礎データの収集を目的として主材の樹種(スギ,ヒノキ,ベイマツ),MDFの厚さ(9,12,15,18,21,24mm),釘種類(N50,CN50,CN65,CN75)をパラメータとして釘一面せん断試験を実施した。降伏モードはMDFと製材のそれぞれの支圧耐力の差が大きいかによって決定し,破壊モードはMDFの釘頭貫通力と製材の釘の引抜耐力の大小で決定した。釘接合部の降伏耐力は釘の長さ,径が大きいと上昇し,用いた製材の支圧強度にも影響が見られた。靱性特性はMDFの釘頭貫通力と製材の釘の引抜耐力の小さい方で決定されるため,その二つの耐力が近い時に最も高いという結果になった。
著者
笹野 遼平 河原 大輔 黒橋 禎夫 奥村 学
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.1207-1233, 2014-12-15 (Released:2015-03-15)
参考文献数
31

日本語において受身文や使役文を能動文に変換する際,格交替が起こる場合がある.本論文では,対応する受身文・使役文と能動文の格の用例や分布の類似性に着目し,Web から自動構築した大規模格フレームと,人手で記述した少数の格の交替パターンを用いることで,受身文・使役文と能動文の表層格の対応付けに関する知識を自動獲得する手法を提案する.さらに,自動獲得した知識を受身文・使役文の能動文への変換における格交替の推定に利用することによりその有用性を示す.
著者
河原 大 矢野 桂司 中谷 友樹 磯田 弦 河角 龍典 高瀬 裕 井上 学 岩切 賢 塚本 章宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.118, 2004

<b>_I_ 研究目的</b><br>本研究の最終的な目的は、2・3次元GISとVR(Virtual Reality)技術を活用して、歴史都市京都のバーチャル時・空間を構築することにある。そのためには、過去における京都の町並みの景観を構成するコンテンツを特定し、それらの精確な位置情報を収集する必要がある。本発表では、現在から過去にさかのぼる形で、現在、戦後、大正の3時期を設定し、各時期の京都のバーチャル時・空間を構築する。<br><b>_II_ 京都の景観コンテンツ -京町家を中心として-</b><br> 京都では第二次大戦の被害が少なかったこともあり、神社・寺院や近世末から戦前に建てられた京町家や近代建築などが多数現存している。したがって、現在の京都バーチャル・シティーを構築したのちに新しく建てられた建物を京町家に置き換えていくことで、過去の町並みの景観復原をおこなうことが可能になる。 以下では、現代、戦後、大正の順に、京都の町並みの中で主要な景観コンテンツである京町家の特定をしていく。<br><b>1)現代</b> 現在における京都市のバーチャル・シティーのベースとして、本研究では、現在もっとも精度が高い3次元都市モデルであるMAP CUBE<sup>TM</sup>を用いることにする。MAP CUBE<sup>TM</sup>は、2次元都市地図(縮尺は2500分の1精度)上のポリゴンの建物形状を2次元GISのベース((株)インクリメントP)として、各建物の高さをレーザー・プロファイラーにより計測し((株)パスコ)、建物の3次元形状を作成したもの((株)CAD CENTER)である(そのレーザーの計測間隔は約2mで、高さ精度は±15cmである)。また、各各建物の3次元VRモデルは、MAP CUBE<sup>TM</sup>の3次元形状モデルに、現地でのデジタル撮影により取得された画像を、テクスチャ・マッピングしたものである。なお、建物以外の地表面に関しては、空中写真などをテクスチャ・マッピングすることができる(専用の3次元GISソフトUrban Viewerによって、操作することができる)。<br> 京都市は、平成10年に『京町家まちづくり調査』として、都心4区を中心とする範域の京町家の悉皆外観調査を実施し、約28,000件もの京町家を特定した。本研究では、この調査データを効率よく2次元GIS化するとともに、1998年以降の変化を補足する追跡調査を実施している。この調査によって、現時点での京町家の建物形状(ポリゴン)、建物類型、建物状態などが2次元GISとしてデータベース化されている。<br> 本研究ではさらに、2次元GISとして特定された現在の京町家データベースを、Urban Viewerを用いて、3次元表示させていく。<br><b>2)戦後</b> 戦後の京町家の分布状態を明らかにするために、空中写真から京町家を特定し2次元GIS化した。具体的には、1948年の米軍撮影空中写真、1961年の国土地理院撮影空中写真、1974年の国土地理院撮影空中写真、1987年国土地理院撮影空中写真、2000年中日本航空撮影空中写真の53 年間13 年ごと5期の空中写真について判読を実施した。<br> 都心地域(北は御池通、南は四条通一筋南の綾小路通、東は河原町通、西は烏丸通の3 筋西の西洞院通に囲まれる東西約1100m 南北約800m の範域)において、1948年時点で約6,250件、1961年時点で約5,900件、1974年時点で約4,550件、1987年時点で約2,900件、2000年時点で約1,800件と、京町家が減少していることが判明した。また、その場合、大通りに面する京町家から内側へと次第に減少していく傾向が明らかになった。<br><b>3)大正</b> 大正期の京町家の空間的分布を明らかにするために、『大正元年京都地籍図』(立命館大学附属図書館所蔵)をデジタル化し、さらに2次元GISを用いて、当時の地割をベクタ化した。この地籍図は約1200_から_2000分の1の縮尺で、現在の都心とその周辺地域の範囲を合計375枚でカバーしている。<br>各地割ごとに京町家が建てられていたと想定し、すでに竣工された近代建築についても特定した上で、地割の大きさにあわせて、3次元のバーチャル・シティー上に京町家を配置し、町並みの景観を復原していくことができる。<br><b>_III_ 京都のバーチャル時・空間</b><br> 本研究では、京都の町並みの景観を構成する重要なコンテンツとして京町家をとりあげ、悉皆外観調査、過去の空中写真、過去の地籍図を最大限に活用して、現在、戦後、大正の京町家の2次元GISをデータベース化するとともに、3次元都市モデルにそれら京町家を統合し、京都バーチャル時・空間を構築した。<br>その結果、歴史都市京都の町並みの変遷を3次元的に視覚化させ、時・空間上での景観復原を可能とした。