著者
竹内 聡史 河野 正司 小林 博 桜井 直樹 細貝 暁子 金城 篤史 甲斐 朝子
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.473-481, 2008-10-10 (Released:2009-02-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

目的 : 下顎タッピング運動に随伴する体幹動揺が, 座位において観察できるのか, また立位と座位でどのような差を示すか追求することを目的とした.方法 : 被験者は顎口腔系に異常を認めない男性6名 (25-29歳, 平均年齢27.0歳) で, 姿勢は立位, 座位の2種類として, 10秒間の咬頭嵌合位保持, 3Hzの20秒間タッピング, その後10秒間咬頭嵌合位保持を1測定単位として測定を行った. 下顎運動はTRIMETII (東京歯材社製) により上顎座標系にて下顎切歯点を, 頭部は大地座標系で上顎切歯点, 下顎頭点, 頭頂点, 後頭点を, また体幹動揺はProreflex (Qualisys社製) により大地座標系で胸骨点の矢状面内運動を分析した.結果 : 座位において, 下顎タッピング運動に随伴する体幹動揺が認められた. 開口量に対する体幹動揺量を立位と座位でWilcoxonの符号付検定をしたところ, 有意に立位の方が大きくなった. また体幹動揺の周波数分析におけるパワーの平均値を立位と座位でWilcoxonの符号付検定をしたところ, 有意に立位の方が大きくなった. しかし, 原波形解析による検出率をWilcoxonの符号付検定をしたところ, 立位と座位で有意差は認められなかった.結論 : 体幹動揺量は立位の方が大きいが, 原波形による検出率では差がなく, 咀嚼動作として自然な座位での分析も可能であることが明らかとなった.
著者
澤田 宏二 荒井 良明 メディナ ラウル 河野 正司
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.763-768, 1997-10-01
参考文献数
16
被引用文献数
15 2

The mechanism of condylar dislocation is not clearly understood. Temporomandibular (TMJ) surgery is a common option in the treatment of chronic condylar dislocation, but some authors have reported disappearance of its symptomatology after occlusal treatment.<BR>A case in which condylar dislocation disappeared by changing the location of anterior guidance is presented. The patient was an 18-year-old male with an Angle class III malocclusion who had been suffering from condylar dislocation of the right TMJ upon waking up for almost one year. Clinical inspection showed that the mandibular right second molar was guiding the mandibular eccentric movements. Dislocation of the TMJ disappeared by shifting anteriorly the tooth guidance with a stabilization splint. Jaw and condyle movements were recorded by a 6-degree-of-freedom measuring device during lateral excursions with and without wearing of the splints in order to assess the influence of shifting anteriorly the location of tooth guidance on the cure of dislocation. It was found that the direction of condylar movements changed markedly during parafunctional grinding tasks. Therefore, it was concluded that
著者
野村 章子 野村 修一 山田 好秋 河野 正司 高橋 肇 江川 広子 植田 耕一郎 城 斗志夫
出版者
明倫短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、流動性に富みかつ凝集性のよい食品について物性試験を行うことにより、摂食・嚥下機能に障害のある要介護者のための食品としての有効性を評価することにあった。そのために明確にしなければならなかった具体的な事柄は、食品としての物性(硬さ、付着性、凝集性)であった。研究計画の初年度は主に、高たんぱく、低カロリーとして注目されているグルテンの構成要素である2つのタンパク(グリアジン、グルテニン)に着目し、小麦粉からのグリアジンおよびグルテニンの分離を試みたものの、高純度なグリアジンとグルテニンを調整することはできなかった。次年度は、高純度ではないが食品会社から入手したグルテニンとグリアジンを配合したクッキーの物性測定を行った。その結果、嚥下補助食として適正な配合比率を見出した。最終年度は、今までの研究成果に基づき、調整する試験食品の種類を増やして物性測定を行った。臨床試験により、咀囑性・食塊形成性との対応を見出した。さらに、本研究に関連して調査した要介護者の口腔機能と全身状態が、要介護者の食事形態におおいに影響することもわかった。本研究成果は、第15回日本老年歯科医学会学術大会、第10回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会、第3回明倫短期大学学会学術大会で報告した。今後は、要介護度の重度化防止を目的とし、要介護者の食事摂取を向上させるために、義歯治療口腔ケアを実施するための訪問診療機器の開発に繋げる予定である。
著者
木暮 ミカ 河野 正司 飛田 滋 植木 一範 伊藤 圭一 大沼 誉英
出版者
明倫短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、従来の教員によるヒューリスティック評価と同程度に保ちつつ、評価の個人差やバラツキを排除した客観性の高い判定・評価が可能な実技実習自動評価システムを開発し、学生が各自のペースで効率的かつ確実に実技を習得できるようにすることを目的とする。平成22-23年度は、歯型彫刻の評価を「量的・解析的評価」と「感性評価」に分割し、前者を判別フィルタとサポートベクターマシン(Supportvectormachine:以下,SVM)による画像処理システムからの自動評価、後者を教員の目視による官能評価で判定し、この2つを統合する採点方法を考案した。これにより客観性の高い評価が得られると同〓に、SVMを用いることで従来のヒューリスティック評価に近い判定が可能となった。平成24年度は、この採点システムを試験的に本学の実習に導入し、目視評価法と実習成果物撮影評価装置による自動評価を同〓に行い、評価の妥当性、公平性、作業効率・満足度などの点で比較検討することで本システムの評価・改善を行ってきた。また必要に応じて歯科技工士学科長、実習を担当する准教授2名、講師1名、助教2名、CAD/CAM実習を担当する講師1名および日本歯科大学の教員1名の8名からなる評価委員会メンバーにより、本システムの有用性を検証した。
著者
大山 喬史 森本 俊文 河野 正司 片山 芳文 野首 孝祠 古谷野 潔
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

床義歯の形態,設計様式が口腔感覚に及ぼす影響を分析し,機能との関係を検討する目的で舌感,味覚,痛覚,咬合感覚等の生理学的データを収集し,さらにその神経筋機構について動物実験より分析した.まず口蓋部の床の形態が舌感に及ぼす影響について質問紙法で分析した結果,床辺縁の断面形態は粘膜より移行的に立ち上るナイフエッジ状,走行は左右対称な形態が感覚的に優れ,移行的な断面形態,斜めのラインを避けた左右対称な走行形態が口腔感覚に調和することが推察された.次に臼歯部咀嚼とうまみ溶出の関係を調べるために,利尻昆布のグルタミン酸量を測定し,咀嚼後の溶出量を算出した結果,臼歯部補綴によりグルタミン酸溶出量は増加する傾向が認められた.また金属床の味覚に対する影響を実験用口蓋床を用いて検査した結果,厚さが1.5mmのレジン床と金属床では味覚閾値に差は認められなかったが,0.5mmの金属床では,味覚閾値は有意に低い値を示し,義歯床の厚さや材質の違いが味覚に影響を与えることが示唆された.さらに義歯装着者の咀嚼効率の判定法として,食塊形成能の観点から嚥下に至るまでの咀嚼ストローク数をパラメータとすると有用なことが認められた.また無歯顎者の義歯装着が床下粘膜の圧痛閾値に与える影響を調べた結果,無歯顎者は健常有歯顎者より40%低く,無歯顎者の口蓋中央部の閾値は頬側歯槽粘膜より2〜300%高かったため,義歯装着により圧痛閾値は低下し,粘膜への機械的ストレスの関与が示唆された.さらにモルモット前歯部に咬合挙上板を装着して臼歯を挺出させると,歯ぎしり様の運動を繰り返し元の咬合高径に戻るが,三叉神経中脳路核を破壊し閉口筋の筋感覚を除外すると高径低下が有意に減少し,咬合高径決定に閉口筋の筋感覚受容器の関与が示唆された.以上より,口腔感覚と機能とは密接な関係にあり,床義歯の設計に際しては維持や機能力の分配だけでなく,感覚への配慮が機能向上に繋がることが示唆された.
著者
大竹 博之 河野 正司 松山 剛士 土田 幸弘 荒井 良明 金田 恒
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.131-138, 1997-01-30
被引用文献数
7

咀嚼運動や下顎のタッピング運動時には, 下顎運動に協調して, 下顎と同一の周期を示す頭部運動が存在している.その中でタッピング運動に観察される頭部運動は, 開口時には上方へ, 閉口時には下方へと相対する運動方向を示し, その垂直的運動量は開口量の約10%であることが報告されている.一方, 顎機能障害症例においては, 種々の下顎運動の障害が存在することから, 下顎の運動に附随した頭部運動が存在しているか否か大いに興味があるが, いまだその報告はない.そこで著者らは, 顎機能障害症例の行う習慣的タッピング運動時に, 下顎運動と協調した頭部の周期的な運動の存在の可否を検索し, 正常者の頭部運動と比較することとした.習慣的タッピング運動の測定に際しては, 頭部固定装置やヘッドレストを一切用いず, 頭部を拘束することなく行った.また, 顎機能障害症例の行うタッピング運動は開口量および頻度の指示を一切行わず, 「リズミカルに開閉口運動を行って下さい」と指示し, 被験者が楽に行えるものとした.その測定結果において, 正常者では見られなかった頭部の運動様相が観察された.その運動について上下成分を時系列描記して, その波形を単峰性, 多峰性, 無峰性に分類し, それぞれの出現率を求めた.その結果, 1.顎機能障害症例における頭部運動は, 下顎との協調性を示す単峰性の運動が79%を示し, その他は多峰性あるいは無峰性を示し, 正常者とは異なった.2.臨床検査に見られる痛みに関する症状と頭部運動の出現率の低下には関連がみられた.3.正常者に比較して顎機能障害症例では, 頭部運動の出現率が低いことから, 頭部運動は下顎の機能運動を円滑に遂行するための随伴運動であると考えられる.以上の結果より, タッピング運動時の頭部運動様相は顎機能障害症例と正常者で異なり, 頭部運動が下顎の機能運動に協調した運動であることが確認できた.
著者
澤田 宏二 荒井 良明 河野 正司 大竹 博之 池田 圭介 中島 正光 平野 秀利
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 = The Journal of Japanese Society of Stomatognathic Function (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.59-66, 1996-06-30
被引用文献数
6

顎関節脱臼の治療には, 口腔外科領域での観血的処理が行われることが多く, 咬合治療が行われることはまれである.しかし, 顎関節脱臼症例に対して, 咬合治療を行うことにより治癒をみた報告はこれまでもある.今回, 我々も顎関節脱臼症例に対して, ガイドの位置を変化させる咬合治療により顎関節脱臼の治癒をみた.症例は起床時の右側顎関節習慣性脱臼を有する18歳男性1名である.平成6年頃より, 起床時に右側顎関節脱臼が生じたが, 自力で整復が可能であったので放置した.しかし, 脱臼の発生頻度が高くなり, 平成7年2月には毎朝右側顎関節脱臼が生じるようになり, 当科に来院した.患者は側方滑走運動時に第2大臼歯のみが歯牙接触していた.スタビリゼーションスプリントを上顎歯列に装着したところ, 翌日から起床時の右側顎関節脱臼は消失した.その後, 作業側ガイドと非作業側ガイドのどちらが脱臼の消失に寄与しているのかを追求し, さらに6自由度顎運動測定装置(東京歯材社製TRIMET)により, 3種類の滑走接触における顎運動の解析を行った.その結果, ガイドを歯列の前方歯に修正することによって, 下顎の滑走運動のみならず, 歯牙接触のない下顎運動経路, さらには顆頭の運動量にも変化を認め, 右側顎関節脱臼は消失した.今回の症例より, 顎関節脱臼症例にアンテリアル・ガイダンスの修正が有効な治療法となりうることが示唆された.