著者
片山 寛之 植木 邦和 曾我 実 松本 啓志
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.55-59, 1974-03-25
被引用文献数
2

水田雑草の生物学的制御におけるアシアカブトエビの除草効果について野外実験を行ない,つぎの結果をえた。1)雑草は10種類発生したが,その種類数は対照区ではカブトエビ処理区の2倍に近かった。また,各実験区に共通して発生した雑草を,生育本数をもとに,カブトエビの除草効果の高い順にあげると,アブノメ,ホソバヒメミソハギ,ミズキガシグサ,コナギ,ミズハコベの順であって,これらの雑草に対するアシアカブトエビの除草効果は非常に顕著なものがあった。2)カブトエビは1m^2当り25個体を放飼したが,20日後には約4分の1に減少し,40日後には,全処理区に僅か1個体が残存していた。3)カブトエビの有効活動期間は,一般に自然状態のもとで発生するものより短期間と考えられ,個体群密度も1m^2当り25個体と低かったにもかかわらず,きわめて除草効果が高かったことは,カブトエビの除草機構が発芽初期における機械的なものであって,田植後早期にやや大形の個体を放飼したことが関与しているものと考えられる。4)雑草害は対照区に顕著に発現したが,カブトエビ処理区には被害らしきものは認められず,両区の水稲生育の間に有意な差があった。本実験を行なうにあたり,有益なご助言をいただいた農林省農業技術研究所の松中昭一博士に対し謝意を表する。
著者
片山 寛次
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.917-922, 2015 (Released:2015-08-20)
参考文献数
29

がんの終末期の体重減少をもたらす複合的な代謝異常症候群,悪液質では,あらゆる栄養療法に抵抗性であり,その病態の解明といろいろな治療法が模索されている.原因としては,腫瘍が分泌する各種物質が,食欲低下と代謝異常・亢進を引き起こしている事が判った.そのステージ分類がコンセンサスを得て,栄養はそのステージに応じて行い,経腸栄養が効果的である.積極的な観血的治療や CART等はステージを改善することもある.また,n-3系脂肪酸,ステロイド,カルニチン,グレリン等,悪液質の病態生理に特異的な治療療法が多く開発されつつあるが,現時点ではいずれも限定的なエビデンスにとどまり,ガイドラインで推奨されるには至っていない.
著者
森川 美羽 石崎 武志 高野 智早 渡辺 享平 田畑 麻里 佐藤 義高 西本 武史 小坂 浩隆 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.541-544, 2012 (Released:2012-08-21)
参考文献数
18

【目的】がんの診療に伴い, 吃逆はしばしば経験し, 治療に難渋することが多い. 化学療法に伴って出現した持続性の吃逆に対して, プレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する. 【症例】症例は共に進行肺扁平上皮がんであり, 症例1はカルボプラチン+パクリタキセル, 症例2はネダプラチン+イリノテカンの2剤併用化学療法を施行した. 2症例共に抗がん剤の投与に応じて吃逆の出現, 増悪を認めており, 薬剤が誘発したと考えられた. 吃逆はメトクロプラミド, クロルプロマジン, ガバペンチンに抵抗性であり, プレガバリン 150 mg/日の投与によりすみやかに改善した. 【結論】鎮痛補助薬として近年用いられるようになったプレガバリンは, その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により吃逆にも効果がある可能性がある.
著者
片山 寛則
出版者
近畿作物・育種研究会
雑誌
作物研究 (ISSN:1882885X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-9, 2019 (Released:2019-09-06)
参考文献数
38

イワテヤマナシ(Pyrus ussuriensis var. aromatica)は東北地方に自生する野生ナシの1変種である.1940年頃までは利用されていたが,現在は地元でもほとんど知られておらず,消滅の恐れがある.筆者は遺伝資源としてのイワテヤマナシに注目し,1999年より北東北3県を網羅した探索調査を行ってきた.その結果1500本以上のナシ属植物が見つかり,その8割は北上山系に集中して分布していた.集団構造解析により真のイワテヤマナシ集団を推定し,保全単位や保全方法を検討した.またイワテヤマナシの起源を解明するため,中国大陸に自生する秋子ナシ(Pyrus ussuriensis)との系統関係を調査した.ところでイワテヤマナシはニホンナシにない様々な有用形質を持つ.ここでは芳香を取り上げ,香気分析や香気関連QTL座の決定,香りナシ育種について紹介する.筆者はイワテヤマナシを利用することで認知度を高め,その結果,普及し,保全されることを期待している.最後に2011年の東日本大震災で被災した三陸沿岸地域で展開したイワテヤマナシを復興のシンボルとする取組を紹介する.
著者
片山 寛 カタヤマ ヒロシ KATAYAMA HIROSHI
出版者
西南学院大学学術研究所
雑誌
西南学院大学神学論集 (ISSN:03874109)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.29-40, 2016-03

1933年から1945年までのいわゆるナチズムの時代のドイツのキリスト教会について,以前は,告白教会を善玉とし,ドイツ的キリスト者を悪玉とする単純な対立図式だけで論ずる傾向が強かった。しかし近年はむしろ,この時代を生きたもっと多様な教会像を検討する論考が多く見られるようになった。たとえば,Philipp Thull (Hrsg.), Christen im Dritten Reich)においては,これまでにもよく見られた,DEK(ドイツ福音主義教会)内部の上記の闘争と,カトリック教会内の諸問題の検討の他に,いくつかの教派Neuapostolische Kirche,Mennoniten, Pfingstbewegung, alt-katholische Kirche におけるナチズム時代が,それぞれの著者によって論じられている。そしてその最後に,Karl Heinz Voigt)は,「自由教会」と総称で呼ばれる15の小教派(上記とも重なるが,メノナイト,バプテスト,バプテスト系の兄弟団,エリム教会,メソジスト,福音主義共同体,ヘルンフート兄弟団,自由福音教会,セブンスデイ・アドヴェンティスト,古ルター派教会,古カトリック教会,救世軍,ミュールハイム連盟,神の教会,(ペンテコステ系の)フォルクスミッシオン)について,それらがDEKの告白教会運動から疎外された状況を論じている。自由教会はナチズムと闘うことができなかったことを批判されることが多く,自由教会自身がそれについて苦い後味を抱いているのであるが,それは彼らのせいだけではなかったというのである。この発表で特に取り上げたいのは,ドイツのバプテスト同盟Bund der Baptistengemeinden(1942年にいくつかの小教派を統合して,福音主義自由教会同盟Bund Evangelisch-Freikirchlicher Gemeindenに改称した。現代もバプテストはこの名称を使用している)がナチズムの時代をどのように生きのびたのかについてである。それを私は,Günter Balders の論文「ドイツ・バプテスト小史」の第5章「第三帝国と第二次世界大戦の時代(1933-1945)」)にもとづいて紹介したい。その上で,自由教会としてのバプテストが,どのようなものであり,どのような点で優れ,またどのような点で限界を持っていたかを考察したいと思う。
著者
吉田 祐 森川 充洋 呉林 秀崇 横井 繁周 小練 研司 村上 真 廣野 靖夫 片山 寛次 五井 孝憲
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.2389-2396, 2018 (Released:2019-06-28)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

目的:一時的回腸瘻造設術後のoutlet obstruction(以下OO)の危険因子や腹腔鏡手術との関連を明らかにし,予防策を検索する.対象・方法:過去10年間に一時的回腸瘻を造設した51例を対象に,OOの有無でOO群(5例)とNon-OO群(46例)に分け,患者背景,腹直筋の厚さ,挙上腸管と腹直筋との関係について後方視的に検討した.結果:OO群は全例男性であった.OOの危険因子は腹腔鏡手術(p=0.014),腹直筋の厚い症例(p=0.001)であり,特に腹腔鏡症例では挙上腸管が有意に腹直筋の中央付近を(p=0.010),そして腹直筋を斜め(p=0.041)に貫いていた.結論:腹腔鏡手術で回腸瘻を造設する際はOOを考慮すべきである.対策として,術前に腹直筋の厚さを評価すること,脱気後に腹直筋に垂直に腸管を挙上することが有用である.
著者
片山 寛之
出版者
農業技術協會
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.161-163, 1973 (Released:2011-03-04)
著者
片山 寛之
出版者
農業技術協會
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.208-213, 1973 (Released:2011-03-04)
著者
村上 真 森川 充洋 小練 研司 廣野 靖夫 五井 孝憲 飯田 敦 片山 寛次 山口 明夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1237-1243, 2013-12-31 (Released:2014-07-02)
参考文献数
20

消化器外科手術において汎発性腹膜炎などの創分類classⅢ以上の症例ではSSIは依然高値である。今回,消化管穿孔による汎発性腹膜炎手術でのincisional SSI(以下,I-SSI)予防に持続吸引皮下ドレーンが有用かをretrospective検討した。2006年4月から2011年12月までの期間で,上部消化管を除く消化管穿孔例97例を対象に,持続吸引タイプ皮下ドレーンの有無でI-SSIの発生率を比較した。全体における皮下ドレーン留置群のI-SSIは12.9%で,非留置群の37.9%と比較し有意(p=0.0097)に低率であった。特に大腸穿孔でI-SSIが54.5%から7.1%まで低下した。皮下ドレーンは,使用症例を創分類Ⅲ以上の汚染手術とし,ドレナージチューブの抜去時期,効果的な留置に留意すれば,I-SSIの予防に有効な手段である。
著者
片山 寛明
出版者
勉誠出版
雑誌
アジア遊学
巻号頁・発行日
no.35, pp.52-59, 2002-01
著者
新本 修一 林 泰生 土山 智邦 小林 泰三 片山 寛次 広瀬 和郎 山口 明夫 中川原 儀三
出版者
Japan Biliary Association
雑誌
胆道 = Journal of Japan Biliary Association (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.245-252, 1996-07-25
参考文献数
13

悪性胆道閉塞26例にstentによる27回の内瘻化を施行した.使用stentは12Frのtube stentと,expandable metallic stentのうちZ-stent,Strecker stent,Wallstentである.Wallstentは肝内胆管から総胆管まで屈曲した走向でのstent,胆管と十二指腸の間のstent,Z-stent閉塞に対するstent in stentに使用した.stentの種類と留置場所により再閉塞や感染等の成績を比較した.24例(88.9%)で外瘻tubeを抜去でき,22例(91.7%)が退院できた.8例が1~24カ月間無黄疸で生存中で,9例が2~15カ月後に無黄疸で原病死した.再閉塞や感染は7例(29.2%)に認められ,胆管と消化管との間のstentに多く認められた.stentの種類別では,tube stentの50%とStreckerの33.3%に認めWallstentでは11.1%と有意に少なかった.悪性胆道閉塞の内瘻化に,屈曲した走向での留置や下部胆管閉塞の内瘻化にも適応でき再閉塞や感染が少ないWallstentは有用と思われた.
著者
谷川 明希子 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.147-152, 2018 (Released:2018-04-18)
参考文献数
21

強オピオイドは癌性疼痛に有用であり,副作用は悪心・嘔吐,眠気,便秘等が知られ,過量投与では呼吸抑制や意識障害をきたす.今回,強オピオイド開始直後に悪心と羞明,少量で意識障害と縮瞳をきたした症例を経験した.79歳男性が肝細胞癌stage IVBで肋骨転移あり,癌性疼痛を認めた.除痛のための強オピオイド開始直後に強い悪心と羞明を認めた.オキシコドン塩酸塩水和物は強い悪心で中止し,モルヒネ硫酸塩水和物は羞明で中止した.フェンタニル貼付製剤は1 mgで一過性の健忘,2 mgで縮瞳と意識障害を認め,中止した.呼吸抑制は認めなかった.強オピオイドは羞明もきたしうる.少量でも縮瞳や意識障害をきたす症例もある.強オピオイド開始時に強い副作用や羞明を認めた場合には,少量でも縮瞳や意識障害をきたす可能性があり,注意した観察が必要である.
著者
児玉 麻衣子 小林 美貴 片山 寛次 田辺 公一 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.311-316, 2017 (Released:2017-11-28)
参考文献数
19
被引用文献数
4

医療者による緩和ケアの質評価尺度のうち,アウトカムの評価尺度としてGood Death Scale(以下,GDS)があり,その信頼性と妥当性が確認されている.本研究の目的は,言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順に従い,GDS日本語版(以下,GDS-J)を作成することである.順翻訳においてGDSの問3. Has the patient arranged everything according to his/her own will? の“will”の日本語訳と,その日本語訳「意思」の逆翻訳に意見の相違が見られた.研究チームで言語として原版と同等であると言語的妥当性を検討し,最終的には原版の開発者に承認を得てGDS-Jの確定とした.医療者による緩和ケアの質評価尺度であるGDS-Jを使用することで,自身の行う緩和ケアの質が評価可能となり,より質の高い緩和ケアの提供に役立つことが期待される.