- 著者
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田中 正則
- 出版者
- 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
- 雑誌
- 日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.9, pp.2267-2276, 2006-09-20 (Released:2011-05-09)
- 参考文献数
- 41
- 被引用文献数
-
1
大腸には特発性炎症件腸疾患(IBD)とそれ以外の多種多様な腸炎(non-IBD)がある.生検診断はこれらの疾患の鑑別に有用であるが,特異的所見を欠くものが多いために難易度が高い.この問題の解決に向けた研究が多変量解析を用いて行われ,Crohn病(CD),潰瘍性大腸炎(UC),non-IBDの3者を鑑別する生検診断基準がいくつか報告されている.最近発表された診断基準の感度・特異度は,96%・97%(IBD vs non-IBD)および92%以上・94%以上(CDvsUC)と高く,臨床応用できるレベルである.これらの診断基準を組み入れた診断アルゴリズムを用いることにより,活動期・急性期の大腸炎を系統的手順で診断することができる.UC患者については,ステロイド抵抗性・依存性を予測する生検診断基準も報告されている.しかし,切除標本を病理学的に検討してもCDともUCとも確定診断できないindeterminate colitis(IC)症例が3~10%は存在する.診断の時期と方法が施設により異なるため,CDあるいはUCへの診断変更率にはバラツキがあるが,ICとして手術された症例のうち少なくとも20%前後はCDであることでは一致している.