著者
宮地 泰士 杉原 玄一 中村 和彦 武井 教使 鈴木 勝昭 辻井 正次 藤田 知加子 宮地 泰士
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

自閉症の特徴の一つである「対人的相互作用の障害」は共感性の障害に基づくと考えられている。本研究では、自閉症の共感性の障害の神経基盤を探る目的で、機能的磁気共鳴画像(fMRI)により共感が惹起された時の前部帯状回の活動を計測し、自閉症との関連が指摘されているセロトニン・トランスポーター遺伝子多型との関連を検討する。平成21年度は、以下のように研究を進めた。平成20年度において選定した成人自閉症者5例、健常対照5例を対象に、他者の痛みを感じるような画像刺激を提示し、fMRIを撮像した。撮像プロトコルはTE=40msec,TR=3000msec,In-planere solution=3.1mm,スライス厚=7mm,ギャップ=0.7mm,18スライスとした。その結果、「身体的な痛み」、「心の痛み」のいずれを惹起する課題においても、活性化する脳領域に両群で有意な差はなかった。この結果には、例数の不足による検出力低下が影響していると考えられる。今後、さらに対象者を募る予定である。また、共感性の障害において前部帯状回と深く関係する脳部位の一つに海馬があるため、成人自閉症者の海馬における代謝物量を磁気共鳴スペクトル法により測定した。その結果、自閉症者の海馬ではクレアチン、コリン含有物が健常者に比べ増加しており、その増加は自閉症者の攻撃性と有意に正相関することを見出した(Int J Neuropsychopharmacol誌に公表)。
著者
小河 妙子 藤田 知加子
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.241-253, 2018-11-27 (Released:2019-01-10)
参考文献数
26

The purpose of this study is to extract an exhaustive list of words from the sentences printed in Japanese language textbooks used in elementary schools in Japan,and to investigate the number and frequency of occurrence of these words in Japanese language education. Morphological analysis software was used to extract the words. As a result,13,341kinds of words written in hiragana, katakana, and/or kanji were extracted from the printed letters published in elementary school textbooks. We counted the number of nouns, verbs, adjectives, formal verbs, and adverbs, and reported their frequencies in each part of speech. The accuracy of our morpheme analysis was lowest in the first-grade textbook,which was written in hiragana for the most part,due to the small number of kyoiku kanji. Comparison between this research and previous research showed that the proportion of common words in verbs and adjectives was as high as 70%or more,while it was relatively low in nouns. We have also discussed the problems related to the accuracy of morpheme analysis for sentences in elementary school language textbooks,the properties of the extracted words,and the differences from the words reported in previous studies.
著者
高橋 知音 荻澤 歩 茂原 明里 辻井 正次 手塚 千佳 戸田 まり 仲島 光比古 橋本 しぐね 藤岡 徹 藤田 知加子 森光 晃子 山本 奈都実 吉橋 由香
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では感情認知能力、社会的文脈と感情や意図を読み取る能力、社会的適切さや暗黙のルールの理解を多面的に評価する「社会的情報処理能力検査バッテリー」を開発した。それぞれの課題について信頼性、妥当性についてある程度の根拠が得られた。これは、自閉症スペクトラム障害のある人の社会性を評価することができる我が国初めての検査バッテリーと言える。報告書として音声刺激CDを含む実施マニュアルも作成した。
著者
伊藤 大幸 辻井 正次 望月 直人 中島 俊思 瀬野 由衣 藤田 知加子 高柳 伸哉 大西 将史 大嶽 さと子 岡田 涼
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.211-220, 2013

本研究では.保育士が日常の保育業務の中で作成する「保育の記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(NDSC)」(中島ほか,2010)の構成概念妥当性について検証を行った。4年間にわたる単一市内全園調査によって,年少から年長まで,延べ9,074名の園児についてのデータを得た。主成分分析を行ったところ,9つの下位尺度が見出され,いずれも十分な内的整合性を持つことが示された。9尺度のうち,「落ち着き」,「注意力」,「社会性」,「順応性」の4尺度は月齢との関連が弱く,子どもの行動的・情緒的問題のスクリーニングツールであるStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)との関連が強いことから,生来の発達障害様特性や不適切な養育環境による不適応問題を反映する尺度であることが示唆された。逆に,「好奇心」,「身辺自立」,「微細運動」,「粗大運動」の4尺度は,月齢との関連が強く,SDQとの関連が弱いことから,子どもの適応行動の発達状況を反映する尺度であることが示唆された。このようなバランスのとれた下位尺度構成によって,NDSCは,配慮が必要な子どもの検出と早期対処を実現するとともに,現在の子どもの発達状況に適合した保育計画の策定に貢献するツールとして有効性を発揮することが期待される。
著者
藤田 知加子
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.38-44, 1999
被引用文献数
2 1

The processing of Japanese written words has been supposed to depend only on their script, namely Kanji or Kana. There are, however, Kanji-Kana-combined-words (KKW; e.g., _??__??__??_), which signify their meanings as a whole. The purpose of this study was to examine whether the recognition unit corresponding to visual form information of the KKW is used in the lexical decision task. Experiment I showed that the more the number of the Kana letters was, the longer the recognition time of the KKW with unfamiliar script (e.g., _??__??__??_) was, while the effect was not obtained for the KKW with familiar script (e.g., _??__??__??_). In Experiment II, the lexical decision latency tended to be reduced by the existence of blank (s) between letters in the KKW with unfamiliar script. However, this effect was not obtained for the KKW with unfamiliar script. All these results suggest that the KKW is processed using the recognition unit which corresponds to visual form information of the whole-word.