- 著者
-
梶谷 卓也
平野 佳代子
澤木 弘之
浜田 誠一郎
平 雅成
永吉 顕
?梨 晃
萩原 秀彦(MD)
- 出版者
- 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
- 雑誌
- 関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, pp.141, 2011
【目的】<BR> サッカーは,キック動作を多用する下肢を中心とした動きの連続で,下肢外傷の発生頻度は高い.特に,股関節周囲の慢性的な疼痛を訴える選手が多く,その治療と予防には力が注がれている.競技特性として,ポジション別に身体操作に特徴があり,特にサイドプレーヤーでは,左右の下肢へ加わるストレスに違いがある.支持脚と蹴り脚について,大腿四頭筋の筋力や重心動揺など多くの研究がなされているが,両者の差は明らかにされていない.また,股関節機能に対する研究や,ポジション別に左右差を検討した報告は少なく,検討の余地がある.<BR> 本研究では,ポジション別の特性が股関節の機能に与える影響に着目し,利き脚と非利き脚における筋力及び可動域(以下ROM)について検討し,若干の知見が得られたので報告する.<BR>【対象】<BR> 本研究の趣旨を理解し同意を得た,下肢に既往のない高校サッカー選手20名(年齢17.2±0.7歳,身長170.9±6.3cm,体重62.5±6.4kg)とし,各ポジションの競技歴が3年以上の者を選定した.内訳は,センタープレーヤー10名(以下CP群),サイドプレーヤー10名(以下SP群)とした.尚,利き脚はキック動作を多用する側とし,SP群では,全員が利き脚と同側のポジションであった.<BR>【方法】<BR> 股関節外転・内転・外旋・内旋のROMと筋力を,下記の方法で測定した.A)ROM:日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会に準じ,角度計を用いて計測した.B)筋力:徒手筋力計(μTasF-1)を用いて各2回測定し,平均値を求めて体重比を算出した.統計学的処理は,CP群とSP群で各項目の利き脚と非利き脚における差について,対応のないt検定を用い比較検討した(P<0.05).<BR>【結果】<BR> CP群は,全ての項目で有意差は認められなかった.SP群は,筋力で内転(利き脚:0.903±0.15Nm/kg,非利き脚:0.739±0.14 Nm/kg),内旋(利き脚:0.736±0.18 Nm/kg,非利き脚:0.591±0.10 Nm/kg)に有意差が認められ,その他の項目では認められなかった.<BR>【考察】<BR> 結果より,CP群では差はなかったが,SP群において股関節内転・内旋筋力で,利き脚が非利き脚より高値を示した.SP群は,同一脚,特に利き脚でのキック動作を多用し,中でもインフロントキックを用いる局面が多い.インフロントキックは,テイクバックから股関節内転・内旋運動によって,インパクト,フォロースルーへ移行することが特徴的であり,結果との関連性が考えられた.従って,サッカー選手ではポジションの特性により,股関節機能に影響を与えることが示唆された.<BR>