著者
井原 正裕 高宮 朋子 大谷 由美子 小田切 優子 福島 教照 林 俊夫 菊池 宏幸 佐藤 弘樹 下光 輝一 井上 茂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.549-559, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
43

目的 近年の身体活動支援環境に関する研究成果より,地方よりも都市部の住民の身体活動レベルが高いと予想されるが,これを実証するデータは乏しい。そこで,国民健康・栄養調査のデータを用い,都市規模による 1 日の歩数の違いを比較検討した。方法 2006-2010年の国民健康・栄養調査における歩数計を用いた 1 日歩数調査に協力した20歳以上の男性15,763人,女性18,479人を対象とした。5 年分のデータを統合し,男女別に,歩数を都市規模間で(以下,市郡番号 1;12大都市・23特別区,2;人口15万人以上の市,3;人口 5 万人以上15万人未満の市,4;人口 5 万人未満の市,5;町・村)年齢調整の上,共分散分析および多重比較検定を行い,さらに傾向性検定を行った。年齢区分あるいは仕事の有無による層別解析も行った。統計法に基づき本データを入手し,研究実施に当たり,東京医科大学の医学倫理委員会の承認を得た。結果 年齢調整した 1 日当たりの歩数は,男性は市郡番号 1 では7,494±4,429歩(平均±標準偏差),市郡番号 2 では7,407±4,428歩,市郡番号 3 では7,206±4,428歩,市郡番号 4 では6,911±4,428歩,市郡番号 5 では6,715±4,429歩で,都市規模により有意に異なった(P<0.001)。女性は,都市規模が大きい順に,6,767±3,648歩,6,386±3,647歩,6,062±3,646歩,6,069±3,649歩,6,070±3,649歩で,男性と同様に都市規模により有意に異なった(P<0.001)。傾向性検定の結果,男女とも都市規模が大きいほど平均歩数が多かった(P for trend <0.001)。層別解析の結果,男女ともに年齢区分,仕事の有無によらず平均歩数は都市規模により有意に異なった。多重比較検定では,仕事のない男性,65歳以上の男性および女性では都市規模が小さい市群番号 3, 4, 5 の居住者間で平均歩数に差は認められず,仕事のある男性における,都市規模が小さくなるに従って歩数が減少するパターンとは異なっていた。結論 男女ともに,年齢調整後も都市規模により歩数は異なり,人口が多い都市の住民ほど人口が少ない都市の住民より歩数が多かった。また,都市人口の規模と歩数の関係は性別,年齢層や仕事の有無といった対象者の特性により異なった。
著者
金森 悟 甲斐 裕子 川又 華代 楠本 真理 高宮 朋子 大谷 由美子 小田切 優子 福島 教照 井上 茂
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.297-305, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
13
被引用文献数
4 4

目的:全国の企業を対象に,事業場の産業看護職の有無と健康づくり活動の実施との関連について,企業の規模や健康づくりの方針も考慮した上で明らかにすることを目的とした.方法:東京証券取引所の上場企業のうち,従業員数50名以上の3,266社を対象とした.郵送法による質問紙調査を行い,回答者には担当する事業場についての回答を求めた.目的変数を種類別健康づくり活動(栄養,運動,睡眠,メンタルヘルス,禁煙,飲酒,歯科)の実施,説明変数を産業看護職の有無,調整変数を業種,企業の従業員数,健康づくりの推進に関する会社方針の存在,産業医の有無としたロジスティック回帰分析を行った.結果:対象のうち415社から回収した(回収率12.7%).産業看護職がいる事業場は172社(41.4%)であった.健康づくり活動の実施は,メンタルヘルス295社(71.1%),禁煙133社(32.0%),運動99社(23.9%),栄養75社(18.1%),歯科49社(11.8%),睡眠39社(9.4%),飲酒26社(6.3%)の順で多かった.産業看護職がいない事業場を基準とした場合,産業看護職がいる事業場における健康づくり活動実施のオッズ比は,メンタルヘルス2.43(95%信頼区間: 1.32–4.48),禁煙3.70(2.14–6.38),運動4.98(2.65–9.35),栄養8.34(3.86–18.03),歯科4.25(1.87–9.62),飲酒8.96(2.24–35.92)で,睡眠を除きいずれも有意であった.従業員数が499名以下と500名以上の事業場で層化し,同様の解析を行った結果,いずれの事業場においても,禁煙,運動,栄養に関する健康づくり活動実施のオッズ比は有意に高かった.しかし,メンタルヘルスと歯科については,499名以下の事業場のみ実施のオッズ比が有意に高かった.結論:全国の上場企業の事業場において,企業の規模や健康づくりの方針を考慮した上でも,産業看護職がいる事業場はいない事業場と比較して栄養,運動,メンタルヘルス,禁煙,飲酒,歯科の健康づくり活動を実施していた.健康づくり活動の実施には,事業場の産業看護職の存在が関連していることが示唆された.
著者
谷 由美子 山本 命子 深谷 幸子 青木 みか タニ ヤマモト フカヤ アオキ Y. TANI N. YAMAMOTO S. FUKAYA M. AOKI
雑誌
名古屋女子大学紀要 = Journal of the Nagoya Women's College
巻号頁・発行日
vol.24, pp.93-102, 1978-03-15

"1.リノール酸またはコーンオイル添食による脂肪酸の生体内における挙動 リノール酸5g摂取によって血清のリノール酸は低下しアラキドン酸が4倍以上に増加した.しかしコーンオイル60g摂取によって,血清脂肪酸組成はアラキドン酸がやや減少しステアリン酸とオレイン酸は増加した.この相違については今後検討するつもりである.皮膚分泌物の脂肪酸組成は,リノール酸またはコーンオイル添食によっていずれもほとんど変動なく,パルミテン酸が30~40%をしめ次にステアリン酸,アラキドン酸が多く,いずれの場合も血清には不飽和脂肪酸が多く皮膚分泌物は大部分飽和脂肪酸よりなっていた.即ち血清成分がそのまま皮膚に浸透して分泌されるのではなく,汗腺,皮脂腺などで選択されて分泌されると考えられる.尿中脂肪酸組成はオレイン酸,ステアリン酸,パルミチン酸が多く,バルミトレイン酸は個体差が大きかった.必須脂肪酸は血清に比べて少く,コーンオイル摂取によって血清中の必須脂肪酸はほとんど変動しなかったが,尿中多価不飽和脂肪酸は増加した.2.リノール酸またはコーンオイル添食による血清脂質成分の変動 CHはいずれの場合も減少し,特にコーンオイル添食で著しく,従来血中のCHを低下させる因子の1つとして高度不飽和脂肪酸を含む植物油がよいとされている事実を裏付けた.CHを約48%含むβ-LPも同様に食後減少がみられた.TGは食後3時問に有意に増加した.これらの現象はリノール酸5g摂取よりもコーンオイル60g摂取の場合の方がその影響は顕著であった."
著者
辻原 命子 谷 由美子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編 (ISSN:09153098)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.39-49, 1992-03-05

特異動的作用(Specific Dynamic Action 以下SDAと略す)は,安静状態において食物の摂取による食物の消化・吸収における代謝亢進と体内における化学反応の結果発生するエネルギーで一般に体温保持に利用され,生活活動には利用されないといわれている..そしてこのSDAは糖質のみを摂取した場合は摂取量の約5%であるのに対し,脂質のみの場合は約4%であり,たん白質のみの場合は約30%に達し日本人の日常食のSDA平均値は約10%とされている.たん白質のSDAについては田中らがその発生機構をラットを用いて詳細に研究しており,鈴木らは被検者1〜2名で高糖質食,高たん白食,高脂肪・低たん白食,高たん白・高脂防食による食餌組成の相違およびエネルギー摂取量の相違によるSDAの時間的経過ならびにその大きさについて報告しているが,個体差があり一定の傾向がみられない.一方たん白質のSDAは糖質,脂質のSDAに比して著しく大であり,国民栄養調査においてもたん白質のエネルギー比は昭和50年14.6%,55年14.9%,60年15.1%,62年15.3%と徐々に増加してきており,一日の消費エネルギーにおよぼす影響は大きいと思われる また脂肪の摂取量も年々増加しているがそのSDAへの影響は不明である ところで近年はこのSDAに代わってほぼ同義的に食事誘発性体熱産生(diet-induced thermogenesis DIT)が広く使用されていており,特に一回の食事によるエネルギー代謝反応への影響をみる場合は,一般にDITを使用しているようである.そこで本実験では,ヒト7名を被検者としてエネルギーおよび脂肪量が一定でたん白質量をエネルギー比5%〜47%まで変動させた食餌およびたん白質量が一定で脂肪量をエネルギー比14%〜45%まで変動させた食餌を摂取させ,DITにおよぼす影響をしらべた.また生命維持のための生理的最小エネルギー代謝量を示す基礎代謝は従来より夏季に低く,冬季に高い傾向があるといわれていることよりDITとの関係は興味深いが,その報告はみられないため四季の区別の明確な日本におけるDITの季節変動について検討した
著者
関谷 由美子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.15-26, 1998-06-10 (Released:2017-08-01)

『夢十夜』の個々の話は、それ自体で完結していると同時に、それぞれが有機的な関連のもとに全体を構成している統一的なテクストなのであるから、個別と統合と、双方の解読を必要とする。小稿はその手掛りとして、<恋の話><室内を舞台とする話><何処かへ真直に向う男の話>など、幾つかの発想の基本型を要素として抽出し、幾つかの群に分類し、その展望に沿って十話全体を貫く構造を求めようとする試みである。
著者
金森 悟 甲斐 裕子 川又 華代 楠本 真理 高宮 朋子 大谷 由美子 小田切 優子 福島 教照 井上 茂
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.B15006, (Released:2015-08-12)
被引用文献数
5 4

目的:全国の企業を対象に,事業場の産業看護職の有無と健康づくり活動の実施との関連について,企業の規模や健康づくりの方針も考慮した上で明らかにすることを目的とした.方法:東京証券取引所の上場企業のうち,従業員数50名以上の3,266社を対象とした.郵送法による質問紙調査を行い,回答者には担当する事業場についての回答を求めた.目的変数を種類別健康づくり活動(栄養,運動,睡眠,メンタルヘルス,禁煙,飲酒,歯科)の実施,説明変数を産業看護職の有無,調整変数を業種,企業の従業員数,健康づくりの推進に関する会社方針の存在,産業医の有無としたロジスティック回帰分析を行った.結果:対象のうち415社から回収した(回収率12.7%).産業看護職がいる事業場は172社(41.4%)であった.健康づくり活動の実施は,メンタルヘルス295社(71.1%),禁煙133社(32.0%),運動99社(23.9%),栄養75社(18.1%),歯科49社(11.8%),睡眠39社(9.4%),飲酒26社(6.3%)の順で多かった.産業看護職がいない事業場を基準とした場合,産業看護職がいる事業場における健康づくり活動実施のオッズ比は,メンタルヘルス2.43(95%信頼区間:1.32–4.48),禁煙3.70(2.14–6.38),運動4.98(2.65–9.35),栄養8.34(3.86–18.03),歯科4.25(1.87–9.62),飲酒8.96(2.24–35.92)で,睡眠を除きいずれも有意であった.従業員数が499名以下と500名以上の事業場で層化し,同様の解析を行った結果,いずれの事業場においても,禁煙,運動,栄養に関する健康づくり活動実施のオッズ比は有意に高かった.しかし,メンタルヘルスと歯科については,499名以下の事業場のみ実施のオッズ比が有意に高かった.結論:全国の上場企業の事業場において,企業の規模や健康づくりの方針を考慮した上でも,産業看護職がいる事業場はいない事業場と比較して栄養,運動,メンタルヘルス,禁煙,飲酒,歯科の健康づくり活動を実施していた.健康づくり活動の実施には,事業場の産業看護職の存在が関連していることが示唆された.
著者
石井 香織 井上 茂 大谷 由美子 小田切 優子 高宮 朋子 下光 輝一
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.507-516, 2009-10-01 (Released:2009-11-11)
参考文献数
19
被引用文献数
6 12

Background: Perceived benefits and barriers to exercise are important correlates of exercise participation. Purpose: To develop a short version of the perceived benefits and barriers to exercise scale and to examine its validity and reliability. Methods: A population-based cross-sectional study of 865 participants (age: 20-69 years old, men: 46.5%) was conducted in four cities in Japan (Koganei, Tshukuba, Shizuoka, Kagoshima). Perceived benefits and barriers scale including five benefit subscales (physical benefit, psychological benefit, social benefit, weight management, self-improvement) with 10 items, five barrier subscales (discomfort, lack of motivation, lack of time, lack of social support, poor physical environment) with 10 items and stage of change for exercise behavior were assessed by self-administered questionnaire. Results: Confirmatory factor analyses to examine the construct validity revealed acceptable fit indices (benefit scale: GFI=.980, AGFI=.951, RMSEA=.058, AIC=151.669, barrier scale: GFI=.973, AGFI=.949, RMSEA=.060, AIC=166.084). Seven of ten subscales indicated significant linear associations with stage of change for exercise behavior, criterion-related validity was revealed. The reliability of the scale was found to be good as internal consistency and inter-rater reliability. Conclusion: The short version of the perceived benefits and barriers scale developed in this study demonstrated acceptable construct validity, criterion-related validity, internal consistency and inter-rater reliability.
著者
水谷 由美子 安倍 昭恵 武永 佳奈 水津 初美
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:18826393)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.27-49, 2014-03-31

This essay focuses on fashion design for agriculture development in Japan. Specially, I talk about a case study of the Fashion Show `Agriculture Style Collection 2013 in Nagato-Yuya with Aizu-Wakamatsu'. This project was motivated by our First Lady, Ms Akie ABE, who has been working in agriculture since 2001. I have already researched and created rural fashion incited from the daily wear of farmers. In this paper my co-researchers and I discussed about the planning of new developed Mompe pants, called Mompekko, and Haolina whieh is a shirt like the upper half of Samue(Japanese working wear), and newly developed hats and Saruppakama pants originating from Aizu-Wakamatsu-city. In this theme, we collaborated with traditional textiles, specializing in both striped clothes of Yamaguchi Prefecture(Yanai-jima)and Aizu-Wakamatsu-city(Aizu-momen). Additionally, I use the Kuga-tijimi, which Kuga people had asked me to develop into a proper design with them.
著者
関谷 由美子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.15-26, 1998-06-10

『夢十夜』の個々の話は、それ自体で完結していると同時に、それぞれが有機的な関連のもとに全体を構成している統一的なテクストなのであるから、個別と統合と、双方の解読を必要とする。小稿はその手掛りとして、<恋の話><室内を舞台とする話><何処かへ真直に向う男の話>など、幾つかの発想の基本型を要素として抽出し、幾つかの群に分類し、その展望に沿って十話全体を貫く構造を求めようとする試みである。
著者
関谷 由美子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.22-33, 1993-09-10

田川と須永が友達であることの作品における意味は、田川を須永一族に接触させ、それによって田川の日常に波瀾が生じ、かつ田川系の物語から須永系の物語へと移行してゆくための仕掛け以上のものではない。田川と須永の無関係性は、それぞれが中心となる世界の無関係性へと敷衍される。小稿の目的は、田川系と須永系、二系列の物語が背理の関係にあることを明らかにし、それを通して諸短編の連鎖に有機的統一性を見出すことにある。
著者
下光 輝一 大谷 由美子 小田切 優子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

運動習慣の獲得・継続に役立っ実践的介入方法を開発することを目的とし、1)行動医学理論モデルであるTranstheoretical Modelにもとづいた「運動行動変容の過程」尺度(POC)の新たな開発、および2)行動医学的手法を取り入れた集団ストラテジーに則った介入の層化無作為割付対照試験による効果の検討を行った。1)POCの開発:45項目,11概念(プロセス)の質問紙を作成した。某社社員を対象に実施し、調査研究に同意が得られた1,287名(対象者全体の53.1%)を分析の対象とした。確認的因子分析の結果,11プロセスのうち項目数3つ以上の9プロセスにおいてCronbachのα信頼性係数は0.7以上であり,高い信頼性が示された。また、対象者の運動習慣のステージ(SOC)とPOC11プロセス各尺度得点との関連を検討したところ、すべての尺度得点において、SOCによる有意差が認められ(p<0.001),SOCが高いほど高得点を示し,尺度の妥当性が確認された。2)介入効果の検討:規模と地域を考慮して、事業所単位で層化後、無作為割付を行い、介入事業所の社員(介入群)に対して、ポスター掲示および社内メールによる情報提供型の介入を、14回、6ヶ月間(1週間隔の集中的介入期間8週間を含む)行った。提供した情報は、身体活動・運動の健康影響や推奨されている活動量に関するもので、ベースライン評価時のSOCに応じて行動医学的技法を用いた情報を追加した。介入の前後で、SOC、POC11尺度得点、日常生活における身体活動量、加速度計による歩数の変化について検討したが、いずれの評価尺度も、介入群、対照群ともに有意な変化はなかった。集団ストラテジーに則った介入は、情報提供型が多いが、SOCに応じた行動医学的技法を取り入れても、行動変容を起こすことは困難であった。今後、効果的な介入方法の開発が必要である。
著者
角田 博明 仙北谷 由美 松岡 誠一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.11-17, 2002 (Released:2002-10-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

宇宙利用の活発化に伴い,宇宙で大きな構造物を構築する必要性が高くなってきている.宇宙インフレータブル構造は,複雑な展開機構やアクチュエータを使わず,大形な宇宙構造が構築できるため,近年注目を集めている.宇宙で展開したインフレータブル構造は,展開後に硬化させることにより,スペースデブリやメテオロイドによる損傷を防ぐことができる.インフレータブル構造の硬化層には,硬化前の状態で膜面の柔軟性を有し,常温で長期間の保管に耐えることが要求される.本論文では,繊維状に加工した熱可塑樹脂と強化繊維を使って織った織物を硬化層に使用した冷却硬化型インフレータブル構造を提案する.試験片を用いた実験から,樹脂の含浸に必要な温度と圧力を明らかにする.また,円筒状のインフレータブル構造を製作し,硬化実験を行った結果から硬化後に所定の構造物が得られることを示す.また,その供試体から切り出した試験片を分析し,樹脂の含浸状況やガラス繊維含有率を明らかにする.これらの検討の結果から,宇宙インフレータブル構造に対して熱可塑Co-Wovenを硬化層に用いることの技術的な実現性を示す.
著者
角田 博明 仙北谷 由美
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.19-26, 2002 (Released:2002-10-23)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

将来の移動体静止通信衛星では,これまでよりも大形な平面アンテナを軽量かつ高収納効率で実現する必要がある.しかしこれまでの平面アンテナは,大形化に伴い質量の顕著な増加や収納効率の低下などの問題がある.そこで,本論文では,軽量で柔軟性に富むアンテナ膜面をインフレータブル構造で支持する構成を取り上げた.平面アンテナ構造は,軽量化と柔軟な折り畳み性を目指して,PBO繊維を使った三軸織物複合材料を使ったメッシュ状の構造である.直径1.5 mの平面アンテナ構造を試作し,円環状のインフレータブル構造で支持した状態で面精度を測定した.インフレータブル構造は材質の異なる2種類を使い,内圧と面精度の関係を明らかにした.これより,折り畳みが可能で軽量な平面アンテナ構造の実現性の見通しが得られた.
著者
角田 博明 仙北谷 由美 渡邊 秋人
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-16, 2003 (Released:2003-05-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

宇宙インフレータブル構造の硬化層は,未硬化状態で折り畳みを容易に行えるようにするとともに,軽量化を達成するために,積層せずに1層で構成するのが望ましい.本論文では,三軸織物を硬化層に適用し,1層で硬化層を構成する,軽量で柔軟性を有する硬化型の宇宙インフレータブル構造を提案する.硬化層を1層で構成すると,構造上必要な膜厚を確保するのが難しくなる.そこで,太い繊維を使って低織密度で織った三軸織物プリプレグを作り,これを硬化層に使うことで,1層で0.5~0.6 mmの膜厚の硬化層を実現する.硬化 させるための樹脂に熱硬化型ロングライフ樹脂を適用した長さ2 m・直径150 mmの円筒状のインフレータブル構造を試作し,構造特性測定実験を行うことにより,同様の仕様による二軸織物を使用したインフレータブル構造との構造特性の違いを明らかにする.また,本提案の硬化層を用いて試作した外径2100 mm・管径150 mmの円環状インフレータブル構造を熱風の導入により硬化させ,折り畳みの柔軟性を有するインフレータブル構造に対して硬化方法の妥当性を示す.
著者
角田 博明 仙北谷 由美
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.17-18, 2003 (Released:2003-05-27)
参考文献数
2

加熱硬化型の宇宙インフレータブル構造は硬化時に,また熱可塑樹脂を用いた冷却硬化型では樹脂溶融時に加熱する必要があるため,電力などのエネルギが必要である.これに対して,紫外線硬化型の宇宙インフレータブル構造は,太陽光の照射による硬化が可能なので,大形な宇宙インフレータブル構造を電力等のエネルギを使わずに硬化させることができる.しかし,紫外線硬化型では太陽光のスペクトラムのうち250〜380 nmの波長を利用しているに過ぎず,紫外線以外の波長領域を利用できれば,硬化を効率良く行うことができる.本稿では,太陽光スペクトラムの中で,紫外線より放射照度が大きな波長域(380 nm以上の可視光線)を使って硬化させる光硬化型の膜材料について,試験片による硬化実験から硬化特性を明らかにする.
著者
水谷 由美子 田村 奈美 山本 成美
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:21894825)
巻号頁・発行日
no.14, pp.105-113, 2021-03-31

古来より生活の知恵あるいは風習として着物や洋服の古着や残された生地を活用して、新しい衣服や生活小物が作られてきたが、現代のアパレル産業においてもアップサイクルが課題となっている。本論でテーマにしているアップサイクルは、リユースのように、そのままを再利用することやリサイクルのように原料に戻す、つまり布から糸へそしてまた新たな布や別のものを作ることとは異なる。古くなって不要なものを捨てずにもともとの形状や特徴などを活かしつつ、新たなアイデアを加え、デザインすることで別のものを作ることを意味している。その結果作られた衣服にはより高いデザイン性があり、商品としての価値が高まっているというように、アップサイクルは、新たな価値創造をすることを意味している。ファッション領域では、マルタン・マルジェラが自身のブランドを立ち上げた1988年頃から脱構築主義や1980年代のバブル経済を背景とした使い捨て文化への対抗として、古着や鬘、エコバックや壊れた陶器など使い捨てられる前のあらゆるものを活かしたコレクションを発表している。彼のコレクションは芸術性が高く、マルジェラの固有のコンセプトとして評価されていたが、ハイファッションにおいて本格的な追随者は多くなかった。2015年に国連で持続可能な開発目標が採択され、地球温暖化や海洋プラスティックゴミの問題が喫緊の問題となってきた現在、服飾に関する廃棄物はファストファッションや大量生産服のみならず、プレタポルテやオートクチュールにおいても、解決すべき重要課題となっている。ファッション雑誌などのメディアでは「サステナブルファッション」という用語は頻繁に表紙を飾り、特集が組まれている。本論は、こうした時代背景を考慮しつつ、アップサイクルの1つの開発の手法として、回収された服ではなく、所有者が特定の1人であり、その人の服を使って3つのグループが一定のテーマのもとで、それぞれが1セットの服を作るというワークショップを実施した。マルジェラのようなイノベイティブな服飾デザインではなく、服飾におけるデザインペルソナの多様な活用の1つとして実践したワークショップで、服飾デザインのプロセスやその結果について検証し、アップサイクルなデザインの可能性について明らかにした。