著者
石島 英 セルバンド ナタニエル 宜野座 亮
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.467-478, 2006-06-30
参考文献数
18

北太平洋西部海域におけるバイナリー台風(相互作用しあう2つの台風を1組のシステムとみてBTSと略記する)の出現状況および特徴的経路モードの出現度数および出現背景について調べた.BTSは1年に約2回の割合で,5-11月に出現している.地理的には解析対象海域の中央部のブロックBにおけるE-W(東西方向)の初期相対位置から出現したケースが最も多かった.経路の特徴としては,BTS期間を通して相互に低気圧性回転・接近する経路(CAモード)が全体の約35%を占め,その中の約半数は併合したケースであった.前半の低気圧性回転・接近のあと高気圧性回転・離反に転じる経路(CADモード)は45%であった.相互に高気圧性回転を主とした経路(aCモード)は僅か10%であった.BTSを構成する2つの台風の強度は一般に不等であり,BTS期間平均の強い台風に対する弱い台風の強度比は0.64であった.強度およびサイズの不等性が経路モードの特性に影響する可能性を指摘した.
著者
北浜 優子 北嶋 曉 岡野 浩三 谷口 健一 キタハマ ユウコ キタジマ アキラ オカノ コウゾウ タニグチ ケンイチ Kitahama Yuko Kitajima Akira Okano Kozo Taniguchi Kenichi
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.3114-3121, 2000-11-15

形式的手法の設計導入教育への適用の有用性を調べるために,大阪大学基礎工学部情報科学科3年次学生のCPU設計実験において,(i)我々の研究グループで作成した検証システムを用いて設計の正しさを形式的に証明する設計手法(新手法),(ii)慎重な見直しや波形シミュレーションなどで設計の正しさを確認する設計手法(従来手法),の2つのコースを設けて,その2つのコース間で作業時間と設計したCPUにおける誤りの有無について2カ年にわたって比較を行った.定められた中間レポート提出期限までに誤りのないCPUを設計した学生は,従来手法コースでは42人中0人,新手法コースでは42人中41人であった.従来手法コースでは提出期限後に,教官が誤りを指摘して学生が設計を修正する期間を設け,この期間に19人が誤りのないCPUを設計した.中間レポート提出期限までに費やした全作業時間の平均は新手法43時間に比べて従来手法のほうが13時間ほど短かった.以上より,あらかじめ定められた期限までに正しいCPUを設計するためには,新手法は30%ほど作業時間がかかるものの効果的であることが確かめられた.
著者
粟谷 佳司 アワタニ ヨシジ Awatani Yoshiji
出版者
同志社社会学研究学会
雑誌
同志社社会学研究 (ISSN:13429833)
巻号頁・発行日
no.22, pp.9-19, 2018-03

研究論文(Original paper)本論文は、戦後日本の市民社会における「ひとびと」の位相を、鶴見俊輔の「大衆」概念と関連させながらその意義について考察した。最初に、鶴見の『戦後日本の大衆文化史』の議論を中心に、「大衆」「市民」「ひとびと」という概念が鶴見の方法において連続したものとして捉えられていることを考察した。続いて、高度成長期から消費社会と言われる1980年代の議論から、鶴見と吉本隆明の文化論を比較し鶴見の方法の意義を考察した。
著者
伊藤 理史 三谷 はるよ イトウ タカシ ミタニ ハルヨ Ito Takashi Mitani Haruyo
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.93-107, 2013-03-31

本稿は、「大阪府民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の調査記録である。調査の目的は、2011 年11 月27日に実施された大阪市長選挙・大阪府知事選挙における有権者の投票行動や政治意識の分析を通して、大阪府民の政治・市民参加の実態を明らかにすることである。調査方法は、大阪府下の20 ~ 79 歳の男女3,000 人を調査対象とした、層化三段無作為抽出法による郵送調査であり、最終的な有効回収数は962 人有効(回収率:32.1%)であった。本稿の構成は、次の通りである。まず第1 節では、調査の経緯について簡潔に記述し、第2 節では、調査の設計に関わる研究費の獲得と郵送調査の利点について記述した。続く第3 節では、調査票と依頼状の作成について、第4 節では、サンプリングと発送について、第5 節では、発送後の電話対応と督促状、データの回収数について、第6 節では、データ入力と職業コーディングについて、実際の作業内容を記述した。最後に第7 節では、データの基礎情報として、得られたデータとマクロデータと比較検討し、データの質について記述した。本稿で得られた結果は、たとえ小規模な研究助成にもとづいた大学院生主体の量的調査でも、ある程度の質と量の伴ったデータを入手できる可能性を示している。
著者
松谷 邦英 マツタニ クニヒデ Kunihide Matsutani
雑誌
国際基督教大学学報. II-B, 社会科学ジャーナル = The Journal of Social Science
巻号頁・発行日
no.60, pp.267-286, 2007-03-31

This essay attempts to explore Rene Girard's theory of violence while paying particular attention to the theme of "violence and political philosophy." Although Girard's works have had a wide influence on various academic fields, they have received little response from political theory or political philosophy. The basic purpose of the present paper is twofold: 1) to shed some light on Girard's theoretical insight which is based on his mimetic theory, and 2) to show that his theory of violence, particularly seen from a political standpoint, has some serious drawbacks in consequence of the mimetic theory. First, I will skeletonize Girard's theory of violence and point out some of its characteristics. The analysis of mimetic desire, on which Girard constructs an "anthropological" theory of sacrificial violence, enables us to gain multitiered and comprehensive understanding of human violence. Second, I will go on to examine how Girard's theory is connected to his diagnosis on modernity. It will be argued that Girard has an ambiguous comprehension of the nature of modern democratic society, since modernity both increases and decreases the potential energy of mimetic violence. I will show that Girard's perspective, especially his critical understanding of the modern jurisprudence, has something in common with W. Benjamin's critique of violence, yet does not lead us to a political critique of violence. Third, I will critically examine why Girard's theoretical construct is lacking in viewpoint that is required for any political critique of violence. This lack, I contend, can be explained by the basic nature of his mimetic theory. 1) Mimetic theory is potent enough to explain "interdividual"as well as intracommunal violence, but not intercommunal violence. 2) The logic of "the political" is absent from the Girardian perspective on human relations. This is why Girard tends toward "overcoming" of antagonism itself, but not to "politics" as in the sense of "taming" antagonism. 3) Mimetic theory, which mainly focuses on the symmetrical aspect of human desire, is unable to address properly the question of domination and subordination implicit in asymmetrical relations.
著者
大平 修司 スタニスロスキー スミレ 日高 優一郎 水越 康介
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.19-30, 2021-01-07 (Released:2021-01-07)
参考文献数
61
被引用文献数
2

ふるさと納税は,問題点を抱えているものの,着実にその規模が拡大している。一方で,ふるさと納税に関する研究は,その実態把握研究が大半であり,特に利用者研究は限定的な理解に留まっている。本稿では,まずふるさと納税を寄付型および報奨型クラウドファンディングとして理解し,利用者がふるさと納税を行う要因を検討する。次に寄付者が寄付を行う要因を検討する。さらにふるさと納税の返礼品を寄付つき商品と理解することでコーズ・リレーテッド・マーケティング研究を通じ,消費者が寄付つき商品を購入する要因を検討する。最後にふるさと納税の利用者を理解する枠組みを提示し,地方自治体のマーケティングへの示唆を述べる。
著者
"シブタニ タモツ 木原 綾香 奥田 真悟 桑原 司"
出版者
鹿児島大学
雑誌
Discussion papers in economics and sociology (ISSN:1347085X)
巻号頁・発行日
vol.1301, (Released:2016-10-28)

"タモツ・シブタニ著, 木原綾香, 奥田真悟, 桑原司訳"