著者
楠見 孝 子安 増生 道田 泰司 MANALO Emmanuel 林 創 平山 るみ 信原 幸弘 坂上 雅道 原 塑 三浦 麻子 小倉 加奈代 乾 健太郎 田中 優子 沖林 洋平 小口 峰樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,課題1-1「市民リテラシーと批判的思考のアセスメント」では市民リテラシーを支える批判的思考態度を検討し,評価ツールを開発した。課題1-2「批判的思考育成のための教育プログラム作成と授業実践」では,学習者間相互作用を重視した教育実践を高校・大学において行い,効果を分析した。課題2「神経科学リテラシーと科学コミュニケーション」では,哲学と神経生理学に基づいて推論と情動を検討した。さらに市民主体の科学コミュニケーション活動を検討した。課題3「ネットリテラシーと情報信頼性評価」では,放射能リスクに関する情報源信頼性評価とリテラシーの関連を調査によって解明し,情報信頼性判断支援技術を開発した。
著者
道田 泰司 Michita Yasushi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.147-153, 2003-03
被引用文献数
1

本研究では,大学1年時に読んだ文章と同じ文章を大学4年生に読ませ,読み方や考え方の変化およびその変化の原因が何だと本人たちは考えているかについて,インタビューを通して知ることを目的とした。考え方の変化に影響した事柄に関しては,次のことが言えるようであった。(1)卒論の影響をあげる人は多かったが,どういう点で影響を受けるかは人によって異なっていた。ただ,教員の批判的な言動の影響は全体的に大きいようであった。(2)友人関係も比較的多く言及された。(3)それ以外に,挙げられたものは多岐に渡っていた。(4)挙げられたものは,友人関係などの「日常的」体験と,論理的・批判的要素を含んだ「学校的」体験があり,両者の影響が排他的である可能性を示唆する発言があった。(5)学生の思考は,批判的かどうかは別にして,変化しないということはなく,本人が重視する方向にそれぞれ変化しているようであった。
著者
道田 泰司 Michita Yasushi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.169-181, 2012-03

本稿の目的は,大学教員として中学生に心理学の授業を計画し,実施したプロセスを報告することである。授業は90分,18名の中学3年生を対象に行われた。テーマは盲点の錯覚を中心とした知覚心理学としたが,テーマをどのように設定し,授業をどのように構想し,実施したのか。生徒の反応はどうであったか。このような点について報告することで,今後の中等教育における心理学教育について考える基礎資料とするのが本稿の狙いである。実践を実施した結果,盲点を中心に実験体験を通し,自分たちでも考えながら心理学に触れることの有効性が確認された。今後の課題としては,講義時間の長さや考える時間の確保,意見表出の方法などの方法論的な部分が挙げられた。
著者
道田 泰司 Michita Yasushi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.161-170, 2002-03

批判的思考を行うためには,「共感」や「相手の尊重」のような,soft heartが必要になることが論じられた。それは第一に,批判を行う前提として「理解」が重要だからであり,相手のことをきちんと理解するためには「好意の原則」に支えられた共感的理解が必要だからである。このことは,-聴して容易に意味が取れると思われる場合でも,論理主義的な批判的思考を想定している場合でも同じである。共感的理解には,自分の理解の前提や枠組みをこそ批判的に検討する必要がある。そのことが,臨床心理学における共感のとらえられ方を元に考察された。また,批判を行うためには理解の足場が必要であること,それを自分と相手に繰り返し行うことによって理解が深まっていくことが論じられた。最後に,このような「批判」を伴うコミュニケーションにおいては,「相手の尊重」というもう1つのsoft heartも重要であることが,アサーティプネスの概念を引用しながら論じられた。
著者
道田 泰司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.193-205, 2011-06-30 (Released:2011-10-21)
参考文献数
30
被引用文献数
4 1

本研究の目的は, 大学での半期の授業の中でさまざまな形で質問に触れる経験をすることが, 質問に対する態度や質問を考える力に効果を及ぼすかどうかを検討することであった。授業では毎回, グループで質問を作ること, 個人で質問書を書くことに加え, 半期に1回グループで発表させることで, 質問することが必要となる場面を作った。授業初回と学期の最後に, 質問に対する態度の自己評定と, 文章を読んで質問を出す課題を行った。2年度に渡る実践の両方において, 学期末の調査で質問に対する態度が全般的に向上しており, 質問量も増加していた。質問量の増加は, 事実を問う質問や意図不明の質問によるものではなく, 高次の質問の増加である可能性が示唆された。その変化がどのように生じたのかを知るために, 質問量と質問態度それぞれについて, 事前テストでの成績によって学生を4群に分けて事後テスト結果を検討した。その結果, 事前テスト上位群以外の学生の質問量および質問態度が向上していることが示された。以上の結果より, さまざまな形で質問に触れる経験をさせた本実践の効果が示された。
著者
道田 泰司
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.193-205, 2011
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 大学での半期の授業の中でさまざまな形で質問に触れる経験をすることが, 質問に対する態度や質問を考える力に効果を及ぼすかどうかを検討することであった。授業では毎回, グループで質問を作ること, 個人で質問書を書くことに加え, 半期に1回グループで発表させることで, 質問することが必要となる場面を作った。授業初回と学期の最後に, 質問に対する態度の自己評定と, 文章を読んで質問を出す課題を行った。2年度に渡る実践の両方において, 学期末の調査で質問に対する態度が全般的に向上しており, 質問量も増加していた。質問量の増加は, 事実を問う質問や意図不明の質問によるものではなく, 高次の質問の増加である可能性が示唆された。その変化がどのように生じたのかを知るために, 質問量と質問態度それぞれについて, 事前テストでの成績によって学生を4群に分けて事後テスト結果を検討した。その結果, 事前テスト上位群以外の学生の質問量および質問態度が向上していることが示された。以上の結果より, さまざまな形で質問に触れる経験をさせた本実践の効果が示された。
著者
道田 泰司 Michita Yasushi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.333-346, 2004-02

本稿では,批判的思考が良い思考であるのかどうかについて,意思決定と問題解決に焦点を当てて検討した。まず,すぐれた意思決定はきわめて批判的思考的であり,創造的な問題解決には,批判的思考的な技能が活かされていることが確認された。しかし,潜在的意思決定や暗黙の前提の存在を指摘することは,他者には受け入れられがたいことも多く,問題解決から離れる可能性のある,必ずしも良いとはいえないものであることが指摘された。これらは「解決・評価志向」と「探究志向」の批判的思考という枠組みで考察され,批判的思考の持つ「良さ」と「良くなさ」の2面性について論じられた。
著者
道田 泰司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.41-49, 2001-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
14 4

本研究では, 日常的な題材に対して大学生が, 批判的思考能力や態度をどの程度示すのか, それが学年 (1年・4年) や専攻 (文系・理系) によってどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。大学生80名に対して, 前後論法という論理的に問題のある文章3題材を読ませ, その文章に対する意見を自由に出させることで批判的思考態度を測定した。その後で, 「論理的問題点を指摘せよ」というヒントに対してさらに意見を求めることにより, 批判的思考能力を測定した。分析の結果, 全240の回答のうち, 批判的思考能力の現れと考えられる意見は88回答 (36.7%), その中で批判的思考が要求されていない場面でも批判的思考態度を発揮していたものは20回答 (22.7%) と少なかった。一貫した学年差や専攻差は見られなかった。多くの学生は, 情報の持つ論理よりも内容のもっともらしさや自分の持っている信念の観点から文章を読んでおり, この点を踏まえて批判的思考が育成されるべきであることが示唆された。
著者
道田 泰司 Michita Yasushi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.181-193, 2003-09
被引用文献数
2

本稿では、論理学における論理(的)の意味の検討から出発し、日常的にも利用可能な論理(的)のイメージが検討された。論理を「一本道」「防衛力」と理解することが有用であることが示された。また、論理的思考が、論理性という目標をもった批判的思考であることが論じられた。最後に、論理の不自然さや、相手にする他者の問題が検討され、それらを念頭において、論理的になるための方策が示唆された。
著者
道田 泰司 Michita Yasushi
出版者
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センター
雑誌
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センター紀要 = BULLETIN OF PRACTICE CENTER FOR EDUCATION OF CHILD DEVELOPMENTAL SUPPORT (ISSN:18849407)
巻号頁・発行日
no.9, pp.23-33, 2018-02

教員免許状更新講習・必修領域「子どもの変化についての理解」のうち,細目「子どもの発達に関する課題」では,「子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)」について教授することになっている。筆者は過去9年間この細目を担当する中で,特別支援教育を意識し,応用行動分析の基本的な知見について,実践例を交えながら講じてきた。その概要を紹介するとともに,それに対する受講生の反応を検討することで,免許状を更新する現職教員が,どのような学びを必要としているのかについて考察を行った。
著者
道田 泰司
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.617-639, 2003 (Released:2019-04-12)
被引用文献数
14
著者
道田 泰司 Michita Yasushi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.105-117, 2007-08
被引用文献数
4

本稿では,問いのある教育がどのようにありうるのかについて,いくつかの教育実践や実践研究を取り上げ,主に思考力育成という観点から考察した。質問書方式の実践では,大学生の8割以上が疑問を持ち考えるようになったことが示されている。質問の質を高める方法としては,質問語幹リスト法が挙げられ,これを用いた実践研究が検討された。また,わからないときだけでなくわかったつもりでいるときに質問を出すことの必要性も論じられた。最後に,小学校における質問力育成教育をいくつか概観し,質問力を育成するための示唆を得た。最後にこれらをいくつかの観点から整理し,今後の課題を検討した。