著者
金子 勝
出版者
法政大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、移民社会を抱えた先進福祉国家と移民を輩出する発展途上国との関係を、財政政策を媒介にして明らかにすることであった。先進国側では、移民社会の出現が、地方自治を通して福祉国家の縮小を促す。福祉的な社会サービスの受給者が移民であるのに対して、その税負担はもっぱら白人ミドル・クラスの財政課税に依存しているために、サービス受益者と税負担者が人種的の分裂してしまうからである。特に英米のようなアングロサクソン系諸国では、こうした傾向が強い。これに対して、南アジア諸国やフィリピンのような途上国では、移民達の送金が構造調整政策を支える役割を果している。1980年代以降貿易・為替政策の自由化や公的部門の縮小をはじめとする経済自由化政策を追求してきた。しかし脆弱な産業構造をもつ途上国では、さまざまな手段を講じて移民送金を引きつけようとするのである。また中国では華僑の投資が経済成長を先導している。このように移民社会の出現は、互いに経済自由化政策を支え合うという関係を作り出すのである。つまり、それは先進国の福祉国家を解体し、途上国では構造調整政策の実行を支える役割を果すのである。しかし、このことは、先進国・途上国の双方で、経済自由化政策に問題がないということを意味していない。先進国側では、マネタリスト的政策の一貫性は失われている。他方、途上国側では、経済自由化政策が外国投資の増加をもたらす反面、地域間格差や貧困問題を悪化させる側面をもっている。特に、地方財政分野では、税構造の歪み・インフラ事業の赤字や資金不足問題が生じており、教育・衛生・社会保障などの支出低下が生じているために、貧困問題の中長期的解決を遅らせているのである。
著者
金子 勝治
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学雑誌 (ISSN:00480444)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.213-219, 1966-08-15 (Released:2010-10-14)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1
著者
増田 亮一 山下 市二 金子 勝芳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.186-191, 1997-03-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

スイートコーン顆粒(sh2導入種)の呈味を支配する成分の糖,遊離アミノ酸および有機酸含量に,収穫時刻による差異があるのかを成分分析値および糖代謝酵素活性から検討した.1) スイートコーン顆粒の乾物重量は,日没時が多く,夜間に減少し,日出時に最低となり,再び増加する日変動を示した.食味に最も寄与するスクロース含量は午後に,デンプン含量は日没時に多い傾向は認められたが有意な差ではなかった.2) 一方,糖代謝酵素の活性から糖類の集積を検討したところ,スクロース蓄積と関連が深いADPグルコースーピロボスホリラーゼ活性は日没時に増加した.これはデンプン合成が促進され,スクロース含量が日没時に減少したことと一致している.また,日出時のスクロース合成酵素活性の低下は,夜間における顆粒へのスクロース転流量の低下を示唆していた.3) スイートコーンの食味に最も寄与するスクロースの収穫時刻による含量の変化率は約5.6%(0.5g/100g新鮮重)であり,食味に及ぼす影響は検知し難いと推定される.しかし,日没時のアラーンやリンゴ酸含量は,午後や日出時に比べて多く,収穫時刻によって食味に何らかの影響があるものと考えられた.4) スイートコーンの早朝収穫には収穫時点の成分含有量からみる限り必然性があるとはいえなかった.しかし,顆粒の品温は気温から30~40分程遅れて追随する日変動を示し,午後1時に最高,日出30分後に最低値となった.気温の低い早朝に収穫すると予冷に要する時間が短縮される効果があり,市場出荷を前提とした場合に妥当と考えられた.
著者
金子 勝一 小田部 明 山下 洋史 上原 衛 松田 健
出版者
山梨学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

若年者の離職・転職および失業の問題が深刻化している。これらの問題を大卒者に限定した場合、入社後3年以内の離職率は3割を超えている。また、若年者が仕事に対する理想と現実のギャップに悩んでいるという指摘がなされている。一方、情報技術(ICT)の急速な進展やグローバル化の流れの中で、多くの日本企業は、これまでのジェネラリスト重視の単線的な採用活動から脱却し、スペシャリストを含めた複線的な採用を進めようとする動きである。このような状況をふまえて、大学や企業・行政が学生の就業意識や職業能力の向上を図るための取り組みの一つとしてインターンシップに注目し、その導入を進めている。本研究では、インターンシップに着目し、大学と企業・行政・地域との関係におけるインターンシップの位置づけについて、人的資源管理論・組織論・情報管理論といった経営学的立場からその理論的枠組みの構築を試みている。研究期間の3年間に、インターンシップ導入大学の増加要因フレームワーク,インターンシップ導入による相互準アウトソーシング・モデル,'インターンシップの準インハウスソーシング・フレームワーク,低賃金アルバイト的インターンシップ・フレームワーク等、多くの研究成果を生み出し、それらの成果を学会発表や学術雑誌の論文として、公表してきた。これらの研究成果は、インターンシップに焦点を当て、学生、大学および企業間のコラボレーションの関係の議論を展開し、インターンシップに関する新たな視点を提示したものである。今後も、研究メンバーと共同で継続的に研究を進め、研究成果を公表するとともに、積極的に教育へ還元していく予定である。
著者
金子 勝 市川 次郎
出版者
金曜日
雑誌
金曜日
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.27-29, 2005-03-04
著者
赤塚 真依子 玉村 修司 五十嵐 敏文 金子 勝比古
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.131, no.7, pp.459-464, 2015-07-01 (Released:2015-07-01)
参考文献数
30

As one of the application of coal resources, domestic and overseas industries have been focusing on the recovery of methane from coal resources by methanogens using low-molecular weight acids or hydrogen that are converted from the organic matter in coal. For this application, it is essential to enhance the extraction of organic matter from low-rank coal (lignite) and maximize the conversion rate to consumable substrates for methanogen. In this study, we focused on the effects of chelating and reducing agents on the extraction of organics and metals from low-rank coal. Citric acid (chelating and reducing agent) and EDTA (chelating agent) were chosen as typical solvents. In the presence of citric acid, the Fe (II) concentration was correlated with the concentration of extracted organics as well as the total Fe. By contrast, the Fe (II) concentration was constantly at a low level for each EDTA concentration and pH. The absorbance (280 nm) of both solutions was almost the same when the total Fe concentrations were similar, regardless of the concentrations of Fe (II) , Al, Mg and Ca. These results indicated that organics from lignite were extracted with the leaching of Fe (III) and that the effects of reduction on the extraction of organics were insignificant. Excitation emission matrix spectra analysis suggested that humic acid was the main component of the extracted organics from lignite. The amount of acetic acid and formic acid released from 1g of lignite was calculated to be in the range 0.14 to 0.25 mg, and it was observed no correlation of the released amount with the citric acid /EDTA concentrations. Further research to obtain substrates such as low-molecularweight acids from the extracted organic materials is necessary for methane production using methanogens.
著者
金子 勝之 山崎 亮太 藪 李仁 曽山 美和 熊野 可丸 金田 勇 梁木 利男
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.8-13, 2001-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9

ポイントメーキャップにおいて爪化粧料は, 口紅に次いで主要なアイテムとして使用されている。さらに近年, ネールサロンやネールアートの台頭で, その使用者はますます増加し, 重要な化粧料に位置づけられてきている。このネールエナメルに求められる特性として, 「乾きが速い」「はがれにくい」「仕上がりが均一でつやに優れる」「爪に優しい」「つやや仕上がりの持続」等が挙げられ, その中で特に「乾きの速さ」に関する要望が強く, 常に求められる機能の上位に挙げられてきた。これに対し, 溶剤の揮散により被膜を形成する速乾性タイプのものが種々上市されてきたが, 塗布後の仕上がりの美しさが損われることから, これ以上の乾燥速度の短縮は困難とされていた。今回は「エナメルが乾く」という現象をまったく新しいユニークな発想で捉え, ネールエナメルの乾燥時間を飛躍的に短縮し, 超速乾性を実現した「水で乾かすエナメル」の技術開発を例に速乾性エナメルについて概説する。
著者
古賀 正則 W.F Menski 金子 勝 山本 一美 山本 由美子 浜口 恒夫 佐藤 毅 中村 平次 山崎 利男 松井 透
出版者
一橋大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1985

本年度の研究計画の目的は, 昨年度イギリスにおいて実施した調査によりえられたデータ,とりわけ面接調査票のデータを整理し, 一定の解析をおこなうことによって,今後の調査,研究に役立てることにあった. したがって, 本年度の研究成果はあくまでも中間的総括の域を出ないものであることを,まずことわっておきたい.1.研究成果の概要データの整理,解析によってえられた新たな知見,成果の要点は次の通りである.(1)第二次大戦後,イギリス植民地体制の崩壊にともなって,英領植民地各地に展開していたインド人移民社会は大きな変動を豪り,植民地本国イギリスへの大量の移動をひきおこすとともに,インド亜大陸からイギリスへの移住もまた激増した. こうしたインド人移民の大きな二つの流れに応じて,イギリスにおけるインド人社会の間にさまざまな面で大きな差異がみられることが明らかとなった.(2)イギリスにおけるインド人移民社会の形成,発展の歴史,およびインド人移民社会の構造,インド人移民の組織,政治,経済,社会,宗教活動などを,ある程度解明しえた. 殊にインド人移民のカースト,宗教組織の果す役割の重要性が注目される.(3)インド人移民社会の形成,発展は,イギリスの社会に大きなインパクトを与えつつあるが,他方インド人移民社会は,イギリス社会の影響を蒙り,一定の変容を受けながら,移民社会独自のアイデンティティを形成しつつある. そこにみられるのは,移民社会の受入れ国社会に対する一方的な同化の過程ではなく,多文化社会という新らしい社会の形成にむけての,共存的発展の過程であると考えられる.2.今後の研究の展望これまでの研究によってえられた新たな知見の一つは,インド人移民にとって必らずしもイギリスが最終的な移民先ではなく,かなりのインド人移民がイギリスを経由して,さらに他の英連邦諸国,とりわけカナダ,オーストラリア,あるいはアメリカ合衆国へ再移住しているという事実であった. われわれは今後の研究において,こうした再移住の過程を明らかにするとともに,インド人移民社会それ自体の変容と,受入れ国の社会にあたえるインパクトの解明を試みるつもりである. また,移民の主な送り出し地域の一つであるインドのグジャラート地方の調査を実施することによって,移民送出のメカニズム,海外移民の存在によって,この地方の蒙るインパクトを解明したいと考えている.
著者
川﨑 了 小潟 暁 広吉 直樹 恒川 昌美 金子 勝比古 寺島 麗
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.10-18, 2010 (Released:2013-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
14 15

筆者らは, 土や岩の代表的なセメント物質である炭酸カルシウムまたはシリカを主成分とし, 微生物の代謝活動により土や岩の間隙や岩の割れ目を自然に閉塞させる新たな概念に基づくグラウト, すなわち, バイオグラウトを開発するための基礎的な研究を実施中である. 本論文では, 炭酸カルシウムを用いたバイオグラウト, すなわち, 炭酸カルシウム法に関して検討を実施した結果について報告する. 具体的には, 日本各地より採取した自然の土壌中に生息する微生物を用いて試験管による炭酸カルシウムの析出試験を行い, 試験時における温度の違いが炭酸カルシウム析出に与える影響について調査した. その結果, 温度5~35℃の低~中温域において, 土壌微生物により炭酸カルシウムが試験管内に析出することが示唆された. 一方, 試験に用いた土壌微生物の菌数測定および遺伝子解析を実施し, 試験前後の土壌中に含まれる微生物相の変化に関して, 生菌数, 最も出現頻度の高い菌の菌数およびその帰属分類群を用いることにより比較を行った. その結果, それらは主にPenicillium属およびAspergillus属の菌類であり, 有機栄養源を活発に代謝することにより菌数が増加したものと推定された.
著者
金子 勝比古 村田 健司 柴 拓海 大見 美智人
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
日本鉱業会誌 (ISSN:03694194)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1187, pp.9-15, 1987-01-25 (Released:2011-07-13)
参考文献数
12
被引用文献数
2

To discuss the validity of theoretical expressions, shown in eq.(1), for rock deformability obtained in the 1st report, a series of experimental studies on the elastic moduli of rock is performed.To evaluate the theoretical expressions requires the knowledge of the crack density Φ, the intrinsic elastic moduli E and ν, the frictional coefficient μ on the crack surface, and the state coefficient q. q proposed in the 1st report is the ratio of the crack density of open cracks to that of total cracks.Four kinds of granite specimens with different crack concentration were employed in experiments. Modal analysis, hydrostatic compression test, and observation of cracks on the polished surface of specimens were carried out. By analyzing these results, the crack density and the intrinsic elastic moduli of the specimen were evaluated and the theoretical values of effective elastic moduli were calculated in two cases, that q=1.0 and q=0.0, by using eq.(1). q=1.0 corresponds to the case that all pre-existing cracks are open and q=0.0 corresponds to the case of closed cracks. The former condition gives the minimum values of the elastic moduli and the latter one gives the maximum values.The tangential elastic moduli of the specimen were measured as a function of the applied stress by uniaxial compression test. The maximum. and minimum values of elastic moduli obtained experimentaly were comnared with the thenretiral vallieq Reasonable agreement was obtained (shown in Table 3 and Table 4).It is concluded that the theory proposed has a promise to estimate rock deformability quantitatively.

1 0 0 0 沖縄に学ぶ

著者
金子 勝
出版者
文芸春秋
雑誌
文芸春秋
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.84-86, 2019-09
著者
金子 勝
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.1-58, 1982-08-05
著者
荒牧 憲隆 A.K.M. Badrul Alam 玉村 修司 上野 晃生 村上 拓馬 金子 勝比古
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.133, no.7, pp.173-181, 2017-07-01 (Released:2017-07-28)
参考文献数
33

Peat from highly organic soil is abundant in Northern Hokkaido, Japan. In the past, peat was used in various applications in Japan, such as an artificial culture of soil, as a fertilizer for gardening, and as an energy resource. However, peat is not used by the modern energy and manufacturing sectors in Japan because it has a high moisture content and low calorific value, which lowers its value as a resource considering its material characteristics and handling difficulties. Furthermore, large amounts of peat are generated at the construction sites in this area, and they are difficult to be reused at their generation sites because peat is a very soft soil and not suitable for construction work. Recently, many Japanese research institutions have been carrying out research and development on renewable energy resources including biomass energy. In Hokkaido, there are many biogas plants for methanizing biomass derived from livestock excrement or food waste. Thus, peat which is high in organic matter could potentially be used as an energy resource. In this study, we investigated the potential of utilizing peat as an energy resource for biogenic methane production in regional cities of Northern Hokkaido, while considering both its material characteristics and resource circulation. Batch tests using a hydrogen peroxide solution were performed on peat and silty soil to estimate the quantity of low-molecular-weight organic acids and the producing potential for biogenic methane gas. The oxidative decomposition of the peat produced a high yield of low-molecular-weight organic acids that were used as substrates for methanogenic microorganisms. In addition, a novel resource circulation method was proposed for peat in order to use it as an energy resource. Moreover, the energy resources problem in Northern Hokkaido was discussed in association with geographical parameters and the construction recycling system in Japan.