著者
田尻 康樹 鈴木 晋也 塚本 佳孝 神谷 祐二
出版者
一般社団法人 日本有病者歯科医療学会
雑誌
有病者歯科医療 (ISSN:09188150)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-8, 2007-04-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
8

慢性疲労症候群とは, 健康に生活していた人が, 突然の激しい全身倦怠感に襲われ, 長期にわたる微熱と, 強い倦怠感, 脱力感, 頭痛, 思考力の障害, 精神神経障害などが続き, 健全な社会生活が送れなくなる疾患である. 今回われわれは, 慢性疲労症候群の抜歯症例を経験した.16歳女性. 左側下顎大臼歯部の疼痛を主訴に来科. 口腔清掃状態は, 非常に不良で齲蝕が多く, 左側下顎第二大臼歯歯肉に腫脹を認め慢性根尖性歯周炎に起因する歯槽膿瘍と診断した. 消炎後, 感染根管処置を予定するも, 全身倦怠感による未来院が続いたため, 保存的処置を断念し, 入院管理下で抜歯した.慢性疲労症候群の患者は, 全身倦怠感のため通院が非常に困難であり治療時間も短時間に限られる. 治療方針を立案するにする際には, 常に治療回数を最小限に行うことを念頭に置くべきであり, 患者に与えるストレスが過大と予想される場合には入院下治療も考慮すべきと考えられた.
著者
塩塚 かおり 宇都宮 昭裕 鈴木 晋介 上之原 広司 西野 晶子 近江 三喜男 桜井 芳明
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.261-266, 2005-06-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
9

症例は41歳,男性。既往歴特記なし。自殺企図にて縫い針を後頸部に1針と前胸部に2針刺した。その後,乗用車を運転し側溝に転落した状態で発見された。他院にて気胸に対し胸腔ドレーンを挿入後,当院へ救急搬送された。来院時,強い胸部痛を訴えるも呼吸循環動態は落ち着いていた。各針の刺入点は皮膚上に観察されたが,いずれも皮下に埋没していた。神経学的所見としては,意識清明,四肢麻痺なく,明らかな感覚障害もなかった。頭部単純X線像では,後頸部皮下にその先端が大孔内まで達する約3cmの縫い針を認めた。胸部単純X線像では,左胸部に2本の縫い針を認めた。頭頸部CTでは,針の先端は延髄背側に達していた。胸部CTでは,1本の針が心臓壁に埋没しており,もう1本の針は胸壁にあるのが確認された。脳血管造影では,血管系への針による外傷はなかった。搬入当日に全身麻酔下に針の摘出術を行った。腹臥位にて針の刺入部を中心として開創した。X線透視を使用し皮下に埋没した針を捕らえた。針を全体に渡り露出した後,直視下に抜去した。針先端は延髄背側下部にまで達していた。次に,右側臥位にて心臓壁内に埋没した針と胸壁内の針を直視下に摘出した。術後,感覚異常等の神経症状はなかった。術後5日目に全身状態良好で,精神障害との診断で精神科入院となった。
著者
鈴木 晋介 井上 智夫 村上 謙介 江面 正幸 上之原 広司
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.200-207, 2016 (Released:2017-03-25)
参考文献数
32
被引用文献数
2 1

脊髄損傷の急性期の管理の要点は, ADL自立に向けて早期離床させ, 早期にリハビリテーションを開始することにある. 責任圧迫病変や高度不安定病変に対しての急性期早期観血的治療を行い早期に離床させることはその意味で理にかなっているものと思われる. 脊椎インストゥルメンテーションの使用により術後臥床期間の短縮が可能である. 本邦では近年, 高齢者脊髄外傷症例の著明な増加傾向を認める. 何らかの対策が必要である. 頚椎外傷では椎骨動脈損傷に留意し, その評価が重要である. 移植治療は今後有望な治療方法であるが, まだ決定的なところまでは行っていない. 今後待たれるところが大きい. 脊髄外傷の病態を理解しイニシアチブのとれる脳神経外科医が増えることを切望する.
著者
関根 康正 鈴木 晋介 根本 達 志賀 浄邦
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

関根は、2018年8月~9月に英国現地調査を実施した。移民3世が登場する1990年代以降、インド系移民社会内部に新たに現象してきた「不可触民」差別に対する解放運動の実態について関係組織を訪問しインタビューを行った。また、ロンドン大学SOAS図書館で関係資料収集を行った。2019年1月の研究会でその成果を「英国・ロンドンでのインド系移民のアンベードカラトの反差別運動について」と題して報告をした。根本は2018年8月~9月および2019年2月~3月、インドのナーグプルで計4週間のフィールドワークを行なった。特に仏教僧佐々井秀嶺が現地に保管する不可触民解放運動史料の確認・整理に取り組みつつ、佐々井と仏教徒による創発的な宗教実践と当事者性の拡張について調査を実施した。これに加え、ナーグプルおよび近隣農村におけるダリト(元不可触民)活動家男性と上位カースト女性の異カースト間結婚の調査にも取り組んだ。鈴木は2019年2月にスリランカでのフィールドワークを行った。シンハラ仏教僧や在スリランカ・インド僧(Mahamevnawa僧院)への追加インタビューを通じて、南アジア上座部仏教圏におけるアンベードカライト的言説の評価の輻輳性の考察に資する言説データを蓄積するとともに、巡礼を中心としたインド、スリランカ両国仏教徒のトランスナショナル・ネットワークの実態に関する一次資料の収集に取り組んだ。志賀は文献研究として、アンベードカルによる『ブッダとそのダンマ』の第3部と『改宗(ヒンドゥー教からの離脱)』のテキスト分析と内容の比較を行った。定例の研究会においては、仏教徒のアイデンティティの二重性、改宗が持つ意味、仏教徒の行為主体性等について考察し報告した。また2019年3月にインド・ナーグプルを訪問し、トランスナショナルな仏教者ネットワークや仏教徒の行為主体性などについて現地調査を行った。
著者
関根 康正 野村 雅一 小田 亮 鈴木 晋介 和崎 春日 近森 高明 北山 修 南 博文 Teasley Sarah Salzbrunn Monika 阿部 年晴 Gill Thomas 朝日 由実子 村松 彰子 西垣 有 内藤 順子 Subbiah Shanmugampillai 根本 達
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現代のネオリベラリズムに抗してストリート人類学を確立することが本研究の目的である。そのためにストリート・ウィズダムとローカリティの生成の実態把握を行った。研究成果のキーポイントは、中心からの徹底した一元化としての「ネオリベ的ストリート化」が作り出す敷居(ストリートエッジやローカルエッジ)での創発行動の解明にあり、そこでは「自己が他者化」するという動的過程が必ず見いだされ、それを「根源的ストリート化」と概念化した。エッジを不安定とともに生きている人々は現代人の生の本質を映す鏡である。その状況は「人が生きるとは何か」という哲学的究極の問いを現実的に問う。その探求にストリート人類学の存在意義がある。
著者
竹中 毅 相澤 祐一 鈴木 晋太郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.570-575, 2009-09-01

音楽の設計は,他の人工物の設計と比べて,環境条件や目的を明示化することが極めて困難である.そのため,音楽の設計理論に対する科学的,工学的なアプローチは少なく,作曲行為は人間の暗黙知に大きく依存している.一方で,既存の音楽には時代や地域を超えた共通性が見られることから,音楽的秩序には人間の認知的・身体的特性に基づく必然性があると思われる.筆者らは,人間の認知的特性に基づいて,創発的に楽曲断片を生成することで,音楽の発生学的な根拠を理解することを目的としてきた.本稿では,筆者らの研究例を紹介するとともに,新たな音楽設計理論の可能性について議論したい.
著者
鈴木 晋 茨木 俊秀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.48-58, 2001-01-15

演繹データベースの新しい問題クラスである直積問題クラスを定義する.直積問題クラスは右線形問題や同世代問題を包む,datalog問題クラスの部分クラスである.このクラスを効率的に解くために直積法を提案する.従来の方法が中間データとして基礎アトムを生成するのに対し,直積法は基礎アトムの集合を直積を利用して簡潔に表す式を生成する.これにより,直積法は生成する中間データの数を減らして,問題を効率的に解こうとする.直積問題クラス全体に適用できる従来の方法の中ではマジック集合法が最も効率的であると思われる.そこで,直積法とマジック集合法の効率を比較するために,直積問題の例として同世代問題の再帰ルールを複数にした問題および非線形にした問題を使って,計算機実験を行った.実験の結果,ファクトをランダムに生成した場合,どちらの問題に対しても問題がファクトを密に含むとき,直積法がマジック集合法より効率的であることが分かった.We define a new problem class of deductive databases, called the Cartesian product problem class (abbreviated to the CP class).The CP class is a subclass of the datalog problem class, and includes the right-linear problem, the same generation problem and others.To solve the CP class efficiently, we propose the Cartesian product method (abbreviated to the CP method).Although all the existing methods generate ground atoms as intermediate data, the CP method generates Cartesian products, each of which compactly expresses a set of ground atoms.Thus the CP method tries to reduce the number of generated intermediate data and, consequently, to solve problems efficiently.Among the existing methods applicable to the whole CP class, the magic set method seems most efficient.For performance comparisons of these two methods, we conducted experiments with two types of modified same generation problems, where one had two recursive rules and the other a non-linear recursive rule.The experimental results show that the CP method is more efficient than the magic set method when problems densely contain the facts generated at random.