- 著者
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鈴木 康弘
杉田 律子
鈴木 真一
丸茂 義輝
- 出版者
- 日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.10, pp.825-830, 1997
- 参考文献数
- 25
- 被引用文献数
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ひき逃げ事件で重要な物的証拠となる自動車用フロントガラスの微細片について, これに含まれる微量不純物をICP-MSで定量し, 分析値の比較によるガラス片相互の異同識別を試みた.マイクロ波加熱分解装置を利用して, 5mg以下のガラス片を粉砕せずに迅速に分解する条件を検討した.分析操作は以下のとおりである。試料約10mgを精ひょうしでテフロン製密閉容器に移し, フッ化水素酸及び過塩素酸各0.5mlを加えた後, マイクロ波加熱によりガラス片を完全に分解した.これに硝酸2ml及び内標準として10μg/mlのPd溶液0.1mlを加え, イオン交換蒸留水で25mlに希釈して測定用試料溶液を調製した.異同識別に有効な不純物として, Co, Rb, Sr, Zr, Ba, La及びCeの7元素が検出された.本法によるNIST標準試料の分析値は, CoとZrを除いて保証値と良好な一致を示した.本法を実際のフロントガラスの分析に応用したところ, 同一試料内での分析値の変動は異なる試料間の差異と比較して十分に小さく, 分析値の比較はガラス片相互の異同識別に有効であった.