著者
為栗 健 井口 正人 真木 雅之 中道 治久 味喜 大介
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

桜島火山では1955年以降、山頂火口においてブルカノ式と呼ばれる爆発的噴火を繰り返している。東側山腹の昭和火口では2006年に58年ぶりに噴火が再開し、2009年以降は特に噴火活動が活発化していた。2018年以降は昭和火口から南岳山頂火口に噴火活動が再度移行している。爆発的噴火の特徴として、火山弾の放出、衝撃波の発生、急激な火山灰や火山ガスの放出が上げられる。他にも、頻度は少ないものの南岳山頂火口や昭和火口の爆発的噴火では小規模な火砕流の発生が上げられる。火砕流は高温の火砕物や火山ガスが山腹斜面を高速で流れ下るもので、火山噴火の中で最も危険な現象の一つであり、火山防災上、その発生予測は必要不可欠である。1967年以降~1985年の間に南岳山頂火口における噴火に伴い7回の火砕流が確認されている(加茂・石原,1986)。さらに、気象庁によると2006年~2014年に昭和火口の噴火に伴い37回の火砕流発生が報告されている。いずれの火砕流も流下距離は2km未満で小規模なものであった。活発な噴火活動を続ける桜島であるが、火砕流はすべての噴火に伴うわけではなく、同規模の噴火でも火砕流が発生しない場合が多く、桜島における火砕流発生メカニズムの解明には至っていない。今後、噴火活動が活発化した際には大規模な火砕流の発生も考慮する必要があり、火砕流を伴う噴火の発生メカニズムの解明と噴火の前兆現象から火砕流が発生した場合の規模予測をすることが重要である。本研究では2012年~2018年に昭和火口で発生した火砕流、および2018年6月16日に南岳山頂火口において発生した爆発的噴火に伴う火砕流について前兆地震活動や地盤変動データの特徴を明らかにする。また、観測される前兆地震や地盤変動から火砕流が発生した場合の流下予測が可能かについて検証を行う。6月16日に発生した南岳山頂火口における爆発的噴火では噴煙高度4700mに達した。噴石が6合目まで飛散し、火砕流が南西方向に1.3 km流下した。噴火の発生約18時間前から地盤の膨張が観測されていた。噴火の1時間ほど前から散発的に前駆地震が発生していたが、昭和火口の噴火の際に観測される前駆地震と比較するとあまり明瞭な群発活動ではなかった。噴火時の映像から火砕流は噴煙が上昇し始めた約1分後に噴煙柱の根元から降下した噴出物が斜面に流れ下って発生していたことが分かる。火砕流は噴火と同時に発生しているわけではなく、これは南岳活動期に発生していた火砕流と同じ特徴を持っている(加茂・石原,1986)。噴火による地盤変動の収縮量から噴出物量は28万m3と推定される。それら噴出物の全てが火砕流となるわけではなく、火山灰として飛散していくものもある。地盤変動の膨張量から噴火による噴出物量の予測は可能であるが、火砕流の流下予測を行うためには斜面を流下する噴出物量を推定する必要がある。気象レーダーを使用した空中に放出された火山灰量の測定や降下火山灰の実測値などから火砕流となった噴出物量の推定を行うことが可能である。これにより前兆現象である地盤膨張量から火砕流発生時の最大流下距離の予測を行う。
著者
三隅 良平 真木 雅之 岩波 越
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.697-704, 2011-08-31
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
真木 雅之 播磨 屋敏生
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.581-597, 1988
被引用文献数
16

盆地において,まわりの山地斜面からの冷気の移流•堆積が地表面の夜間冷却量に及ぼす効果を1次元の数値モデルを用いて調べた。数値モデルは冷気の移流•堆積による大気層の冷却を熱収支的な立場から考慮したものである。計算結果によれば,例えば,盆地の深さが500m の場合,風の弱い快晴の夜間に,盆地底での夜間冷却量は平坦地に比べ約15%(冬期)から約25%(夏期)大きくなり,山頂や丘陵頂部に比べ約40%(冬期)から約90%(夏期)大きくなる。これは,盆地のようにまわりを山で囲まれたところでは山地斜面からの冷気が盆地中央部上空へ移流•堆積するために,盆地底での下向きの大気放射量が小さくなり,地表面の放射冷却を強めるためである。この冷気の移流•堆積の効果は深い盆地ほど顕著である。移流による大気層の冷却が盆地に比べて小さい山麓の地表面冷却量は盆地に比べて小さくなるが,平坦地に比べて約10%(冬期)から約15%(夏期)大きく,山頂や丘陵頂部に比べて約30%(冬期)から約75%(夏期)大きくなる、計算された結果は AMeDAS で観測された結果と比較して妥当なものであった。
著者
真木 雅之 前坂 剛 岩波 越 三隅 良平 清水 慎吾 加藤 敦 鈴木 真一 木枝 香織 Lee Dong-In Kim Dong-Soon 山田 正 平野 廣和 加藤 拓磨 小林 文明 守屋 岳 鈴木 靖 益田 有俊 高堀 章
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.11, 2008

次世代の豪雨強風監視システムとして,防災科学技術研究所が複数の研究機関,大学と連携して進めているXバンドレーダネットワーク(X-NET)の概要について述べた.2007昨年度に準備を終了し,2008年と2009年の試験観測を通じて以下の項目に焦点を当てた研究をおこなう.•首都圏上空の雨と風の3次元分布(時間分解能6分,空間分解能は数100m~500m)の瞬時集約と配信.•上記の情報に基づく豪雨域,強風域の検出と監視.•外そう法による降水ナウキャスト,およびデータ同化した雲解像数値モデルによる降水短時間予測.•局地気象擾乱の構造,発生過程,発生機構の理解.•都市型災害の発生予測手法の高度化.•気象学,防災研究,気象教育,建築,都市,交通,電力,通信,情報,レジャー産業などの様々な分野における基礎的な気象データベース作成.
著者
瀬古 弘 加藤 輝之 斉藤 和雄 吉崎 正憲 楠 研一 真木 雅之 「つくば域降雨観測実験」グループ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.929-948, 1999-08-25
被引用文献数
7

台風9426号(Orchid)が日本列島に接近した1994年9月29日に、関東平野にほぼ停滞するバンド状降雨帯が見られ10時間以上持続した。つくばにおける特別高層観測、2台のドップラーレーダーおよびルーチン観測のデータを用いて、この降雨帯を解析した。この降雨帯はニンジン形の雲域を持ち、バックビルディング型の特徴を持っていた。南北に延びた降雨帝はマルチセル型の構造をしていて、その中のセルは降雨帯の南端で繰り返し発生し, 西側に広がりながら北に移動した。水平分解能2kmの気象研究所非静水圧メソスケールモデルを用いて、数値実験を行った。メソ前線は実際の位置の約100km南東に形成されたが、バックビルディング型の特徴を持つニンジン型の形状のほぼ停滞する降雨帯が再現され、3時間以上持続した。セルが北西に移動すると共に降雨帯の東側で降水が強化されて、ニンジン形が形成されていた。降雨帯の形成メカニズムを調べるためにまわりの場と雲物理過程を変えて感度実験を行った。その結果、中層風の風上側からの高相当温位の気塊の供給と風の鉛直シアが重要であることがわかった。