著者
和佐野 喜久生 湯 陵崋 劉 軍 王 象坤 陳 文華 何 介均 蘇 哲 厳 文明 寺沢 薫 菅谷 文則 高倉 洋彰 白木原 和美 樋口 隆康 藤原 宏志 佐藤 洋一郎 森島 啓子 楊 陸建 湯 聖祥 湯 陵華 おろ 江石 中村 郁朗
出版者
佐賀大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本学術調査は農学及び考古学の異なる専門分野から、東アジアの栽培稲の起源に関する遺伝・育種学的研究および中国の古代稲作農耕文化の発祥・変遷・伝播についての中国での現地調査、考古遺物・文献・資料の収集とその研究解析、現地専門家との討論を行うことであった。これまでの3回の海外調査によって、多くの研究成果を得ることができた。研究代表者の和佐野がこれまでに行った古代稲に関する調査は、中国の長江のほぼ全流域、黄河の中下流域、山東半島、遼東半島および海南島の中国全土にわたるものとなった。また、調査・測定した古代稲の実時代は、新石器時代の紀元前5,000年から前漢時代までの約5,000年の長期間に及び、その遺跡数も18カ所になった。稲粒の粒大測定は、大量にあるものからは約100粒を任意抽出し、それ以下のものは全粒を接写写真撮影によって行った。また、中国古代稲の特性を比較・検討するために、韓国の2カ所および日本の14カ所の古代遺跡の炭化米の調査も並行して行った。以上の調査結果に基づいて、次のような結論を得ることができた。(1)紀元前5,000年ころの気温は現在より2度は高かったこと、および北緯30度周辺に位置する城背渓および彭頭山遺跡文化(紀元前6,000-7,000年)の陶器片および焼土中に多くの籾・籾殻・稲わらの混入が発見されたことから、紀元前6,000-7,000年頃には北緯30度付近に稲(野生か栽培されたものかは分からない)が多く生育していたと考えられる。彭頭山遺跡の籾粒は6ミリ前後のやや短粒であった。(2)古代稲粒の大きさ・形の変異の状況および稲作遺跡の時代的新旧の分布状態から、東アジアの稲作は、長江の下流域・杭州湾に面した河姆渡および羅家角両遺跡を中心とした江南地方に、紀元前5,000年以上溯る新石器時代に始まったと考えられる。(3)長江の中流域には、紀元前6,000-7,000年の城背渓および彭頭山遺跡から稲粒が発見されているが、稲作農耕の存在を証拠づけるものがまだ発見されていないこと、河姆渡および羅家角両遺跡と同時代の紀元前5,000年頃の稲作遺跡が存在しないこと、中流域に分布する多くの遺跡が紀元前3,000-4,000年のものであること、などから、稲作は下流域から伝播したものと考えられる。(4)長江の最上流域の雲南省の稲作遺跡は紀元前1,000-2,000年の新しいものであり、稲粒も粒が揃った極端な短円粒であること、さらには、雲南省の最古の稲作遺跡である白羊村遺跡の紀元前2,000年頃には、黄河流域からの民族移動の歴史があること、などから、稲作のアッサム・雲南起源説は考えられない。アッサム・雲南地域は、周辺地域から民族移動に伴って生じた稲品種の吹きだまり(遺伝変異の集積地)の可能性が強いことを提唱した。(5)黄河の中下流域の前漢時代の古代稲は、長大粒で日本の現在の栽培稲とは明らかに異なるものであったが、淮河流域の西周時代の焦荘遺跡の炭化米は、九州の弥生中期の筑後川流域のものによく類似した。(6)山東半島の楊家圏遺跡(紀元前2,300年)の焼土中の籾粒は日本の在来の稲品種によく類似したが、遼東半島の大嘴子遺跡の炭化米は短狭粒で、韓国の松菊里遺跡(紀元前500年)、あるいは日本の北部九州の古代稲粒のいずれとも異なるものであった。このことから、稲作が朝鮮半島の北から内陸を南下したとは考えられない。(7)山東半島の楊家圏遺跡、松菊里遺跡(紀元前500年)、および日本の北部九州最古の稲作遺跡・菜畑遺跡のやや小粒の古代稲粒は、浙江省呉興県の銭山漾遺跡の炭化米粒の中に類似するものがかなり見られた。このことは、日本への最初の稲作渡来が江南地方から中国大陸の黄海沿岸に沿って北上し、山東半島から韓国の西海岸を南下しながら北部九州に上陸した可能性を示すものである。森島、湯および王は、雲南省と海南島の野生稲の現地調査を行い、中国の野生稲の実態を明らかにした。佐藤は河姆渡遺跡の古代稲の電子顕微鏡写真撮影によって、同遺跡の稲が野生稲の特徴である芒の突起を有すること、さらに小穂の小枝梗の離層が発達していることを確認した。藤原と湯は、江蘇省青浦県の草鞋山遺跡(紀元前3,400年)周辺を発掘し、当時の水田遺構の確認および稲のプラントオパール分析を行い、当時の稲作の実態を明らかにした。樋口、白木原、高倉、菅谷および寺沢は、それぞれの専門から研究を行い、現在報告書の成作を完了した。厳、蘇、陳、何および劉は、新石器時代の稲作文化および古代民族移動に関する報告書を作成した。
著者
宿輪 哲生 陳 文雅 小林 亜紀子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.477-482, 2002-08-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
37
被引用文献数
3 2

1999年1月から2000年12月までに佐世保市立総合病院皮膚科を受診した帯状疱疹患者について統計的観察を行った。男119例,女157例,計276例で外来新患総数の4.1%を占めた。年齢別では60歳台が最も多く,20歳台に小さなピークがみられた。76.8%が基礎疾患を有し,疾患別では悪性腫瘍が最も多かった。発症3週前までの疲労を認めた患者は55.8%にみられ,20,30歳台では80%以上を占めた。発生部位は躯幹上部,頭頚部,躯幹下部の順に多く,発症より初診までの平均期間は6.0日であった。疼痛の改善率はプレドニゾロン81.6%,アミトリプティリン80.3%,柴苓湯76.8%,ロフラゼプ酸エチル52.6%だった。皮疹の改善率はトレチノイントコフェリル軟膏93.2%,スプロフェン軟膏83.3%であった。発症から皮疹消失までの平均期間は18.4日,疼痛消失までの期間は39.0日だった。発症後3日以内に抗ウイルス剤を投与された群はそれ以降の投与群に比べ皮疹及び疼痛消失までの期間が有意に短縮していた。帯状疱疹の再罹患例は22例(8.0%)であった。
著者
宋 一〓 山根 爽一 何 鎧光 陳 文雄
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.33-45, 2006-06-25
参考文献数
48
被引用文献数
1

タイワンハリナシバチ(Trigona ventralis hoozana)と台湾産トウヨウミツバチ(Apis cerana ssp.)の地理的分布を,過去の文献・標本と1994年から2005年にかけて著者らが全15縣と2市の42地点で行った調査に基づいて調べた.ハリナシバチは,台湾島を南北に貫く縦貫山脈の中部から南部にかけての山地で,海抜250〜2,500mの範囲の森林地帯で確認された.それらは,台中縣と南投縣,嘉義縣,高雄縣の4縣,22地点にわたる(高雄縣は今回正式に確認).一方,トウヨウミツバチは全島の海抜3,300m以下の地域に広く分布し,それはハリナシバチの生息域を完全にカバーしている.観察したハリナシバチの40巣(うち33巣は飼育巣)はすべて大樹の空洞に作られていた.最も高い所は20mであった.巣の発見された樹種はクスノキ科とムクロジ科,サルスベリ科,ニレ科,マツ科で,クスノキ科がもっとも多かった.ミツバチの22巣は,岩石の間隙がもっとも多く(約60%),大樹の根元の空洞や電柱や木箱などでも発見された.このように,ハリナシバチとミツバチは営巣場所の選択において,明確な違いを有し,両種の営巣場所をめぐる競争は,仮にあっても弱いものと推測された.ハリナシバチの分布が台湾島の山地に限られる理由は,台湾人が大陸から渡来して以来,特に戦前の日本統治時代から戦後の経済急成長期にかけて平地部や低山地の森林が伐採され,営巣に適する大樹が著しく減少したためと思われる。
著者
松多 信尚 石黒 聡 村瀬 雅之 陳 文山
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.247, 2011

台湾島はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界に位置し,フィリピン海プその収束速度は北西―南東方向に90 mm/yrと見積もられている(Sella et al., 2002).台東縦谷断層は地質学的なプレート境界と考えられ,その東側は付加した堆積岩や火山岩で構成された海岸山脈,西側は変成岩からなる中央山脈である. 台東縦谷断層は台東縦谷の東縁に位置する東側隆起の逆断層で,奇美断層付近を境に北部と南部に分けられる.南部は北から玉里断層,池上断層,利吉断層,利吉断層の西側に併走する鹿野断層などが分布する.これらの断層は逆断層がクリープしているとされ,GPSによる測地データ(Lee et al., 2003)だけでなく,水準測量(Matsuta et al., 2009)やクリープメータ(Angelier et al.,1986 etc)でそのクリープ運動の確認がなされ,20-30mm/yr程度の早さで短縮しているとされている.一方,台東縦谷断層は1951年にマグニチュード7前後の地震を立て続けに起こした.北部のセグメントは複数のトレンチ調査の結果,活動間隔が約170-210年程度と報告されている.南部のセグメントでは活動間隔が100年程度と推定され,2003年の成功地震が1951年の地震の次のイベントだと考えれば50年程度の可能性もあるとされる(Chen et al., 2007 ).玉里断層はクリープしている区間の北端に位置する.この断層は,1951年の地震では縦ずれ1.5m以上の地震断層として出現しているため,地表変形はクリープ運動と地震性変位の両方による.我々はこの断層を横断する30kmの測線で水準測量を2008年より毎年8月に実施し,玉里断層を挟む200mの区間で年間1.7cm,約1.5kmの区間で約3cmの隆起が2年間認められた.この運動が継続しているならば,過去30年間の累積変位量は1m近くなることが予想され,空中写真測量を用いた平面的な変位量の分布を得ることを試みた. 台湾における空中写真は最近ではほぼ毎年更新されている.我々は台湾大學所有の1978 年撮影の約2 万分の1 の縮尺の空中写真と2007 年撮影のほぼ同じ縮尺の空中写真を利用して航空写真測量を試みた.座標変換に用いるグランドコントロールポイント(GCP) は2007 年撮影の航空写真に関しては2009 年12 月に実測し,1978 年撮影の航空写真に関しては当時の三角点の測量記録を用いて補正した.それぞれの写真の座標を求めた後,ほぼ同じ位置の地形断面を測量し,地形断面を比較した. 我々は写真測量の誤差は絶対値では大きいが,地形断面上の相対誤差はより小さいと考え比較した. 我々は1978年の空中写真の同定に利用するGCPを得る必要があるが変位を受ける前の位置を実測することは出来ない.そこで,両年代に実測された三角点の座標差を利用して,1978年当時のGCPを推定した. まず,求めたいGCP点を三角点の近傍に見つけ,三角点とそのGCP点との相対位置は十分に小さく両者は同じ変位をしたと考え,2007年度の空中写真上で位置を計測した. 我々は空中写真判読から地形面を7段に分類し古い面からT1―T7とした.特に断層上盤側にはT3からT7までの5面が分布する.これらの地形の年代は不明であるが,堆積物の風化程度や赤色化の度合いなどから, T4面以下の離水年代は1万年前程度と推定される.対象地域南部の地域では断層運動に伴うと思われるバルジ状の地形が確認できるほか,分岐断層や逆向きの高角断層などがあり,複雑な断層トレースが認められる. その結果T4面はT7面に対して,変位が累積していること.逆向き断層についてはT4面で明瞭であるが,T7面では顕著でないことなどがわかった. 調査範囲北部の断面である,Line1-3は,30年間に断面図を比較すると上盤側が隆起していることが確認できた.一方南部の測線では,人工改変を除けばほぼ地形断面が重なり,北部と比較して,顕著な上下変位を認められない. これは写真測量の精度の問題か,変位量の分布に狭い範囲で地域差があるか今後検討が必要であり,新たに水準の測線を昨年設けた. 水準測量の測線はT7段丘上にある.この段丘面は台東縦谷断層と平行にブロードな背斜・向斜状の地形が認められる.この段丘を刻む東側から流れ出る支流は背斜軸を横断して先行谷化して本流と合流している.このことはこの背斜・向斜状の地形が変位地形である可能性が高い事を示す.この背斜・向斜構造は水準測量でも観測されており,普遍的な変形と考えられる.ただし,水準測量の結果は測線が構造と斜行しているため,断層形状の側方変化等を見ている可能性もあり,その検証のための新たな水準測線も昨年設けた.
著者
大出 亜矢子 土光 智子 陳 文波
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.339-344, 2015

<tt>本研究はインドネシアスラウェシ島山岳地トラジャ地域農村において実施した生業項目に関する半構造型インタビュー調査とそのネットワーク分析から</tt>,<tt>過去</tt>40 <tt>年間の生業構造変化について分析する。各時期における生業項目の地域内の位置づけについてネットワーク中心性指標によって算出し</tt>,<tt>それぞれの時系列変化をとらえた。固有ベクトル中心性指標の時系列変化過程の</tt>t<tt>検定の結果から</tt>, 1979-1980, 1999-2000, 2009-2010<tt>の</tt>3<tt>時期に有意な変化が検出され</tt>,<tt>近年の多生業化傾向が示された。トレンド変化点との重複から道路や水利造成等の土地改変との関係性が示された。</tt>
著者
陳 文西
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

この研究の主な成果は3つの点を挙げられる。(1)ユーザ端末(ベッドサイドボックスとセンサボード)の開発長期にわたって睡眠時の心拍数を全自動的に収集できる計測手法の開発と装置設計、試作。計測装置はベッドサイドボックスとセンサボードから構成されている。センサボードは枕の下又はマットの下に置き、睡眠時の心臓拍動に由来する微弱振動を感知する。ベッドサイドボックスはこの振動信号を増幅し、AD変換を行い、データベースサーバに送信する。(2)自動解析アルゴリズムの開発とパフォーマンスの評価隠れマルコフモデルなどデータマイニングアルゴリズムを開発し、日頃睡眠時の連続心拍数から生理周期を自動的に推定する手法を提案し、パフォーマンスを評価した。さらに、枕の下とマットの下に3箇所(背、臀、小腿)、それぞれセンサボードを設置し、異なる部位の計測パフォーマンスを検討し、最適の計測部位を特定した。(3)ネットワークデータベースサーバシステムの構築と自動解析アルゴリズムの実装ユーザ端末からネットワーク経由で睡眠時の心拍数を自動的に収集するためのデータベースサーバシステムを構築し、(2)で開発したアルゴリズムをサーバ上で実装し、総合的な性能評価を行った。
著者
孫 可冀 一ノ瀬 友博 土光 智子 陳 文波 板川 暢
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.71-76, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
19

ヨシ群落の効率的な生育管理を実現するため,広域的なモニタリング手法の開発が期待されている。 本研究は,中国向海(シャンハイ)湿地のヨシ群落を対象にし,現地調査データと衛星画像データの両方を使用し,ヨシの在・不在,草高,茎径,稈密度の四つの予測モデルを開発した。最適モデルの結果により, ヨシの生育に最も影響している指標は水分条件と傾斜角であることがわかった。この結果を踏まえて, 保全策を検討する基礎資料として, 2010年の向海湿地のヨシ群落の生育予測図を作成した。
著者
卓 興鋼 梅垣 敬三 田辺 宏樹 陳 文 談 景旺 渡邊 昌
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.59-69, 2007
被引用文献数
1

近年,世界各国において補完代替医療 (CAM) を利用する癌患者が増えている.中国の多くの病院では中西医結合療法(西洋医療と伝統中国医療 (TCM) との併用)で癌を治療・予防し,多大な成果を挙げている.本研究では,中国語文献データベースから中国で行われた癌の中西医結合療法を検証した無作為化比較試験 (RCT) を調査しシステマティックレビューした.中国語学術雑誌に掲載された論文は国家科学技術図書文献センターが提供しているデータベース (http://www.nstl.gov.cn) を用いて検索した.限定的な条件で検索した結果から,14 報の RCT を特定しレビューした.ほぼ全ての研究では西洋医療に比べ,伝統中国医療との併用は良い結果が得られていた.日本において根拠に基づく CAM を推進するために,中国などで多く行われた CAM に関する RCT から,科学的根拠を収集・評価し,データベース化する必要があると思われる.これから,CAM のメタ分析など科学的な評価手法の開発及び確立が迫られる.<br>