著者
柴田 昌典 太田 匡宣 青木 隆成 多和田 英夫 谷口 信吉
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.589-594, 2007-07-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
18

維持透析患者100名 (慢性腎炎55名, 糖尿病性腎症45名) と対照患者137名の皮膚の色調をコニカミノルタ社製の分光測色計CR-400®で定量的に測定した. 透析患者では有意に皮膚の明度が低く (p<0.01), この低下と年齢とは相関がなかったが, 維持透析の継続期間の長さとは有意の相関がみられた (p<0.01). 糖尿病性腎症による患者にくらべ, 慢性腎炎の患者の皮膚の明度は有意に低かった (p=0.0005). 維持透析患者にみられる皮膚の色素沈着が糖尿病性腎症患者では軽度である理由は不明であるが, インスリンがMSH代謝へ及ぼす影響の可能性につき述べた.
著者
高津 康正 眞部 徹 霞 正一 山田 哲也 青木 隆治 井上 栄一 森中 洋一 丸橋 亘 林 幹夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-94, 2002
被引用文献数
1

21種のグラジオラス野生種について特性調査および育種素材としての評価を行ったところ, 草丈, 葉数, 葉·花の形態, 小花数および開花期等には種によって大きな違いがみられた. また草丈が10cm程度で鉢物に利用可能なもの, 現在の栽培種にはみられない青色の花被片を有するものなど, 育種素材として有望な野生種が見出された. 香りを有する種は全体の52.3%を占め, 香りのタイプもチョウジ様, スミレ様などさまざまであることが示された. さらにこれらの野生種について到花日数, 小花の開花期間, 稔実日数および1さや当たりの種子数を調査し育種上重要な情報を得ることができた. フローサイトメトリーによる解析の結果, 野生種においては細胞あたりのDNA含量が多様で, 種によってイネの0.9∼3.5倍のゲノムサイズを有するものと推定された. 本法による倍数性の判定は困難であるが, 種の組合せによっては交雑後代の雑種性の検定に利用可能であることが示唆された.
著者
青木 隆史
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.145-148, 1997-05-01
参考文献数
11

This paper describes that the optically active moieties, ((S) -<I>sec</I>-butylacrylamide (BAAm)), in <I>N</I>-isopropylacrylamide (IPAAm) copolymer chains affected the phase transition behavior and resulted in lower critical solution temperature (LCST) changes responding to foreign tryptophan (Trp). Copolymerization of (S) -<I>sec</I>-BAAm and IPAAm were carried out in DMF at 70&deg;C for 25 h using AIBN. The copolymer was water-soluble and showed the characteristic LCST near 27&deg;C. LCSTs of PIPAAm chains are affected by hydrophobic or hydrophilic nature of comonomers. Since sec-BAAm is insoluble in water, the component exhibited hydrophobic property. Therefore, poly ((S) -<I>sec</I>-BAAm-co-IPAAm) showed lower LCST as compared with that of PIPAAm. The LCSTs of the copolymer in the presence of L-Trp weve higher than those in the absence of the amino acid. It was understood that the optically active moieties in the copolymer stereospecifically interact with L-Trp, relatively enhancing hydrophilic property of the polymer chains. The copolymer increased the LCSTs in response to increasing L-Trp concentration. Hydrogels consisting of these comonomers will exhibit reversible swelling/ deswelling behavior in response to L-amino acids such as L-Trp. The polymers with the optically active moieties demonstrate the chiral discrimination to L-amino acids and are also good candidates to perform chiral separation.
著者
青木 隆浩
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.197, pp.321-361, 2016-02

本稿では,明治時代から1980年代までの長期にわたり,日本における美容観の変遷とその原因をおもに化粧品産業の動向から明らかにしたものである。そのおもな論点は,明治時代以降の美容観が欧米化の影響を受けながらも,実際に変化するには長い時間がかかっており,欧米化が進んだ後でも揺り戻しがあって,日本独自の美容観が形成されたということであった。まず,明治時代といえば,白粉による白塗りと化粧品の工業製品化による一般家庭への普及がイメージされるが,実際には石鹸や化粧水,クリームといった基礎化粧の方がまず発達していったのであり,メイク方法は白粉をさらっと薄く伸ばす程度のシンプルなものだった。口紅やアイメイクに対する抵抗感は,現在から考えられないほど強かったため,欧米の美容観はなかなか受容されなかった。1930年代に入ってから,クリームや歯磨,香油などの出荷額が伸びていくが,第二次世界大戦による節制と物品税の大増税によって,すぐに化粧をしない時代に戻っていった。その後,1960年前後までの日本の女性は,クリームや化粧水による基礎化粧はするものの,メイクはほとんどしなかった。欧米型のメイク方法は,1959(昭和34)年におけるマックスファクターの「ローマンピンク」キャンペーンと1960(昭和35)年におけるカラーテレビの放送開始を契機として,普及し始めたと考えてよい。とくに1966(昭和41)年からそのキャンペーンにハーフモデルを起用して成功を収めたことが,ハーフモデルの日焼けした肌と大きな目に憧れる結果となって,欧米型のメイクが普及する大きな要因となった。ところが,1970年代の初めにハーフモデルを起用した日焼けの提唱がいったん終わり,その後,日本の美が見直されていくことになる。さらに,1980年代に入ると自然派志向やソフト志向が顕著となり,その中でアイドルタレントが化粧品のプロモーションに起用されるようになると,日本独自の自然でソフトな女性像,つまり1980年代の「かわいらしさ」のイメージが形成されていった。This article examines the trends of the Japanese cosmetics industry from the 1870s to the 1980s to reveal the changes in the Japanese sense of beauty and their causes. The results consist of two main findings: (i) after the Meiji period (1868-1912), the Japanese sense of beauty was affected by westernization but changed very slowly; and (ii) the westernization was followed by a backlash, resulting in the creation of a new sense of beauty unique to the Japanese.It is generally considered that in the Meiji period, cosmetics were commercialized and became popular among ordinary women and they started to powder their faces. In actual fact, however, skin care products such as soap, skin lotion and cream were developed earlier. Japanese women preferred simple makeup and thought light powdering was enough. Their reluctance to wear lipstick and eyeshadow in those days was much stronger than we can imagine today; therefore, it was difficult for them to accept the western sense of beauty.In the 1930s, the sales of skin cream, toothpaste, and scented oil products expanded; however, soon all the cosmetics products disappeared from the market due to the frugal habits and drastic commodity tax hikes during the Second World War. From after the war until around 1960, Japanese women used skin care products such as skin lotion and cream but hardly wore makeup.Western-style makeup techniques began to penetrate into Japan through the Roman Pink Campaign of Max Factor starting in 1959, also receiving a nice tailwind from the start of color TV broadcasting in 1960. In 1966, the advertising campaign starred a half-Japanese model, which resulted in a huge success. Many women admired her light suntanned skin and big eyes. This served as a great impetus for the spread of western-style makeup techniques.However, once the campaign starring the half-Japanese model with light suntanned skin finished in the early 1970s, Japanese women reviewed their sense of beauty once again. In the 1980s, when a desire for the soft, natural look became prominent and pop stars started to appear in cosmetics advertisements, the Japanese shaped their own unique image of female beauty that was soft and natural by emphasizing "cuteness" in the 1980s.
著者
青木 隆行 宮内 邦雄 西村 光彦 中村 和彦
出版者
The Japan Society for Technology of Plasticity
雑誌
塑性と加工 (ISSN:00381586)
巻号頁・発行日
vol.48, no.555, pp.308-312, 2007
被引用文献数
1

A both-sided ironing process for simultaneous ironing of the outer and inner wall surfaces of deeply drawn cans has been developed successfully. The new process produces ring grooves in the can wall by vibrating the inner die along the ironing direction. The up-and-down motion of the inner die changes the ironing condition between the inner die and the outer die to continuously form ring grooves in the wall of ironed cans. The frequency of the vibration of the both-sided ironing process is set at about 4∼6 c⁄min. The profile of ring grooves in the ironed can wall is found to be influenced by the height difference between the outer and inner dies and the amplitude of the vibration. In particular, the greater the amplitude of vibration, the greater the depth of the ring grooves. The bent part of the ring grooves formed by the both-sided ironing process using vibration is the unique point of lowest strength. An ironed can with ring grooves in the wall can be easily squashed by a relatively small force.
著者
古澤 明 青木 隆朗
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、高レベルスクイーズド光の生成とそれによる高レベル量子エンタングルメントの生成、測定およびフィードフォワードを用いたユニバーサルスクイーザー、量子非破壊測定(量子非破壊相互作用)の実現を目的としている。具体的な研究成果は以下のようなものである。(1)周期分極反転KTiOPO_4(PPKTP)疑似位相整合結晶を非線形媒体とした光パラメトリック発振器(OPO)を作製し、高レベルスクイーズド光の生成に成功した。まず、波長946nmにてその可能性を明らかにした。その結果に基づき、高いポンプパワーを期待できる波長860nmで実験を行い、14年ぶりに世界記録を塗り替え7dBのスクイーズを達成した。さらに、測定系の位相揺らぎを抑えることにより、9dBのスクイーズを達成した。これらの成果により、生成できる量子エンタングルメントのレベルは格段に高まった。(2)測定およびフィードフォワードの手法の代表例は、量子テレポーテーションと呼ばれる波動関数の伝送であり、そのフィデリティはこの手法の成功の度合いを示す(フィデリティ1=100%成功)。したがって、本研究で生成に成功した高レベルスクイーズド光を用い、量子テレポーテーションのフィデリティを測定してみた。その結果0.83という高い値が得られ、この高レベルスクイーズド光を用いれば、測定およびフィードフォワードの手法を高い確率で成功させられることが明らかとなった。(3)高レベルスクイーズド光を用いて生成した高レベル量子エンタングルメントと併せて、測定およびフィードフォワードの手法を用いることにより、ユニバーサルスクイーザーを作製することに成功した。(4)ユニバーサルスクイーザー2台を作製し、これらをさらに可変ビームスプリッターを用いて結合することにより、量子非破壊相互作用装置を作製した。これを用いて、2つの共役な変数(直交位相振幅成分)に於いて量子非破壊測定を行った。これらは、いずれの場合に於いても成功した。また、この結果から、この量子非破壊相互作用装置の2つの出力はエンタングルしていることが明らかになり、量子ビットの制御NOTゲートと同様に、エンタングリングゲートとしての働きがあることがわかった。
著者
青木 隆朗
出版者
早稲田大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

量子光学的手法による連続量量子情報への応用を目指し、光ファイバーベースでの新しい直交位相成分スクイーズド光発生法の検討を行った。具体的には、超短パルスを用いた従来の直交位相成分スクイーズド光発生法に対して、現在の連続量量子情報技術の主流である連続光を用いた多モード量子エンタングルメントの生成・制御技術との整合性を重視し、光ファイバーに直接結合したシリコンチップ上モノリシック微小共振器を用いた連続光励起での直交位相成分スクイーズド光の発生に関する理論的検討と、共振器設計の最適化、さらに高Q値微小共振器の作製技術の開発を行った。特に、本手法による直交位相成分スクイーズド光の発生には高いQ値と同時に小さなモード体積を持ち、さらに共振スペクトルの測定結果からモード次数を同定できる共振器の開発が必要である。そのような条件を満たす共振器として微小球共振器に着目し、シリコン基板上にモノリシックに作製することで直径20μm以下の極微小球共振器に対して10^8オーダーのQ値を達成した。WGM型共振器のQ値は放射損失、物質の散乱・吸収による損失、表面の凹凸による散乱や不純物による外因性損失等で決まり、究極的には放射損失によって上限が定められる。本研究で達成したQ値は、直径20μm以下の極微小球共振器としては従来の値を1桁以上改善するものであり、放射損失によって決まる理論限界に肉薄するものである。また、共振器を使わずに光ファイバーで直接、光と物質の強い相互作用を実現できるナノファイバーデバイスを開発した。
著者
岩本 通弥 川森 博司 高木 博志 淺野 敏久 菊地 暁 青木 隆浩 才津 祐美子 俵木 悟 濱田 琢司 室井 康成 中村 淳 南 根祐 李 相賢 李 承洙 丁 秀珍 エルメル フェルトカンプ 金 賢貞
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、外形的に比較的近似する法律条項を持つとされてきた日韓の「文化財保護法」が、UNESCOの世界遺産条約の新たな対応や「無形文化遺産保護条約」(2003年)の採択によって、どのような戦略的な受容や運用を行っているのか、それに応じて「遺産」を担う地域社会にはどのような影響があり、現実との齟齬はどのように調整されているのかに関し、主として民俗学の観点から、日韓の文化遺産保護システムの包括的な比較研究を試みた。
著者
青木 隆浩
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.83-99, 1997-05-31
被引用文献数
1

本稿では, 埼玉県の酒造家を系譜の出身地別にまとめ, その経営方法の違いとそれに伴う盛衰の状況について比較考察した. その結果, 近江商人, 越後出身者, 地元出身者の家組織には大きな違いがあり, この組織力の差が, 明治以降のそれぞれの盛衰に関わっていることがわかった. 埼玉県に出店した近江商人は酒造家の約9割が日野屋と十一屋で占められている. 日野屋が本家中心の同族団を, 十一屋が同郷での人間関係によるグループを形成しており, 最も強い組織力をもち, 戦後まで安定経営を続けてきた. 越後出身者は, 分家別家を数多く独立させたが, 明治期に同族団が崩壊し, 1軒あたりの生産量が増えるにつれグループ内での競争が激化し, 多くの転廃業をだした. 中には, 大石屋のように商圏が重ならないように離れて立地したことにより安定した市場を確保し, 戦後まで繁栄した例もみられた. これらに対し, 地元埼玉出身者は分家別家, 親類の酒造家が少なく, 単独経営で家組織が脆弱だったため, 戦前までに多くが転廃業をすることとなった. また, 販売網と市場にも系譜の出身地別に大きな違いがあった. 近江商人は主要街道沿いでかつ江戸出荷に便利な河川沿いに支店網を築いた. しかし, 19世紀中頃から江戸市場における地廻り酒のシェアが低下すると, 近江商人は地方市場へ販売先を切り替えていった. これにより, 従来から地元販売を主としてきた地元出身の酒造家は競争に破れ, 衰退していった.