著者
高津 康正 眞部 徹 霞 正一 山田 哲也 青木 隆治 井上 栄一 森中 洋一 丸橋 亘 林 幹夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-94, 2002-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

21種のグラジオラス野生種について特性調査および育種素材としての評価を行ったところ,草丈,葉数,葉・花の形態,小花数および開花期等には種によって大きな違いがみられた.また草丈が10cm程度で鉢物に利用可能なもの,現在の栽培種にはみられない青色の花被片を有するものなど,育種素材として有望な野生種が見出された.香りを有する種は全体の52.3%を占め,香りのタイプもチョウジ様,スミレ様などさまざまであることが示された.さらにこれらの野生種について到花日数,小花の開花期間,稔実日数および1さや当たりの種子数を調査し育種上重要な情報を得ることができた.フローサイトメトリーによる解析の結果,野生種においては細胞あたりのDNA含量が多様で,種によってイネの0.9〜3.5倍のゲノムサイズを有するものと推定された.本法による倍数性の判定は困難であるが,種の組合せによっては交雑後代の雑種性の検定に利用可能であることが示唆された.
著者
青木 隆明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.525-529, 2020-06-18 (Released:2020-08-12)

東京2020パラリンピックが開催されるにあたり,パラリンピック独特のスポーツを紹介する.近年パラリンピックの競技性も向上し,世界の強豪と戦うのは大変である.それだけ選手の層も厚く,日本でもさまざまな競技に対する研究や指導が進んできている.実際の競技をみる前に,スポーツ観戦の見どころを紹介する.例えば,陸上や水泳は種目としては同じだが,クラス分けや障害に応じて道具や義足などが異なり,投げ方や泳ぎ方など,さまざまな工夫がなされている.練習に対してもコーチの指導の工夫が必要で,医療従事者とのかかわりが大切である.
著者
青木 隆子 菅原 龍幸
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.81-100, 1999-12-31 (Released:2011-01-31)
参考文献数
21

7魚種について, 種々の加熱方法 (焼く, 煮る, 電子レンジ, 揚げる) で調理した場合の栄養成分 (一般成分, 無機質含量, 遊離アミノ酸含量, コレステロール含量, 脂肪酸組成, EPAおよびDHA含量) について分析を行い, その結果について検討した.1. 切り身で調理した場合水分の減少が著しく, 見かけ上, ミネラル, タウリン, EPAおよびDHA含量が増加した.2. 丸十尾) で調理した場合1) 脂質含量の少ない魚 (5%以下) 脂質の滲出や溶出よりも水分減少の方が大きく, 見かけ上, 脂質含量の増加により, EPAやDHAの増加が認められたが, タウリン含量は減少した. 揚げ物の場合は, 揚げ油と魚油の置換によりEPAやDHA含量は約50%以下に減少した. また, タウリン含量も減少した.2) 脂質含量の多い魚 (17%以上)脂質の滲出や溶出が著しく, 見かけ上水分含量は増加し, タウリン含量は焼く調理で増加の傾向であった. しかし, EPAやDHA含量は約50%の減少であった.3) 脂質含量が1) と2) の中間の魚脂質の滲出と共に水分含量も減少し, EPAやDHAおよびタウリンは減少の傾向を示した. この傾向は, 焼く調理で大きかった.高度不飽和脂肪酸は, 熱, 光などに特に不安定とされているが, 一般的な加熱調理直後では, 脂肪酸組成に顕著な差は認められなかった. すなわち, 分解, 消失することはほとんどない. しかし, EPAやDHA含量は調理方法や漁獲時の脂質含量によって顕著な差が認められた.
著者
西牧 可織 二瓶 裕之 井上 貴翔 鈴木 一郎 足利 俊彦 堀内 正隆 新岡 丈治 木村 治 青木 隆
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-042, 2021 (Released:2021-03-23)
参考文献数
8

大規模クラスであっても効果的な文章指導を行うために,クラウドを活用した協働学修を授業に組み込んだ.クラウドを活用した協働学修では,クラス規模の大きさを逆に利点とするために,ネットワーク上に仮想的な共同作業の場を提供することでディスカッションの活性化を図った.その結果,受講生が互いの意見を見ながら,全員がクラウド内で自身の意見を発するようになり,授業最終回には意見の記入回数も増加するなどディスカッションが活性化されたことを確認した.また,ディスカッションを経て提出したレポートは正答との一致率も高まった.さらに,学生へのアンケート結果からも,SBOに対する達成度が授業回を追うごとに高まり,文章指導における協働学修の必要性の認識も高まるなど,薬学教育における言語表現能力の必要性や重要性に対する気づきが多くの学生へ広がったとの知見を得た.
著者
青木 隆浩
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.205, pp.7-35, 2017-03

本研究では、近代日本の禁酒運動において、酒を用いる儀礼が案外大きな障壁となっていたことを明らかにし、その理由について考察していった。もともと飲酒のような道徳や生活習慣、教育に関わるようなことを法律で規制する機運が高まっていったのは、アメリカの影響による。だが、道徳や生活習慣を法律で規制しようとした場合には、その範囲や取り締まりの可否が問題となる。そして、未成年者飲酒禁止法案が一九〇一年に初めて提出されてから二一年間にわたって何度も否決され続けたのも、基本的にはその点が問題になっていたからである。議員や官僚たちには、法律にする以上はそれで社会を取り締まれなければならないという前提条件があったため、範囲や基準が曖昧にならざるを得ない道徳や生活習慣に関わることを具体的にどの程度まで取り締まるのかといったことが議論の中心になっていった。その中で、儀礼に用いる酒まで取り締まるか否かという点については、本音では日本を酒のない国にしたい禁酒派と、伝統的な慣習にまで法律で介入することや、儀礼に用いるようなアルコール度数の低い酒まで禁酒の対象にすることへ抵抗感を抱く反禁酒派の意見が常に衝突するところであった。結果的に禁酒派が議会でそこまで厳密に取り締まるつもりはないと発言し、そこに反禁酒派の失言が重なって、未成年者飲酒禁止法は制定された。しかし、一方で禁酒派は日本をさらに無酒国へと近づけたいという意思を、禁酒の対象を二五歳にまで引き上げる改正法案を国会に提出することで示した。こうした禁酒派の道徳や生活習慣に対する介入の拡大と規制の強化は、議会で強い抵抗を受けることになった。そして、禁酒派は改正法案提出後にかえって発言力を失っていったのである。
著者
芳野 由利子 陸 慧敏 金 亨燮 村上 誠一 青木 隆敏 木戸 尚治
出版者
医用画像情報学会
雑誌
医用画像情報学会雑誌 (ISSN:09101543)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.77-82, 2019-06-30 (Released:2019-06-28)
参考文献数
14

A temporal subtraction image is obtained by subtracting a previous image, which are warped to match between the structures of the previous image and one of a current image, from the current image. The temporal subtraction technique removes normal structures and enhances interval changes such as new lesions and changes of existing abnormalities from a medical image. However, many artifacts remain on a temporal subtraction image and these can be detected as false positives on the subtraction images. In this paper, we propose a 3D-CNN after initial nodule candidates are detected using temporal subtraction technique. To compare the proposed 3D-CNN, we used 7 model architectures, which are 3D ShallowNet, 3D-AlexNet, 3D-VGG11, 3D-VGG13, 3D-ResNet8, 3D-ResNet20, 3D-ResNet32, with these performance on 28 thoracic MDCT cases including 28 small-sized lung nodules. The higher performance is showed on 3D-AlexNet.
著者
高野 和郎 坂田 暉英 福山 公基 太田 宏 前田 洋 李 雅弘 尾上 保夫 青木 隆一 高場 利博 岩堀 嘉和 松下 功 金子 和義 三富 静夫 唐沢 弘文 藤井 浩一 森本 和大 石井 淳一 上村 正吉 藤巻 悦夫 村田 恒雄 森 義明 菅谷 修一 西堀 実 薄井 武人 安藤 公信 清田 卓也 熊谷 日出丸 前田 正雄 鈴木 庸之 本多 儀一 門馬 満 藤本 昇 安藤 光彦 口石 将博 崔 相羽 高須 克弥 平井 啓 小池 勝 平塚 進 鈴木 武松 土持 喬 初鹿野 誠彦 津田 紘輔 諸岡 俊彦 藤井 陽三 清水 一功 八田 善夫 直江 史郎 坂木 洋 海老原 為博 太田 繁興 佐々木 彰 村山 義治 塚田 政明 清水 晃 山口 明志 江頭 亨 坂本 利正 渡辺 佐 加藤 水木 片桐 敬 吉田 文英 小島 昭輔 新谷 博一 鈴木 孝臣 金沢 英夫 落合 泰彦 堀坂 和敬 藤巻 忠夫 平木 誠一 橋本 敏夫 加藤 国之 石井 靖夫 菅 孝幸 赤坂 裕 今村 一男 甲斐 祥生 中西 欽也 太田 繁興 近藤 常郎 落合 元宏 松井 恒雄 依田 丞司 吉田 英機 丸山 邦夫 池内 隆夫 入江 邦夫 佐々木 彰 清水 晃 鈴木 周一 坂木 洋 塚田 政明 秋田 泰正 森 弘道 天野 長久 本多 平吉 山口 明志 坂本 利正 安達 浩行 草ケ谷 雅志 高野 和郎 中川 克宣 鶴岡 延熹 小野 充 阿万 修二 植原 哲 渋谷 徹 桑原 紘一郎 小黒 由里子 後藤 晋 島袋 良夫 安藤 彰彦 国枝 武幸 今西 耕一 小田切 光男 鄭 政男 佐川 文明 田代 浩二 大瀬戸 隆 菅沼 明人 町田 信夫 前田 尚武 小泉 和雄 鈴木 一 安藤 弘 山崎 健二 井出 宏嗣 福山 公基 木村 明夫 小林 祐一郎 狩野 充二 長嶺 安哉 木村 明夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.820-825, 1970
著者
青木 隆浩
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.680-702, 2000-10-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
86

The sake brewers in advanced regions such as Hyogo, Aichi, and Saitama prefectures began innovations in brewing techniques to improve quality from 1890's. In contrast, the peripheral regions such as the Tohoku Area have long maintained traditional brewing techniques in order not to increase the cost of production. Therefore, the disparity in technological levels between regions expanded.Under these circumstances, the national government established the Brewing Research Laboratory to research and develop brewing techniques, which played very important roles in supporting sake brewers, as well as in promoting the introduction of new techniques to so-called peripheral regions in 1900's. They were adopted by many sake brewers in peripheral regions to make the production process easier than in the advanced region's. The interregional disparity diminished. Accordingly, the advanced regions lost their superiority in brewing technique.National sake competitions have been held since 1907. The brands produced in advanced regions lost prizes, while those in the peripheral regions won the event every year. The prizewinner was sweet, however, the others were pungent in flavor. Sweet sake was regarded as having high quality in the events.However, sweet sake has not become popular in the consumer market. Therefore, brewers in the peripheral regions could not expand their market shares. In addition, sake brewers in the advanced regions often held their own local sake competitions, and enhanced the infiltration of their brands into the markets. Taking sake brewers in Saitama Prefecture as an example, by producing sake with a somewhat light alcohol content, they could expand their market share.If sake's qualities were homogenized within a region, they could be easily differentiated from another region's sake. In the Kanto Region, the sake brewers in Saitama Prefecture homogenized the qualities of their brands; however, in Tochigi Prefecture the quality was so diverse that they could not be differentiated from other region's sake. As a consequence, sake brewers in Saitama gained more shares than Tochigi in the sake market.
著者
林 典雄 浅野 昭裕 青木 隆明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CaOI1021, 2011

【目的】肘関節周辺外傷後生じる伸展制限に対する運動療法では、特に終末伸展域の改善には難渋することが多い。その要因について筆者らは、上腕筋の冠状面上での筋膜内における筋束の内側移動、上腕骨滑車を頂点とした遠位筋線維の背側へのkinkig、加えて長橈側手根伸筋の筋膜内後方移動、上腕骨小頭と前面の関節包と長橈側手根伸筋のmusculo-capsular junctionでの拘縮要因などについて、超音波観察を通した結果を報告してきた。一方、肘伸展制限は前方組織にのみ由来するわけではなく、肘伸展に伴う後方部痛の発生により可動域が制限される症例もまれではない。このような肘終末伸展に伴う後方部痛は、関節内骨折後の整復不良例や肘頭に発生した骨棘や遊離体が原因となる骨性インピンジメントを除けば、後方関節包の周辺組織の瘢痕や関節包内に存在する脂肪体に何らかの原因を求めていくのが妥当と考えられる。本研究の目的は、後方インピンジメント発生の好発域である30°屈曲位からの終末伸展運動における肘後方脂肪体の動態について検討し、運動療法へとつながるデータを提供することにある。<BR>【方法】肘関節に既往を有しない健常成人男性ボランティア10名の左肘10肘を対象とした。肘後方脂肪体の描出にはesaote社製デジタル超音波画像診断装置MyLab25を使用した。プローブは12Mhzリニアプローブを用いた。方法は、被験者を測定台上に腹臥位となり、左肩関節を90°外転位で前腕を台より出し、肘30°屈曲位で他動的に保持した。その後徐々に肘を伸展し、15°屈曲時、完全伸展時で後方脂肪体の動態を記録した。<BR> 画像の描出はプローブにゲルパッドを装着して行った。上腕骨後縁が画面上水平となるように肘頭窩中央でプローベを固定すると、上腕骨後縁、肘頭窩、上腕骨滑車、後方関節包、後方脂肪体、上腕三頭筋が画面上に同定される。その後、上腕骨後縁から肘頭窩へと移行する部分で水平線Aと垂線Bを引き、水平線Aより上方に位置する脂肪体と垂線Bより近位に位置する脂肪体それぞれの面積を計測し、前者を背側移動量、後者を近位移動量とした。脂肪体面積の計測はMyLab25に内蔵されている計測パッケージのtrace area機能を使用した。統計処理は一元配置の分散分析ならびにTukeyの多重比較検定を行い有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】なお本研究の実施にあたっては、本学倫理委員会への申請、承認を得て実施し、各被験者には研究の趣旨を十分に説明し書面にて同意を得た。<BR>【結果】背側移動量は30°屈曲時平均26.7±10.5mm2 、15°屈曲時平均42.2±16.1mm2 、完全伸展時平均59.7±15.5mm2であった。完全伸展時の脂肪体背側移動は、30°屈曲時、15°屈曲時に対し有意であった。30°屈曲時と15°屈曲時との間には有意差はなかった。近位移動量は30°屈曲時平均5.4±2.9mm2 、15°屈曲時平均11.9±8.4mm2 、完全伸展時平均20.6±10.8mm2 であった。完全伸展時の脂肪体近位移動は、30°屈曲時に対し有意であった。30°屈曲時と15°屈曲時、15°屈曲時と完全伸展時との間には有意差はなかった。<BR>【考察】本研究で観察した後方脂肪体は滑膜の外側で関節包の内側に存在する。肘後方関節包を裏打ちする形で存在するこの脂肪体は、超音波で容易に観察可能であり、薄い関節包の動態を想像する際に、伸展運動に伴う脂肪体の機能的な変形を捉えることで、間接的に後方関節包の動きを推察することが可能である。今回の結果より後方脂肪体は、肘の伸展に伴い肘頭に押し出されるように機能的に形態を変形させながら、より背側、近位へ移動することが明らかとなった。この脂肪体の移動は併せて関節包を背側近位へと押し出す結果となり、後方関節包のインピンジメントを回避していると考えられた。我々は以前に後方関節包には上腕三頭筋内側頭由来の線維が関節筋として付着し、肘伸展に伴う挟み込みを防ぐと報告したが、後方脂肪体の機能的変形も寄与している可能性が示唆された。投球に伴う肘後方部痛症例や関節鏡視下に遊離体などを切除した後の症例で伸展時の後方部痛を訴える例では、後方脂肪体の腫脹像や伸展に伴うインピンジメント像をエコー上で観察可能であり、肘後方インピンジメントの一つの病態として認識すべきものと考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】実際の運動療法技術においては、後方関節包自体の柔軟性はもちろん、肘頭窩近位へ付着する関節包の癒着予防が脂肪体移動を許容する上で重要であり、内側頭を含めた上腕骨からの引き離し操作も拘縮治療を展開するうえでポイントとなる技術と考えられる。
著者
青木 隆一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学 (ISSN:03759253)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.199-206, 1961-03-01 (Released:2009-09-30)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1
著者
青木 隆幸 津田 富康 鬼塚 徹 水城 まさみ 吉松 哲之 岡嶋 透 葉玉 哲生 調 亟治
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.770-774, 1983-08-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
10

31歳男. 中国のポーロンリ (7,292m) にアタック中, 高山病を発症. 下山途中 (5,300m), 痙攣ののち四肢麻痺が出現. 下山後 (700m) 左胸痛, 咳嗽, 血痰が出現. 当科入院後左下葉切除を行い, 背側下部の融解壊死, 組織学的には, 無気肺, 肺胞内出血, うっ血, 小肺動脈の血栓形成, 多数の梗塞巣を認めた. 頭部CT写真で両側頭頂部に梗塞巣を認めた.
著者
林 典雄 浅野 昭裕 青木 隆明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CaOI1021, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】肘関節周辺外傷後生じる伸展制限に対する運動療法では、特に終末伸展域の改善には難渋することが多い。その要因について筆者らは、上腕筋の冠状面上での筋膜内における筋束の内側移動、上腕骨滑車を頂点とした遠位筋線維の背側へのkinkig、加えて長橈側手根伸筋の筋膜内後方移動、上腕骨小頭と前面の関節包と長橈側手根伸筋のmusculo-capsular junctionでの拘縮要因などについて、超音波観察を通した結果を報告してきた。一方、肘伸展制限は前方組織にのみ由来するわけではなく、肘伸展に伴う後方部痛の発生により可動域が制限される症例もまれではない。このような肘終末伸展に伴う後方部痛は、関節内骨折後の整復不良例や肘頭に発生した骨棘や遊離体が原因となる骨性インピンジメントを除けば、後方関節包の周辺組織の瘢痕や関節包内に存在する脂肪体に何らかの原因を求めていくのが妥当と考えられる。本研究の目的は、後方インピンジメント発生の好発域である30°屈曲位からの終末伸展運動における肘後方脂肪体の動態について検討し、運動療法へとつながるデータを提供することにある。【方法】肘関節に既往を有しない健常成人男性ボランティア10名の左肘10肘を対象とした。肘後方脂肪体の描出にはesaote社製デジタル超音波画像診断装置MyLab25を使用した。プローブは12Mhzリニアプローブを用いた。方法は、被験者を測定台上に腹臥位となり、左肩関節を90°外転位で前腕を台より出し、肘30°屈曲位で他動的に保持した。その後徐々に肘を伸展し、15°屈曲時、完全伸展時で後方脂肪体の動態を記録した。 画像の描出はプローブにゲルパッドを装着して行った。上腕骨後縁が画面上水平となるように肘頭窩中央でプローベを固定すると、上腕骨後縁、肘頭窩、上腕骨滑車、後方関節包、後方脂肪体、上腕三頭筋が画面上に同定される。その後、上腕骨後縁から肘頭窩へと移行する部分で水平線Aと垂線Bを引き、水平線Aより上方に位置する脂肪体と垂線Bより近位に位置する脂肪体それぞれの面積を計測し、前者を背側移動量、後者を近位移動量とした。脂肪体面積の計測はMyLab25に内蔵されている計測パッケージのtrace area機能を使用した。統計処理は一元配置の分散分析ならびにTukeyの多重比較検定を行い有意水準は5%とした。【説明と同意】なお本研究の実施にあたっては、本学倫理委員会への申請、承認を得て実施し、各被験者には研究の趣旨を十分に説明し書面にて同意を得た。【結果】背側移動量は30°屈曲時平均26.7±10.5mm2 、15°屈曲時平均42.2±16.1mm2 、完全伸展時平均59.7±15.5mm2であった。完全伸展時の脂肪体背側移動は、30°屈曲時、15°屈曲時に対し有意であった。30°屈曲時と15°屈曲時との間には有意差はなかった。近位移動量は30°屈曲時平均5.4±2.9mm2 、15°屈曲時平均11.9±8.4mm2 、完全伸展時平均20.6±10.8mm2 であった。完全伸展時の脂肪体近位移動は、30°屈曲時に対し有意であった。30°屈曲時と15°屈曲時、15°屈曲時と完全伸展時との間には有意差はなかった。【考察】本研究で観察した後方脂肪体は滑膜の外側で関節包の内側に存在する。肘後方関節包を裏打ちする形で存在するこの脂肪体は、超音波で容易に観察可能であり、薄い関節包の動態を想像する際に、伸展運動に伴う脂肪体の機能的な変形を捉えることで、間接的に後方関節包の動きを推察することが可能である。今回の結果より後方脂肪体は、肘の伸展に伴い肘頭に押し出されるように機能的に形態を変形させながら、より背側、近位へ移動することが明らかとなった。この脂肪体の移動は併せて関節包を背側近位へと押し出す結果となり、後方関節包のインピンジメントを回避していると考えられた。我々は以前に後方関節包には上腕三頭筋内側頭由来の線維が関節筋として付着し、肘伸展に伴う挟み込みを防ぐと報告したが、後方脂肪体の機能的変形も寄与している可能性が示唆された。投球に伴う肘後方部痛症例や関節鏡視下に遊離体などを切除した後の症例で伸展時の後方部痛を訴える例では、後方脂肪体の腫脹像や伸展に伴うインピンジメント像をエコー上で観察可能であり、肘後方インピンジメントの一つの病態として認識すべきものと考えられた。【理学療法学研究としての意義】実際の運動療法技術においては、後方関節包自体の柔軟性はもちろん、肘頭窩近位へ付着する関節包の癒着予防が脂肪体移動を許容する上で重要であり、内側頭を含めた上腕骨からの引き離し操作も拘縮治療を展開するうえでポイントとなる技術と考えられる。