- 著者
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西野 一三
- 出版者
- 日本神経学会
- 雑誌
- 臨床神経学 (ISSN:0009918X)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.1-6, 2010 (Released:2010-02-08)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
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自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)は,筋病理学的に自己貪食空胞の出現により定義される一群の遺伝性筋疾患である.歴史的にもっとも研究が進んでいるPompe病以外に,最近2つのAVMのカテゴリーが新たに認識されつつある.一つは,Danon病を初めとする一連の筋疾患である.この筋疾患群は,特異な筋鞘膜の性質を有する自己貪食空胞(AVSF)の出現を特徴とする.AVSFでは,アセチルコリンエステラーゼをふくむ,ほぼすべての筋鞘膜蛋白質が空胞膜に発現する.Danon病はライソゾーム膜蛋白質LAMP-2の原発性欠損による.興味深いことに,本疾患におけるAVSFの数は年齢とともに増加する.AVSFミオパチーとしては,他に,最近VMA21 変異によることが明らかとなった,過剰自己貪食をともなうX連鎖性ミオパチー(XMEA)がある.もう一方のAVMは,縁取り空胞の出現を特徴とするミオパチーである.縁取り空胞は電顕的には自己貪食空胞の集塊である.もっとも良く知られた疾患として,縁取り空胞をともなう遠位型ミオパチー(DMRV)がある.本疾患は,欧米では遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)と呼ばれる.DMRVはシアル酸生合成経路律速酵素遺伝子GNE の変異により発症する.DMRVモデルマウスにおいては,シアル酸補充療法によりほぼ完全に筋症状を抑制することができる.このことは,シアル酸低下がミオパチーの原因であることとシアル酸補充がヒトでも有効である可能性を示唆している.現時点で原因遺伝子が明らかとなっているAVSFミオパチーはともにライソゾーム機能異常を根本原因としている.一方,縁取り空胞は,DMRV/HIBMが低シアリル化を原因としているように,ライソゾーム外の異常が根本原因であり,二次的に形成されるものである.