著者
小池 安比古 井上 知昭 鈴木 重俊 樋口 春三
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.770-772, 2000-11-15
被引用文献数
8 4

宿根スイートピーの開花に及ぼす日長の影響を調べた.8∿12時間日長の短日条件では開花せず, 16時間日長ないしは暗期中断で開花が促進される長日植物であることが明らかになった.なお, 早期に播種して最低15℃の温室で16時間日長として栽培すれば, 周年開花が可能と考えられた.
著者
斎藤 隆 伊東 秀夫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.278-290, 1963
被引用文献数
2

キユウリの花の性の分化に関する生理的機構を明らかにする目的で, 花の性の分化に対する Gibberellin の影響について調べた。<br>1. Gibberellin 施与濃度の影響 5, 20, 50および100ppm 溶液を施与した結果, 濃度の高いほど生育が旺盛となり, 雌花の着生節位が上昇してその節数が減少し, 雄花節数が増加している。<br>2. Gibberellin 施与頻度の影響 50ppm 溶液を施与する期日の間隔を12日, 8日, 4日および2日と変えた場合および4日間隔で施与回数を2回, 4回, 6回,8回および10回と変えた場合, 施与頻度の高まるのに伴なつて生育は旺盛となり, 雄花の発現が増加し, 雌花の発現が滅少している。<br>3. Gibberellin 施与部位の影響 50ppm 溶液を施与する場合, その施与部位を生長点部のみ, 成熟葉のみ, あるいは全面と異ならしめた場合, いずれの部位に施与しても生育は促進され, 雌花の着生節位は上昇して, その節数が減少し, 雄花節数が増加している。<br>4. Gibberellin 施与時期の影響本葉0, 1, 2, 3, 4, 6, 8および10枚展開時にそれぞれ 100ppm溶液を4日間隔で2回施与した結果, いずれの時期に施与しても生育が促進され, 雌花の発現が抑えられて, 雄花が発現している。Gibberellin 施与の影響が現われる部位は, 処理時期が1期遅れるごとにそれぞれ3~5節ずつ上節位に移動して行き, いずれの時期の処理でも7~8節ずつの雄花が発現している。<br>5. かんざし苗に対する Gibberellin 施与の影響 生育が全く抑えられ, 雌花が生長点部近くまで連続して着生してかんざし状になつた苗に, Gibberellin 100ppm溶液を施与した結果, 生育が促進されて正常な発育状態に戻り, 雌花の発現が抑えられて, 雄花の発現が誘起された。<br>6. 大苗に対する Gibberellin 施与の影響 雌花が相当数連続して着生している大苗に対し, Gibberellin 100ppm 溶液を施与した結果, 無処理区では雌花を連続して発現しているのに対し, 施与区では雌花の発現を抑え, 雄花の発現を誘起した。<br>7. 短日処理感応に対する Gibberellin 施与の影響短, 日処理によつて雌花の発現が誘起されるが, 短日処理前あるいは処理中に Gibberellin 100ppm 溶液を施与すると, 雌花の発現が全く抑えられ, 短日処理の効果は全然現われない。短日処理後に施与した場合には, 雌花は発現するがその数は少ない。<br>8. Gibberellin 施与に対する品種間差異 相模半白, 加賀節成, 刈羽節成, 聖護院節成および四葉の5品種を用い, Gibberellin 50ppm 溶液を施与した結果, いずれの品種においても生育が促進され, 雌花の発現が抑えられ, 雄花の発現が助長されている。<br>9. 摘葉と Gibberellin 施与との組合わせの影響 相模半白, 落合および青葉は, 高温連続照明下では葉が存在しても第40節までは雌花が全然発現せず, 摘葉, Gibberellin 施与区ではもちろん雌花が全然発現しない。加賀節成, 刈羽節成, 聖護院節成および夏節成は, 高温連続照明下でも雌花が相当数発現するが, 摘葉処理によつて雌花の発現が著しく減少し, これに Gibberellin を施与するとさらに雌花の発現が減少する。<br>10. 花の性の分化に対する Gibberellin の作用機作<br>Gibberellin の施与量, 施与部位, 施与時期等を変えたいずれの場合も, それぞれの処理に対応して植物体の生点長部における Gibberellin 量が増加して, 植物体の生育が旺盛となり, 作用部位における花成物質の集積量が減少して雌花の分化が抑えられるものと考えられる。
著者
長島 時子
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-241, 1985 (Released:2007-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランの3種のランを供試し, 胚珠形成及び受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を追究した.1. 子房の大きさは, いずれのランにおいても, 受粉すると急速に増加した. 子房の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後50日ごろに, カ•エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した.2. 種子及び胚の大きさは, いずれのランにおいても, 受精すると急速に増大した. 種子の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後80日ごろに, カ•エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した. 胚の大きさは, キエビネでは受粉後95~100日ごろに, カ•エルメリでは同65~70日ごろに, トクサランでは同87~90日ごろにそれぞれ一定値に達した.3. 胚珠形成は, キエビネでは受粉後43~45日ごろに, カ•エルメリでは同35~37日ごろに, トクサランでは同30~31日ごろにそれぞれ完了した. 重複受精は, キエビネでは受粉後48~50日ごろに, カ•エルメリでは同40~41日ごろに, トクサランでは同34~35日ごろにそれぞれ行われた. 胚のうは, キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいてもそれぞれ5~6個が観察された. 受粉から胚発生完了までに要する日数は, キエビネでは95~100日, カ•エルメリでは65~70日, トクサランでは87~90であった.4. 胚発生の様相はキエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいても同様であった. すなわち, いずれにおいても4細胞期ではA2型であり, 4細胞期以降の胚発生過程はE型 (Liparis pulverulenta 型) に類似していた. また, いずれのランにおいても胚は主としてca細胞から形成された.5. 受精後の胚乳核は, キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいても3~5個が観察された.また, いずれにおいても胚柄の存在が観察された.6. 種子の発芽能力は, キエビネ及びトクサランでは8細胞期 (前者では受粉後70日ごろ, 後者では受粉後55日ごろ) 以降に, カ•エルメリでは前胚の4細胞期以前(受粉後45日ごろ) にそれぞれ認められた. なお, いずれにおいても胚発生完了前後において発芽率が最も高かった. 培地としては, MS培地及びKC培地に比較して, H培地が優れていた.
著者
水谷 房雄 廣田 龍司 天野 勝司 日野 昭 門屋 一臣
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.863-867, 1991
被引用文献数
5

発育中の日本スモモにおける青酸配糖体の含量とβ-シアノアラニン合成酵素活性の変化を調査した. 発育初期の果肉では低レベルのプルナシンが検出されたが(0.6mg/g dw), 発育とともに検出されなくなった. 同様にβ-シアノアラニン合成酵素活性も最も早い採取日に0.3μmolH<sub>2</sub>S/g fw/hrであったが, 果実の発育とともに活性は次第に減少した. しかしながら, 成熟期の果肉ではわずかながら活性の上昇が見られた. いっぽう, 種子では生育期間を通じて全青酸配糖体(プルナシン+アミグダリン)含量は75~100mg/g dwと高かった. 幼果の種子にはプルナシンだけが存在し,含量は種子の発育とともに減少し, 7月初旬には検出されなくなった. いっぽう, アミグダリンは6月初旬頃から現れ, 含量はその後急激に増加して7月下旬に最大値に達した(100mg/g dw). プルナシン含量の減少に伴ってアミグダリン含量が増加することは, 前者から後者への転換が行われていることを示すものである. 種子は果肉に比べてβ-シアノアラニン合成酵素活性は高い値を示した. 種子中の活性は発育初期ではほぼ一定の値(5.6~7.6μmolH<sub>2</sub>S/g fw/hr)で推移したが, さらにアミグダリン含量の増加に伴って高まり, 最大100μmolH<sub>2</sub>S/g fw/hrに達した.
著者
谷脇 満 花田 貴紀 桜井 直樹
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.410-414, 2006-09-15
被引用文献数
2

野菜などの生鮮食品の食感を数値化する方法を開発した.この方法はナイフ形プローブを食品サンプルに突き刺した際の食感信号を,圧電センサーを用いた装置で測定するものである.この際,単位時間当たりに含まれる食感信号の振幅を積算した振幅密度を計算し,これを食感指標として定義した.得られた食感信号を周波数領域で解析するためにオクターブマルチフィルタを使用し,0Hzから6400Hzまでの範囲で解析した.また,食感信号に含まれている周期的なノイズを取り除く技術も開発した.これはプローブが動き始める前のノイズのデータを,食感信号とノイズが混在している生データから差し引くことによって周期ノイズを取り除くものである.以上の方法を根深ネギに適用し,その食感の特徴を明らかにした.さらに,低周波領域(0-50Hz)の食感信号を解析することによって,根深ネギの葉鞘構造を確認することが可能であった.
著者
岩崎 一男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.395-398, 1980
被引用文献数
7 16

ブドウ'マスカット•オブ•アレキサンドリア'の1芽挿しを用い, りん片除去, 石灰窒素上澄液, 100ppm GA<sub>3</sub> および500, 1,000ppmエセホン各処理が, 芽の休眠打破に及ぼす影響を調査した. その結果, りん片除去は休眠期間中のいずれの時期においても休眠打破効果が著しく大であった. 石灰窒素処理は休眠の深い11月に打破効果が大であり, りん片除去と変わらない発芽率を示した. エセホン処理は打破効果がみられず, GA<sub>3</sub>は休眠を著しく延長した.<br>11月中旬に, ガラス室栽植の3年生マスカット•オブ•アレキサンドリアの芽に対し, リン片除去および石灰窒素上澄液処理を行った結果, 翌年3月における発芽は両処理区ともに無処理区より良好であった.
著者
糠谷 明 増井 正夫 石田 明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.73-81, 1979 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 8

希釈した海水が, トマトの発芽, 生育, 収量に及ぼす影響について調査した.(1) 発芽試験開始2日後, Cl濃度の100ppmにより発芽率は減少した. 6日後の発芽率は0から1000ppm Cl間で有意差がなかったが, 2000ppm Clでは80.5%, 3000ppm Clでは21.5%で, 0から1000ppmClより低かった.(2) ホーグランド液で希釈された海水で育てられたトマトの蒸散量は, 海水濃度が増すにつれ減少した.(3) トマトを本葉2枚のステージより40日間, ホーグランド液で希釈された海水で育てた. 葉の新鮮重は250, 500ppm Clで0,100ppm Clより大であったが, 果実収量は0ppm Clで最大であった. 6000ppm Clで枯死株がみられた. 葉の浸透ポテンシャルは海水濃度の増加により減少した.(4) トマトを砂耕で栽培した結果, クロロシスとネクロシスは2000ppm Clでは下位葉にみられた. これらの症状は3000ppm Clではさらに激しく, 下位葉から上位葉にまで認められた. 3000ppm Clでは枯死株もみられた. また, 海水濃度の増加とともに, 葉の新鮮重と果実収量は減少し, 葉のCl, Na含量は増加した.(5) トマトを土耕で栽培した結果, 葉の周縁ネクロシスは海水の濃度が高い場合, 下位葉にみられたが, 3000ppm Clにおいても枯死株はなかった. また, 海水濃度の増加とともに, 葉の新鮮重と果実収量は減少し, 葉のN, P, K, Na, Mg, Cl含量は増加する傾向がみられた. 実験終了時の土壌のCl, 置換性Na, Mg含量及びECは, 海水濃度が高まるにつれて増加した.
著者
モハメド アリ 松添 直隆 大久保 敬 藤枝 國光
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.921-926, 1992
被引用文献数
1 24

ナスとその近縁野生種,種間雑種および複二倍体のネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)に対する抵抗性を,実生苗および非抵抗性ナスを穂木とした接ぎ木植物に接種して評価した.Solanum khasianum, S.torvumおよびS. toxicariumでは強度の抵抗性が観察された.S. sisymbriifoliumではセンチュウの侵入で根に小さな膨らみを生じたが,センチュウは成熟せず,卵形成には至らなかった.これらを台木とした接ぎ木植物は穂木(非抵抗性ナス)の影響を受けず,同様な抵抗性を示した.一方,ナス,S. integrifolium,両者の種間雑種とその複二倍体,およびS. indicumには抵抗性が認められず,またS. mammosumとS. surattenseはネコブセンチュウに特に弱いことが確かめられた.*現在:鹿児島大学農学部890鹿児島市郡元
著者
谷脇 満 花田 貴紀 桜井 直樹
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.410-414, 2006
被引用文献数
26

野菜などの生鮮食品の食感を数値化する方法を開発した.この方法はナイフ形プローブを食品サンプルに突き刺した際の食感信号を,圧電センサーを用いた装置で測定するものである.この際,単位時間当たりに含まれる食感信号の振幅を積算した振幅密度を計算し,これを食感指標として定義した.得られた食感信号を周波数領域で解析するためにオクターブマルチフィルタを使用し,0 Hz から6400 Hz までの範囲で解析した.また,食感信号に含まれている周期的なノイズを取り除く技術も開発した.これはプローブが動き始める前のノイズのデータを,食感信号とノイズが混在している生データから差し引くことによって周期ノイズを取り除くものである.以上の方法を根深ネギに適用し,その食感の特徴を明らかにした.さらに,低周波領域 (0–50 Hz) の食感信号を解析することによって,根深ネギの葉鞘構造を確認することが可能であった.<br>
著者
山川 祥秀 守屋 正憲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.16-21, 1983 (Released:2007-07-05)
参考文献数
17
被引用文献数
4

‘カベネル•フラン’のウイルスフリー樹と汚染樹の果汁成分の経時的変化を, 1982年に, それぞれ4年生の自根樹を用いて調査し, 次の結果を得た.1. 9月下旬, ウイルスフリー樹の果粒は果重2.15g, 果径14.5mm (果房重240g), 汚染樹のそれらは1.80g, 14.0mm (果房重170g) の最大値に達し, ウイルスフリー樹の果粒の方が重かった.2. 汚染樹の果汁糖度は9月上旬12%に達した後, 全く増加が見られなくなった. 一方, ウイルスフリー樹の果汁糖度は9月上旬以降も順調に増加し, 9月下旬18%に達し, 汚染樹のそれを5~6%も上回った.3. 9月30日, 汚染樹のグルコースは5.75%, フラクトースは5.49%であった. 一方, ウイルスフリー樹のグルコースは8.43%, フラクトースは8.96%であって, 汚染樹のそれらを大きく上回った.4. 果汁酸度は9月下旬, 汚染樹の0.90g/100mlに対し, ウイルスフリー樹は0.60g/100mlと低く, 低酸度であった.5. 9月30日, 汚染樹の酒石酸は0.900g/100mlと高く, リンゴ酸は0.388g/100mlであった. 一方, ウイルスフリー樹の酒石酸は0.664g/100ml, リンゴ酸は0.284g/100mlで, 共に汚染樹より低かった.6. 完熟期, ウイルスフリー樹の果汁pHは3.30, 汚染樹のそれは3.20であった.7. 仕込み5か月後の利き酒によると, ウイルスフリーー樹のワインは品種特有のアロマが強いが, 酸味, 渋味がやや不足した. 一方, 汚染樹のワインはアロマが劣るが, 酸味, 渋味は強く, 赤色も濃かった. したがって, 低酸含量となりがちなウイルスフリー樹の場合, 原料果実の収穫, 仕込み時期の選択に問題があるものと思われた.
著者
山川 祥秀 清水 均 櫛田 忠衛
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.454-460, 1982 (Released:2007-07-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

‘甲州’ブドウの昭和55年の味なし果と健全果について, 果実の粒径及び粒重と, 主要成分である糖と酸の経時的変化を調べて, 次の結果を得た.1. 味なし果の粒径と粒重の増加曲線は成熟過程中, 健全果とほとんど同じ形を示した. ただし, 味なし果の方が粒径, 粒重ともに終始わずかに大きい値を示した.2. 味なし果の糖度は9月初めの着色の時期までは健全果と全く同じ上昇を示したが, その後は上昇が止った. 健全果はその後も順調な上昇を示し, 収穫期には18~19%まで上昇し, 味なし果との差は6~7%に達した.3. pH の変化については, 味なし果はゆっくりとした直線的な上昇傾向を示したが, 健全果は典型的なS字曲線を示した.4. 還元糖は幼緑果期を除けば上記糖度の場合と同様であった.5. 滴定酸度は8月上旬に味なし果で5.00g/100ml, 健全果で5.15g/100mlの最高に達し, 以後急減して, 収穫期には逆転し, 味なし果0.95g/100ml, 健全果0.86g/100mlとなった.6. ブドウ糖と果糖の総量の変化は還元糖の場合と同様であったが, 収穫期に味なし果ではブドウ糖5.2%, 果糖5.7%, 健全果ではブドウ糖8.4%, 果糖9.4%となった. また, G/F値は成熟初期は1で, 9月初めになって1を割り, 収穫期に味なし果で0.92, 健全果で0.89となった.7. 酒石酸とリンゴ酸の総量の変化は滴定酸度の変化と同様であったが, 成熟初期では酒石酸よりもリンゴ酸が多く, 両酸とも味なし果の方が健全果よりも少なかった. しかし, 収穫期にはリンゴ酸よりも酒石酸が多く, 味なし果では健全果よりわずかにリンゴ酸が多く, 酒石酸は少なかった. また, 結合型の酸の割合を計算し, 味なし果で17.4%, 健全果で24.6%の値を得た.‘甲州’の味なし果樹の外見的生育経過と収穫量は健全果樹とほとんど違いはなく, 強いて言えば, 味なし果実の方がわずかに着色が劣る程度であった. しかし, 成分的には味なし果の言葉が示すとおり, 糖分が極端に低く, 酸が高く, ‘水っぽい’ものであって, この変化は着色の始まる9月になって突然に起こるものである.
著者
和田 光生 池田 英男 松下 健司 神原 晃 平井 宏昭 阿部 一博
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.51-58, 2006 (Released:2006-02-21)
参考文献数
32
被引用文献数
7 22

トマトを 2 月から 8 月まで毎月10日に播種し,NFT ベッドで一段栽培した.一番花開花10日後より遮光率 0%(対照区),30%(弱遮光),55%(中遮光)および83%(強遮光)の寒冷紗で被覆することによって遮光処理を開始し,果実の収量と品質を調査した.7 月から 9 月までは給液する培養液を25℃に冷却した.7 月から 9 月までは給液する培養液を25℃に冷却した. 遮光率が増加するにつれて,1 果重が減少して全果実収量は低下した.全果実収量は播種月ごとに果実発達期の平均日積算日射量によって直線で回帰された.回帰分析の結果から,果実発達期の平均気温が19℃から27℃に高まった場合,平均日積算日射量 1 MJ・m−2 の減少に伴う収量低下量は,84から100 g/株に増加することが示された.対照区の可販果収量は 2 月播種で最も高く,4 月から 7 月播種では裂果の発生によって有意に低下した.裂果の発生は遮光によって有意に抑制された.平均気温が25℃を超えた場合には,日平均積算日射量を 5~6 MJ・m−2 程度まで低下させる遮光によって,可販果収量は増加する効果が認められた.夏季高温時に収穫される果実は滴定酸含量が高かった.遮光によって,果実の糖度は低下し,滴定酸含量は増加する傾向が認められた.
著者
松原 陽一 苅込 卓也 生田 稔 堀 廣孝 石川 枝津子 原田 隆
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.297-302, 1996-09-15
被引用文献数
2 7

リンゴ苗の育成におけるarbuscular菌根(AM)菌[<I>GtσmusetZtnicαtum</I>(GE)および<I>GigasPoramargaritα</I>(GM)]の利用について検討するため,リンゴ(iN4aluspttmitaMill,var.dom.esticaSchneid.)の8品種('旭','祝,紅玉','ゴールデンデリシャス','スターキングデリシャス','ふじ','陸奥','幽レッドゴールド')およびミツバカイドウ(MαttcssieboldiiRehd.)の実生の生長に及ぼすAM菌接種の影響について調査した.<BR>接種8週間後,AM菌の感染は全ての品種•菌種の組合せにおいてみられた.リンゴの9品種における感染部位率(1個体の根系における感染部位の割合)は,GE接種区では31.7%('ゴールデンデリシャス')-50.5%('紅玉')に達し,GM接種区では24.0%(ミツバカイドウ)-50.7%('スターキングデリシャス')となった.GE感染個体では,草丈,地上部および根の乾物重は,全ての品種において無接種個体のそれを大きく上回った.GE感染個体では,ゴールデンデリシャス'およびミツバカイドウを除く他のものにおいて,それらの値が無接種個体を大きく上回った.両菌種において,共生関係成立による生長促進効果は'旭で最も大きく現れた.感染植物体の地上部および根におけるリン濃度は,菌種に関わらず,無接種個体のそれより顕著に高かった,この場合,その差は地上部より根において大きかった.<BR>このように,AM菌(GEおよびGM)の感染および共生関係成立による植物体生長促進効果が数種リンゴの実生において認められたことから,リンゴ苗の育成過程において,AM菌接種による健苗の育成が期待される.
著者
中村 俊一郎 寺西 武夫 青木 美珠代
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.461-467, 1982
被引用文献数
3 8

セルリー種子の発芽促進に対するベンジルアデニン(BA), ジベレリン(GA<sub>3</sub>又はGA<sub>4</sub>)及びポリエチレングリコール(PEG)6000溶液処理の効果を調査した. またホウレンソウ種子ではPEG処理の発芽促進効果とともに, 処理後の乾燥貯蔵の可能性を調査した.<br>1. セルリー種子は20°Cを越えると発芽率が低下した. 発芽促進剤としてはBAが有効で, GA<sub>4</sub>も効果があるが, GA<sub>3</sub>は無効であった.BAとGA<sub>4</sub>とを併用すると最も有効であった.<br>2. セルリー種子はPEG処理によって発芽速度が早まり, 又25及び30°Cでの発芽率が上昇した.<br>3. 処理期間は7日間でも大きな効果が見られたが, 14日間処理すれば効果は更に増大した.<br>4. 処理温度は, 種子ロットによって, 15°Cが好適な場合と, 20°Cが好適な場合とがあった.<br>5. PEG処理中に光線を与えることによって, 処理効果が増大した.<br>6. PEG溶液中にBAを加えることによって処理効果が増大した. しかしGA<sub>4</sub>を加えても効果の増大は見られなかった.<br>7. ホウレンソウ種子もPEG処理によって発芽速度が早まり, 30°Cでは発芽率も増大した.<br>8. ホウレンソウ種子をPEG処理後, 7日ないし14日間貯蔵した時, 発芽率の低下は見られず, 発芽速度の減少も僅少にとどまった.
著者
渡邉 慎一 中野 有加 岡野 邦夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.725-732, 2001-11-15
被引用文献数
6 7

ガラス温室内でスイカを土耕栽培し, 立体栽培および地ばい栽培における個体当たりの総葉面積と果実重の関係について検討した.1. 'ハニー・シャルマン', '吉野', '早生天竜'の3品種を用いて仕立て本数を1本または2本として立体栽培(3月播き6月どり栽培)を行ったところ, いずれの品種においても個体当たりの総葉面積と果実重の間には高い正の相関関係が認められた.2. '早生天竜'を用いて仕立て本数1&acd;3本で立体栽培および地ばい栽培(8月播き11月どり栽培)を行ったところ, 立体栽培, 地ばい栽培のいずれにおいても個体当たりの総葉面積と果実重の間には高い正の相関関係が認められた.3. 立体栽培と地ばい栽培を比較すると, 個体当たりの総葉面積が同じ場合でも, 立体栽培区の果実は地ばい栽培区より明らかに小かった.4. 果実糖度に対する誘引法や個体当たりの総葉面積の影響は小さかった.5. 以上の結果, スイカの果実重は基本的に個体当たりの総葉面積によって決定されるが, それに加えて受光態勢も関与していることが示唆された.
著者
吉村 不二男 川村 容三
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.47-54, 1960

1. 1955年および1957年12月から翌年3月中旬までの間に一定期間ずつ順にモモ(岡山早生)の幼苗をガラス室に搬入し,或はモモ(岡山早生)およびカキ(平核無)の幼苗をビニールで覆い,人為的に昼間(午前8時30分~午後4時30分,8時間)のみ高温に遭わせ,春季の展芽,伸長,生育の状況を比較観察した。因みにその場合,気温は自然状態にくらベて日最高気温で10.0~13.3°C高かつた。なお別に日陰においた区(昼間の気温で自然状態より2.0~4.0°C低い)および1月上旬に5日或は7日間低温処理(-1~0°C)した区を設けた。<br>2.冬季の昼温の高低はモモの自発休眠の完了を妨げ或は促がす,殊に昼高温の発生する時期が初冬であると,自発休眠が不完全になり易く,晩冬であると展芽,伸長が促がされ生育がよい。また1月に5日或は7日間低温処理するとその自発休眠の完了が促がされ,春季の生育が著しくよくなる。なお昼夜を通じて行なう温暖処理(8~16°C)は昼間のみ高温で温暖処理(22~26°C)するよりも自発休眠を不完全にする程度が著しい。<br>3. カキでは冬季間の昼温の高低がその自発休眠の完了を妨げも促がしもしない。しかし昼温が高いと,頂部の1~2芽が枯死して春季にそれ以下の芽が展芽するが,発芽後の生育は至極旺盛である。また1月に7日間低温処理するとその生育が抑制される。<br>4. 従つて高知ではモモにとつて12月, 1月の昼温はやや高過ぎ,夜温も常時低いことが望ましい。しかしカキにとつて冬季の気温は不適当とはいえない。
著者
村上 賢治 木村 学 松原 幸子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.773-778, 1995
被引用文献数
2 2

サトイモ (<I>Colocasia esculenta</I> Schott) 品種'えぐいも'のカルスから単離したプロトプラストの培養および植物体再生技術を開発した.<BR>1. プロトプラスト培養の材料に適した柔らかいカルスは, 黄化茎の切片を30g•liter<SUP>-1</SUP>ショ糖, 2mg•liter<SUP>-1</SUP>,4-D+2mg•liter<SUP>-1</SUP>2ipおよび2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムを添加したMS培地で培養することにより誘導した. このカルスは, 同組成の新しい培地に継代培養すると増殖を続けた.<BR>2. プロトプラストは, カルスを振とう培養して得られた懸濁培養細胞を酵素処理することにより, 容易に単離された. 酵素液の組成は, 1g•liter<SUP>-1</SUP>ペクトリアーゼY-23+5g•liter<SUP>-1</SUP>セルラーゼオノズカRS+5mM MES+5mM CaCl<SUB>2</SUB>•2H<SUB>2</SUB>O+0.5Mマニトールとした.<BR>3. プロトプラストの培養は, 1/2濃度のMS無機塩, Kao and Michayluk (1975) の有機物に, 種々の濃度のNAA, BA, 2ip, 0.1Mグルコースおよび0.3Mマニトールを添加した液体培地で行った. これらのうち2mg•liter<SUP>-1</SUP>BAを添加した培地でプロトプラストを培養すると多くのコロニーが形成された.<BR>4. プロトプラスト由来のコロニーを0.2mg•liter<SUP>-1</SUP>NAA+2mg•liter<SUP>-1</SUP>BAを添加したMS固体培地 (2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムで固化) に移植すると,コロニーからカルスが形成され, 同組成の培地でさらに継代培養すると苗条が再生した. この苗条を切取り,ホルモン無添加のMS固体培地 (2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムで固化) で培養すると発根した.<BR>本研究で開発されたサトイモのプロトプラスト培養技術は, 今後再分化率の向上などを図ることによって,細胞融合や遺伝子導入を利用した新品種育成のための,有効な基礎技術となり得ると考えられた.
著者
萩屋 薫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.81-86, 1952
被引用文献数
2

(1) すいりの生理機構を明かにするため二十日大根を用い肥大生長に伴うすの發現經過を調査した。<br>(2) すの發現は肥大した大根に於て通導組織に遠い部分の木部柔組織の大形細胞に先ず糖の消失が見られ, ついでそのあたりの細胞に破生的及び離生的に生じた組織空洞が發現し, それが次第に擴大されてすとなる。すは木部柔組織に限られてあらわれる特徴を持つている。<br>(3) 根身内の可溶性物質の含量を中心部, 周縁部, 中間部について調査したるに, 一般にすの入つた部分の柔組織は他の部分に比してそれが低くなつており, 又全般的にすの甚しいものほどその含量が低下している事が認められた。<br>(4) すは葉長•葉數•根重•根徑等が急激に増加しT/R 率は低下し, のちこれ等が略一定に落付いて來た前後に發現し, 又この時期には柔組織の細胞の大さやその數が最大點に達し, 可溶性物質の含量は最低を示す。然してすは發現し始めると短期間に或限度まで急速に進行するがそれ以後はあまり増加しない。<br>(5) すの甚しいものは大體根重•根徑が大なる個體に多く, T/R 率が大なるものはすの發現が少い。又すの入つたものは柔組織細胞の數や大さが大きい。<br>(6) すの發現の第一歩は當該部柔組織細胞の老化にあると考えられ, それは主として根の肥大に伴う急激な細胞の生長によりその内容物の含度が低下し, 加うるに通導組織からの養分補給に支障を來たし一種の饑餓状態になるためと考えられる。
著者
高野 泰吉
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.152-157, 1966
被引用文献数
1

本実験はすいり発生経過について生理解剖的変化を観察した。<br>TTC 反応による肥大根組織の活力診断によれば, 道管列から離れた部分に生理的活性の低い細胞分裂能力を失なつた巨大柔細胞が存在する。すいりが進行するにつれて, 換言すれば組織の老化にともなつてTTC反応も弱まる。「す」の発現が肉眼的にみとめにくいとき, TTC反応ですいり始めを見いだすことができる。<br>すいりの発生経過は生理的活性が弱まり, 中葉ペクチンの脱エステル化や低分子化がおこり, 蛋白様物質の変成や分解も関与して, 離生的に間隙を形成し, それが拡大されて「す」となる。<br>これらの解剖的観察においてTTC反応による組織の活力診断のほか, ヒドロキシラミン-鉄反応によるペクチン質の存在形態の判別と位相差顕微鏡による微細構造の観察とは従来の知見に見解を付加することに大変役立つた。
著者
伊藤 三郎 松尾 友明 飯伏 雄二 玉利 信人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.107-113, 1987
被引用文献数
1 4

熱帯•亜熱帯性果実の有効利用を目的としている一連の研究の中で, グアバの葉•果実に多く含まれているポリフェノールの消長と特性を検討した.<br>1. ポリフェノールの消長を調べる目的には, Peri とPompei の分別定量法による分析が有用であることが分かった.<br>2. グアバの幼果は100g当たり約600mgの総ポリフェノールを含むが, その約68%は縮合型タンニンが占めていた. また, 果実の生育に伴って急激に減少することが明らかとなった.<br>3. プロアントシアニジン量も果実重の増加とともに顕著に減少した.<br>4. GPC分析により, 高分子ポリフェノールが主に減少することが分かった.<br>5. グアバ葉 (8月3日採取のもの) には, 果実に比べて約10倍量のポリフェノールが含まれていたが, その84%が縮合型タンニンであった.<br>6. HPLCにより, 幼果と成葉の抽出物より (+)-カテキンと (+)-ガロカテキンを同定した.<br>以上の結果から, グアバの幼果及び葉に含まれるポリフェノールの大部分がフラバン系のポリフェノール, 特に, (+)-カテキンと (+)-ガロカテキンから成る縮合型タンニン (プロアントシアニジン•ヘテロポリマー)であることが推定された.