著者
島田 有紀子 森 源治郎 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.617-623, 1995-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

1. <I>Ornithogalum arabicum</I>の自然条件下における花芽の発育経過を観察するとともに, 花芽の発育および開花に及ぼす温度の影響について調べた.<BR>2. 花芽形成は9月上旬に始まり, 10月下旬には第1小花が外花被形成期から内花被形成期の般階にまで進み, 12月下旬に雌ずい形成期に達した. その後, 花芽の発育は緩慢となり, 4月中旬に四分子形成期に達し, 5月中旬に開花した.<BR>3. 花芽の発達, 開花には10月下旬以降の低温経過を必要としなかった. 花茎伸長のためには低温が必要で, 花茎の長い切り花を得るためには, 1月下旬頃まで自然低温に遭遇させる必要があった.<BR>4. 5&deg;~13&deg;Cの低温は後作用して開花および花茎伸長を促進し, その効果はりん茎を処理する際の乾湿条件に関係なく認められた. さらに, 9&deg;~13&deg;Cは直接的に作用して雌ずい形成期までの花芽の発育を促した. また, この低温は茎頂が生殖生長に転換した初期段階から有効に作用した.<BR>5. 6月中旬入手のハウス栽培球を用いた場合, 100%の開花率を得るためには, 花芽形成に先立って30&deg;C12週間の高温遭遇が必要であった.
著者
梁川 正 坂西 義洋
出版者
園藝學會
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.250-260, 1977
被引用文献数
2 7

1. <i>Hippeastrum</i> のりん葉基部の組織片を母球上のしゅじゅの位置から採取し, 無菌培養を行なって, これらの子球形成能力を比較するとともに, りん葉上の各部位および底盤部の組織片からの子球形成の可能性を見た. 各培養片は直径6mmのコルクボーラーで打抜かれたもので, 0.8%の寒天と2%のショ糖を加え, 生長調節物質無添加物 White の培地に置床した.<br>2. りん葉最下端の培養片の子球形成率は, 25&deg;Cと30&deg;Cで最大であった. 光の存在は子球の発育を促すが,子球形成そのものには明暗の差がなかった, また培養片の採取季節による差も認められなかった.<br>3. りん葉最下端の培養片ことに底盤部組織がこれに付着している場合の子球形成率は大であったが, 底盤部から2mm離れた部位のりん葉培養片の子球形成率はわずか3%であり, 3mm以上離れた部位のものでは子球形成がみられなかった. りん葉と底盤の両組織にまたがる培養片では, りん葉の最下端から子球, 底盤部から根を形成した. 底盤部のみの培養片ではなんらの形成も認められなかった.<br>4. 筒状りん葉において, 葉身側は肉が厚く, 反対側は薄くなっている. りん葉最下端の組織片をりん葉の全周にわたって採取し, それぞれの子球形成能力を比較したが, 厚い部分と薄い部分, その中間の部分の差は認められなかった. しかし底盤部に厚薄2枚の隣接りん葉片をつけた培養片を採取し置床した結果, 子球は培養片の両側のりん葉表皮露出面からよりも, 2りん葉片にはさまれた部分に形成されることが多かった. 露出面からの形成について見ると, 薄いりん葉片の方が厚いりん葉片よりも高い形成率を示した. このことは葉身と反対側のりん葉葉えきの再生能力が他の位置より高いことを示唆している.<br>5. 母球上でより外部の位置にあり, 成熟の進んだりん葉の培養片ほど子球形成率は全般的により大であった.<br>6. 子球形成は基本的には, りん葉基部の背軸面で行なわれるが, 向軸面を上にして置床した場合または液体培地で振とう培養した場合には, 一部の培養片で向軸面からの子球形成が認められた. りん葉基部の組織片を縦に2分して背軸, 向軸の両面に分けて培養すると, 向軸面に子球形成を行なうものが生じた. 向軸面も形成能力を有するが, 背腹両面を有する培養片では, より形成能力の高い背軸面の存在によってそれが抑制されているものと思われる.
著者
杉浦 明 原田 久 苫名 孝
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.303-309, 1977
被引用文献数
2 9

前報に引きつづき, 平核無について花蕾期より7月下旬までの間, 樹上でのエタノール処理が脱渋とその後の渋味の再現, および果実の形質等に及ぼす影響を調べた.用いたエタノール濃度は5%で, 5mlあるいは10mlずつポリエチレン袋に入れて, 花蕾あるいは果実を樹上で被袋処理し, 脱渋を確かめたうえで除袋した.<br>1) 7月下旬の処理果実を除いて, 除袋後1~2週間ぐらいの間に可溶性タンニンが再現し, とくに処理時期,が早いほど再現の程度が大きかった. また, 6月中下旬までの処理果実ではほぼ果肉全面が渋味を呈したが, それ以後の処理果実では果てい側半部あるいは果てい部のみに渋味の再現があった.<br>2) 収穫果 (9月18日) について褐斑の発生状態をみると, 渋味が果肉全面にあらわれた処理果実では褐斑は殆どみられないか, あっても果頂部付近にわずかに局在している程度であったが, 6月末以降の処理果実では渋味の再現した果てい部を除いて果肉全面に強い褐斑がみられた.<br>3) 脱渋処理の時期によって果形や果実の肥大にかなりの影響がみられた. すなわち, 概して早い時期 (5月中旬から6月中旬まで) の処理では果形が扁平になる傾向を示し, また, 強い褐斑を呈するようになった果実(6月末処理) を境にして横径生長の著しい抑制がみられ, 果形にも大きなヒズミを生じた. しかし, 処理時期がさらに遅くなるにつれて横径生長の抑制は徐々に弱まり, 7月末の処理果実では果実の大きさ, 果形ともに無処理果実と変わりないくらいに復した.<br>4) 渋味の再現との関連で, 果肉細胞の分裂を調べたところ, 開花後の分裂の最盛期は5月末から6月上旬にかけてであり, 6月下旬には殆ど停止していた. また,分裂細胞はもっぱら果実中部から果てい部にかけて分布していた. 脱渋処理は一時的に分裂を抑制したが, すぐに回復した.<br>5) 脱渋処理時期によってみられた渋味再現の様相について若干の考察を行なった.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.202-207, 2000-03-15
被引用文献数
2 5

結果節位の異なるイチジク'蓬莱柿'秋果の発育および形質の変動と発育期間中における気温の影響について, 1996年から1998年までの3カ年にわたって検討を行った.1. 第3節, 第8節および第13節の秋果の結果日から収穫日までに要した日数は80&acd;89日で, 果実の発育期間中の積算温度(基準温度0℃)は年次, 節位にかかわらず, ほぼ2, 100℃前後であった.横径, 縦径および果実重は第3節の果実が顕著に大きく, 節位の上昇とともに果実が小さくなる傾向が認められた.果皮色のE値は, 節位の高い果実ほど低下して着色が優れた.小果の可溶性固形物含量には, 節位間に一定の傾向が認められなかった.2. 結果後の気温は第3節と第13節で対称的な変化を示し, 第3節では結果初期の気温が低く, その後は収穫期まで上昇したのに対して, 第13節では結果初期の気温が高く, その後は収穫期まで低下した.第8節は, 第3節と第13節の中間的な気温変化を示した.果実の発育期間中の気温は各節位ともおおむね最低気温15℃以上の範囲で推移したが, 果実が未成熟であった1996年の第13節では, 結果後76日以降の最低気温が13℃に低下した.3. 果実の横径, 縦径, 果実重は, 結果後30日までの気温との間に有意な負の相関が認められた.また, 横径, 縦径, 果実重は収穫前5&acd;15日間の平均気温, 最低気温との間に有意な正の相関が認められ, とくに収穫前5日間の最低気温との相関が高かった.果皮色のE値も, 収穫前15日までの平均気温, 最低気温との間に有意な正の相関が認められた.小果の可溶性固形物含量は, 果実発育期間中の各時期とも気温との間に有意な相関が認められなかった.
著者
門田 寅太郎 谷川 茂
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.115-123, 1943 (Released:2007-05-31)
参考文献数
12

1. 農林省園藝試驗場に於て里芋の開花結果に關する研究の手始めとして開花容易なる南洋産赤莖及青莖種を用ひ昭和16年準備をなし17年交配及實生を試み併せて花及種子の觀察をも行つた。2. 里芋は親芋の頂部に近き肩の所より花芽を形成し1花序4~5花,順次花梗を抽出して2~3日置きに開花する。3. 里芋の肉穗花は雌花先熟にて開苞雄花成熟の前日の朝が授粉の適期の如くである。4. 1穗の雌花數 (子房數) は150~200にて雄花數320~340であつた。5. 1雄花は平均6ケの雄蕋及葯の融合せるものにして各1ケの葯孔を有す。6. 花粉は角刺を有し外觀甘藷のそれに類似し直徑約25ミユーであつた。7. 子房は前後縱にくびれ不完全なる2室を成し側膜胎座をなす。8. 果實は開花後35日にて完熟する。9. 1果約200粒の種子を得た。10. 種子は淡褐黄色牛蒡種子型12本の縱溝を有し1000粒0.25瓦にて罌粟よりも小さい。11. 種子は採り播を行へば發芽良好なるも7グ月後には枯死してゐた。12. 甲析は單子葉にて子葉の形はブラシカに似る。13. 初期の生長は遲々たるも半年後には相當の大さに達する。14. 實生の變異は實に大きく赤莖×青莖のF1に於て黒紫色の個體が半數以上現れた。
著者
斎藤 隆 伊東 秀夫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.137-146, 1961
被引用文献数
3

花の性の分化に関して,葉の演ずる役割について研究した結果,次のような事実を認めた。実験方法は,始め高温連続照明の下で育苗し,随時発達状態に応じて,これに短日処理を与え,後再び高温連続照明の下に移し,それぞれの状態で植物体の葉が短日処理に感応した結果をその雌花発現状態の上で観察しようと試みた。<br> l.葉面積 本葉4葉展開したもので,葉身を3/4あるいは1/2切除し,面積を減らした結果,面積が減るに伴ない雌花発現数も減ることが.見られた。<br> 2.葉令 5葉展開した時期に,第1葉から第5葉のうち1葉のみを残してほかを摘除して験したところ,第3節葉が最も能力よく,第2節葉,第1節葉の順に続き,葉令の若過ぎるものも葉令の進み過ぎたものも,葉令中期のものより機能が劣ることが認められた。<br> 3.葉面上の部位 葉面上の部位による差は,先端寄りの半分を残したものが,縦半分割あるいは基部寄りの半分寄りを残したものより劣り,後の2者にはほとんど差がない。<br> 4.苗令と葉令 2葉・3葉・4葉ならびに6葉展開苗で,各1葉のみを残して摘葉し比較した。同節位の葉を比較すると,葉令は苗令の進行とともに進み,最も雌花発現能力の強い葉は苗令の進行とともに順次上節位に移つてゆく。<br> 5.苗令と葉面積 2葉・3葉・4葉および6葉展開苗で,頂端の葉1枚のみを残したものから,順次下位の葉1枚ずつを添えて残したものをつくつて比較すると,頂端の葉1葉のみの処理を受けたものは,6葉展開苗では雌花が僅か発現したが,ほかの苗では発現せず,苗令の違うことの影響が見られた。同じ葉数をもつ黄同志の間で苗令の進んだものほど雌花数が多かつた。葉面積が大体等しくても苗令の影響が現われた。<br> 6.未熟葉と成熟葉 圃場(気温20°C,日長15時間)で,葉が横径5cmあるいは7cmに達したら摘除する処理を行なうと,前者では第19節辺から雌花が冤られ,後者では第13節辺から見られた(標準区と同じ)。本葉3枚あるいは6枚展開した時に頂端の第1葉(未展開葉)を摘除し,その後も新葉を発生次第摘除しつづけると,前者では雌花は第5節から,後者では標準区と変らなかつたが,両区ともおそくなつて下位の雄花節に両性花・雌花が発現した。未熟葉を摘除すると雌花の発生を助長するものと見られる。<br> 本葉5葉展開時に(ガラス室栽培,気温25~30°C,日長15時間),第1~3節の葉を摘除し,その後の葉が完全に展張し次第順次摘除する区と,第4節までの葉を残し,第5節以上の葉は全部摘除しつづける区をつくつた場合,前者では下位の節から雌花が現われ,その総数も多く,後者では第1雌花が標準区よりやや後れ,その後の着生も少なく,総数が少ない。<br> 圃場栽培のものとガラス室栽培のものとが,未熟葉を摘除することに対して反対の結果を現わした。ガラス室では高温のため残された成葉の機能が急速に衰えたためと考えられる。<br> 完全展葉後に摘葉する場合に雌花の発現を助長するのは,摘葉が生育を弱め,生長点のauxin含量が低いことと関連していると考えられる。<br> 7.短日処理後の摘葉 未展開葉を摘除すると雌花が多く発現し成熟葉を摘除すると雌花の発現が少なかつた。<br> 8.部分短日処理 1株上で,生長点あるいは一部の葉を連続照明下におくと,他部に短日処理を施しても,雌花の発現が抑制される。温度が17°の場合には,生長点あるいは一部の葉を連続照明下においても,短日処理葉の面積に応じて雌花を発現した。<br> 9.枝別短日処理 1株上の2本の側枝の一方は短日処理し,他方は連続照明し,後者上の雌花の発現を見ると,雌花が発現した(1節)から短日処理枝からの影響が及んだことになる。連続照明枝上の成熟葉を摘除すると雌花節は1.8とややふえ,未展開葉を摘除すると0.2と減つた。短日処理枝の頂部を摘除しておいて連続照明枝の成熟葉を摘除すると雌花節は2.5とふえた。<br> 10.環状剥皮 主茎基部の環状剥皮は無効であつた。<br> 11.キュウリにおける雌花の分化は,葉が短日処理に感応してある特定の代謝産物つまり花芽形成に不可欠な物質を生成し,この物質が茎を通つてその個体上で最もauxinの多い生長点近くに移行して,生長点近くの未だ性の決定が行なわれていない花芽に作用を与えて起こるものと考えられる。しかし,この場合生長点のauxin levelが低いという条件も同時に充たされる必要があると思われる。
著者
梶浦 一郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.301-311, 1972
被引用文献数
1

リンゴ紅玉と国光果実に及ぼす炭酸ガス濃度の影響を4&deg;C下と20&deg;C下とで調査した. 炭酸ガス0,1,3,5, 10ならびに20%, 酸素16.8~21%を含む混合ガスを常時通気し, 各炭酸ガス濃度区とも紅玉では15個, 国光では10個ずつ調査した.<br><b>紅玉</b><br>1. 4&deg;C下では果皮地色の黄色化が炭酸ガス10%以. 上で抑制され, 果肉の軟化は5%以上で抑制されたが, 果肉かつ変果では軟化が著しかつた. 滴定酸度は処理中減少し, 20%区で顕著だつた. また酸素吸収量も20%区でやや抑制された. 食味は3%以下では淡白になり, 10%区はフレーバーが脱け, 20%区は異臭が生じ, 5%区が良好であつた.<br>2. 20&deg;C下では黄色化が3%以上, 軟化と減酸ならびに酸素吸収量は5%以上で抑制された. また食味も5%以上でフレーバーが脱け, 20%区では異臭が生じた.<br>3. 4&deg;C下では20%区で2種のかつ変が生じ, 5, 10%区の一部の果実にも軽い症状が見られた. (1) 濃かつ変が心皮組織中央より発生し, 果肉に拡大する. (2) 果実の肩がかつ変し, 上述のかつ変と併発する場合が多かつた. 20&deg;C下では20%区で一部の果実のほう線上に乾燥して空胴のある淡かつ斑が生じた.<br><b>国光</b><br>1. 4&deg;C下では黄色化が1%以上, 軟化が3%以上で抑制されたが, 20%区のかつ変部は著しく軟化した. 滴定酸度は減少し, 10, 20%区で顕著だつた. 食味は0, 1%区では粉状質になり, 20%区では異臭が生じ, エタノール蓄積も見られた. また3~10%区ではフレーバーが脱け, 高濃度下ほど著しかつた.<br>2. 20&deg;C下では黄色化は1%以上, 軟化は3%以上で抑制され, 20%区のかつ変部は軟化した. 滴定酸度の減少は20%区のかつ変部で著しかつた. 食味は0~3%区で粉状質になり, 10%以上で異臭が生じた.<br>3. 4&deg;C下では1%以上の区で心皮組織中央より淡かつ変が生じ, 果肉に拡大し, 高炭酸ガス下ほど顕著だつた. 20&deg;C下では果心内背管束付近が淡かつ変し, 果肉に拡大するとともに空胴が生じた. 5%以上の区で見られ, 高濃度下ほど著しかつた.<br>4&deg;C下の本実験より貯蔵に適した炭酸ガス濃度は紅玉では5%付近と思われたが, 国光ではかつ変発生のため不明確だつた. より明確な貯蔵効果を得るにはかつ変を防止するとともに低酸素との組み合わせが必要と思われた. 温度とかつ変, 最適炭酸ガス濃度, 炭酸ガス感受性の品種間差について考察した.
著者
杉山 慶太 菅野 紹雄 森下 昌三
出版者
園藝學會
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.108-116, 1999 (Released:2011-03-05)
著者
桝田 正治 小西 国義
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.419-424, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

ホウレンソウ種子は10~20°Cで良く発芽し, 25°C以上で著しく抑制された。25°Cで30%程度の発芽率を示す種子群を, 36N (濃硫酸) •30分間あるいは18N•60分間処理すると, 硫酸無処理の果皮除去種子と同様に80~95%の高い発芽率を示した。しかし,30°Cでは硫酸処理種子および果皮除去種子とも約50%の発芽率にとどまった。果皮を物理的に割っても発芽率は向上したが, その効果の程度は小さかった。硫酸処理後, 水ポテンシャル-1.3MPaのポリエチレングリコール溶液 (PEG-6000) に1週間 (10°C)プライミング処理した種子は, 供試6品種とも30°Cの高温下で置床後8日以内に80%以上が発芽した。プライミング処理のみでは, その効果は小さかった。果皮表面の走査電子顕微鏡観察によると, 硫酸処理によって果皮クチクラが崩壊し表皮に多数のくぼみが現れ, その底に径1~2μmの小孔が認められた。このことより, 硫酸処理による発芽促進は, とくに果皮クチクラの崩壊により胚への酸素透過性が高まったことによるものと推察された。
著者
中村 俊一郎 寺西 武夫 青木 美珠代
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.461-467, 1982 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
3 8

セルリー種子の発芽促進に対するベンジルアデニン(BA), ジベレリン(GA3又はGA4)及びポリエチレングリコール(PEG)6000溶液処理の効果を調査した. またホウレンソウ種子ではPEG処理の発芽促進効果とともに, 処理後の乾燥貯蔵の可能性を調査した.1. セルリー種子は20°Cを越えると発芽率が低下した. 発芽促進剤としてはBAが有効で, GA4も効果があるが, GA3は無効であった.BAとGA4とを併用すると最も有効であった.2. セルリー種子はPEG処理によって発芽速度が早まり, 又25及び30°Cでの発芽率が上昇した.3. 処理期間は7日間でも大きな効果が見られたが, 14日間処理すれば効果は更に増大した.4. 処理温度は, 種子ロットによって, 15°Cが好適な場合と, 20°Cが好適な場合とがあった.5. PEG処理中に光線を与えることによって, 処理効果が増大した.6. PEG溶液中にBAを加えることによって処理効果が増大した. しかしGA4を加えても効果の増大は見られなかった.7. ホウレンソウ種子もPEG処理によって発芽速度が早まり, 30°Cでは発芽率も増大した.8. ホウレンソウ種子をPEG処理後, 7日ないし14日間貯蔵した時, 発芽率の低下は見られず, 発芽速度の減少も僅少にとどまった.
著者
前川 進 稲垣 昇 寺分 元一
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.174-179, 1983
被引用文献数
1 3

キキョウ花色に及ぼすMoの影響を明らかにするため, キキョウ品種'サミダレ'を用いて, モリブデン酸ナトリウム溶液の切花浸漬処理や花弁への散布処理を行った.<br>Mo溶液に切花の切り口を浸漬処理することによって, 青紫色から真青色へと花弁の青色化が起こった.Moの花弁に対する散布処理によっても, 切花の浸漬処理同様の著しい青色効果が見られた.<br>Mo浸漬処理後の生花弁の吸収スペクトルは処理前のものに比べて, 吸収極大波長は長波長側へ移行し, さらに, その吸光度も増大した. このような吸収スペクトルの変化は抽出したアントシアニン溶液にMoを添加する <i>in vitro</i> での実験においても認められた. Mo処理によって青色化したアントシアニン溶液へEDTAを加えるとMoに基づく青色効果は減少した.<br>このようなことから, Moの吸収によるキキョウ花弁の青色化はおそらくアントシアニンの金属錯体の形成によるものと推論された.
著者
渡辺 均 安藤 敏夫 塚本 達也 / Eduardo Marchesi
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.33-40, 2001-01-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
35
被引用文献数
10 20

ペチュニア品種の育種に資するため, 赤花の希少種であるPetunia exserta (2n=14)とPetunia sensu Jussieu (Petunia sensu WijsmanとCalibrachoaの総体)46分類群との交雑親和性を調査した.P. exsertaとCalibrachoaの正逆交配からはさく果が得られなかった.P. exsertaを母親とした場合はP. occidentalisを除くすべてのPetunia sensu Wijsman分類群と交雑可能であったが, 父親とした場合, 交雑可能なのは6分類群に限られ, 本種が一方向不親和性(unilateral interspecific incompatibility)を示す場合の多いことが判明した.P. exserta×P. axillaris subsp. axillarisのF2世代は赤花個体を分離したが, P. exsertaに最も近い発色をする個体にはP. exsertaの主要色素であるdelphinidin配糖体が優位に存在し, 従来の赤花とは異なる機作によって赤色を発現させる可能性が示唆された.
著者
福田 直也 小林-吉中 美湖 鵜生川 雅巳 高柳 謙治 佐瀬 勘紀
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.509-516, 2002-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 17

数種人工光源の光質がペチュニアの生育に及ぼす影響について, 光強度, 照射期間などの関連する要因とともに評価した.環境制御室に設置したメタルハライドランプ(MH), 高圧ナトリウムランプ(HPS)および青色光ランプ(B)下でわい性中輪咲ペチュニア'バカラブルーピコティ'を栽培し, 生育の比較を行った.実験では, 光質, 光強度および照射期間などの光環境要因と, 各要因との相互作用が生育に及ぼす影響を調査した.さらに, GA<SUB>3</SUB>およびウニコナゾール処理を行い, 光質がペチュニアの生育に及ぼす影響とジベレリンとの関連について考察した.1. MHやB下に比べて, HPS下で栽培したペチュニアは, 草姿がわい化する傾向があった.HPS下の最大側枝長はMHやB下よりも約30%わい化し, 節間長も短くなった.HPS下において草姿がわい化したのは, HPSの赤色/遠赤色光比(R/FR)が高いことから, フィトクロム反応が原因であると考えられる.2. MHおよびHPSの両光源下では, 光強度が低いほど草丈が高くなった.しかし, いずれの光強度においても, HPS下で生育した植物体の草丈はMHよりも低かった.3. 生育期間中に植物体をMHからHPS下に移動したところ, 草丈の伸長速度が低下した, このことから, ペチュニアの草丈は生育後半に受けた光質の影響を大きく受けること, ならびにペチュニアの草丈に及ぼす人工光源の光質の影響には残効性がないことが示された.4. HPS下の植物体ではGA<SUB>3</SUB>処理により草丈の著しい増加が認められたが, ウニコナゾール処理による茎伸長抑制効果はほとんど観察されなかった.以上のことから, R/FRが高い光環境下では, 内生ジベレリン濃度が低下し, その結果として草丈が短くなる可能性が示唆された.
著者
小野 俊朗 平松 竜一 久保田 尚浩 依田 征四 高木 伸友 島村 和夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.779-787, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
24
被引用文献数
7 5

ブドウ'ピオーネ'の無核果栽培において,同一園で毎年着色が良好な樹と不良な樹を用いて,着色に違いが生じる原因を新梢生長や果実発育の面から検討した.新梢伸長,新梢当たりの葉面積および葉のクロフィル含量には着色良好樹と不良樹の間に差はほとんど認められなかった.単位面積当たりの収量は着色不良樹よりも良好樹でわずかに多かった.果粒肥大にも両者に大きな差はなかったが,不良樹では果粒軟化日が良好樹よりも約5日遅かった.果皮色は,果粒軟化後から成熟時まで常に着色良好樹で優れ,とくに軟化後2~3週間以降の差が顕著で,成熟時のアントシアニン含量は着色良好樹が不良樹の約2倍であった.屈折計示度は,成熟期間をとおして着色良好樹で高く,とくに果粒軟化後約3週間以降に両者の差が大きく現れた,果肉の糖含量の変化もほぼ同様であったが,その組成比には良好樹,不良樹間に差がなかった.
著者
林 孝洋 宮田 弘恵 小西 国義
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.135-141, 1992 (Released:2008-05-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

シュッコンカスミソウを時期を変えて栽培し, その花序の発達と構成の変化から, 花序発達の規則性と可変性を明らかにしようとした. シュッコンカスミソウの花序はユニット (岐散花序) の集合体と考えられる.そこで調査は, 栽培環境に対する花序構成の変化がよくわかるように, シュート全体とユニットの二つの階層で行った.花序発達にいくつかの規則性が認められた. シュートレベルでは, 主茎および側枝の断面積と着花した小花数の間に高い相関関係があった. またユニットレベルでも, 花序軸の直径と分化した小花の最高次数, 小花数, 新鮮重との間に高い相関関係が認められた.花序発達の栽培環境に対応する可変性は非常に大きかった. 春から夏にかけて定植時期が遅くなるほど,到花日数が少なく低節位で花芽分化し, 茎長が短く,生重が小さく, 側枝および小花が少なくなった. 一方ユニットは, 定植時期が遅くなるにつれ, 花序軸が太く, 生重が大きく, 小花の分化次数が高ぐ, 小花数が多くなった. ユニットの数と大きさは相反する形質として季節変動した.
著者
土井 元章 武田 恭明 浅平 端
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.621-626, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

シュッコンカスミソウ‘ブリストル•フェアリー’の露地栽培における花芽の形成過程を走査型電子顕微鏡を用いて観察した.低温遭遇量の多い苗では, 花芽の形成は茎長が18cmに達した4月15日から20日にかけて始まり, その後がく片, 花弁が形成され4月30日前後に頂花において雄ずいが形成された. 5月5日から10日にかけて, 外見的には出ちい期を迎え, 頂花において雌ずいの形成が観察された. その後, 雌ずいが伸長し, 雄ずいの花弁化, ならびに花弁, 雄ずいの伸長へと進み, がく片が展開して5月30日には開花に至った.一方, 低温遭遇量の少ない苗では, 花芽の形成開始が遅くなり, また下位節では花芽形成が起こらなかったが, 花芽形成開始後の頂花における花器原基の形成や発育は低温遭遇量の多い苗の場合と同様に進行した.
著者
加藤 忠司 山県 真人 塚原 貞雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.17-22, 1984 (Released:2007-07-05)
参考文献数
12
被引用文献数
4 6

21年生普通ウンシュウミカン樹 (杉山系) より2~3年生枝を一年を通じて採取し, 芽, 葉, 2~3年生部位の皮質部及び木質部に分別した後, 主要な窒素成分の含有量を調べた. 多くの窒素成分が周年変化を示し, 旧器官においては発芽期(4月上中旬)に最高含有量を, 新梢の発達が終わる時期(7月)に最低含有量を示した. これに対し新生葉では最低値が9月に認められた.皮質部と木質部では70%アルコール不溶窒素成分 (主体はタンパク質) 含有量の減少に先立って全窒素及び可溶窒素の一時的増加が発芽時に認められ, 可溶成分にあっては遊離アルギニン及びプロリン, 特にアルギニンの一時的増加が顕著であった. 一方新芽では発芽に伴ってプロリン含有量の急激な減少と, アルギニンの一時的な著しい増加が認められた. これらの現象はまず遊離プロリンとアルギニンが新梢の形成に窒素源として使われ,次いでタンパク態窒素が利用されることを示唆している. 旧葉における主要窒素成分含量の減少は5月上旬に始まり, 7月までに全窒素の約16% (乾物当たり) が減少した. このうちの約40%は遊離プロリン窒素で占められた. これらすべての主要成分は全部位で秋から冬にかけて増加し, 特に皮質部及び葉におけるプロリンの増加が顕著であった.
著者
北村 利夫 岩田 隆 落合 利理 福島 忠昭
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.277-285, 1980
被引用文献数
2

リンゴ3品種: 紅玉, 国光, 印度を用いて, 樹上での成熟期間中の呼吸量とエチレン生成量の変化と成熟現象との関係並びに品種間差異を明らかにするために, 成熟期に7日間隔で5~13回収穫し, 呼吸量, エチレン生成量及び組織内エチレン濃度の変化を調べ, これらと各種成熟現象の進展との関係を調べた. 成熟の指標として, 果実重, 可溶性固形物, 滴定酸度, デンプン含量, ペクチン含量及び果肉硬度を測定し, またアミラーゼ及びペクチンメチルエステラーゼ活性の変化も調査した.<br>1. 紅玉と印度は, 樹上での成熟期間中に典型的な呼吸の climacteric rise を示したが, 国光は慣行収穫期までには climacteric rise に至らなかった. 国光でも収穫後20°C貯蔵中には, 明らかな climacteric rise を示し, また慣行収穫期を過ぎて樹上に着生している果実では, 遅くに climacteric rise が認められた.<br>2. 組織内のエチレン濃度は, 紅玉では climacteric rise の開始より2週間前に明らかに増大し, climacteric minimum 時には4ppmに達した. 印度, 国光では climacteric rise 開始のほぼ1ヵ月前より0.3~0.5ppmの範囲で推移し, 印度は呼吸上昇とほぼ同時に増大したが, 国光は climacteric minimum 時こ急増して数ppmに達した.<br>3. エチレン生成は, 紅玉と印度では climacteric rise とほぼ同時に急増したが, 国光では呼吸及び組織内エチレン濃度の増大後も極めてわずかしか増大しなかった.<br>4. 種々の成熟現象の指標の変化と climacteric との関係をみると, 紅玉では成熟現象が急速に進み climacteric minimum 時には可食状態になった. 印度ではデンプンと全ペクチン物質の含量が多く, その分解の速度が遅いので, 呼吸が十分に増大した後に可食状態になった. 国光では成熟現象の進行は緩慢であったが, climacteric の始まるのが大変遅いので, 可食状態になってから約1ヵ月に至って climacteric peak に達した.<br>5. 国光の呼吸量とエチレン生成量は, climacteric の前後を通じ紅玉や印度のそれらと比較して大変少ない. このことと, 国光が他の品種に比べ非常に日持ちのよいことと関係があると思われる.
著者
望岡 亮介 山口 雅篤 堀内 昭作 松井 弘之 黒岡 浩
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.463-470, 1995 (Released:2008-05-15)
参考文献数
38
被引用文献数
7 7

日本原産野生ブドウを中心に, 5種, 5変種, 3未同定の東アジア原産野生種と, 対照として三つの栽培品種の果皮からアントシアニン色素を抽出し, HPLCを用いて色素分析した.色素の種類は, 得られたクロマトグラムと各ピークの積分値から5%以上を含有するもののみに限定した場合19種類の色素を認め, 種により3~15種類のアントシァニンが確認された. 特に, 北方系の野生種より南方系の野生種に含有色素の種類の多い傾向が認められた. また, ピークNo. 6は栽培品種では認められなかったが, 野生種では供試したすべてで確認された.アントシアニン組成の一致率によりクラスター分析を行ったところ, 形態的分類と比較的似通った結果となり, 本法は従来の形態的分類と併用すれば分類の精度をさらに高めることができるものと思われる. この方法で, チョウセンヤマブドウは他の野生種と明らかに区別できた. また, 本種およびその変種とされているシラガブドウのアントシアニン組成には大きな差異が認められ, 形態的•生理的観点と同様, 別種である可能性の高いことが確認された.
著者
土井 元章 森田 隆史 武田 恭明 浅平 端
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.795-801, 1991
被引用文献数
1 2

シュッコンカスミソウの生育開花に関する低温要求性の異なる品種, 系統を用い, 冬期の低温に遭遇した後の株において, シュートの種々の生育段階における高温遭遇がロゼットの形成および奇形花の発生に及ぼす影響について検討した.<br>その結果, シュートが栄養生長段階である3月31日から4月10日に昼温30°C (6:00~18:00) 夜温25°Cの高温処理を施すと, 低温要求性の大きい'パーフェクタ', 'ブリストル•フェアリー'20系統では, その後生育, 開花に好適な条件下で栽培してもすべてのシュートがロゼットを形成した. これらの品種, 系統についで低温要求性の大きい'ダイヤモンド', 'ブリストル•フェアリー'03系統においても高温遭遇後は半数のシュートがロゼットを形成した. 一方, 低温要求性の小さい'フラミンゴ', 'レッド•シー', 'ブリストル•フェアリー'08系統では, ロゼットを形成することなく, 開花に至った.<br>花芽形成開始直後に処理した高温は, 開花時の花茎を短くし, 主茎上の下位節での花芽形成を抑制した以外, 形態的な変化をもたらさなかった.<br>頂花における雄ずい形成期である4月30日前後に高温を処理すると, 奇形花が発生した. 奇形花の形態的な観察を行ったところ, 奇形花は, 各小花が雄ずい形成期ごろに高温に遭遇することにより, その後雄ずい原基の細胞分裂活性が長期にわたり維持されるようになり, 雄ずいの花弁化が異常に進み, 花弁数が増加するとともに分裂部を中心に花弁塊が形成される結果, 発生するものと考えられた. また, 高温による奇形花の発生は, 低温要求性の大きい品種, 系統ほど著しい傾向にあった.<br>以上の結果より, 低温遭遇後に高温に遭遇すると, 高温が低温の効果を打ち消し, 生理的にロゼット化を誘導する結果, 分裂組織における生育がより栄養生長的となり, 形態的にロゼットや奇形花を形成するようになることが考察された.