著者
大川 勝徳 北嶋 純也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.242-248, 1998-03-15
被引用文献数
4

クロユリ(Fritillaria camtschatcensis Ker-Gawl.)球根を栽培して, 出芽, 着葉, 開花および形成された新球などの形態的特徴を調査するとともに, その増殖を目的として球根に多数着生している小球状りん片を用いて, in vitro培養による子球形成に及ぼす温度, 光および植物ホルモンなどの影響を検討した.1. 球根を1995年11月上旬にポットに植え付け, ガラス室で栽培した結果, 葉は5&acd;6枚輪生し, 花は1本の茎から1&acd;2個で斜め下向きに咲いた.花蓋は広鐘形で平開しなかった.1996年7月下旬に球根を圃場から掘り上げ, その状態を調査した結果, 母球とそれに付着していた小球状りん片の大部分は腐敗していた.しかし2個の新球(約5g, 生体重)と子球を形成している6&acd;7個の小球状りん片が残存していた.2. 小球状りん片に子球を形成させるためin vitro培養した結果, 暗条件下で20℃が良い条件であった.3. 小球状りん片の子球形成率を高めるためin vitro培養した結果, NAA 0.1mg・liter^<-1>とEB 0.1 mg・liter^<-1>との併用が良好な条件であった.
著者
久松 完 腰岡 政二 大山 直美 Mander Lewis N.
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.527-533, 1999-05-15
被引用文献数
5 7

トルコギキョウのロゼット化と内生ジベレリンとのかかわりを明らかにするために, ロゼット化した実生に対する数種ジベレリンおよび前駆物質の影響ならびにロゼット化および非ロゼット化実生の内生ジベレリン含量を調査した.また, それらの開花に及ぼすジベレリン生合成阻害剤とGA_3の影響を調査した.その結果, ロゼット化した実生では初期13位水酸化経路上のGA_<53>より上流で生合成がブロックされている可能性が示された.また, ロゼット化および非ロゼット化実生にかかわらず, 葉と茎においてGA_<19>からGA_<20>に至る20位の酸化活性に違いがあることが示唆された.葉の伸展, 茎の伸長および花芽発達は活性型GAにより制御されているが, 花芽分化は制御されていない可能性が示された.
著者
新居 直祐 瀋 春香 小川 洋平 崔 世茂
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.411-414, 2004-09-15
被引用文献数
1 13

ビワの根の内皮側数層の皮層細胞にみられる細胞壁の内部生長と内皮細胞に形成されるカスパリー線の形成過程を検討した.根の横断面から観察して,皮層細胞の肥厚は細胞壁の内部生長とみられ,その拡大の最終段階ではラグビーボール状を呈した組織は細胞の半分程度を占有するまでに肥厚した.したがって,若い根では,内皮に接した1層目の皮層細胞の内部生長組織がネックレス状に1重のリングを形成した.根の齢が進むにつれて,内皮から2層目の皮層細胞にも細胞壁の内部生長が確認された.根の維管束の発達につれて,カスパリー線の自家蛍光が蛍光顕微鏡によって明瞭に観察できるようになった.二次維管束の発達とともに,細胞壁の内部生長を示した皮層組織と内皮組織の間に離脱帯が形成され,皮層が離脱する段階では内皮の細胞層数が増加し,カスパリー線も数層に増大した.また,根から皮層部が離脱する段階になると,内皮の外層はコルク様物質が蓄積するようになった.皮層細胞の細胞壁の内部生長と内皮のカスパリー線の形成過程の時間的差異からみて,皮層細胞の細胞壁の内部生長はカスパリー線と同様に,根からの水分や溶質の損出を防御するのに機能しているものと考えられる.
著者
杉浦 広幸 花田 薫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.432-438, 1998-05-15
被引用文献数
4 13

新潟県で特定の大輪ギク品種に発生した特異的な生育障害, すなわち草丈のわい化, 開花の1&acd;2週間の遅延, 花型の丁字型化などを起こすCSVdの性質を調査した.'ミスルトー'を用いた生物検定, およびRNAのポリアクリルアミドゲル電気泳動による解析の結果, 本症がCSVdによるものであると確定した.発病株から発生した冬至芽からのCSVdの無病化は, 2品種中1品種で認められ50&acd;61%の冬至芽が無病徴であった.汁液接種によるCSVdの伝染性については品種間差があり, 調査した10品種中, 5品種はCSVd抵抗性であった.土壌伝染性は認められなかった.塩基配列を解析した結果, 2か所でイギリス型と異なっていたが, 塩基数は同じであった.
著者
堀 裕
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.113-115, 1983 (Released:2007-07-05)
参考文献数
20
著者
ニミケットカイ ハタイティップ 上田 悦範 稲本 勝彦 土井 元章
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.148-153, 2006-03-15
被引用文献数
1

シュッコンカスミソウ(Gypsophila paniculata L.)'ブリストル・フェアリー'切り花に数種のアルコールを生け水に添加して与え,エステル化酵素(アルコールアセチルトランスフェラーゼ:AAT)の基質特異性について検討した.エタノール以外のアルコール処理により,それぞれ対応する酢酸エステルが生成されたことから,これらの外生的に与えたアルコールがAATの触媒作用により内生アセチルCoAと反応しうることが示された.イソアミルアルコールの処理によりイソ吉草酸イソアミルの生成が促進され,結果としてシュッコンカスミソウ花序の悪臭原因物質であるメチル酪酸の発散量が低下した.芳香族アルコールであるベンジルアルコールや2-フェニルエチルアルコールにも同様の効果があった.細胞抽出液中のAAT活性は,シス-3-ヘキセン-1-オールおよび1-ヘキサノールに対して最も反応性が高く,一方エタノールに対する反応性が最も低く,invitroにおけるAATの基質特異性がin vivoの基質特異性と同一の傾向にあった.また,細胞抽出液におけるAATの活性は小花がつぼみの段階ですでに高く,開花段階で低くなった.以上の結果から,シュッコンカスミソウ花序において揮発性のエステル発散量を限定している要因は,基質となるアルコールの欠乏であることが示唆された.
著者
Fudano Takashi Hayashi Takahiro Yazawa Susumu
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.327-332, 2007-10
被引用文献数
1

The effect of plant density and variety on allometry in Gypsophila paniculata L. was studied. Increasing plant density significantly reduced fresh weight, total branch length (the sum of the lengths of all primary branches), number of dichasia, number of florets per dichasium, and total number of florets in cut flowers in 'New Face'. The relationships between fresh weight and the total branch length, number of dichasia, and total number of florets were negatively allometric, isometric, and positively allometric, respectively. There were allometric relationships between fresh weight and the number of dichasia, number of florets per dichasium, and total number of florets on each branch order. The allometric exponents of regression relating the number of dichasia and the total number of florets to fresh weight increased from lower- to higher-order branches. On the other hand, the allometric exponents of regression relating the number of florets per dichasium to fresh weight were similar in almost all orders. Significant differences were found in fresh weight and parameters of inflorescence architecture among varieties grown under identical plant density. Allometric exponents relating the total branch length and number of dichasia to fresh weight, varied, and those relating the total number of florets to fresh weight were stable among varieties grown under identical plant density.
著者
杉浦 俊彦 横沢 正幸
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.72-78, 2004-01-15
被引用文献数
14 44

リンゴおよびウンシュウミカンの栽培環境に対する地球温暖化の影響を年平均気温の変動から推定した.果樹栽培に有利な年平均気温として解析対象とした温度域はリンゴでは6〜14℃およびこれよりやや狭い7〜13℃,ウンシュウミカンでは15〜18℃である.将来の気候の予測データとしては「気候変化メッシュデータ(日本)」を用い,約10×10 km単位のメッシュで解析を行った.その結果,リンゴ,ウンシュウミカンとも栽培に有利な温度帯は年次を追うごとに北上することが予想された.リンゴでは,2060年代には東北中部の平野部までが現在よりも栽培しにくい気候となる可能性が示唆され,東北北部の平野部など現在のリンゴ主力産地の多くが,暖地リンゴの産地と同等の気温になる,一方,北海道はほとんどの地域で栽培しやすくなる可能性が示唆された.ウンシュウミカンでも2060年代には現在の主力産地の多くが現在よりも栽培しにくい気候となる可能性が示唆されるとともに西南暖地の内陸部,日本海および南東北の沿岸部など現在,栽培に不向きな地域で栽培が可能になることが予想された.以上のように地球温暖化は今世紀半ばまでにわが国のリンゴおよびウンシュウミカンの栽培環境を大きく変化させる規模のものである可能性が示された.
著者
新美 芳二 中野 優 牧 健一郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.919-925, 1996-03-15
被引用文献数
5 11

リーガルユリ (<I>Littttm regale</I>) の強健な性質をヒメサユリ (<I>L. rubellum</I>) に導入することを目的として,両種間で相互交雑を行った.<BR>1.リーガルユリ×ヒメサユリにおいては, 開花当日の柱頭受粉により低率 (3.3%)ながら有胚種子が得られた. しかし, それらの種子はバーミキュライトおよび試験管内に播種しても発芽しなかった. リーガルユリ×ヒメサユリの雑種実生は受粉30~60日後に胚珠培養を行うことにより得られ, その頻度は5.3~6.7%であった.<BR>2.ヒメサユリ×リーガルユリにおいては, 開花当日の柱頭受粉では受粉後に花粉管が花柱内で伸長を停止し, 受精が起こらなかった. しかし, 開花2~5日後に柱頭受粉を行うことにより花粉管伸長が促進され,開花5日後の受粉では胚形成が確認された. 花柱切断受粉は胚形成に効果がなかった. 開花5日後の受粉により得られた胚は, 胚珠培養を行っても救出することができなかった.<BR>3.リーガルユリ×ヒメサユリから得られた個体の雑種性はrDNA分析により確認された. 調査したすべての雑種は二倍体であり, 花粉稔性は3%以下であった. 雑種個体の花色は淡桃色であった. また, 二重咲きの花をもつ雑種も1系統得られた.
著者
倉橋 孝夫 松本 敏一 板村 裕之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.63-67, 2005-01-15
参考文献数
15
被引用文献数
5 13

収穫初期から終期のカキ&lsquo;西条&rsquo;の果実を用いて, 収穫時期別の軟化発生程度と1-MCPおよびエチレン吸収剤を用いた脱渋中の軟化防止と脱渋後の日持ち性向上効果を検討した. その結果, 無処理区の脱渋完了時の軟化発生は, 収穫初期の10月1日収穫果で78.1%と最も高く, 収穫時期が遅れるのに伴って徐々に低下し, 収穫盛期の10月22日と29日収穫果ではほとんど認められなかったが, 収穫終期の収穫果では50.0%と再び増加した. 脱渋時のドライアイス封入48時間後の袋内エチレン濃度は, 収穫初期の10月1日収穫果が最も高く, 収穫時期が遅くなるにつれて低下した. また, 1-MCP処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の軟化発生は抑えられたが, 収穫終期の抑制効果は低かった. 収穫盛期の日持ち期間は1-MCP処理により無処理区と比較して約6日間延長できた. さらに, エチレン吸収剤処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の果実軟化は抑えることができたが, 脱渋後の日持ち期間は延長できなかった.
著者
倉橋 孝夫 松本 敏一 板村 裕之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.63-67, 2005-01-15
被引用文献数
5 13

収穫初期から終期のカキ'西条'の果実を用いて, 収穫時期別の軟化発生程度と1-MCPおよびエチレン吸収剤を用いた脱渋中の軟化防止と脱渋後の日持ち性向上効果を検討した. その結果, 無処理区の脱渋完了時の軟化発生は, 収穫初期の10月1日収穫果で78.1%と最も高く, 収穫時期が遅れるのに伴って徐々に低下し, 収穫盛期の10月22日と29日収穫果ではほとんど認められなかったが, 収穫終期の収穫果では50.0%と再び増加した. 脱渋時のドライアイス封入48時間後の袋内エチレン濃度は, 収穫初期の10月1日収穫果が最も高く, 収穫時期が遅くなるにつれて低下した. また, 1-MCP処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の軟化発生は抑えられたが, 収穫終期の抑制効果は低かった. 収穫盛期の日持ち期間は1-MCP処理により無処理区と比較して約6日間延長できた. さらに, エチレン吸収剤処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の果実軟化は抑えることができたが, 脱渋後の日持ち期間は延長できなかった.
著者
李 進才 趙 習コウ 松井 鋳一郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.372-379, 2001-05-15
被引用文献数
7 5

遮光率60%の温室で育てたSlc. Estella JewelとCym. Sazanamiを10月21日に直射日光(最大日射0.61kW・m^<-2>)にさらし, また, 両植物種を5月から10月まで遮光率30%(強光区), 60%(対照区)および90%(弱光区)で栽培し, 葉中の抗酸化酵素活性と色素含量の変化について調べた.1. CAM植物のCattleyaの抗酸化酵素活性はC_3植物のCymbidiumに比べて著しく低く, 前者は昼間, 後者は夜の始まりで高まる傾向がみられた.直射光処理により, CattleyaのSOD活性は著しく低下したが, APX活性はわずかに, CAT活性は著しく増加した.これに対して, CymbidiumのSODとCAT活性は顕著に, APX活性はわずかに減少した.2. 強光下の栽培1か月後, CattleyaのSODとCAT活性は著しく低下し, その後実験終了時まで対照区より低かったが, CATは活性が回復する傾向を示した.CymbidiumではSODとAPX活性は3か月まで低下を続け, CAT活性は実験終了時でも低かった.一方, 弱光下ではCattleyaのSODを除き, 両植物種の3酵素活性は対照区の植物に比べ遮光栽培中高い活性を維持した.3. 葉中のクロロフィル含量は両植物種ともに遮光率が低い区ほど少なく, さらにこれら3酵素活性と高い相関関係を示した.強光区のCattleyaではクロロフィルa/b比とβ-カロテン含量が遮光栽培1か月後著しく低下したが, 3か月後対照区と同等に回復した.Cymbidiumでは強光によるそれらの低下は少なかった.弱光栽培1か月後, クロロフィルとβ-カロテン含量の増加はCymbidiumでは著しく, Cattleyaでは少なかった.その後はいずれも対照区との差が縮まった.以上の結果から, CattleyaはCymbidiumより強光への積極的適応性を有するが, 両植物種とも強光への順化が一般に困難で, 弱光への順化は相対的に容易であると考えられる.
著者
斎藤 岳士 福田 直也 西村 繁夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.392-398, 2006-09-15
参考文献数
30
被引用文献数
8

NFTを用いた養液栽培トマトにおいて,異なる塩ストレスの処理開始時期,処理期間および栽植密度が,義液栽培トマトの果実収量ならびに果実品質に及ぼす影響について調査した.塩ストレス処理は,培養液にNaClを添加し,ECを8.0dS・m^<-1>に調節することによって行った.NaClを添加しない対照区は,EC 2.5dS・m^<-1>とした.平均果実重量は,塩ストレス処理を行わなかった場合と比較して,塩ストレス処理を開花後の果実生育の全期間に行うと約49%,前半のみの処理で約73%,後半のみの処理で約63%となった.可溶性固形物含量(Brix%)は,対照区で6.1,全期間処理で9.7,前期処理で7.9,後期処理で8.6となった.尻腐れ果発生率は,全期間処理と前期処理で30%以上であったのに対して,対照区では0%,後期処理では16%であった.果実生育期の中後半から塩ストレス処理を開始することで,対照区より品質が向上し,全期間処理より収量が増加し,尻腐れ果発生率も低くなった.また,塩ストレス処理下では,低栽植密度区(1m^2当たり6.7個体)と比較して中栽植密度区(1m^2当たり8.3個体),高栽植密度区(1m^2当たり9.5個体)において大きな品質低下を伴わずに,単位面積あたりの収量が増加した.
著者
小森 貞男 副島 淳一 工藤 和典 京谷 英壽 阿部 和幸 古藤田 信博 小松 宏光 伊藤 祐司 別所 英男
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.880-889, 1998-11-15
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

前報で設定した各S遺伝子型に対応した品種・系統を利用して,栽培品種を中心により広範に品種・系統のS遺伝子型の解析を試みた.その結果15種類のS遺伝子型のうち(S_Jb, S_Je)および(S_Je, S_Jd)型を除く13種類で品種との対応が以下のように明らかになった.下線を付したものが,今回新たにS遺伝子型が判明した品種・系統である.[table]
著者
三木 泰治
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.8-25, 1935 (Released:2007-05-31)
参考文献数
3

1. 梨の果肉中の石細胞の發育過程及之が大小分布等に就き日本梨を材料として觀察研究する所があつた。2. 日本梨の石細胞は開花又は授粉後10日内外にして柔細胞中に形成せられ, 其後急速に發達し, 40-55日にして其彈性を失ひ收縮し, 爲に周圍の柔細胞を牽引して放射状を呈せしむる。3. 石細胞膜は發現後急激に肥厚し, 60-70日にして最高の厚さに達し, 其後は成熟期に至るに從ひ少しく其厚度を減ずる。日本梨の品種に依り其發育過程及成熟果に於ける石細胞膜の厚度を異にする。4. 日本梨の品種に依り果心の中央を通ずる横斷面及縱斷面に於ける石細胞群の分布密度及大小石細胞群の混合比率を異にする。此事は日本梨の果實の品質を決定する上に於て相當考慮すべき重要事項の一に屬する。
著者
高樹 英明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.416-423, 2001-07-15
参考文献数
20
被引用文献数
2 8

山菜アマドコロP. odoratum Druce var. pluriflorum Ohwiの種子の発芽様式, 休眠型, 休眠打破に関して検討した.収穫後まもない種子を10月に播種して戸外で育てた場合, 翌夏になって発芽(発根)したが, 芽の地表への出現と展葉が見られたのは翌々春の4月であった.発芽が起こるためには種子が前もって低温湿潤処理される必要があったので, 種子休眠(幼根休眠)の存在が認められたが, その休眠は5℃, 60日間処理でほぼ完全に打破された.また, 種子への5mMエテホン処理は幼根休眠打破の弱い効果を示した.幼根休眠打破後の発芽適温は17&acd;25℃であった.種子の低温処理を, 種子を取り出す前の果実に対して行うより, 取り出した種子に対して行うほうが, 発芽促進効果が大きかった.果実から取り出した種子を低温湿潤処理前に1週間程度風乾させても発芽に影響はみられなかった.幼根休眠打破処理後, 発芽適温下に置いた種子の発芽とその後の生長活動は90日後には停滞した.これは幼芽が休眠(上胚軸休眠)に入ったためと考えられる.幼芽が生長を再開してシュートが地表に現れ, 緑葉を展開するためには再度低温経過を必要としたので, アマドコロ種子の休眠型はBartonとSchroeder(1942)が報告したdouble dormancyに似ていた.アマドコロの上胚軸休眠打破後の地表へのシュートの抽出適温は17&acd;29℃であった.シュートの地表への抽出は, 幼根休眠打破後の温暖期間(21℃)と上胚軸休眠打破のための5℃処理期間の長さに大きく影響され, どちらかの期間を120日とし, 他方を90日にした場合に, シュートの地表への抽出が比較的早く, また高い率で起こった.
著者
倉橋 孝夫 持田 圭介 小畠 正至
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.262-266, 2002-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

カキ'西条'の抑制栽培の技術を確立するために, 蛍光ランプを用いて, 10a当たりの設置密度を500灯, 250灯, 125灯と無処理区を設定し, 8月27日&acd;12月8日まで日長時間が17時間±1時間になるようにして長日処理の効果と適正な電照ランプ密度について調べた.光強度の異なる長日処理を行うと, 光強度の強い区ほど葉色(SPAD値)が濃く, 新梢の二次生長量が多く, 落葉時期が遅れた.さらに, 果皮色の進行は光強度の強い区ほど遅く, 果皮色が3以上になるのは, 無処理区が11月上旬であったが, 電照区は11月下旬であった.また, 果肉硬度は光強度が強い区ほど硬く, 屈折計示度は低かった.以上より, カキ'西条'に長日処理を行うことによって, 果実の成熟が遅れ, 栄養生長は盛んになると考えられた.また, カキ'西条'の抑制栽培で適正なランプ設置密度は, 成熟遅延効果があり, 果実糖度の低下が少ない125灯/10aで, 樹冠表面PFDは1.5μmol・m^<-2>・sec^<-1>程度であると考えられた.
著者
藤澤 弘幸 高原 利雄 緒方 達志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.719-721, 2001-11-15
参考文献数
9
被引用文献数
6 10

カンキツ'清見'の貯蔵中に発生する果皮障害を防止する目的で, 貯蔵前の乾燥予措処理の影響および長期貯蔵に適する貯蔵温・湿度環境を検討した.乾燥予措の程度が強いほど, 果皮が斑点状に褐色する果皮障害が著しく発生した.貯蔵温度1℃では低温によるピッティングが発生し, 12℃では貯蔵早期から果皮障害が発生した.貯蔵温度を5, 6℃とした場合に障害発生が少なく, 貯蔵環境を高湿度とすることにより障害は顕著に抑制された.'清見'果実は, 予措を施さず, 温度6℃, 相対湿度98%以上の環境に貯蔵することにより, 5ヶ月以上の長期間にわたり果皮障害を免れて貯蔵することが可能であった.
著者
村元 政雄 大塚 富一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.267-271, 1942

1. 苹果紅玉の腋花芽の分化期を知り併せて頂花芽の分化期と比較を行ふため, 農林省園藝試驗場東北支場に於て, 昭和16年8月6日より9月6日迄に7囘, 新梢の腋芽及び2年枝上の短果枝の頂芽を毎囘約40個採收して檢鏡した。<br>2. 腋花芽は當地方に於ては最初分化初期を認めるのは8月5日頃で, 頂芽より約半旬遲れてゐる。<br>3. 腋花芽の9月上旬迄の發達程度は頂花芽に比し, 約5~10日位宛遲れてゐる。<br>4. 腋花芽, 頂花芽共第I, II期の分化期間の長さは約25日で第III, IV期を略同一のやうに考察される。
著者
坂本 隆行 早田 保義 河塚 寛 坂本 宏司 西村 修 増田 秀樹 筬島 豊
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.388-390, 2002-05-15
被引用文献数
1 6

含硫化合物の検出に適した炎光光度検出器(FPD)装着のSniffing-GCを用いたGC-におい嗅ぎ法により, メロンの香気成分中における含硫化合物並びにその匂い特性を調査した.メロン'ミヤビ'の香気成分中から9個の含硫化合物を検出し, 5個を同定した.3-(methylthio)propyl acetateの相対含量が19.47と最も多く, 次いでethyl (methylthio)acetate, ethyl 3-(methylthio)propionateおよび2-(methylthio)ethyl acetateだった.3-methylthio-1-propanolは同定された化合物の中で0.27と最も低い値であった.その他の未同定の含硫化合物は上記5成分に比べ極めて低い値であった.Sniffing-GCで3-(methylthio)propyl acetateおよびethyl (methylthio)acetateはそれぞれ甘みの入った青臭みおよびキュウリ様の青臭みを有し, その匂いは強かった.2-(methylthio)ethyl acetateは高濃度で検出されたが, GC-におい嗅ぎ法では感知されなかった.ethyl 3-(methylthio)propionateはフルーティーな青臭みを有したが, その匂いは弱かった.3-methylthio-1-propanolおよび他の4成分の匂いは感知されなかった.以上から, ミヤビの香気形成に, 3-(methylthio)propyl acetateおよびethyl(methythio)acetateが青臭みを与える成分として重要であることが明らかとなった.