著者
小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.107-113, 1980
被引用文献数
5 9 9

キクの普通株及び無低温株に種々の処理を加えて親株とし, 長日下で育成した苗を摘心後15°C•短日に移して茎の伸長と発らい状態を調べ, ロゼット化つまり生長活性低下の誘因を検討した.<br>数年間にわたって無低温(15°C以上)条件下にあったキクは, 継続して低い生長活性を示し, 15°C•短日に移されると, 一部の例外を除いて, 常にロゼット状になった.<br>冬に低温を受けた普通苗は秋まで高い生長活性を示し, 10~11月になって活性が低下した. 活性の低いキクも20°C以上の温度ではよく伸長し, 25°Cではよく発らいした.<br>夏を無高温 (15°C) で, つぎの冬を無低温 (10°C以上) で経過したキクは, 翌年夏まで高い生長活性を示したが, その冬に低温を受けたものより早く活性が低くなった.<br>冬低温を受けた株に, 春及び初夏に高温を与えても生長活性は低下しなかった. キクはいったん低温を受けて長期間生育してのち, 数か月にわたる比較的長期間の高温を受けると生長活性が低下するものと思われる. その際, 低照度が活性低下に促進的に作用する.
著者
岡本 章秀 池田 廣 須藤 憲一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.270-272, 2006-05-15
被引用文献数
1

常緑性ツツジ(種子親)と,キレンゲツツジ(花粉親)との交雑について,花粉親として優れる交雑母本の選定を試みた.キンゲツツジ個体間の各交雑阻害原因および交雑能力の変異を調査するため,キレンゲツツジ9個体の花粉を供試し,マルバサツキ1個体に交雑した.その結果,受精率,種子数/果,白子率,生存率および交雑能力について,キレンゲツツジ個体間に有意差が認められた.キレンゲツツジ遺伝資源番号27026136および27026139を用いた交雑では他を用いた場合に比べて,交雑花当たりの生存可能な実生数が多かった.以上から,花粉親に用いるキレンゲツツジ個体を選定することは,常緑性ツツジ×キレンゲツツジの実生獲得において重要であることが示唆された.
著者
中村 三七郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.305-317, 1935
被引用文献数
1 3

(1) 本實驗に於て根端の採取は3月11日に着手し, 10月21日迄2週間毎に17囘行へり。新梢伸長測定は5月3日に開始し, 10月18日迄1週間毎に行へり。<br>(2) 夏橙の根群の活動は4月上旬に初まり, 5月上旬より7月下旬迄最も旺盛にして, 8月に至れば殆ど衰へ, 9月下旬より10月にかけて再び活動す。概して雨期に盛んなり。新梢は5月中下旬に伸長し, 以後伸長を止め, 8月下旬より9月下旬にかけて秋芽伸長す。<br>(3) 柿はやゝ遲れて5月下旬に至り根群活動を始め, 10月下旬には甚だ衰へたり。梅雨期に盛んにして8月に衰へ, 9月下旬やゝ旺となる。新梢は5月中旬, 7月下旬及び9月上旬を中心として2-3週間伸長し, 伸長速度も5月7月, 9月の順に盛んなり。<br>(4) 枇杷の根群は3月11日には既に活動状態に入り, 10月下旬迄も活動を續く。7月上旬最盛にして, 8月に至り衰ふ。新梢は5月中旬, 7月中旬, 8月下旬より9月上旬にかけ, 各2-3週間伸長し, 5月に於て伸長速度最大なれど, 概して絶えず伸長するものの如し。<br>(5) 梨の根群は5月上旬活動期に入り, 8月上旬迄繼續す, 新梢は7月上旬迄に全伸長の殆ど總てを終る。<br>(6) 以上の結果より考察するに各果樹の根群は梅雨期及び其前後に於て活動盛んなれども, 新梢は一般に雨期に於て伸長緩慢にして, 梨は梅雨初期に於ては伸長盛んなれども終期に近付くに從ひ伸長緩やかとなる。<br>(7) 根群の活動期と新梢伸長期は明かに交互となる。
著者
山川 祥秀 清水 均 櫛田 忠衛
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.454-460, 1982
被引用文献数
5 1

'甲州'ブドウの昭和55年の味なし果と健全果について, 果実の粒径及び粒重と, 主要成分である糖と酸の経時的変化を調べて, 次の結果を得た.<br>1. 味なし果の粒径と粒重の増加曲線は成熟過程中, 健全果とほとんど同じ形を示した. ただし, 味なし果の方が粒径, 粒重ともに終始わずかに大きい値を示した.<br>2. 味なし果の糖度は9月初めの着色の時期までは健全果と全く同じ上昇を示したが, その後は上昇が止った. 健全果はその後も順調な上昇を示し, 収穫期には18~19%まで上昇し, 味なし果との差は6~7%に達した.<br>3. pH の変化については, 味なし果はゆっくりとした直線的な上昇傾向を示したが, 健全果は典型的なS字曲線を示した.<br>4. 還元糖は幼緑果期を除けば上記糖度の場合と同様であった.<br>5. 滴定酸度は8月上旬に味なし果で5.00g/100m<i>l</i>, 健全果で5.15g/100m<i>l</i>の最高に達し, 以後急減して, 収穫期には逆転し, 味なし果0.95g/100m<i>l</i>, 健全果0.86g/100m<i>l</i>となった.<br>6. ブドウ糖と果糖の総量の変化は還元糖の場合と同様であったが, 収穫期に味なし果ではブドウ糖5.2%, 果糖5.7%, 健全果ではブドウ糖8.4%, 果糖9.4%となった. また, G/F値は成熟初期は1で, 9月初めになって1を割り, 収穫期に味なし果で0.92, 健全果で0.89となった.<br>7. 酒石酸とリンゴ酸の総量の変化は滴定酸度の変化と同様であったが, 成熟初期では酒石酸よりもリンゴ酸が多く, 両酸とも味なし果の方が健全果よりも少なかった. しかし, 収穫期にはリンゴ酸よりも酒石酸が多く, 味なし果では健全果よりわずかにリンゴ酸が多く, 酒石酸は少なかった. また, 結合型の酸の割合を計算し, 味なし果で17.4%, 健全果で24.6%の値を得た.<br>'甲州'の味なし果樹の外見的生育経過と収穫量は健全果樹とほとんど違いはなく, 強いて言えば, 味なし果実の方がわずかに着色が劣る程度であった. しかし, 成分的には味なし果の言葉が示すとおり, 糖分が極端に低く, 酸が高く, '水っぽい'ものであって, この変化は着色の始まる9月になって突然に起こるものである.
著者
立花 吉茂
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.409-416, 1976
被引用文献数
2

1. ムクゲの54栄養系の花型を調査し, その外部形態から次の3群•9型に分類した.<br>I. 一重咲群 (25系統)<br>I-a 細弁型 (7系統)<br>I-b 中弁型 (13系統)<br>I-c 広弁型 (5系統)<br>II. 半八重咲群 (20系統)<br>II-a 祇園守型 (ぎおんまもり) (4系統)<br>II-b 花笠型 (はながさ) (7系統)<br>II-c バラ型 (9系統)<br>III. 八重咲群 (9系統)<br>III-a 乱れ咲型 (みだれ) (2系統)<br>III-b 菊咲型 (きく) (3系統)<br>III-c ポンポン咲型 (4系統)<br>2. 一重咲群は, つねに基本数 (5) の花弁の花を持つもの9系統, 5ないし6枚の花弁の花を持つもの12系統, 8ないし11枚の花弁の花を持つもの4系統からなる. 花弁数が, 基本数の2倍に達しても, 同じ大きさの花弁が一列に並ぶため外観上は一重咲である. この群の花の大きさはもつとも変異に富み, 直径7.6cmから13.3cmまで連続した (第1表, 第1,2,3および6図).<br>3. 半八重咲の花は, 内弁が外弁よりも小さいものである. 内弁が小さく, 数の少ないものをII-a (祇園守型), 内弁数の多いものをII-b (花笠型) とした. II-c(バラ型) は, 内弁がやや大きく, 雌ずいの弁化が加わつている系統もあつた. II-aは一重咲同様にねん性があり, II-bはあまり結実を見ず, II-cはまつたく不ねん性で結実しない (第2表, 第4,5図).<br>4. 八重咲群の花は, 外弁と内弁がほぼ同じ大きさのものである. III-a (乱れ咲型) は, 花柱の弁化した花が全体の約1/3を占め, III-b (菊咲型) は, 花弁が小さくて, 多少規則的に配列し, 花柱の弁化した花は全体の1/2~2/3に達した. III-c (ポンポン咲型) は, 小球形で花弁はもつとも小さいが, 花弁数はもつとも多く, 花柱の弁化はすべての花に及んだ. III-c型のいくつかの系統には貫生花が存在し, これらの花は70枚以上の花弁数があつた (第3表, 第7,8図).
著者
Phuong Pham Thi Minh 一色 司郎 田代 洋丞
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.236-242, 2006-05-15
被引用文献数
1

ヴィエトナムのシャロットを遺伝資源として評価するために、北部、中部および南部から集めた系統の遺伝的変異を調べた。これらの系統を佐賀大学のプラスチックハウスで栽培し、形態および生理的形質を調査した。また、RAPD法で全DNAの多型を、PCR-RFLP法で葉緑体およびミトコンドリアDNAの多型を分析した。北部の系統はすべて、葉が開張性で、暗緑色であり、抽苔が遅く、球根形成が早かった。球根の皮の色は、球根形成時には白かったが、収穫後には褐色になった。中部と南部の系統はすべて、葉が半開張性で、若い葉は黄緑色であったが、成葉は暗緑色になり、抽苔が早く、球根形成が遅かった。球根の皮の色は、球根形成の始めにはピンクであったが、成熟すると赤くなった。RAPD分析の結果にもとづいて系統間の遺伝的距離を計算し、デンドログラムを作成した結果、供試した系統は二つのグループに分かれた。一つは北部の系統からなり、他のグループは南部と中部の系統からなっていた。PCR-RFLP分析の結果、供試したすべての系統の葉緑体およびミトコンドリアDNAは、用いた制限酵素すべてで同じバンドパターンを示し、これらの系統は同様な細胞質を持つと考えられた。以上の結果から、ヴィエトナムには遺伝的に異なる二種類(北部型と南部型)のシャロットが存在することが明らかになった。これらが持つ異なる特性は熱帯および亜熱帯のシャロット、タマネギおよびワケギの育種に利用できると考えられる。
著者
土井 元章 虎太 有里 馬庭 弘和 今西 英雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.740-746, 2001-11-15
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

フリージア木子の長期貯蔵法が開花時期と切り花品質に及ぼす影響について, 'コート・ダ・ジュール'を用いて検討した.低温貯蔵は, その時期に関わらず, 二階球形成を誘導し, 植え付け後の萌芽率を低下させ, 萌芽後のシュートの生育を抑制した.これに対して, 木子をネット袋に入れて30℃で高温貯蔵すると, 貯蔵期間が長くなるに伴って球の乾燥による枯死(硬化)球の割合が増加するものの, 大木子(平均球重2.6g)を用いれば2月上旬までの貯蔵ではほとんど枯死球は発生せず, 高い萌芽率と旺盛なシュート生育が得られる木子を供給することができた.これらの高温貯蔵球では, 低温貯蔵球に比べて開花が遅れ, かつより長く重い切り花が得られた.これは, 高温貯蔵した木子の植え付け時の茎頂部における分化葉数の増加と茎頂直径の減少による植え付け後の幼若期間の増加によるものと考えられた.中&acd;小木子の高温貯蔵には, 球の乾燥を防止する目的で有孔ポリエチレン袋包装が有効で, 2月上旬まで高い開花能力を有する木子を貯蔵することができた.2月1日に植え付けた木子からは6月上中旬までに十分に市場性のある切り花が生産された.
著者
國分 尚 安藤 敏夫 光山 修司 渡辺 均 塚本 達也 Marchesi Eduardo
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.26-39, 2002-01-15
被引用文献数
1 1

南米ウルグアイの102地点から採集したPetunia axillarisの種子より植物を育て, 園芸的に重要と考えられる3つの花器形質と7つの栄養器官形質を計測し, その変異幅を調査して, 有用と考えられる形質の集中する地域を抽出した.両形質の多くについて, 亜種axillaris, 亜種parodiiおよび2種の中間型の間に有意差がみられた.各群落は株の高さ, 株の幅, 開花時の側枝数の3形質を用いたクラスター分析により次の6つの形態型に分類できた.1)直立・高性, 2)中間型, 3)コンパクト, 4)粗放, 5)小型・ほふく性, 6)大型・ほふく性.これらの形態型と自生地の環境, 特に河岸, 海岸の群落について考察し, また種内分類群との関連についても述べた.さらに園芸的に利用可能と思われる形質をもつ群落とその育種における有用性について考察した.
著者
松井 年行 奥田 延幸 小杉 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.499-503, 2002-07-15
被引用文献数
1

カイラン20品種の遺伝的関係を12種類の12塩基プライマーと, それら2種類のプライマーを組み合わせて用いたRAPD法により検討した.DNAフィンガープリントの多型性によってカイランの品種は3グループに分類された.第1グループは9品種で, 'Large leaf kailaan'(圓葉白花)の様な白花で縮葉の品種群(8品種)並びに白花か黄花である'Nanjing huanghua (huang)'(南京黄花(黄))の品種群(1品種)を含んでいた.第2グループは6品種で, 'Huanghualenye'(黄花)の様な黄花で濃緑葉の品種群(2品種)と'Huanghuagelin'(黄花格林)の様な黄花で淡緑の品種群(4品種)に分類された.第3グループは5品種で, 白花か黄花の品種の'Nanjing huanghua (bai)'(南京黄花(白))と'Hei'(黒)や'Small leaf kailaan'(尖葉白花)の様な白花で平滑葉の品種群(4品種)に分類された.また, 白花カイランが中国本土から台湾へ広がる過程で, 黄花カイランへ分岐したことが示唆された.
著者
桝田 正治 瀧口 武 松原 幸子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.641-648, 1989
被引用文献数
12 12

水耕トマトの5段摘心栽培において摘心後に培養液濃度を高め養液成分の濃度変化および果実収量と品質について調査した. また苗齢の違いと養液成分の濃度変化の関連性についても検討した.<br>1. 定植から摘心までは園試1/2倍濃度で栽培したが, この間のEC値, 硝酸態窒素, カリ, リン濃度は常に低下し, カルシウムとマグネシウム濃度は比較的安定していた. 摘心後に培養液を同じ1/2倍濃度に更新するとカリとリンを除いてどの成分濃度も上昇傾向に変わり,EC値も常に上昇した. カリ濃度の変化は小さかったが,リン濃度の変化は大ぎく培養液補給時にゼロになることもしぼしぼあった. 園試標準濃度ではリンを除いてすべての成分濃度が上昇した. また園試3/2倍濃度と高くすると成分濃度の変化域はさらに大きくなった.<br>2. 異なる苗齢において園試1/2倍濃度の変化を調べたところ, 硝酸態窒素, カルシウムについては70日苗で低下し, 105日苗で安定し, 125日苗で上昇した, カリとリンの濃度はどの苗齢でも低下する傾向にあった. マグネシウム濃度は70日苗で安定していたが, 105日苗と125日苗では上昇した. 成分(n′)と水(w′)の吸収量から算出した値(n′/w′)は硝酸態窒素, カルシウムおよびマグネシウムで苗齢の小さいときには当初の培養液濃度より高く, 苗齢の大きいときは低くなった. リンとカリのn′/w′は苗齢に関係なくほぼ一定で培養液濃度より常に高かった.<br>3. 摘心後に培養液を園試3/2倍濃度(EC2.9)まで高めると, 1/2倍濃度および標準濃度に比べて果実のBrix および滴定酸度が高まった. この場合, 果実収量は若干低下したが, 裂果や尻ぐされ果の発生は少なくなった. 以上の結果より, 摘心後に培養液濃度を高めれば収量に大きな影響を及ぼす事なく果実の品質を高め得るものと推察された.
著者
児島 清秀 山田 彬雄 山本 雅史
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.335-339, 1994
被引用文献数
7 5

本実験ではバレンシアオレンジ果実の生長速度が高い秋期の果実を部分 (果芯, 種子, 果肉, アルベド,フラベド) に分けてアブシジン酸 (ABA) とインドール-3-酢酸 (IAA) を分析した. ABAとIAAは, 内部標準として<SUP>3</SUP>H-ABAと [<SUP>13</SUP>C<SUB>6</SUB>] IAAを使用し, ガスクロマトグラフィー電子捕獲型検出器と質量分析器(選択的イオンモニタリング) で測定した. 果肉と種子の重さは急激に増加したが, アルベドとフラベドの重さはゆるやかに増加した. 150DAB (開花盛期後の日数) に, 種子のABA濃度は大きなピーク (21nmol•g<SUP>-1</SUP>生重量) を示したが, 果肉は小さなピーク (5nmol•g<SUP>-1</SUP>生重量) であった. 種子中のIAA濃度は150DABまで減少したが, 他の分析した部分よりも高い濃度であった. 果芯部のIAA濃度は119DABにピークを示し, 果肉•アルベド•フラベドよりも高い濃度を保った. アルベド, フラベドは同程度の低いIAA濃度であった. 得られた部位別の植物ホルモン量より, 種子中のABAと同化物集積性や果芯部のIAAと維管束との関係, 果肉と果皮間のABAの非移動性, 部分別の植物ホルモン分析の必要性が示唆された.
著者
後藤 明彦 荒木 忠治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.316-324, 1983
被引用文献数
1 10

サンボウカン果実のじょうのう果梗端部す上がり砂じょう及び中央部のゲル化及びす上がり砂じょうの化学組成を調べ, また, 光学顕微鏡による若干の観察を行った.<br>顕微鏡観察によると, 果梗端部す上がり砂じょうの砂じょう膜は著しく肥厚していたが, 中央部す上がり砂じょうの膜の肥厚は, それほど著しくなかった. また,PAS染色により, 砂じょう膜及び内部柔組織の細胞壁多糖類成分は, ゲル化及びす上がり砂じょうで増加していることが示された.<br>パルプ量, アルコール不溶性固形物 (AIS) 含量はす上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 細胞壁多糖類については, ゲル化及びす上がり砂じょうで, 熱水, ヘミセルロース, セルロースの各画分が健全砂じょうより高かったが, シュウ酸塩画分の増加はわずかであった.<br>果梗端部す上がり砂じょうでは, 同部健全砂じょうに比べて, 遊離酸, フラボノイド, カロチノイド, RNAの含量は低く, 結合酸, ビタミンC, 全-N, AIS-N, アミノ-Nのそれは高く, 全糖は変らなかった. 中央部ゲル化砂じょうでは, これらの成分は全て健全砂じょうより低かった. しかし, 同部す上がり砂じょうでは, AIS-N, アミノ-Nはゲル化及び健全砂じょうより高く, また, 全糖, 結合酸, フラボノイド, カノチノイド, ビタミンC及び全-Nはゲル化砂じょうよりは高かったが,健全砂じょうよりは低かった. RNAはゲル化砂じょうとほぼ同じであり, 遊離酸は低かった.<br>無機成分 (粗灰分, Ca, Mg, K, Na) については, いずれも, 果梗端部す上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 中央部ゲル化砂じょうでは, 健全砂じょうよりわずかに低かったが, す上がり砂じょうでは, ゲル化砂じょうに比べてCaが高く, Kが低かった.<br>これらの結果に基づき, サンボウカン果実砂じょうのゲル化及びす上がりの発現過程を考察した.
著者
霞 正一 鈴木 一典 郷内 武 野木 光子 山田 哲也 高津 康正
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.284-286, 2006-05-15
被引用文献数
1 1

キキョウ'五月雨紫'等の開花2〜5日前の花蕾子房を縦に8分割した子房片を外植体として,NAAとBAPの両方を添加したMS培地で培養すると不定芽が形成された.1mg・L^<-1>NAAと5mg・L^<-1>BAP添加区で最も不定芽形成率が高かった.この不定芽をMS培地に継代培養することで植物体が再生した.この植物体をポットで栽培した結果,再生個体の茎葉の形態,開花様相は親植物と同一であった.また,子房片からの不定芽形成率には品種間差異が認められた.
著者
山本 隆儀 宮本 健一 佐藤 嘉一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.101-108, 2005-03-15

かん水処理を施したオウトウ樹の微風条件下における葉面光合成光量子フラックスおよびみかけの光合成速度を多数測定した.この結果から, 葉温と気温を用いた葉面光合成光量子フラックスの重回帰推定式を得た.さらに, この3者と時期・時刻の要因を用いたみかけの光合成速度の重回帰推定式を得た.非冷却方式携帯型サーモグラフィ装置により, 側枝葉層の熱画像データを得た.この熱画像データと上記2つの重回帰式を結合することにより, 画素単位のみかけの光合成速度の値と葉面光合成光量子フラックスの値の推定計算, 両値の分布画像の表示およびデータ出力を極めて短時間内に可能にするシステムを作成した.
著者
仁宮 章夫 村田 芳行 多田 幹郎 下石 靖昭
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.321-323, 2003-07-15
被引用文献数
3 4

アラントインは,人体では抗炎症作用や抗潰瘍作用があり,植物中では窒素の貯蔵と輸送における重要な形態であると考えられている.'ツクネイモ'担根体中のウレイド,特に,アラントインの分析を行った.フエニルヒドラジンによる分光光度法によってウレイド(アラントインとアラントイン酸)を,HPLCによってアラントインのみを定量した.'ツクネイモ'の担根体には2.6mg・gFW^<-1>アラントインが含まれていたが,葉と茎からは検出できなかった.ヤマノイモ科に属する'ヤマトイモ','ナガイモ','ジネンジョ'にはアラントインがそれぞれ2.3,0.47,1.2 mg・gFW^<-1>含まれていた.しかし,ジャガイモとサツマイモには,0.1mg・gFW^<-1>以下のアラントイン量しかなく,サトイモの'石川早生'と京イモ'からは検出できなかった.なお,調べた全試料のアラントイン酸の含有量は無視できる量であった.
著者
須佐 寅三郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.194-221, 1934

本縣苹果在植品種の缺點と栽植上の缺陷から品種改良並に自家,他家交配研究の必要を感じ,昭和三年より繼績的に實驗を重ね.其内昭和四年より同八年迄の成績の概要を述べると次の如くである。<br> 1. 本縣主要苹果の花期は五月中旬より約三週間に亙る。印度が最も早く,國光が最も遲い。其期間は該年の花期好天なる時は短かく各品種の盛花期相接近する。之れに反し花期に低温又は降雨績く時は著しく其花期延長し各品種の盛花期を離す。同花期の良晶種を混植の要がある。<br> 2. 108品種中花粉の不良なるもの25種,中庸なるもの23種,花粉の發芽率60%以上を示すもの60種ある事が分つた。<br> 3. 雌蕋の雄蕋に對する長短と花粉能力又は受精との關係は未だ認めない。<br> 4. 花粉管放長の方向は性的親和力に影響を受くる事著しく強い。<br> 5. 苹果の花粉は攝氏13度内外の低温に於ても良く發芽す。<br> 6. 花粉管が伸長したる時降雨あれば著しき破裂現象を招來す。之れは受精作用に影響甚大なる事を推察す。<br> 7. 苹果の花粉は粉状乾燥状態にて貯藏すれば1ケ年以上發芽するものがある。<br> 8. 自家交配で自家不稔性の品種10種,弱自家結實性のもの9種,自家結實性と認め得るもの9種あつた。就中,主要品種では祝では殆んど自家不稔性で. 22%, 國光は稍自家結實性で3.07%, 紅玉は8.5%, 印度は10.05% なるが,ゴールドンヂリシヤスは16%, イングラムは33.16% の自家結實性ある事が分つた。之に反しデリシヤスは完全に自家不稔性である必す,紅玉,印度又はゴールドンデリシヤス,祝等と混植するを要すう。<br> 9. 他家交配25品種の平均結果率は22.76%で,自家交配28種平均結果率5.08% に比し約4倍半の結果率である。混植の必要が顯著である。<br> 10. 花時天候惡しき年に於ても他家交配試驗は顯著なる好結果を示した。故に花時寒濕なる氣候續く時は出來る丈人土交配を行ふか,又は花粉の媒介者昆蟲の集合を計る爲め果園の乾燥と氣温を高める事が有效であると思ふ。<br> 11. 他家交配に於て兩性器關が完全であ場合は相互嫌忌性は未だ判然と認められない。然し近親間に於ては相互嫌忌性があるかも知れない。<br> 12. 他家不結實は兩性機關が不能性であるか,何れか一方が不能的である場合に起るのが多いと思はれる。
著者
田中 孝幸 水谷 高幸 柴田 道夫 谷川 奈津 Parks Clifford R.
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.464-468, 2005-11-15
被引用文献数
2

これまでに, ハルサザンカCamellia×vernalis T. Tanaka et al.は, 形態, 染色体およびアイソザイム分析からサザンカとヤブツバキ間の交雑により成立したと報告されている.ツバキ属の葉緑体DNAは, 他の被子植物と同様に, 細胞質(母系)遺伝をすることが示されており, ハルサザンカにサザンカの葉緑体が存在すれば, サザンカがこれらの雑種の種子親であると考えられる.atpI atpH遺伝子領域のPCR産物は, サザンカおよびハルサザンカではすべて約800bpの位置に, ヤブツバキでは約1200bpの位置に単一のバンドを示した.これらの結果は, 1)一次雑種と推定されたハルサザンカ'凱旋'の種子親はサザンカである, 2)ヤブツバキへの戻し交雑第一世代と考えられるハルサザンカ三倍体品種群の種子親は'凱旋'と考えられる, さらに, 3)戻し交雑第二世代と考えられる'笑顔型'四倍体品種群の種子親はハルサザンカ三倍体品種群に由来する, ことを示唆している.ハルサザンカは, 平戸島にある古木の樹齢および1630年に出版された本の記録'鷹の爪'などから判断して約400年前にその起源があると推定されている.したがって, 本研究の結果, ハルサザンカの種子親は400年前に遡ってサザンカであると示唆された.
著者
中野 龍平 播磨 真志 小倉 恵実 井上 真輔 久保 康隆 稲葉 昭次
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.581-585, 2001-09-15
参考文献数
23
被引用文献数
15 27

カキ'西条'果実の軟化に対するエチレンの関与を明らかにするとともに, 果実のエチレン生合成に及ぼすCTSD脱渋に相当するCO_2処理と貯蔵中の湿度条件の影響を調査した.'西条'果実を>95%CO_2で16時間処理した後, 温度20℃湿度40&acd;60%の条件下で貯蔵すると, 収穫後2日(CO_2処理後1日)よりエチレン生成が検出され, 収穫後5日より軟化果実が多発した.1-methylcyclopropene(MCP)によりエチレンの作用を阻害すると, この急激な軟化は完全に抑えられた.CO_2処理を行わずに, 果実を低湿度下(40&acd;60%)および高湿度下(>95%)で貯蔵すると, 低湿度下で貯蔵した果実では収穫後2日よりエチレン生成の誘導と急激な軟化が観察された.高湿度下で貯蔵した果実ではエチレン生成・軟化発生とも収穫後10日まで抑えられた.一方, CO_2処理果実では, 高湿度下で貯蔵した場合でも収穫後2日よりエチレン生成とそれに伴う急激な軟化がみられた.以上より, '西条'果実の収穫後の軟化には, 水ストレスおよび脱渋処理に伴うCO_2ストレスによって誘導されるエチレンが関与していることが示された.
著者
太田 勝巳 鶴永 建治 細木 高志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.216-218, 1998-03-15
被引用文献数
4 3

定植後から収穫終了時まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマト'サンチェリーエキストラ'において, 夜間(午前1時&acd;午前5時)光照射した場合, 裂果の発生が制御可能かどうか検討した.裂果発生率は対照区では約10%であった.強光照射区(81.1μmol・s^<-1>・m^<-2> PAR)においては4%となったが, 弱光照射区(8.1μmol・s^<-1>・m^<-2> PAR)においては約8.5%であり, 対照区とほぼ同程度であった.強光照射区では午前4時における気孔の拡散抵抗は低下した.果柄の水分移動速度は強光照射処理時間中に低下し負の値を示したが, 一方, 葉柄の水分移動速度は正の値をとり, 水分が流入していることを示した.午前4時における強光照射区の葉の水ポテンシャルは対照区に比べ低下した.以上の結果より, 夜間に強光を照射した場合, 葉からの蒸散が生じることによって植物体内から水分が減少し, 果実への水分流入が抑制された結果, 裂果の発生が低減したものと考えられる.
著者
播磨 真志 中野 龍平 山本 貴司 小松 英雄 藤本 欣司 北野 欣信 久保 康隆 稲葉 昭次 富田 栄一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.251-257, 2001-03-15
被引用文献数
12 10

カキ'刀根早生'のハウス栽培果実の脱渋後の軟化発生の実態について調査し, その要因について検討した.1. 無脱渋, 樹上脱渋およびCTSD脱渋処理果実の日持ち性について検討したところ, 収穫日を基準とした果実の軟化様相には差がなかった.2. '刀根早生'ハウス栽培6園におけるCTSD脱渋後の軟化の発生は, 園地により大きな差が認められたが, 各園の軟化発生程度と根群分布, 葉中無機成分含量, 葉の水分ポテンシャルおよび根の呼吸活性には相関は認められなかった.3. 加温時期の異なるハウス栽培および露地栽培果実を経時的に採取しCTSD脱渋後の軟化様相を調査したところ, いずれの栽培法でも未熟な段階で収穫した果実では脱渋後, 急速に軟化した.満開後120日以降に収穫した果実では軟化の発生が一時的に少なくなった.この時期は露地果実では果実生長第II期から第III期への移行する時期と一致していた.4. 鉢植え個体を7&acd;10月にハウス内に搬入する高温処理は, 収穫後の果実軟化の割合を増加させた.以上より, ハウス栽培'刀根早生'では, 成熟期の高温が果実を「軟化しやすい」生理状態にすると考えられた.