著者
仲田 光輝 楠橋 直 齊藤 哲 大藤 弘明 奈良 正和
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.6, pp.447-452, 2019-06-15 (Released:2019-09-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

A “coarse-grained” metabasite body has recently been discovered within the Sambagawa metamorphic rocks in Kumakogen Town, Ehime Prefecture, Southwest Japan. The metabasite is exposed at only a few outcrops, although gravel-sized clasts from the metabasite are also found in the overlying conglomerate beds of the Eocene Hiwadatoge Formation. The metabasite rocks generally have a weak foliation compared with the well-developed foliation in the surrounding Sambagawa crystalline schists. The metabasite includes white to gray “porphyroclasts” (composed mainly of albite and zoisite) within a greenish-brown matrix (including actinolite and chlorite). Rock textures and modal mineral compositions of the metabasite gravels in the Hiwadatoge Formation are more varied than those found in outcrops of the metabasite unit itself. Mineral assemblages found in the metabasite and the surrounding mafic schist show that both rock units were metamorphosed under conditions corresponding to greenschist facies.
著者
河合 小百合 三宅 康幸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.597-608, 1999-09-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
41
被引用文献数
3 3

最終氷期の指標としての重要性が指摘されている姶良Tnテフラの粒度・鉱物・斜方輝石の化学組成を調べ, それらの地域差をまとめ, 本テフラの運搬・堆積過程を考察した.本テフラのうち最も広域にわたって追跡されるAT 3層・4層は, 噴出源から遠い地点ほど, 粗粒物質の割合・最大頻度粒径・重鉱物含有量・全重鉱物に対する不透明鉱物の割合が, テフラ運搬過程で働く重力淘汰に従って小さくなる.ただし, 大山などの他火山起源のテフラの混入の重鉱物組成への影響があること, 細粒な火山灰ほど, ある距離より遠方では重力淘汰の影響が小さいことなどが指摘される.火山豆石などとして凝集して落下することは, ATの運搬・降下プロセスに大きな影響を与えているとは考えられない.AT 3層と4層は同じ気象条件のもとで問隙をおかず短期間に堆積したと考えられる.
著者
狩野 彰宏 吉田 靖
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.100, no.10, pp.731-742_1, 1994-10-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
70
被引用文献数
2 1
著者
鈴木 敬介 栗原 敏之 植田 勇人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.4, pp.307-322, 2019-04-15 (Released:2019-08-08)
参考文献数
43
被引用文献数
5

飛騨外縁帯の岐阜県高山市本郷地域に分布する,従来,ペルム系森部層に一括されていた砕屑岩層について岩相層序とジルコンのU-Pb年代を検討し,これらを森部層と堂殿層(新称)に区分した.両層の砂岩には火山岩片が豊富に含まれていることから,ジルコンのU-Pb年代において,最も若い年代の集団の年代値が堆積年代である可能性が高い.U-Pb年代の検討の結果,森部層下部~中部の堆積年代の下限は約263~256Maで,中期~後期ペルム紀に堆積した可能性が高い.森部層上部のジルコン年代値の最も若いピークは前期三畳紀を示し,同層の年代は前期三畳紀にまで及ぶ可能性がある.堂殿層の堆積年代は,砂岩中のジルコンのU-Pb年代に基づくと,約186~181Ma(前期ジュラ紀)である可能性が高い.堂殿層は,下部ジュラ系来馬層群の漏斗谷層上部~北又谷層および蒲原沢層上部に対比できる.
著者
岡本 泰子 小室 裕明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.12, pp.635-642, 2009 (Released:2010-05-29)
参考文献数
28

縦長型マグマだまりの膨張ないし収縮によって形成されるカルデラを,アナログ実験で再現した.アナログ地殻は上新粉(米の粉末),アナログマグマだまりはゴム風船を使用した.実験結果は以下の通り.1.マグマだまりの膨張によってドーム隆起が生じ,ドーム頂部にグラーベン状に小さな漏斗型陥没が形成される.陥没の直径は,実際のスケールでは0.8~1.6 kmなので,カルデラというにはやや小さい.2.マグマだまりの収縮によって,平坦な底を持つ浅いカルデラと,その中心部の小径陥没が形成される.実際のスケールでは,カルデラの大きさは0.9~4.4 km,深さ200~400 mとなる.このモデルは,キラウエアカルデラと相似である.3.膨張後に収縮するマグマだまりによって形成されるカルデラは,先行するドーム隆起による地殻ダイラタンシーのため,マグマだまりが収縮するだけのモデルに比べて陥没量が小さくなる.
著者
加瀬 善洋 仁科 健二 川上 源太郎 林 圭一 髙清水 康博 廣瀬 亘 嵯峨山 積 高橋 良 渡邊 達也 輿水 健一 田近 淳 大津 直 卜部 厚志 岡崎 紀俊 深見 浩司 石丸 聡
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.11, pp.587-602, 2016-11-15 (Released:2017-02-20)
参考文献数
52
被引用文献数
3 4

北海道南西部奥尻島南端の低地における掘削調査から,泥炭層中に5枚のイベント堆積物を見出した.イベント堆積物の特徴は次の通りである; (1)陸方向および川から離れる方向へ薄層化・細粒化する,(2)級化層理を示す,(3)粒度組成の特徴は河床砂とは異なり,海浜砂に類似する,(4)粒子ファブリックおよび堆積構造から推定される古流向は概ね陸方向を示す,(5)渦鞭毛藻シストおよび底生有孔虫の有機質内膜が産出する,(6)海側前面に標高の高い沿岸砂丘が発達する閉塞した地形において,現海岸線から内陸へ最大450mほど離れた場所まで分布する.以上の地質・地形学的特徴に加え,過去に高潮が調査地域に浸水した記録は認められないことから,イベント堆積物は津波起源である可能性が極めて高い.14C年代測定結果と合わせて考えると,過去3000-4000年の間に1741年および1993年を含めて少なくとも6回の津波が発生しているものと考えられる.
著者
井村 匠 大場 司 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.3, pp.203-218, 2019-03-15 (Released:2019-06-07)
参考文献数
42
被引用文献数
4

十勝岳火山噴出物の変質火山灰粒子について岩石学的観察を行った.4.7ka噴火,3.3ka噴火,1926年噴火噴出物を対象とした.これらの火山灰粒子は様々な程度に変質し,鉱物組み合わせからシリカタイプ(シリカ鉱物のみ),ミョウバン石タイプ(シリカ鉱物+ミョウバン石±カオリン鉱物),カオリンタイプ(シリカ鉱物+カオリン鉱物)に分類される.いずれの鉱物組み合わせも酸性熱水変質を示している.全試料において,酸性変質部と未変質部からなる弱変質した火山灰粒子が卓越する.このような岩石組織は,熱水流通系における酸性熱水-岩石反応により形成したものである.これには多量の熱水が岩石と反応しながら排出されるような反応過程が考えられ,反応時間はごく短期間であった.これらの特徴は,マグマ貫入時に一時的に形成した高温酸性熱水系による非定常プロセスに由来している.以上の点はマグマ貫入頻度が高い十勝岳の火山熱水系の特徴であると考えられる.
著者
山本 啓司 下次 圭太 土居 真輔 ハフィーズ ウル レーマン
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.8, pp.468-471, 2011-08-15 (Released:2011-12-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

薩摩半島中央部の八瀬尾地域(四万十帯北帯)には蛇紋岩類が分布することが知られている.従来「貫入岩体」と見なされていた蛇紋岩類は,産状によって蛇紋岩体,蛇紋岩孤立岩塊および蛇紋岩主体の崩壊堆積物に区別できる.蛇紋岩体は,ほぼ水平もしくは浅い皿状の構造的境界面を介して西傾斜の砂岩層・砂岩泥岩互層(四万十累層群佐伯亜層群)の上に載っていて,岩体基底部の変形構造は上位側の東方への相対的変位を示唆する.これらの観察結果から蛇紋岩体は西側から移動してきて佐伯亜層群の上に定置したクリッペであると解釈できる.九州西南部の地体構造と蛇紋岩類の分布状況から推定すると,蛇紋岩クリッペの後背地は秩父帯の黒瀬川帯とされる領域にあると考えられる.
著者
向吉 秀樹 林 広樹 内田 嗣人 吉崎 那都 武田 哲也 後藤 和彦 関根 秀太郎 笠原 敬司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.5, pp.361-366, 2018-05-15 (Released:2018-06-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2

In 1997, two strong earthquakes occurred on March 26 (Mj6.6) and May 13 (Mj6.4) in the northwestern part of Kagoshima Prefecture, Japan (termed the 1997 Northwestern Kagoshima Earthquakes). However no seismogenic faults associated with these earthquakes had previously been recognized at the surface. In this study, we report structural observations from newly recognized fault outcrops located 1.5 and 2 km southwest of the epicenter of the Mj6.6 earthquake. One outcrop consists of the Miocene Shibi-san Granodiorite, which is unconformably overlain by lower sandy loam, lower humic soil, upper sandy loam, and upper humic soil layers that are clearly offset by steeply dipping faults. We measured ~ 40 cm of vertical separation of the contact between the lower sandy loam and lower humic soil layers along a WNW-trending fault, above which the ground surface flexed upward by about 20 cm. The second outcrop is a streambed exposure of the Shibi-san Granodiorite that shows a 30-cm-thick layer of foliated cataclasite along a fault plane, with textural evidence of sinistral slip.
著者
加納 博
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, 1990-12-15
著者
林 圭一 西 弘嗣 高嶋 礼詩 友杉 貴茂 川辺 文久
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.14-34, 2011-01-15 (Released:2011-05-11)
参考文献数
42
被引用文献数
3 3

北海道中央南部には,上部白亜系の佐久層,鹿島層,函淵層が広く分布している.本研究では,これまで十分に検討が行われてこなかった大夕張地域以南において佐久層上部~鹿島層にかけての岩相層序を再検討するとともに,浮遊性有孔虫および底生有孔虫化石の層位分布を検討し,浮遊性有孔虫化石による国際年代対比を行った.あわせて底生有孔虫化石帯を設定し,その群集変化から堆積環境の変化を解明することを目的とした.浮遊性有孔虫に基づくと,佐久層上部~鹿島層はチューロニアン上部からカンパニアン下部に対比される.また,底生有孔虫群集の変遷から4つの底生有孔虫化石帯を設定した.底生有孔虫に基づくと,佐久層上部~鹿島層の堆積場は堆積期間を通じで中部~上部漸深海であったと考えられる.
著者
安藤 佑介 氏原 温 市原 俊
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.187-190, 2009-04-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

More than 100 pteropod specimens were collected from each of the Eocene Shikiyama and Oniike formations in the Amakusa area, Kumamoto Prefecture, Southwest Japan. These fossils constitute the first Paleogene pteropod record from Japan. The pteropods from the Shikiyama Formation consist of five species, including Limacina canadaensis Hodgkinson, L. pygmaea (Lamarck), and Praehyalocylis annulata (Tate). The pteropods from the Oniike Formation consist of six species, including Limacina canadaensis, L. lotschi (Tembrock), Creseis hastata (Meyer), C. simplex (Meyer), and Praehyalocylis annulata. Both of these pteropod faunas are characterized by the predominance of Limacina in species diversity and specimen abundance. The faunas are similar to the pteropod faunas from the Middle to Upper Eocene of Europe and the east coast of North America in terms of generic composition and the predominance of Limacina.
著者
安藤 寿男 栗原 憲一 高橋 賢一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.S185-S203, 2007
被引用文献数
3

北海道中軸部の空知-蝦夷帯に広く分布する蝦夷層群は,白亜紀アプチアン~古第三紀暁新世の間に,サハリン南部から本州中部鹿島沖にまで続いた長大な前弧堆積盆にもたらされた堆積物で,北東アジアの海成層の模式層序となっており,当時の古環境変遷を復元するには重要な地層である.この巡検では,蝦夷層群が層序的に厚くかつ広域に分布する三笠-夕張地域において,陸海断面方向や時間層序学的にどのような堆積相変化を示すのかに注目して,セノマニアン~チューロニアン階の三笠層と佐久層,およびカンパニアン~暁新統の函淵層を中心に見学する.三笠層と函淵層では,様々な堆積構造を観察した上で,河川~浅海成堆積相や堆積シーケンスの特徴を把握する.また,三笠層の浅海生軟体動物群集やそのタフォノミーについても注目する.一方,東方同時異相である佐久層では,沖合成の泥質岩相やタービダイト相に加えて,セノマニアン/チューロニアン境界の海洋無酸素事変層準やアンモナイト群集の特徴も取り上げる.さらに,白亜紀のアンモナイトコレクションを三笠市立博物館で,古第三系始新統石狩層群の石炭層を夕張市石炭博物館で見学する.