著者
野田 徹
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.493-498, 2004-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
11

われわれが物を見る際には, 眼球のレンズ系で網膜に映された映像が, 神経―脳伝達系で認識されるというプロセスがとられる. ヒトがどこまでの視力に達しうるかに関しては, 一般には眼球のレンズ性能の限界によるが, もしも眼球が理想レンズとなれば, 最終的には網膜の視細胞の密度によることになる. それを解剖学的に計算すると, ヒトの視力限界は2.0前後(空間周波数60c/deg相当)と推定される. ヒトの視覚認知は, 視標の形状をまず模様の大きさごとに分解して認識し(2次元フーリエ解析チャンネル)それを合成して認識するしくみとなっている. 眼球のレンズ系は, 細かい模様ほどコントラスト感度が低下する特性(low-pass型)をもつが, 視覚認識系全体の特性は, 視力約0.1 (3c/deg相当)付近が最も認識感度が高く, それより大きな模様でも細かい模様でも認識できるコントラスト感度が低下する(band-pass型). 近年, 天体観測技術である波面解析・補償光学技術が眼球組織内の光学測定に応用され, 生体の視細胞の観察をも可能とした. また, 逆に, 簡単な検査で, 生体網膜に視標がどのように映っているかをコンピュータグラフィックスで合成して見せることも可能となり, 視覚の質(Quality of Vision)を含めた視覚機能評価への臨床応用が期待される.
著者
今井 可奈子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.23-26, 2008-01-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
3

地域の小児二次救急を担っているNHO三重病院(以下三重病院とする)では, 現在地域の病院や夜間子どもクリニックとの連携を図りながら電話相談や時間外を含めた診療を行っている. そこで求められる看護師の役割は, 患者の病状を把握し重症化する可能性のある小児患者の混在を念頭に置いた対応ができることであると考える. そのトリアージ能力やそれを支える豊富な知識と熟練した経験のもとで, 多くの看護業務を実践している. 今後ますます専門性の高い担当スタッフを育成する必要があるが, 小児二次救急患者を受け入れる当院の能力にも限界があり, 一次および三次救急体制を含めて地域全体で小児救急体制を整備していく必要があると考えられた.
著者
小口 和代 才藤 栄一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.83-85, 2007-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

わが国における摂食・嚥下リハビリテーシヨンは1990年代になって急速に発展し, 1995年の日本摂食・嚥下リハビリテーション学会設立起より加速された. 会員数は直線的に増加し, 2006年には5,000名を超え, 内訳は, 言語聴覚士, 歯科医師, 看護師, 医師, 栄養士, 歯科衛生士などである.摂食・嚥下障害患者は, 嚥下の問題だけでなく食べること全体の問題を持っており, 種々の場面で, さまざまな職種によるリハビリテーションチームにより対応される. その際チーム全体として学際的なチームワークが求められる. 今後の課題は, 標準的評価尺度の整備とそれを用いての治療効果の証明である.
著者
足立 克仁
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.603-609, 2006-10-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
26

Duchenne型筋ジストロフィーの確実な女性保因者において骨格筋と心筋の機能さらに中枢神経系の検討も行った. 骨格筋のCT像は左右差がみられ, 中でも大腿二頭筋に最もよく病変がみられた. 心筋障害は拡張型心筋症様を呈し, 好発部位は, 心エコーのwall motion index, 心筋SPECTなどの検索から, Duchenne型病者と同様に左室基部の後下壁に認められた. 保因者(母)と患児の心障害の部位は両者ほぼ同じであったが, 機能面では数値的には明らかな相関はなかった.中枢神経系では, 保因者12名のIQ(WAIS)値は62-122(94.8±18.0, mean±SD)であり, 80台以下の例が5名にみられた. この12名のうち骨格筋機能と心機能を調べたのは5名(43-61歳)であり, このうち2名では骨格筋, 心筋, 中枢神経系のすべてに症状がみられた.すなわち, Duchenne型筋ジストロフィーの女性保因者にはときに骨格筋, 心筋あるいは中枢神経系の障害が認められるものがあり, 軽微ながらDuchenne型病者と同様の病態が存在することが示唆された.
著者
伊藤 宗元 大黒 久子 篠田 孝司 佐藤 桃子 渡部 健次
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.764-770, 1969 (Released:2011-10-19)
参考文献数
10

We observed alteration of the behavior of coagulation factors during menstrual cycle by examination of nine kinds of test every week upon 12 healthy single females. At the same time we examined 5 healthy males in same way as a cotrast.The items of test are platelet count, bleeding time, coagulation time, capillary fragility (negative pressure), clot retraction, prothrombin time, recalcification time, partial thromboplastin time and serum fibrinogen.We obtained the following results;After period, there are definite increase of platelet count, prolongation of bleeding time, slight prolongation of recalcification time and prothrombin time. During period, coagulation time is shortened slightly and clot retraction became stable as 40∼50%. There is temporal decrease of capillary resistence after period, partial thromboplastin time much prolonged in one to two weeks after period. Serum fibrinogen increased slightly after period.The alteration of the behavior of coagulation factors during menstmal cycle are supposed to be affected by the age, marriage, delivery, amount of bleeding at period and length of menstrual cycle, because of which we should interpret results in consideration of the alteration during menstrual cycle in laboratory study.
著者
西宮 仁
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.477-481, 2005

進行性核上性麻痺(PSP)の診断上, 画像所見は有力な補助診断手段として用いられてきた. 主な所見としては, 頭部MRIにおいて認められる, 脳幹の中脳・橋被蓋部, ことに中脳吻側部の萎縮によって示されるハミングバードサイン, PVH等の大脳白質の異常信号, 頭部MRIおよびCTにて認められる第3脳室拡大, 四丘体槽拡大, シルビウス裂拡大, 前頭葉萎縮, 側脳室拡大, SPECTおよびPETにおける前頭葉の血流低下等が知られている.
著者
市場 洋三
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.346-351, 1997-08-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
10

腸管出血性大腸菌O157: H7感染症は軽症では下痢であるが, 重症では鮮血便を伴う出血性大腸炎となり溶血性尿毒症症候群HUSや脳症を併発し死に至ることもある. 1996年5月から6月にかけて岡山県では2つの大きな集団食中毒が学校給食を原因として発生し, 800名以上の児童が症状を呈し, 16名の子供にHUSの合併症を起こし2名が脳症にて死亡した. 学校給食の食材が原因と推定されたが同定はできなかった.
著者
五十嵐 勝朗
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.235-239, 2007-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

新生児には出生直後から, 生きていくための力, すなわち反射が備わっていて, すぐにさまざまな動きをする. 原始反射(新生児反射)は健常な新生児に観察される反射的行動で, 健常な新生児では中枢神経系の発達とともに多くは生後4-5ヵ月で消失する.新生児は胎内あるいは母乳を通して母親から闘う力を得ているが, ウイルスや細菌などに対して自ら闘うほどの力は持っていない. 成長過程において, ウイルスや細菌などに対して白血球が増加したり, 抗体をつくってウイルスや細菌などを排除できるように徐々に力をつけていく.新生児は3-4時間の授乳リズムで寝たり起きたりして過ごし, 昼夜の区別はあまりなく, 1日20時間近く眠る. 睡眠と覚醒が昼夜の周期に同期するようになるのは生後2-3ヵ月頃からである.
著者
安陪 光正
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.8, no.11, pp.695-698, 1954 (Released:2011-10-19)
参考文献数
2
著者
西野 力男
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.530-534, 1991-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
14

OD(orthostatic dysfunction)の母親80例の心因的要因につき検討し, エゴグラムでは, CP;13.8±4.8, NP;18.6±5.0, adult;15.8±4.5, FC;12.7±4.3, AC;14.6±4.1でFCに比しACが高いことから自主性のなさや日ごろのイライラや不満や悩みが生じやすく, 高いNPは子供に対し過干渉となりやすい傾向にあるものと考えられた. バウムテストにおいても, 正常とおもわれるのは10%しかなく, 単純型73%, 未熟型56%, 神経質型12%, 不満型7%で, 単純型・未熟型が大部分を占めていた. 単純型や未熟型は自主性がなく, 独自性に欠ける性格と考えられる. 今回の成績からODの母親は心理的不安定となりやすく, 子供にとっては学校生活のみならず家庭においても緊張が絶えず心理的不安定が助長されている可能性が示唆された.
著者
小原 博
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.143-148, 2004-03-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
15

2002年11月に中国広東省で発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)はベトナムと中国で流行を起こし(最終的な患者数はベトナム63例, 中国5,327例), その後多くの国々に拡散し合計8,439例の患者が発生した. ベトナムは徹底した隔離と適切な院内感染対策を迅速に実施し, 正しい情報のもとに外国の支援を受け入れ, 世界に先駆けてSARS制圧に成功した. 中国では初期対応の遅れや情報の非公開などの理由により院内感染が多発し感染が拡大したが, 後に国家の指導下に有効な施策を強力に展開し制圧に至った. 日本政府もベトナム・ハノイ市及び中国・北京市・広東省に対し緊急援助隊を派遣するなどして主に院内感染対策の面から協力した.本疾患は患者発生の初期段階から速やかに有効な対応策を講じることが重要である. そのためには, 流行が起きてから院内感染対策を開始するのではなく, 普段から医療従事者の訓練を行い, 基本を充実させるとともにシステムを構築しておくことが大切である.
著者
利斎 輝郎
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1184-1185, 1984-12-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
9

高度の四肢痙性麻痺を伴う脳性小児麻痺患者の妊娠・分娩を経験したので報告する.患者: M・O, 生後3ヵ月時に発症, 現在身体障害者1級と認定されている.結婚: 27才時に27才の健康な男子と結婚現症: 四肢に高度の痙性麻痺を伴い, 自宅でも身の回りのことすら全く出来ず, 夫及びボランテイアの協力を受けている.当方の話は十分理解出来るし, 又, 本人の言葉は言語障害を伴うが, なんとか聴取可能である. 夫婦共挙児を熱望する.妊娠経過は特記すべき異常は認められず, 順調に経過する. 経腟分娩は全く不可能なため帝王切開施行. 新生児は2810gの女児で異常を認めない. 母乳も十分で退院, 1ヵ月検診では母児共全く異常を認めなかつた.
著者
野村 伊知郎 赤澤 晃
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.62-66, 2000-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
26

黄色ブドウ球菌は, アトピー性皮膚炎の湿疹部に多く存在する. 1)スーパー抗原性の外毒素が, スーパー抗原として, また1型アレルギーの抗原として働く. 2)菌体の蛋白質が, 1型アレルギーの抗原となる. 3)α-toxinなどの, cytolytic toxinの直接細胞障害. 以上3つの方法で, アトピー性皮膚炎を悪化させる. そのため, ブドウ球菌を除去することが, 治療上非常に重要である. この分野の最新の報告を中心に増悪のメカニズムについて述べる.
著者
本田 一陽 桜井 誠 千田 圭二 阿部 憲男 清水 博
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.200-204, 2002-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

高齢者の肺炎を診療する場合, 濃厚な治療が行われたにも関わらず予後が必ずしも良くない症例に遭遇することがある. このような致死的細菌性肺炎について, 診療上どのような問題点があるか, 得られた文献を基に, 当院の症例についてそれぞれの問題点のスコア化を試み, 分析した. その結果, 致死的な細菌性肺炎においては, (1) 発症時起炎菌としてmethicillin resistant Staphylococcus aureusおよびPseudomonas aeruginosaが高率に検出されたこと, (2) 不顕性嚥下性肺炎の診断の遅れがあること, (3) 鬱血性心不全の合併率が高いごと, ならびに (4) 低栄養および高齢化による免疫不全が存在すること, などが臨床上の問題点としてあげられた. また, 他の致死的疾患と比較した場合, 高齢に加えて (1) 発熱, (2)膿性疲, (3) 白血球増多, (4) 画像所見改善の有無, (5) 臓器障害改善の有無および(6)酸素投与の中止の可否などが, 肺炎改善の臨床的指標としてあげられた.
著者
井上 彪夫 松浦 達雄 長野 準
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.97-101, 1996-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
2

気管支喘息に対する漢方治療について, 鼻症状を合併する気管支喘息患者に着目し, 膿性鼻汁や後鼻漏などの症状を呈する慢性副鼻腔炎様の合併した喘息患者に対して辛夷清肺湯を投与した自験10例の有効性を検討, 一方, くしゃみ, 水様鼻汁や水様痰などの症状を呈するアレルギー性鼻炎様の合併した喘息患者75例に対する小青竜湯の有用性を, 多施設open trialにて検討した. その結果, 前者では60%に鼻症状の改善と喘息発作の減少を認め, また後者では53%に喘息の改善とともに鼻アレルギー症状の改善が特徴的であった. 両方剤での構成生薬の薬理作用を検討し, 前者では解熱, 鎮痛, 排膿, 抗炎症あるいは鎮咳などの作用による化膿性鼻炎症状の改善と喘息症状の改善を, 後者では解熱, 抗炎症, 抗アレルギー, 鎮痙あるいは鎮咳などの作用によるアレルギー性鼻炎症状の改善と喘息症状の改善をするものと理解された.
著者
湯浅 龍彦 米谷 富美子 角田 博 西澤 舜一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.381-385, 2008

パーキンソン病にともなう慢性疼痛の実態を知る目的で, 千葉県パーキンソン病友の会会員にアンケート調査を実施した.<br>108件の有効回答中, 3カ月以上続く慢性疼痛を有す者は69名(64%)であった. 自覚症状は, 腰痛が最多であり, 肩こり, 関節痛, 手足のしびれ, 手足の痛みなどがそれに続いた. 痛みの性状は, 鈍痛や締め付けなどが90件, びりびりや電撃痛などが46件であった. 痛みの強さでは, きわめて強い痛みを9名(8%)が訴え, 痛みのために不眠になる者が約半数にみられた. 線維性筋痛症の診断基準とされる11カ所以上の圧痛点を有す者は3名(2.7%)であった. 6割の患者では抗パーキンソン薬で痛みが軽快した.<br>今後, パーキンソン病の慢性疼痛の要因を明らかにし, それぞれの原因に沿った治療法の確立が望まれる.
著者
竹崎 英一 村上 信三 西林 宏之 香川 和徳 大森 仁也 山根 哲実 弘井 正 片山 正一
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.177-182, 1991

肝細胞癌を合併した自己免疫性慢性肝疾患2例を報告する. 1例目は65歳の女性で, ルポイド肝炎から進展した肝硬変と考えられる症例で, 経過中に慢性甲状腺炎を併発し, 同時に, 腫瘍マーカーの上昇と画嫁診断から肝細胞癌合併が診断され, TAE後, 治療切除が行われた. 腫瘍は1.4×1.5cmのEdmondson II-III型の肝細胞癌であった. 本例は輸血歴があり, anti-HCVが陽性であった. 2例目は78歳の男性で, AMA 320倍以上, anti-M2陽性, 高免疫グロブリン血症からPBCと考えられる症例で, 腫瘍マーカーは陰性であったが, 画像診断から肝細胞癌合併が診断された. 高齢であり, 腫瘍占拠部位が広範囲であるため, 保存的治療が行われたが, 肝細胞癌診断約3ヵ月後に, 肝不全が出現し死亡した. 死亡解剖所見では, Scheuer IVのPBCであり, 腫瘍は肝両葉に散在し, 最大径は3×4cmで, Edmondson II-III型の肝細胞癌であった. 本例は輸血歴がなく, anti-HCVは陰性であった.
著者
長尾 圭造 奥野 正景
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.271-277, 2004

目的:近年の戦争形態とその犠牲について主に子どもの立場から概観し, 精神的影響への背景を明らかにする. 方法: 戦争と子どもに関するこの30年余りの文献・資料から, 主に子どもに関する戦争の生活・発達上の被害や精神的・身体的健康被害を中心に取り上げた. 結果: 武器・戦略など戦争形態の変化により被害・犠牲の内容が異なるので, その犠牲を武器の種類により2つ(通常の戦争, ハイテクノロジーによる戦争)に分けた. また特別な形態としてロー・インテンシブ・ウォーズを述べた. 戦争被害は個人の生命危機・身体損傷から, 地域・家族の大量虐殺, 生活の源となる衣食住の貧窮, 教育・医療・保健などの社会的インフラ基盤の破壊や感染症増加, 戦争関連精神障害の発症など子どもの全生活領域に及ぶ. 考按: 子どもの戦争被害の減少・防止を, 戦争開始後の犠牲の抑制, 戦争終結後の犠牲防止, 戦争回避に分けて述べた.