著者
蟻川 謙太郎 若桑 基博 木下 充代
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.5-11, 2014 (Released:2014-05-30)
著者
諫山 真二
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.35-43, 2021-02-25 (Released:2021-03-04)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

The smaller tea tortrix, Adoxophyes honmai Yasuda(Lepidoptera: Tortricidae), a polyphagous pest insect, is a serious pest on 43 plants, including tea. It is well known that tea leaves contain a variety of polyphenols such as catechin derivatives. Since some polyphenols in tea may have an influence on Bacillus thuringiensis activity against A. honmai, we examined how different host plants and the polyphenols of tea leaves influence B. thuringiensis activity. We evaluated B. thuringiensis activity by the leaf dipping method using the leaves of tea, Japanese pear, grape, and peach. The LC50 value for tea was 0.158 g/L(formulation weight/water volume), whereas Japanese pear, grape, and peach showed significantly lower LC50 values ranging from 0.0095–0.0111 g/L. Hence, it was evident that tea leaves suppressed B. thuringiensis activity compared with other tree leaves. We identified that(−)epigallocatechin gallate(hereafter referred to as EGCG), (−)epigallocatechin(hereafter referred to as EGC), (−)epicatechin gallate(hereafter referred to as ECG), and(−)epicatechin were the major components of tea polyphenols. The influences of polyphenols on B. thuringiensis activity were evaluated by the oral administration method, and EGCG, EGC, ECG, (+)catechin, and myricetin showed higher inhibitory effects on B. thuringiensis activity compared to other polyphenols. These results indicate that tea leaves can deteriorate the insecticidal activity of B. thuringiensis mainly due to the influence of EGCG, EGC, and ECG.
著者
諫山 真二 下川床 康孝
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.109-117, 2021-05-25 (Released:2021-06-10)
参考文献数
32

We evaluated the effects of tannic acid and four major catechins present in tea on the insecticidal activity of Bacillus thuringiensis serovar kurstaki formulation against Adoxophyes honmai Yasuda(Lepidoptera: Tortricidae)using the oral administration method. We also evaluated the insecticidal activity of B. thuringiensis against A. honmai using the leaf dipping method with tea leaves plucked in different tea seasons in 2010 and 2011: in May(hereafter referred to as 1st tea), June to July(hereafter referred to as 2nd tea), August to mid-September(hereafter referred to as 3rd tea), and late September to October(hereafter referred to as 4th tea). The catechin content was measured at the time of each harvest in 2011. Tannic acid and catechins decreased the B. thuringiensis activity in a dose response-dependent manner. The insecticidal activity was decreased by the late tea season and was found to be lowest in the 4th tea. The content of the catechins in the four seasons was in the following order: 2nd tea>3rd tea>4th tea>1st tea. Though these results suggest no direct relationship between the content of catechins and insecticidal activity on tea leaves, other factors might be involved to influence the effects of B. thuringiensis.
著者
野田 一郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.53-58, 1958-03-01 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
6 9

アブラムシにおける胎生雌の型決定には温度,光その他いろいろの要素が関係しているようであるが,ムギ類の害虫であるキビクビレアブラムシRhopalosiphum prunifoliaeの場合には高棲息密度と絶食が大きな影響力を持っている(野田,1954, 1956)。これら諸要素の作用と有翅型出現の関係を明らかにするためには,まず型決定の臨界期を明確にしておくことが先決問題である。本実験においては上述の2要素(高棲息密度と絶食)の作用を利用して,このアブラムシにおける前記臨界期と生翅の最盛期を明らかにすることができた。実験はすべて暗黒下定温25°Cで行った。その結果を要約すると次のとおりである。1) 有翅型は胎生された直後から生後38.5時間目(これは第1回脱皮直後から起算すると10時間目にあたる)以内の間に決定される。この臨界期を経過した後においては外部からの刺激の影響を受けることがない。2) 理論上の生翅の最盛期は生後21時間目である。すなわち幼虫第1令後半期の半ばごろである。3) 50%以上の幼虫が5時間の絶食によって有翅型に変り得る時期は,理論的には生後14.5時間目から生後27.5時間目までの間である。この時期は幼虫第1令の中期から後期に相当する。4) 絶食の有翅型出現に対する影響力は,高棲息密度のそれよりも一般に大きいようである。5) 同一の生育途上にある幼虫を絶食させた場合には,絶食期間の長いほど有翅型出現率が高くなる。6) しかるに生後15時間または20時間経過した幼虫を5時間絶食させた場合と,生直後の幼虫または生後5時間経過したものを15時間絶食させた場合とを比較すると,後者のほうがはるかに絶食時間が長いにもかかわらず,有翅型出現率はかえって低位である。これは生育初期に絶食の刺激を加えると,SHULL (1942)が暗示したように生翅に関係あるホルモンの分泌などに,変調をきたすためではないかと考えられる。
著者
平井 利明
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.331-335, 2006-11-25
参考文献数
17
被引用文献数
1 5

ニホンアマガエルによる塩ビパイプ製の代替退避場所の利用様式と,その退避場所の設置による本種の生息密度の回復効果を調査した.その結果,ニホンアマガエルはパイプの内径やその設置場所に対して非選択的に代替退避場所を利用すること,および多数の個体がパイプを設置した畦畔に集中して分布することが判明した.パイプを設置していない畦畔にはごく少数の個体が分布しているにすぎなかったことから,畦畔の締め固めによる退避場所の消失が本種の水田産個体群を衰退させている可能性が示唆された.本研究は,カエル類に対する畦畔の締め固めの影響を指摘した初めての報告である.
著者
今井 健介 三浦 和美 飯田 博之 藤崎 憲治
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.147-154, 2011-08-25 (Released:2011-09-02)
参考文献数
24

クズは日本から北米へ導入されて害草化し,アメリカ合衆国では侵略的外来植物とされている.アメリカにおけるクズの生物的防除に資する目的で,原産国である日本におけるクズの天敵相を調査し,2004年~2005年に近畿地方を中心に行った野外調査と文献調査により48種のクズ食者を確認した.そのうち20種は先行研究で作成された日本産クズ天敵リストに掲載されていない種であった.これらの中で導入可能なクズの単食性天敵と推察されたのは,食性が知られていない3種,エゾコハナコメツキParacardiophorus subaeneus yasudai Ohira,ヨスジヒシウンカReptalus quadricinctus Matsumura,およびコガタヒメアオシャクJodis orientalis Wehrliであった.また,本調査で明らかになった近畿地方のクズ天敵相(41種)と鹿児島市における先行研究の結果(62種)を比較したところ,2地域間の共通種は21種で,天敵相に大きな違いが認められた.同様に,既存の日本産天敵リストと本研究の結果を併せた129種を,先行研究で報告された中国産天敵リストの116種と比較したところ,2国間の共通種は15種でさらに大きな差が認められた.このように調査地点により天敵相が大きく異なることから,気候等の環境条件の異なる多くの地点で探索することが有効な導入天敵の発見につながる可能性が示唆された.しかし,本調査の近畿地方における調査時間と累積発見種数との関係を解析したところ,今回の天敵探索方法による発見種数は飽和に近づいており,今後も天敵の探索を継続するなら,別の地域における調査や別の調査手法の導入が必要と考えられた.
著者
滝 久智 野村 昌史
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.321-329, 2004 (Released:2005-02-25)
参考文献数
26
被引用文献数
5 5

In general, plusiine moths actively begin flying from dusk and feeding and calling activities have been clearly discussed in many reports. We examined daily behaviors, specifically, flight, feeding and calling activities of the plusiine moths, Autographa nigrisigna, Thysanoplusia intermixta, Ctenoplusia agnata and Chrysodeixis eriosoma, which are major pests of various commercial crops in the Kanto region of Japan. Daily flight activities were tested with an actograph system in the laboratory. The insects showed pronounced flight activity soon after the lights were turned off, during darkness and after the lights were turned on. Of specific interest is that during darkness, C. eriosoma showed high flight activity earlier than the other three species. We also observed daily feeding and calling activities, and found these two activities were synchronized with flight activity. We conclude that patterns of calling and associated flights are not the same for all plusiine species although most adults of the Plusiinae fly actively during darkness.
著者
河野 哲
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.128-133, 1989-08-25
被引用文献数
1 33

ポット植えしたダイズに3種のカメムシを放飼し,放飼時のカメムシの齢期と被害,放飼時のダイズの生育期と被害,カメムシの種類と被害などの関係,さらに品質・収量への影響について検討した。<br>1) ホソヘリカメムシによる被害粒率は,1・2齢ではごくわずかであったが,3齢になると急増し,雌成虫が最大となった。被害程度の重い子実の占める割合の高いのは,4齢,雌成虫,雄成虫であり,3齢以下の幼虫ではその割合は低かった。<br>2) ホソヘリカメムシならびにイチモンジカメムシによるダイズ子実の吸汁被害は,莢伸長中期∼子実肥大初期が最も大きく,それ以降は子実の肥大ならびに硬化にともなって減少した。<br>3) ホソヘリカメムシの雌成虫による被害粒率はブチヒゲカメムシより高かったが,雌雄の平均で比較すると両種の被害粒率はほぼ同じであった。被害程度の大きい子実はホソヘリカメムシのほうがブチヒゲカメムシより多く,イチモンジカメムシによる被害は,子実肥大初期以外ではホソヘリカメムシとほぼ同じであった。<br>4) 1日1頭当り加害粒数は,ホソヘリカメムシの発育態では,雌成虫(2.07個)が,ダイズの生育期では莢伸長中期(雌雄込みにして1.7個)が最大であった。ブチヒゲカメムシは子実肥大初期には1日1頭当り雌雄とも約1個の加害能力があった。<br>5) ホソヘリカメムシによる莢伸長中期の加害が収量に最も強く影響し,28.1%の減収となったが,品質においては,その時期よりもやや莢の発達した子実肥大初期の影響が大きい傾向がみられた。
著者
河田 和雄 山下 泉
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.247-251, 1992-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1 3

フウナガマダラオオアブラムシについて1990年10月∼1992年4月まで分布と発生状況を調査した。1) 1990年11月,倉敷市岡山大学資源生物科学研究所構内で,本種が発生増殖しているのをみつけた。これは日本における最初の記録である。2) 1992年4月までに倉敷,岡山,伊丹,大阪,京都,呉,つくば,中村,高知,南国の各市と高知市周辺の3か町村で発生が認められた。3) 本種の寄主植物はフウとモミジバフウで,胎生雌虫により通年増殖している可能性が強い。これまでに両性世代虫はみつかっていない。4) 本種の侵入経路は不明である。発生状況から推定すると,日本に定着が可能で分布域をさらに拡大することが考えられる。
著者
梶村 達人 前岡 庸介 I Nyoman WIDIARTA 須藤 猛 日鷹 一雅 中筋 房夫 永井 一哉
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.137-144, 1993-08-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
15 19

イネの有機栽培がウンカ・ヨコバイ類の個体群密度に与える影響を明らかにするために,岡山県立農業試験場の化学肥料区,有機肥料区,無肥料区および岡山市の有機栽培田で発生密度の調査を行った。1) 有機栽培田ではツマグロヨコバイの密度が各世代とも極めて低かった。このことは,有機栽培田が乾田直播地帯にあり,冬期の耕起のためツマグロヨコバイの侵入世代密度が地域的に低かったことによると考えられた。2) 有機栽培田におけるセジロウンカの侵入世代密度は他の区と同程度であったが,その後の増殖率は著しく低く,第1世代幼虫期以降の密度は他の区に比べ著しく低くなった。3) トビイロウンカ第3世代幼虫の密度は有機栽培田で最も低かった。このことは侵入世代成虫の密度が有機栽培田で低かったことに起因すると推測された。4) 天敵類の密度は有機栽培田で特に高い傾向は認められなかったことから,ウンカ類の密度が有機栽培田で最も低くなった原因は天敵以外の要因によると示唆された。
著者
弘中 満太郎 針山 孝彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.93-109, 2014
被引用文献数
12

"飛んで火に入る夏の虫"という諺は,灯火の魅力に抗えずに身を滅ぼしてしまう昆虫の光に対する行動の定型性に事寄せている。この諺は,7世紀の中国で書かれた梁書の到漑伝のなかの「如飛蛾之赴火(飛蛾の火に赴くが如くして)」が由来とされており(後藤ら,1963),今から1400年前には既に,昆虫の走光性を顕著な生物現象として人々が捉えていたことがわかる。昆虫の走光性は,さまざまな芸術的表現においてモチーフともされてきた。自然科学者でもあったゲーテ(J. W. von Goethe)は,西東詩集のなかの詩文「昇天のあこがれ Selige Sehnsucht」で,「おまえはどんな距りにもさまたげられず 呪われたように飛んでゆく ついに光をもとめて蛾よおまえは 火にとびこんで身を焼いてしまう」と,蛾の走光性を詠んだ(井上,1966)。速水御舟は,炎に身を焦がす蛾を幻想的に描いた「炎舞」を残した。走光性の特徴は,昆虫の和名にも表されている。ヒトリガ科のガ類の名の由来は,江戸時代にさかのぼる。行灯の灯明を消す蛾を,火を盗みに来た虫に人々は見立て,火取蛾,火盗蛾と名付けた。テントウムシ科のコウチュウ類は,太陽に向かうような定位行動を由来として天道虫と名付けられたとされる。このように古くから人々は,昆虫の光に引き寄せられる性質を,他の動物にはない強い定型性を示す不思議な現象として興味をかき立てられてきたのである。そして現代でも,「蛾の火に赴くが如し」という言い回しが使われるほどに,昆虫の走光性は我々の身近にある。しかし,これほど身近な現象であるにもかかわらず,昆虫がいったいどのような行動メカニズムで光に集まるのか,それがどのような適応的意義をもつのか,については,実は,いまだ十分に明らかになっていない。昆虫の走光性が謎の行動であることは,あまり知られていないといえる。
著者
寒川 一成
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.134-139, 1970-09-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
11 15

1. トビイロウンカの甘露排泄状況および含有成分を調べ,本種の吸汁習性を検討した。2. 雌成虫は雄成虫にくらべ,甘露排泄が著しく活発で,吸汁時には毎時7∼40回の頻度で0.5∼5μlの甘露を排出し,1日の平均総排泄量は13μlであった。3. 甘露中の平均糖濃度は約2%で,主にグルコースと庶糖を含んでいるが,ウンカは糖を含まぬ排泄液も相当量分泌していた。4. 甘露中にはまた約0.1%の遊離アミノ酸とアマイドが存在し,主要なものはグルタミン酸,グルタミン,アスパラギン酸,アスパラギン,およびアルギニンであった。5. 甘露の性状および排泄状況から,トビイロウンカは維管束中の篩管と導管の両組織から吸汁していると考えられた。
著者
加藤 展朗 山田 佳廣 松浦 誠 塚田 森生
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.115-120, 2007 (Released:2007-07-13)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

The life cycle of Hypsopygia postflava, a moth parasitic on nests of the paper wasp Polistes jokahamae, was studied in Mie, Saitama and Tokyo in 2002 and 2003. The emergence of some overwintered-generation moths was extremely delayed, and some second-generation larvae overwintered without pupation; therefore, it is considered that this nest-parasitic moth typically completes three generations per year, with some completing only one or two generations. The proportion of male adults per nest was 56.4% on average, and ranged from 30.8% to 75.0%, but did not differ significantly with the nests. The head widths of overwintering moth larvae varied greatly between the nests and also within some of the nests. Larvae with a head width of <1.08 mm died during overwintering. Larvae provided with pupae of the paper wasp in glass vessels developed to adults, but those provided only with nest materials or the feces of paper wasps did not.
著者
新井 裕
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.124-126, 1978-05-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
今井 健介 三浦 和美 飯田 博之 藤崎 憲治
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.147-154, 2011 (Released:2012-12-03)

クズは日本から北米へ導入されて害草化し、アメリカ合衆国では侵略的外来植物とされている.アメリカにおけるクズの生物的防除に資する目的で、原産国である日本におけるクズの天敵相を調査し、2004年~2005年に近畿地方を中心に行った野外調査と文献調査により48種のクズ食者を確認した.そのうち20種は先行研究で作成された日本産クズ天敵リストに掲載されていない種であった.これらの中で導入可能なクズの単食性天敵と推察されたのは、食性が知られていない3種、エゾコハナコメツキParacardiophorus subaeneus yasudai Ohira、ヨスジヒシウンカReptalus quadricinctus Matsumura、およびコガタヒメアオシャクJodis orientalis Wehrliであった.また、本調査で明らかになった近畿地方のクズ天敵相(41種)と鹿児島市における先行研究の結果(62種)を比較したところ、2地域間の共通種は21種で、天敵相に大きな違いが認められた.同様に、既存の日本産天敵リストと本研究の結果を併せた129種を、先行研究で報告された中国産天敵リストの116種と比較したところ、2国間の共通種は15種でさらに大きな差が認められた.このように調査地点により天敵相が大きく異なることから、気候等の環境条件の異なる多くの地点で探索することが有効な導入天敵の発見につながる可能性が示唆された.しかし、本調査の近畿地方における調査時間と累積発見種数との関係を解析したところ、今回の天敵探索方法による発見種数は飽和に近づいており、今後も天敵の探索を継続するなら、別の地域における調査や別の調査手法の導入が必要と考えられた.
著者
香取 郁夫 田丸 真弓 横井 智之
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.77-84, 2010-05-25 (Released:2010-06-08)
参考文献数
29
被引用文献数
1 4

Osmia orientalis has potential as a crop pollinator and this study examined its curious nesting habits. They were successfully induced to nest in empty snail shells placed in a field (19.8% nesting rate). The nesting rate was higher for larger shells of Euhadra amaliae than for smaller shells of Satsuma japonica. The rate was also higher for intact than damaged shells, but was not affected by the freshness of the shells. As a nesting environment, the insects preferred grass fields rather than denuded areas, spaces adjacent to buildings, or a forest edge. The overall sex ratio of O. orientalis within the shell nests was male biased (59.2% males). The sex distribution within the shell nests was as follows: when O. orientalis nested in S. japonica shells, all cells contained males; when they nested in E. amaliae shells, the innermost and second innermost cells were highly male biased, while the ratio of females increased gradually toward the outermost cells and was highest in the second outermost cells, while the male ratio recovered in the outermost cells. Finally, we discuss the possibility of using and the methods of managing O. orientalis as a crop pollinator.
著者
釜野 静也 深谷 昌次
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.89-93, 1965-06-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
5
被引用文献数
4 7

ニカメイチュウを人工飼料を用いて無菌的に累代飼育を行ない,同系交配と環循交配における幼虫の生育,蛹化,羽化,産卵およびふ化を調べた。その結果同系交配では,第2世代,第3世代で幼虫の生育が遅れ,蛹化率,産卵数,ふ化率が低下した。第4世代まではかろうじて飼育継続が可能であったが,第5世代ではふ化する卵はなく,飼育は中絶してしまった。これに反し循環交配を続ける場合には10世代以上にわたって飼育を続けることができた。なおその間幼虫の生育,蛹化,羽化,産卵およびふ化にほとんど変化は見られなかった。以上のことから,ニカメイチュウを累代的に飼育するため現段階では交配方法に留意する必要がある。
著者
小滝 豊美 八木 繁実
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.285-290, 1987-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
20
被引用文献数
17 23

チャバネアオカメムシPlautia stali SCOTT成虫の休眠発育がどのように進行するかを明らかにするため,20°Cの恒温条件下で日長転換を行い産卵の開始および体色の変化を観察した。成虫期に日長を長日(15L-9D)から短日(12L-12D)へ転換すると産卵の抑制および体色の褐色化が認められ,逆の転換により産卵の誘起および体色の緑色化が観察されたことから,本種は成虫期にも光周期に対する感受性を有することが示された。短日から長日への転換では長い期間短日条件下に置かれた区ほど転換後早く産卵する傾向が示され,羽化後日齢の経過に伴ってしだいに休眠発育が進行することが明らかになった。また,褐色個体の緑色化は休眠発育がある程度進行した段階で引き起こされる現象であると推察された。
著者
石倉 秀次 伊藤 嘉昭 宮下 和喜 伊藤 佳信
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.135-139, 1957-06-30 (Released:2017-07-19)
被引用文献数
1 1

In 1955 and 56,observations were conducted on the root aphids injurious to upland rice and the ants attending these aphids in the upland rice fields in Shozima city near Tokyo. The root aphids concerned were Rhopalosiphum prunifoliae, Anoecia corni and Tetraneura ulmi and the species mentioned first was more dominant than the others in June and July. Six species of ants were found in the field studied and four species, Lasius niger. Crematogaster sordidula osakensis, Pheidole fervida and Tetramorium caespitum jacoti, were observed attending the aphids. In a few cases when the soil was loose and light or there was any tunnel worked by mole cricket, the aphids seemed to go under soil without any help of ants, but there was a close positive correlation between the number of aphids and ants found in sampled soils taken at random in the fields. This correlation was observed till the middle of the season. Some ants were observed carrying the apterous female and nymphs of Rhopalosiphum prunifoliae into their hole, indicating their important role in assisting the migration of aphids from soil surface to the subterranean habitat. The frequency distribution of the numbers of both aphids and ants were not random but strongly contagious. The variance (s^2) of the average number of aphids was found to increase proportionately to their population density as shown in Fig. 1. Thus the frequency distribution of aphid numbers can be transformed into normal one if the actual numbers are changed into log_10(x+1).
著者
佐藤 威
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.6-14, 1977-03-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
17
被引用文献数
11 12

性的2型とともに,季節的2型をもつヒメシロモンドクガの生活史を明らかにするため,3地方における光温図表を作成し,雌成虫の翅型の分化とその生存上の意味について考察した。光周反応は長日型で,臨界日長は北方で長くなる傾向が認められた。臨界日長を境として,長日条件では長翅型雌が出現し,短日条件では短翅型雌が出現した。短翅型は休眠卵を産下した。光周感受期は幼虫後期であった。雄は常に長翅型であった。卵の休眠は母蛾によって決定され,休眠卵は大型で卵殼も厚く,非休眠卵とは形態的に区別された。幼虫の経過令数は雌雄で異なり,雌6令,雄5令であり,蛹体重は雌が重く,雄の約3倍に達した。非休眠世代の有効積算温量は624∼665日度,発育零点は10.1∼10.4°Cであった。光温図表から,2化地帯と3化地帯があることが示唆された。