著者
戸倉 新樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.116, no.6, pp.909-915, 2006-05-20 (Released:2014-12-10)

皮膚科領域におけるEpstein-Barr(EB)ウイルス感染によるリンパ増殖症には,ナチュラルキラー(NK)細胞性のものとT細胞性のものとがある.EBウイルスの感染は典型的には慢性活動性EBウイルス感染症という状態をとり,それを背景としてNK細胞やT細胞の増殖性疾患が生起する.この過程において,蚊刺過敏症(蚊アレルギー)や種痘様水疱症(あるいはその重症型)が皮膚症状としてみられ,危険性のあるEBウイルス感染の重要な臨床的サインとなる.最終的には16歳前後で血球貪食症候群やリンパ腫を併発し,それが終末像となる.年齢分布において,EBウイルス関連NK/T細胞リンパ増殖症は2つのピークをもつ.第一相目はこの慢性活動性EBウイルス感染症を背景とする疾患群が形成する.一方,EBウイルスは中高年の鼻性(nasal)および鼻型(nasal type)の節外性NK/T細胞リンパ腫の原因ともなり,これが二相目をつくる.鼻型の好発部位は皮膚であり皮膚科医もときに遭遇する.
著者
金子 健彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.7, pp.1465-1471, 2010-06-20 (Released:2014-11-28)

消化器疾患ないし肝機能異常に伴う皮膚病変を概説した.炎症性腸疾患のクローン病や潰瘍性大腸炎では,結節性紅斑,壊疽性膿皮症等の合併が知られる.遺伝性ポリポーシスであるPeutz-Jeghers症候群では色素斑を生じ,またGardner症候群では多発する表皮様嚢腫や,骨腫が早期診断上重要である.肝機能異常に伴う皮膚病変としては,黄疸,紙幣状皮膚,クモ状血管腫,手掌紅斑が認められる.その他,ウイルス性肝炎に伴う皮膚症状を挙げた.
著者
西井 貴美子
出版者
日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.13, pp.2918-2921, 2010-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
石橋 正史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.8, pp.1465-1468, 2016-07-20 (Released:2016-07-20)
参考文献数
11

ブラジルに渡航した後,ジカウイルス感染症と診断された症例を報告する.今回の輸入症例は,中南米におけるジカウイルス感染症の流行後としては初めてとなる,国内でジカウイルス感染症患者の輸入症例である.受診時,発熱は見られなかったが,略全身性に淡紅色紅斑,丘疹が認められた.尿からジカウイルスRNAが検出された.皮疹は速やかに消退し,後遺症なく治癒した.
著者
市橋 直樹 中谷 明美 中野 一郎 鹿野 由紀子 前田 学 森 俊二
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, 1991

37歳,女性.左手に軽い瘙痒を伴う辺縁隆起性紅斑出現.遠心性に拡大し数日で消退.同様な紅斑が全身に出没するようになり,他に,関節痛,朝の両手指こわばり感,両眼瞼腫瘍出現,精査加療のため入院.抗核抗体高値,低補体血症,免疫複合体高値,抗SS-A抗体陽性,抗SS-B抗体陰性.Sjogren症候群などを考え,生検.表皮基底層に液状変性なく,真皮上層の血管周囲に核塵形成を伴ったリンパ球を主体とする細胞浸潤を認めた.同部の免疫蛍光染色は,真皮表皮境界部に沿って顆粒状に抗IgG抗体陽性.抗IgA抗体も同様に陽性.以上より蕁麻疹様紅斑で初発したSLEと診断.尿検査成績より腎障害を疑い腎生検を行ったところ,全体として基本構造の改築,メザンギアル領域の拡大を認め,びまん性糸球体腎炎の像を呈していた.腎組織の免疫蛍光抗体染色では,毛細血管からメザンギアル領域にIgGの沈着を認めた.
著者
比留間 政太郎
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.116, no.9, pp.1295-1302, 2006

皮膚糸状菌症(白癬)の臨床像は,菌種,病変部位,宿主の免疫状態などに影響され,微妙に異なる.診断で大切なことは,真菌症を疑ってみることで,次に直接鏡検によって菌を証明することである.頭部白癬は,菌が硬毛に寄生して生ずるので,毛の寄生形態を観察する.体部白癬は,多種の菌が分離され,それに伴い当然多彩な臨床像を呈する.足白癬は,全人口の4分の1を占めるとこが明らかにされ,その治療の大切さが再認識されている.爪白癬は,新しい経口抗真菌薬が開発され治療が容易となった.今後爪白癬のより良い臨床評価基準が作られることが望ましい.治療は,白癬の病型・病態また個々の症例によっても治療方針は異なる.治療薬剤の特徴を考慮して決定する.治療期間は,表皮,毛,爪のターンオーバーの期間を考慮して決める.生活指導は大切で,その感染経路を考慮して指導する.
著者
渡部 裕子 難波 千佳 藤山 幹子 町野 博 橋本 公二
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.863-867, 2011-05-20 (Released:2014-11-13)

2009年8月から12月にかけて,愛媛県松山市周辺の皮膚科で,小児32名,成人7名の患者で爪変形,爪甲脱落の発生が確認され,そのうち4名を除く35名で発症の1~2カ月前に手足口病の既往があった.そのうち10名の患者で中和抗体価を測定したところ,全例でコクサッキーウイルスA6が8~128 倍の陽性所見を示した.これは爪変形,爪甲脱落を来す手足口病の本邦における最初の報告である.
著者
今門 純久
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.173-176, 2006-02-20 (Released:2014-12-10)

毛孔性紅色粃糠疹は,毛孔一致性の角化性丘疹,手掌・足底のびまん性紅斑と過角化などを特徴とする.Classical adult,atypical adult, classical juvenile,circumscribed juvenileなどの5つの病型に分ける考え方が主流であるが,疾患の本態は未解明である.尋常性乾癬との鑑別が最も重要である.ジベルばら色粃糠疹は,herald patch と呼ばれる初発疹と,初発疹に遅れて多発する続発疹を特徴とする.通常,1~2 カ月の経過で自然に治癒する.血清抗体価の推移や,皮疹部からの mRNA の検出により,ジベルばら色粃糠疹の多くは,HHV-6 やHHV-7 が病因として関与していることが判明した.
著者
濱田 利久
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.23-26, 2014-01-20 (Released:2014-03-18)
参考文献数
10

ブルーリ潰瘍はMycobacterium ulceransやその亜種(本邦ではM. ulcerans subsp. shinshuenseが同定されている)の非結核性抗酸菌による亜急性または慢性の皮膚感染症で,アフリカ・オーストラリアに加えて中南米や,頻度は低いが中国・日本からも発症例が報告されている.菌の産生する脂質毒素(マイコラクトン)によって,深い皮膚潰瘍を形成しうる.ごくまれな皮膚感染症だが本邦でも本州の広い範囲および九州からも報告例がみられる.
著者
長谷川 稔 佐藤 伸一 古瀬 忍 長谷川 洋一 森 俊典 八田 尚人 竹原 和彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.1275, 1998 (Released:2014-08-19)

症例1は69歳,男性.1年半前より手指のこわばり,四肢の関節痛があった.また,両手掌に多発性の皮下結節と手指の拘縮が出現してきたため,近医にて全身性強皮症(SSc)と診断されていた.当科での精査では皮膚硬化は認められず,リウマトイド因子(RF)が陽性であった.両手のX線像で近位指節間(PIP)関節に多発性のびらんを認めた.Palmar fibromatosisを合併したRAと診断した.Palmar fibromatosisによる手指の拘縮により慢性関節リウマチ(RA)がSScと誤診されたものと考えられた.症例2は63歳,女性.半年前より朝のこわばりと多発性の関節炎が出現し,近医にて抗トポイソメラーゼⅠ抗体が陽性とされ,SScと誤診されていた.皮膚硬化はみられず、当科での再検では抗トポソイメラーゼⅠ抗体やRFを含む自己抗体はすべて陰性であった.両手のX線像でPIP関節の腫脹を認め,sero-negative RAと診断した.ELISAによる抗トポイソメラーゼⅠ抗体の疑陽性によりSScと誤診されたものと考えられた.症例3は47歳,女性.2ヶ月前からの朝のこわばりと多発の関節炎が出現してきたものの,X線上異常が検出されなかったためRAが否定され,近医にてSScと診断されていた.当科での精査では皮膚硬化は認められず,RFが陽性であった.両足のX線像で足趾に嚢胞形成を認めた.X線での骨変化が軽いためにRAが否定され,SScと誤診されていたと考えられた.今後はこのような誤診例が増加する可能性があり,注意が必要と考えられた.
著者
加畑 大輔 谷崎 英昭 荒川 明子 谷岡 未樹 高倉 俊二 大楠 清文 宮地 良樹 松村 由美
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.14, pp.3337-3342, 2011-12-20 (Released:2014-11-13)

11歳,男児.初診の3カ月前に右上腕に無症候性の皮膚結節が出現し,次第に潰瘍化し軽度疼痛を伴うようになった.他院にて切除術施行されたが再度潰瘍を呈したため2010年4月当科を受診した.潰瘍部の病理組織中に多数の抗酸菌を認め,病変部組織の遺伝子解析にて,Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuenseに特異的な遺伝子配列を検出したため,Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuense によるBuruli潰瘍と診断した.2%小川培地およびMGIT液体培地にて30°Cで培養したところ,6週間後に黄色コロニーの発育を認めた.リファンピシンとクラリスロマイシン投与開始にて潰瘍の増大は止まったものの,縮小傾向に乏しかったため,抗菌薬を継続したまま,投与2カ月後病変部を切除し分層植皮術を施行した.抗菌薬は計6カ月間で終了し,投与終了後1カ月経過した時点で再発を認めない.Buruli潰瘍は,本来熱帯地方に分布するM. ulceransという非結核性抗酸菌感染症である.しかし,近年その亜種であるM. shinshuenseによる皮膚潰瘍の報告が本邦で増加しており,皮膚潰瘍の鑑別診断のひとつとして念頭におく必要がある.
著者
磯田 憲一
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.83-88, 2015

インターネットは専門家やマニアだけが使うものではなくなり,電子メールやTwitter,Facebook,LINE,ブログそしてWeb検索など日常の連絡手段や情報収集手段としてだれもが活用するツールとなっています.しかし近年,インターネットを利用した犯罪が急増する中,自己防衛の手段を学ぶ機会は非常に少なく,その専門家も少ないのが現状です.今回,皮膚科医向けにインターネットを安全に使うための基礎知識をご紹介いたします.
著者
川島 眞 沼野 香世子 石崎 千明
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.969-977, 2007

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患者の乾燥皮膚における医療用保湿剤(ヘパリン類似物質含有製剤,尿素製剤及びワセリン)の有用性を評価するために,角層水分量,経表皮水分喪失量(TEWL),皮膚所見及び痒みの程度を指標として,ランダム化比較試験を実施した.ADの炎症が鎮静化した乾燥症状を主体とする左右前腕屈側部を対象とし,試験薬を1日2回3週間塗布し,その後1週間は観察期間とし,対象部位にはいかなる処置も行わなかった.その結果,全ての保湿剤において外用期間中は角層水分量の有意な増加が認められた.なかでもヘパリン類似物質含有製剤群は,尿素製剤及びワセリン群に比べ,より高い角層水分量を示し,観察期間においてもその効果は持続した.皮膚所見及び痒みも,全ての保湿剤で有意な改善が見られたが,TEWLは改善しなかった.以上より,今回試験した保湿剤は,いずれもAD患者の皮膚生理学的機能異常を改善することが確認され,さらに,ヘパリン類似物質含有製剤は尿素製剤及びワセリンよりも優れた保湿効果を有することが示された.
著者
本庄 三知夫 山口 修一 甲田 直也 森 吉臣 西村 洋
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, 1985

全身の被角血管腫,ガーゴイル顔貌,精神運動発達遅延,成長障害,脊柱の変形,爪甲の白色ろう様変化,易感染傾向および発汗減少を呈し,酵素学的にα-フコシダーゼ活性低下を示した14歳男子例を経験した.血管腫の組織学的所見には真皮上層の拡張した毛細血管と拡張しない毛細血管の2種類のものが存在し,前者の内皮細胞は扁平となるが,後者のそれはエックリン汗腺腺細胞や汗管細胞と同様に胞体が腫脹し泡沫状物質を胞体内に容れる.正常部皮膚の組織学的所見は血管腫の組織像と基本的に同一であった.爪の組織学的所見は真皮結合織の増加による肥厚と末梢神経の腫大が多数みられた.血管腫の電顕所見にてエックリン汗腺腺細胞,血管内皮細胞の胞体内に一層の膜に包まれた電子密度の低い小空胞と小顆粒を認めた.またエックリン汗腺筋上皮細胞とシュワン細胞内に層板状を呈するミエリン様構造物質を認めた.
著者
戸倉 新樹
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.959-962, 2007

中波長紫外線(UVB)は皮膚免疫に対して抑制的作用をもち,UVB誘導性免疫抑制として過去30年間,光免疫学の中心的研究テーマであった.UVBを予め照射しておくと,癌免疫も接触過敏症反応も抑制される.この機序は現在でいうところの制御性T細胞(regulatory T cell)が誘導されるために起こる.その誘導メカニズムは現在でも明らかになったと言い難いが,Langerhans細胞の数的・機能的減弱,ケラチノサイトからの抑制性サイトカインやプロスタグランディンE2産生などが関わっていると考えられている.
著者
佐藤 敬子 影下 登志郎 小野 友道 荒尾 龍喜
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.13, 1985

悪性青色母斑(MBN)は,極めてまれな悪性腫瘍で,Allenら(1953)が6例報告して以来,現在まで30例が報告されたに過ぎない.今回我々は,23歳男性のMBN例を経験した.出生時より左耳介後面から左側頭部に青黒色斑が存在,12歳時より帽針頭大小結節が多数出現し,22歳時その中の1個が急速に鳩卵大腫瘤に増大した.組織学的には,青黒色斑,小結節,及び急速に増大した鳩卵大腫瘤が,それぞれ普通型青色母斑(Com.BN),細胞増殖性青色母斑(Cel.BN),MBNの像を示し,また電顕でMBNの腫瘍細胞は多数の脂肪滴を有しているのが特徴的であった.さらに,抗ヒトメラノーマモノクローナル抗体による免疫組織学的検討を行い,類円形や楕円形の腫瘍細胞が胞巣を形成してる部位では,主に細胞膜に一致した特異蛍光が認められた.併せて自験例を含め,現在まで報告されたMBN31例について,若干の文献的考察を行った.
著者
久米井 綾 吉田 康彦 今西 久幹 中川 浩一
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.1881-1884, 2011-08-20

28歳女性.自宅で就寝中,突然の激痛で目が覚めた.翌朝の初診時,右前腕と左下肢の激痛・発汗過多が見られ,右前腕の疼痛部の紅斑も観察された.臨床所見からは診断できなかったが,帰宅後,ベッドの上でセアカゴケグモの死骸を発見し診断がついた.文献的考察を加え,刺咬部位以外の症状が診断上重要であることを強調した.
著者
久米井 綾 吉田 康彦 今西 久幹 中川 浩一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.1881-1884, 2011-08-20
参考文献数
7

28歳女性.自宅で就寝中,突然の激痛で目が覚めた.翌朝の初診時,右前腕と左下肢の激痛・発汗過多が見られ,右前腕の疼痛部の紅斑も観察された.臨床所見からは診断できなかったが,帰宅後,ベッドの上でセアカゴケグモの死骸を発見し診断がついた.文献的考察を加え,刺咬部位以外の症状が診断上重要であることを強調した.
著者
花田 勝美 山本 雅章
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, 1980

中心静脈栄養施行中みられた後天的 Zn 欠乏症3例について,毛髪,爪甲内 Zn の経時的変化を観察し,併せて,患者毛髪の光顕的観察,健常人毛髪断面の Zn 元素分析を試みた.その結果, Zn 療法後,毛髪,爪甲の Zn は血清 Zn に平行して上昇する傾向がみられ,とくに爪甲では Beaus line の出現を境として上昇を示していた.患者毛髪では毛髄の消失が著明であったが,健常人毛髪における X 線分析では毛髄にとくに高い Zn 分布はみられず,Zn 欠乏症患者毛髪の Zn 低下が毛髄の消失によるものでないことが知られた.毛髪,爪甲内 Zn 測定は,Zn 欠乏症の生体内 Zn蓄積を知る上で簡便な非観血的方法と思われた.