著者
前島 英樹 齊藤 典充 天羽 康之 新山 史朗 向野 哲 勝岡 憲生
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.1757-1763, 2012-06-20 (Released:2014-11-13)

当科で治療した円形脱毛症383例(男性152例,女性231例)を対象に臨床所見,治療と予後につき検討した.初診時,易抜毛性がみられた症例は236例で,アトピー性素因を有する症例は142例であった.初診時の病型は,単発型34例,少数型60例,多数型146例,びまん型52例,全頭型15例,汎発型61例,蛇行型12例であった.治療は,SADBE外用塗布施行138例,ケナコルト局所注射施行126例,冷凍凝固施行126例であった.予後を略治(治癒後6カ月後再発なし),再発,離脱,治療中に分けて検討したところ,略治例は全体の23%であった.単発型では40%以上が略治したが,その他の病型では20%以下にすぎなかった.治療法では,ステロイド剤の内服とPUVA療法の組み合わせ療法で“易抜毛性あり”の症例が“易抜毛性なし”の症例より有意に略治率が高い.アトピー素因のある患者では,ステロイド剤の内服は有効であるが再発率が高い傾向があった.
著者
武藤 美香 河内 繋雄 福澤 正男 斎田 俊明
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1543, 2000 (Released:2014-08-19)
被引用文献数
4

薬疹におけるリンパ球刺激試験(DLST)の診断的価値について検討した.DLSTが施行された薬疹の報告例812例について,発疹型別,薬剤系統別, 個別薬剤別にDLST陽性率を解析した.全症例におけるDLST陽性率は42%であった.発疹型別では,陽性率は中毒性表皮壊死症型(61%),紅皮症型(52%)で高く,紫斑型(11%),光線過敏症型(21%),固定薬疹型(30%)で低かった.蕁麻疹型でも38%の陽性率が認められた.薬剤系統別では,総合感冒剤(72%),抗結核剤(56%),抗てんかん剤(54%),解熱消炎鎮痛剤(53%)で高く,痛風治療剤(22%),合成抗菌剤,循環器官剤(ともに29%)で低い傾向が認められた.塩酸ミノサイクリン(13例),アリルイソプロビルアセチル尿素(8例)ではDLST陽性例は認められなかった.また,薬剤アレルギー検査法としてのDLSTの特異性を明らかにするために,同意のえられた健常人4名を被験者として,主としてDLST陽性率の高い薬剤についてDLSTを試行し,非特異的陽性反応(偽陽性反応)の有無について検討した.その結果,スパクロ■(クロレラ製剤),パリダーゼオラール■,シオゾール■は高率に偽陽性反応を呈し,PL顆粒■(総合感冒剤),ビオフェルミン■(乳酸菌製剤)も偽陽性反応を呈し得ることが判明した.これらによる薬疹では,DLSTが陽性であっても原因薬剤ではない可能性があるので注意を要する.
著者
山本 俊幸
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.7, pp.1665-1670, 2022-06-20 (Released:2022-06-20)
参考文献数
14

本邦におけるサルコイドーシスの皮膚病変の分類では,特異疹,非特異疹とは別に瘢痕浸潤が記載されてきた.これに対し海外では,瘢痕浸潤という考え方を独立させずに,サルコイドーシス患者の陳旧性瘢痕が隆起してきたものはscar sarcoidosisとして特異疹に含めている.本稿では,これまでの考え方を振り返り,瘢痕浸潤はscar sarcoidosisと同一と考えてよく,本邦においても従来の瘢痕浸潤は特異疹と別扱いせず特異疹の一つのタイプに含めるという考え方を紹介し,いくつかの問題点についても言及した.
著者
辻脇 真澄 藤田 靖幸 清水 宏
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.1305-1311, 2014-06-20 (Released:2014-06-23)
参考文献数
18

Intravascular large B-cell lymphoma(以下IVLBCL)はリンパ腫細胞が全身の小血管を閉塞する結果,多彩な症状を呈するリンパ腫の一型である.近年,早期診断に有用な検査方法としてランダム皮膚生検が注目されている.我々は当科で施行したランダム皮膚生検33名を検討した.その結果,ランダム皮膚生検の施行部位は皮下脂肪織の厚い腹部または下肢が望ましいと考えた.また生検方法はスピンドル生検が望ましいが,自験例では5 mmパンチ生検も検出率に有意差はなく,パンチ生検の選択の余地があると考えた.
著者
猪爪 隆史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.6, pp.1291-1299, 2018-05-20 (Released:2018-05-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1

免疫チェックポイント阻害剤は作用機序,効果,副作用において従来の治療とは全く異なる新しいがん治療薬である.最大の特徴は奏効例における効果の長さと,特異な治療関連有害事象(自己免疫現象)である.メラノーマ以外のがん種でも適応が拡大し続けており,画期的がん治療薬として注目を集めているが,解決すべき課題も多い.本稿では免疫チェックポイント阻害剤の特性,現状,今後の課題について解説する.
著者
佐々木 優 杉山 拓洋 高松 良光 但馬 匠 寺島 玄 林 伸和
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.6, pp.1463-1470, 2022-05-20 (Released:2022-05-20)
参考文献数
6

レセプトデータベースを用いて2020年の集簇性痤瘡の患者数と患者背景,診療科,処方薬について調査した.分析対象者8,521,265人中,集簇性痤瘡患者は2,726人で,有病率0.032%,本邦の推計患者数は29,171人であった.内服抗菌薬の処方は72.3%,うち年間91日以上が10.3%であった.一方,外用抗菌薬の処方は70.4%で,うち年間101 g以上が6.3%であった.診療科は一般外科が19.5%であった.治療に難渋し,抗菌薬の長期投与や外科的処置が行われている現状が示唆された.
著者
石関 昇
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.31, 1961 (Released:2014-08-29)

脂漏性皮膚炎の原因は皮脂の分泌異常によると考えられているとはいえ,その本態はなお未知に属する.動物実驗的には,ビタミンB6欠乏食によつて惹起される大黒鼠の皮膚変化が人の脂漏性皮膚炎に類似し,且つこの際尿中にXanthurenic acidの排泄されることが証明されている.以上の事実よりその治療にビタミンB6の應用は当然考えられ,1943年Wrightらの報告以来,吾國においても諸家によりその有効なることが強調された.さらにこれ等の報告を裏書するごとき実驗としては,1951年GlazerらはPyridoxine拮抗体Desoxypyridoxineを人体に投與してビタミンB6欠乏症を惹起せしめ,皮膚には脂漏性皮膚炎類似の症状を顯現した.この際にも,動物実驗に於けるがごとく,尿中よりTryptophanの異常代謝物Xanthurenic acidを檢出し,しかもこれらの欠乏症状はPyridoxineの投與により容易に消褪した.しかるに人の自然の脂漏性皮膚炎とビタミンB6代謝の関係,特にその欠乏の有無は,ビタミンB6測定の良法がないために,臨床的経驗より漠然と使用しているといつても過言ではない.
著者
長谷川 道子 齋藤 龍一 堀内 あゆみ 田村 敦志
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.3, pp.479-486, 2022-03-20 (Released:2022-03-22)
参考文献数
19

動物用ワクチンのヒトへの誤刺は畜産業従事者の間で起こるが,誤注入された薬剤のヒトへの影響を述べた文献は極めて少ない.我々はオイルアジュバント加鶏用ワクチンを手掌に誤注射後,高度の局所反応を呈した44歳男性例を経験した.高熱を伴う蜂窩織炎様の初期反応が沈静化したのち,進行性に拡大する局所壊死を生じ,組織学的には変性・壊死した組織内の稠密な好中球浸潤と多核巨細胞を混じた肉芽腫形成を認めた.ステロイド全身投与が奏効したが,誤注射された薬剤の除去が不十分または困難な例では試みる価値があると考え報告した.
著者
矢部 朋子 三石 剛 川名 誠司
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1271-1275, 2004

1999年から2003年の間に当科を受診したヒトパルボウイルスB19(human parvovirus B19,以下HPVB 19)感染患者67例について,臨床症状,合併症,妊婦が感染した場合の胎児への影響について検討した.患者は0歳から60歳で,30歳代の女性が最も多かった.患者数は2001年に多く,月別に比較すると,6月に多かった.また,主な臨床症状について小児と成人における出現率を比較したところ,顔面,四肢の紅斑は小児に多く,手足の浮腫,関節痛が成人に多くみられた.皮疹の性状には,成人,小児ともに典型的な顔面の平手打ち様の紅斑や四肢のレース状の紅斑以外に躯幹,四肢の点状紅斑があった.また小児では顔面,躯幹,四肢の点状出血があった.HPVB19に感染した成人女性35例中妊婦は14例で,そのうち2例(14.3%)は妊娠の経過に異常を来たし,1例は子宮内胎児死亡,もう1例は切迫早産であった.妊婦にHPVB19が感染した場合は慎重な対応が必要と考えた.
著者
堀 嘉昭
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, 1965

数十年来母斑細胞母斑(或いは色素細胞母斑)の病理発生に関して数多くの学説が提起されて来たが,病理組織学的研究によれば,誤つた将来性(prospective Po-tenz)を与えられた神経櫛起源性要素から発生し,個々の母斑細胞は,メラノサイトに類似のものもあれば,Schwann細胞に類似のものもあるが,完全にはメラノサイトにもSchwann細胞にもなりきつていないものと考えられる.この説は,海外においても引用もしくは賛成され,またPinkus及び三島は,さらに一歩進めてnevoblastという詞を作つた.すなわち,Pinkus及び三島は,「母斑細胞は一般的にいつて,成熟したメラノサイトの変性したものではないように思われる.母斑細胞は,nevoblastすなわち異常に分化した神経外胚葉性細胞(neuroectodermal stem cell)から胎生期に分離したものである」と述べている.Lund及びKraus(1962)も,腫瘍性の色素細胞すなわち色素細胞母斑及びメラノームの色素細胞は,おそらくメラノサイト,或いは,発生学的にその前段階のものを起源としていると考えられる.すなわち,メラノサイトは神経櫛由来のものであると考えられるから,母斑細胞も同様神経櫛起源であると考えられ,そして,母斑細胞が神経様の組織学的特性を示すのは,一に,皮膚において,色素性と,神経性の特性を持つところの極めて発生学上原始の,或いは,未だ分化前の外胚葉細胞から発展して来たものとして,或いは,二に,色素性と,神経触覚性及び,毛嚢性組織の同時的な器官過形成として説明されようと述べている.本研究では,母斑組織の病理組織標本の所見と,組織培養(または体外培養ともいう)によつて認められた細胞の形態及び態度とを比較検討することにより,その病理発生に関する考察を試みた.
著者
上出 良一 松尾 光馬
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, 1998

全国大学付属病院108施設ならびに日本臨床皮膚科医学会(日臨皮)東京支部会員554名を対象に,人工的タンニング装置に起因する健康障害のアンケート調査を行った.249施設から回答を得,うち75施設で計119名の健康障害患者を診察していた.男女比はほぼ1:1で,10代と20代が8割近くを占めた.障害の内容(150件,重複あり)は急性障害であるサンバーン様症状84件(UVA蛍光ランプによるもの79件,PUVAによるもの4件,UVBランプによるもの1件),疼痛10件,瘙痒7件,光線過敏症5件,発熱2件,嘔気1件あった.慢性障害である黒子様色素沈着,花弁状色素斑などの色素性病変が16件,その他16件(うち皮膚乾燥6件),眼障害では表層角膜炎が2件にみられた.また病状の記載のないものが7件あった.人工的タンニングに対する意見を寄せた皮膚科医106名中,日焼けサロンに否定的な意見85件,肯定的な意見7件,賛否不明14件であり,否定的意見が約80%と大多数を占めた.皮膚科医としてUVA照射による人工的タンニングの危険性を一般に啓蒙していく必要がある.
著者
森田 明理 新谷 洋一 長谷川 正規 加藤 正也 西尾 栄一 細川 裕子 辻 卓夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.8, pp.1229-1236, 2001-07-20 (Released:2014-12-27)

Narrow-band UVBは,311 nmにピークを持つきわめて狭い波長(311±2 nm)の紫外線光源であり,尋常性乾癬,アトピー性皮膚炎などにヨーロッパでは一般的に用いられている.乾癬でbroad-band UVB療法より優れ,PUVA療法とはほぼ同等とされる.今回,明らかにステロイド外用,ビタミンD外用で皮疹のコントロールのできない難治な尋常性乾癬23名(平均PASI 28.6)を対象としてnarrow-band UVB療法を行った.Narrow-bandUVB療法には,TL 01ランプ10本装着したM-DMR-LH型を使用した.照射率の測定はIL 1700を用いた.照射方法は,ヨーロッパで一般的に用いられているstandard regimenを用い,入院では週に5回,外来では週に3回の照射を行った.治療終了時の皮疹評価は,寛解15例,改善4例,やや軽快1例であり,寛解導入率65.2%,改善以上は82.6%であった.また,3例では,増量に伴うケブネル現象がみられたため,増量が難しく,不変もしくは悪化し中止とした.それ以外,水疱などの高度の急性副作用を起こすことなく照射が可能であった.
著者
戸田 憲一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.2283-2287, 2012-08-20 (Released:2014-11-13)

網状皮斑(リベド)は皮膚症状名であり,疾患名ではない.本症状を呈する疾患はきわめて多彩で,全臓器に及ぶため,重要なデルマドロームと言える.近年血管炎/血管障害ガイドラインでリベド血管症という疾患概念が記載され,リベドという名称にやや混乱が生じている現状において,リベドという症状をいかに理解すればよいかを,問題点とともに概説,紹介した.
著者
木村 太紀
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, 1988

都下特殊浴場従業員(ソープランド嬢)100名を対象として,STDとくに梅毒・B型肝炎・サイトメガロウイルス・単純ヘルペス・ATL・AIDS・クラミジア等の蔓延状況を,血清抗体測定を通じて間接的に検索した.1)被験対象者 平均年齢は26歳,平均従業期間は16ヵ月であった.2)梅毒血清反応陽性者21%(名)と高率を示し,就中不顕性感染者は18%(名)であった.3)B型肝炎ウイルスについてはHBs抗体保有者が30%にみられたが,HBs抗原保有者はみられなかった.従業(経験)年数と陽性率との間には相関関係が認められた.4)ATL,AIDS抗体陽性者はみられなかった.5)サイトメガロウイルスについては92%が抗体保有者であったが,対照とした一般女性群の抗体保有率(96%)も高く,この値の示す意義はあまり大きくないものと考えられた.6)クラミジア抗体保有者は被験対象者では80%に達し,正常対照者の36%に比し高率を示した.7)単純ヘルペスについては,被験対象者の88%が抗体高値陽性であり,正常対象者における比率45%に比し高率を示した.
著者
金 恵英 川島 真 中川 秀己 石橋 康正 吉川 裕之 松倉 俊彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, 1988

尖圭コンジロームの邦人男子18例について,臨床,組織,免疫組織化学ならびに電顕学的検討を行い,さらに,分子生物学的にヒト乳頭腫ウイルスDNA(HPV DNA)の検出,同定を試みた.発症年齢は平均34歳で性的活動の活発な年齢層にみられ,ソープランドであるいは売春婦より感染したと思われる例が14例を数えた.感染機会から発症までの期間は平均6.3ヵ月であった.発生部位は,尿道口,亀頭,冠状溝,包皮,陰茎,肛囲と外陰部のみにみられ,他部位の疣贅を合併した例はみられなかった.臨床型では,角化傾向の乏しい小丘疹型が13例,強い角化を示す角化型が1例で,肛囲の4例はいずれも花野菜状を呈していた.診察し得た10名のsexual partnerのうち5名に尖圭コンジロームを認め,sexual partnerの診察および治療の重要性を痛感した.組織学的には表皮肥厚,乳頭腫症,空胞化細胞の出現を特徴としていたが,空胞化細胞をほとんど認めない例も4例みられた.免疫組織化学的にパピローマウイルス特異抗原の存在を検索したところ,12例(67%)で主として空胞化細胞の核に一致して陽性所見が認められた.電顕学的検討を行った10例全例で36~46nmの電子密度の高いウイルス粒子と考えられる粒子が観察され,その他,径200nm前後の辺縁が星芒状の粒子も認められた.生検材料より全細胞DNAを抽出し,blot hybridization法を用いて,HPV DNAの検出を行ったところ,全例で遊離型のHPV DNAの存在が証明され,そのタイプはHPV6a型7例,HPV6c型1例,HPV11a型7例,HPV6型およびHPV11型のいずれとも異なる型3例と同定され,欧米および邦人女子例とほぼ同様のタイプが検出されるものの,本邦の尖圭コンジロームの一部では,欧米とは異なるHPV型が関与していることが明らかになった.
著者
高須 久 湯本 繁子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.381, 1961 (Released:2014-08-29)

界面活性剤と化粧クリーム及び軟膏基剤 近時,化粧品,概要医藥品等による皮膚障害が非常に多くなつて来た.これ等化粧品及び市販外用医藥品は比較的医学知識の少ない人達によつて使用されるものであるが,又一方医家の指示の下に使用される軟膏剤に於いても必ずしも無刺戟であると断定し切れない.これ等について後述する様な理由からその基剤成分について化粧クリーム同様,今一度の檢討を要するのではないか.筆者の一人は化粧品技術にたずさわつているものであるが,刺戟作用という面に於いて共通の軟膏基剤を含めこの問題を取り上げて行きたいと思う.軟膏基剤については古来色々な分類方法が云われて来たが,現在一番常識的に我國で認められているのは小堀等によるもので,1)油脂性基剤,2)乳剤性基剤,3)水溶性基剤,4)懸濁性基剤の4つに大別される.この内乳剤性軟膏は一般に吸水性,浸透性という面ですぐれた作用を持つが,樋口等,土肥等は刺戟性という面に於いて劣るのではないかと報告している.又,化粧クリームについては,その皮膚障害に関する報告が多いが,その原因として明確にされている事が非常に少ない.中村の統計によると,化粧クリーム中特に高率の皮膚障害を起しているものはいわゆる藥効美白クリームと称せられているもので,次に多いものがコールドクリーム系の油分の多いものである.佐野等の統計によつても特種成分の混入はその刺戟性を増している.その様にこれ等特種成分の混入されているものは皮膚障害をなくす事は無理であるし,当然それ等は化粧品ではなく医藥品として用いるべきである.しかし一般の化粧クリームではそれが日常反復し長期に亘つて使用されるものである爲,たとえそれが健康な皮膚を対象とするものであつても軟膏基剤と同じく可及的に無刺戟でなければならない.しからばそれ等化粧品の皮膚障害の原因として解明されているものはと云えば皆無に近く,中村は藥効クリームは別として一般のクリームについては化粧品原料の粗悪によるものではなく,原因のほとんどは皮膚側の感受性にあると云つている.しかし化粧クリームは軟膏基剤と異なりその成分に欠くべからざるもの,即ち香料がある.例えばその一例としてベルロック皮膚炎は,その原因がベルガモット油中のテルペン類又はそれに類した精油の作用によるものと云われている.又一般に化粧品がその原因とされているRiehl氏黒皮症についても種々の見方がある.事実,化粧品に用いられる香料の成分中には多くの刺戟誘発物質が含まれているし,それ等に関して古来多くの研究が爲されているが,これ等に関する文献考案は外池による香料と色素沈着を主題とした研究報文中になされているのでここに於いてはふれない.この様にこれ等香料その他化粧品の多種多様に亘る成分中,障害の真の原因を探索する事は容易な業ではない.しかし比較的処方の單純な軟膏基剤に於いてすらその剤型(油脂性,乳剤性)の差異によつて刺戟性の多少が出る事は重大な意味を持つてくる.土肥,宮﨑の言及しているごとく界面活性剤が問題になるのではないか.即ちそれ等乳剤性軟膏と化粧クリームと共通した成分の再檢討,言いかえれば乳剤性軟膏が刺戟が多いという問題である.この基剤は舊来の基剤と比較して内容成分としての油脂には大差なく,その顯著な差異は界面活