著者
金子 栄 山口 道也 日野 亮介 澤田 雄宇 中村 元信 大山 文悟 大畑 千佳 米倉 健太郎 林 宏明 柳瀬 哲至 松阪 由紀 鶴田 紀子 杉田 和成 菊池 智子 三苫 千景 中原 剛士 古江 増隆 岡崎 布佐子 小池 雄太 今福 信一 西日本炎症性皮膚疾患研究会 伊藤 宏太郎 山口 和記 宮城 拓也 高橋 健造 東 裕子 森実 真 野村 隼人
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1525-1532, 2021

<p>乾癬治療における生物学的製剤使用時の結核スクリーニングの現状について西日本の18施設を調査した.事前の検査ではinterferon gamma release assay(IGRA)が全施設で行われ,画像検査はCTが15施設,胸部レントゲンが3施設であった.フォローアップでは検査の結果や画像所見により頻度が異なっていた.全患者1,117例のうち,IGRA陽性で抗結核薬を投与されていた例は64例,IGRA陰性で抗結核薬を投与されていた例は103例であり,副作用を認めた患者は23例15%であった.これらの適切な検査と治療により,結核の発生頻度が低く抑えられていると考えられた.</p>
著者
高島 有香 守内 玲寧 白戸 貴久 和田 吉生 福澤 信之 原田 浩 清水 聡子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.11, pp.2373-2377, 2020

<p>臓器移植患者は免疫抑制のため水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症のリスクが高く,重症化の恐れもあるが,これまで多数例の検討は少なく,治療基準も明確ではない.当施設で施行された腎移植548症例中VZV感染症を発症した81例につき,患者背景,発症頻度,移植から発症までの期間,臨床症状をレトロスペクティブに検証した.汎発型帯状疱疹を11例に認め,うち1例は脳炎を合併し死亡した.腎移植後のVZV感染症診療の際には,速やかな治療開始と慎重な観察が必須であるが,腎移植後1年間以内の患者や献腎移植患者では特に発症率が高く,より慎重な観察が重要である.</p>
著者
坪井 良治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.163-171, 2009-02-20 (Released:2014-11-28)

マラセチア(Malassezia)はヒトの皮膚に常在する脂質要求性の二形性真菌で,歴史的変遷を経て現在13菌種に分類されている.非培養法を用いた解析ではM. globosaとM. restrictaが主要分離菌種である.マラセチアが関連する皮膚疾患としては,癜風,マラセチア毛包炎,脂漏性皮膚炎,アトピー性皮膚炎などが挙げられるが,最近の研究から,癜風やマラセチア毛包炎はマラセチア感染症といえるが,脂漏性皮膚炎はマラセチアが発症,増悪に深く関与した疾患であり,アトピー性皮膚炎においては特異IgE抗体が上昇し,増悪因子のひとつであると考えられる.新しい分類による各菌種の病態ならびに病原的意義は必ずしも明確になっていないので,今後さらに研究が必要である.
著者
山城 充士 山口 さやか 大嶺 卓也 内海 大介 山本 雄一 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.12, pp.2641-2645, 2017

<p>14歳,男性.スキーをした翌日に眼瞼,頬部,手背に疼痛を伴う発赤や腫脹を生じた.血中プロトポルフィリン高値,光溶血現象及び蛍光赤血球陽性,肝障害があり骨髄性プロトポルフィリン症と診断した.フェロケラターゼ遺伝子にナンセンス変異(c.361C>T,p.R121<sup>*</sup>)と低発現アレル(IVS3-48C)の複合ヘテロ接合を同定した.父方の祖母,従姉妹らも同様の複合へテロ接合を有していた.一方,無症候の父親と叔母は,ナンセンス変異をヘテロ接合で保持していたが,対側アレルは正常アレル(IVS3-48T)であった.</p>
著者
神永 博子 四宮 達郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.615, 1997 (Released:2014-08-13)

ストレスは生体に様々な影響を及ぼすといわれているが,皮膚科学領域での学術的な知見はほとんど得られていないのが現状である.そこで,ストレスが及ぼす影響を血液生化学検査,皮膚抽出成分の測定,皮膚色測定,皮膚組織学的検索の観点から検討した.血液成分ではコレステロール,アルカリフォスファターゼ活性などに変動がみられ,ストレスは全身的な影響を示すことが確認された.また,皮膚抽出成分においてもアルカリフォスファターゼ活性などに変動がみられた.皮膚色はストレスにより,明度L*値,黄色味b*値の上昇,赤味a*値,彩度C*値の低下が観察された.組織学的検討として,表皮DOPA染色によるメラノサイトの観察を行ったところ,ストレスで増加傾向を示し,メラノジェネシスが亢進している可能性が示された.また,表皮のATPase染色によるランゲルハンス細胞の観察を行ったところ,ストレスで減少傾向を示し,皮膚の免疫能が低下している可能性が示された.以上より,ストレスは皮膚そのものに対しても様々な影響を及ぼしていることが明らかとなった.
著者
有川 順子 檜垣 祐子 高村 悦子 川島 眞
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1107-1110, 2002-07-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

眼瞼を含む顔面の皮疹が高度で,顔面へのステロイド外用量が5g/月程度のアトピー性皮膚炎患者25人を対象とし,経時的に眼圧の測定を行い,ステロイド外用療法の眼圧への影響を検討した.その結果,開始時に1人(4%)で軽度の眼圧上昇を認めた以外は,7カ月~2年8カ月の観察期間中,眼圧の上昇は認めず,前述の1例ではその後眼圧がさらに上昇することもなかった.より多数例での検討を要するものの,今回の検討からは,顔面へのステロイド外用療法はミディアムクラス5g/月程度の使用量では眼圧上昇の原因にはなりにくいと考えられた.
著者
小野 友道
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.6, pp.1549-1564, 2012

1935年,当時東北帝国大学教授太田正雄は映画のシナリオ作成を依頼された.映画は梅毒予防のための啓発映画で,作成されたシナリオは当時熊本医科大学助教授北村包彦に手直しするよう送付された.それは「螺旋形の悪魔」という題名で完成を見たが,しかし,映画は実現しないまま幻に終わった.太田正雄のシナリオは,現在,神奈川近代文学館に所蔵されている.このシナリオには当時の梅毒に対する考え方,歴史,症状そして治療などが記されており,それらを混ぜながらの若い建築家夫婦の梅毒物語である.歴史学的に貴重であり,また皮膚科学的にも興味深い資料である.
著者
遠藤 薫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.6, pp.945-959, 2003

アトピー性皮膚炎入院患者504名(男202名,女302名)に施行した矢田部―ギルフォード(YG)性格検査の結果を健常人164名(男45名,女119名)と比較すると,男性患者は健常人男より性格因子D(抑うつ的),I(劣等感),N(神経質)が高く,G(活動的)が有意に低くなっていた.女性患者は健常人女よりAg(攻撃的)とR(のんき)が低くなっていた.健常人女は健常人男よりD,C(回帰性傾向),Iが高く,情緒的に不安定であった.逆に男性患者は女性患者よりNが高く,S(社会的外向)が低く,女性患者は男性患者よりAgとRが低くなっていた.アトピー性皮膚炎の症状で比較すると,男では,入院時重症になるほど,DとCが高く,Sが低くなっていたが,女では性格因子に差がなかった.治療などを考慮した疾患重症度をみると,男では,D,Cの有意差が消失していた.顔面重症度を見ると,女性患者では中等症に比べて軽症及び重症患者で,GとSに低下が見られた.発疹型を6群(紅斑型,丘疹型,紅斑+丘疹型,貨幣状型,肥厚・苔癬化型,痒疹型)に分類すると,男において,紅斑型と肥厚・苔癬化型は,紅斑+丘疹型,貨幣状型に比べて,D,I,N,Co(非協調的)が高く,Ag,G,R,A(支配的),Sが低くなっていた.アトピー性皮膚炎を臨床経過から,現在の発疹が悪化してからの年数が5年未満の群と5年以上の群に分けると,5年以上の群は男性患者でCoが高くなっていた.入院直前1カ月のステロイド外用量から,5群(0g/月,5g/月未満,5~50g/月,50g/月以上,ステロイド内服・注射)に分類した.男性患者では,5g/月未満と5~50g/月の群は0g/月とステロイド内服・注射の群に比べてAgが高く,女性患者では50g/月以上の群でAgが高くなっていた.さらに,入院中のステロイド外用量から同様に分けると,男性患者ではステロイド内服した群において,性格因子D,Iが高く,G,R,A,Sが低下していた.女性患者では,ステロイドの外用が多くなると,AgとSが低くなっていた.検査値との関係を見ると,血清LDH値では,高値であるほど女性患者でRが低下していた.血清IgE値が高いほど,男性患者ではDが高く,女性患者ではRが低下していた.また,血清cortisol値が低いほど,男性患者では,O(主観的)が高く,女性患者では,DとIが高くなっていた.アトピー性皮膚炎の男は,健常人より情緒が不安定で人間嫌いで閉じこもる傾向があり,女は優柔不断で他人の意見に左右されやすく,特に顔面が悪化すると人間嫌いで閉じこもる傾向があると言える.また,皮膚症状が性格因子に影響する以上に,性格因子の問題点が臨床経過に重大な影響を及ぼしている可能性がある.
著者
高橋 千歳 大西 誉光 渡辺 晋一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, 1999

症例1:54歳男.約10年前より右足関節外異の皮疹が徐々に増大し,30×25×5mmの広基性の表面平滑で一部糜爛を伴う腫瘤となった.症例2:46歳男.約5年前よりの左下腿の結節が最近数ヵ月で急速に増大し,38×48×8mmの広基有茎性の表面細顆粒状,易出血性の赤褐色腫瘤となった.症例3:76歳女.3年前に左腓骨骨折,2ヵ月後のギプス除去時,同部の結節に気付くも放置.42×29×6mm大の広基有茎性で,糜爛を伴う易出血性紅色腫瘤となった.症例4:63歳男.約8年前よりの右下腿の結節が2年前より急速に増大し,35×38×7mmの広基有茎性で,潰瘍を伴う易出血性紅色腫瘤となった.4症例とも全身検索にて転移は認められなかった.組織はいずれも腫瘍は表皮と連続して真皮内に島嶼状または索状に増殖し,一部に管腔構造を認めた.腫瘍細胞は小型で好酸性の胞体を持つporoma様細胞で,異型性を認めた.症例1,2ではその他に胞体の豊富な澄明細胞の増殖を認めた.以上4例の腫瘍細胞の分化の方向を探る目的で各種抗ケラチン抗体にて免疫組織化学染色を行ったところ,RCK102とMNF116抗体染色が陽性を示すなどeccrine poromaと同様な染色態度を示し,腫瘍細胞の多くは真皮内汗管の基底細胞へ分化しているものと考えられた.
著者
大津 晃
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.1291, 1991 (Released:2014-08-11)

チメロサール皮膚炎の13例を検討し,その抗原決定基による分類は,チオサリチル酸(S群)8名,チメロサール(T群)3名,水銀系(H群)1名,チオサリチル酸と水銀(HS群)1名であった.チオサリチル酸感作高度例にピロキシカムの光貼布試験以外に貼布試験も陽性となるものが存在した.254名の外来患者についてチメロサール感作基による分類を試み,同時にピロキシカム光貼布試験を検討したところ,70名のチメロサール貼布試験陽性者を認め,その構成は,S群17名,HS群4名,H群37名,T群12名であった.ピロキシカム光貼布試験陽性者はチオサリチル酸陽性群(S+HS群)21名中13名に認められた.ピロキシカム光線過敏症はチメロサール皮膚炎の42.8%に発生する可能性があることを示した.またチメロサールの陽性率および貼布試験の施行方法の問題点について述べた.
著者
山前 恵美子 相馬 良直 室田 東彦 山前 正臣 溝口 昌子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.43-48, 2004

抗Jo-1抗体に代表される抗aminoacyl-tRNA synthetase抗体が陽性の多発性筋炎/皮膚筋炎患者では,筋炎のほかに間質性肺炎,関節炎,Raynaud現象などが高頻度に認められ,臨床的なサブセットとして認識されることから,antisynthetase症候群と呼ばれる.症例は64歳男性.筋力低下,関節痛,倦怠感と共に,両手の指腹,手指側縁と関節背面に落屑と亀裂を伴う角化性病変が出現.爪郭の出血点を伴うが,ほかに皮膚筋炎を示唆する皮疹はない.手指の皮疹は組織学的には慢性湿疹様で,satellite cell necrosisを伴っていた.血清CPK 6687 IU/<i>l</i>,筋電図で筋原性変化,筋生検にて変性と萎縮.間質性肺炎あり.抗Jo-1抗体陽性より,antisynthetase症候群と診断.手指の病変はantisynthetase症候群に伴ったmechanic's handと診断した.mechanic's handの過去報告例を集計し,antisynthetase症候群との関連について考察した.
著者
武藤 美香 河内 繋雄 福澤 正男 斎田 俊明
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, 2000

薬疹におけるリンパ球刺激試験(DLST)の診断的価値について検討した.DLSTが施行された薬疹の報告例812例について,発疹型別,薬剤系統別, 個別薬剤別にDLST陽性率を解析した.全症例におけるDLST陽性率は42%であった.発疹型別では,陽性率は中毒性表皮壊死症型(61%),紅皮症型(52%)で高く,紫斑型(11%),光線過敏症型(21%),固定薬疹型(30%)で低かった.蕁麻疹型でも38%の陽性率が認められた.薬剤系統別では,総合感冒剤(72%),抗結核剤(56%),抗てんかん剤(54%),解熱消炎鎮痛剤(53%)で高く,痛風治療剤(22%),合成抗菌剤,循環器官剤(ともに29%)で低い傾向が認められた.塩酸ミノサイクリン(13例),アリルイソプロビルアセチル尿素(8例)ではDLST陽性例は認められなかった.また,薬剤アレルギー検査法としてのDLSTの特異性を明らかにするために,同意のえられた健常人4名を被験者として,主としてDLST陽性率の高い薬剤についてDLSTを試行し,非特異的陽性反応(偽陽性反応)の有無について検討した.その結果,スパクロ■(クロレラ製剤),パリダーゼオラール■,シオゾール■は高率に偽陽性反応を呈し,PL顆粒■(総合感冒剤),ビオフェルミン■(乳酸菌製剤)も偽陽性反応を呈し得ることが判明した.これらによる薬疹では,DLSTが陽性であっても原因薬剤ではない可能性があるので注意を要する.
著者
古川 福実
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.13, pp.2689-2697, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
24

2005年から13年間,和歌山県立医科大学医学部学生の人権教育のテーマとして,ハンセン病をとりあげた.ハンセン病の国内施設において不法中絶の常態化を報じる新聞記事も紹介して,講義と記事に対するレポートの提出を求めた.更に,2010年から4年間の学生には3年後の臨床実習の際に同じレポート提出を求めて,傾向を比較し変化を解析した.合計1,347のレポートの検討によって,ハンセン病が人権教育や臨床倫理教育に極めて有用なテーマであることが確認された.
著者
渡辺 晋一 西本 勝太郎 浅沼 廣幸 楠 俊雄 東 禹彦 古賀 哲也 原田 昭太郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.14, pp.2101-2112, 2001-12-20
参考文献数
17
被引用文献数
29

わが国における足疾患,特に足・爪白癬の頻度を知る目的で,1999年および2000年の5月第3週に受診した皮膚科外来患者を対象に,足疾患に関する無作為調査を行った.その結果,2年間で計21,820例が集積され,足にトラブルを持つ患者は,14,087例(64.6%)であった.このうち8,737例(40.0%)は足の真菌症で,ついで「うおのめ・たこ」2,826例(13.0%),「いぼ・ほくろ」1,259例(5.8%)の順であった.この成績は同様に行われたヨーロッパの調査結果とほぼ同じで,足の真菌症が多いことがわかった.そこで,2000年度の調査においては,受診理由を「真菌症の疑い」と「真菌症以外」に分けて別個に集計したところ,前者では3,231/3,420例(94.5%)に,後者では1,723/8,804例(19.6%)に真菌感染症を見いだした.この真菌感染症に関与する要因をさぐる目的で,得られた背景因子を多重ロジスティック回帰分析により解析したところ,「加齢」,「男性」,「高コレステロール血症」,「ゴルフ」,「同居家族に真菌症あり」などに有意に高いオッズ比が認められた.治療に関しては,外用剤による治療が主であり,爪白癬においても2/3が外用剤のみの治療であった.また美容上の問題点ばかりでなく,歩行困難などの支障を訴える患者も少なくなかった.今回の調査では,皮膚科外来患者のみを対象としたが,40%におよぶ足・爪白癬患者が存在することが明らかとなった.またその病変の多くが,患者自身が気付いていないか,あるいは気付いていても不充分な治療しか受けていない実態も明らかとなった.また白癬の感染リスク因子についても考察をおこなったが,今後感染予防を考える上で興味のある結果が得られた.これらの患者のQOLを高めるためにも,また家庭内感染を防ぐためにも,足・爪白癬患者を積極的に治療すべきだと考えられた.
著者
掛江 直子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.41-49, 2018-01-20 (Released:2018-01-20)
参考文献数
7

平成26年5月に「児童福祉法の一部を改正する法律」が成立し,それまでの小児慢性特定疾患治療研究事業が,平成27年1月1日より新しい小児慢性特定疾病対策として全面施行された.この法改正及びその後の検討により,対象疾病が大幅に増え,付帯事業も充実が図られた.本稿では,これらの制度改正により,慢性疾病を有する子どもとその家族のおかれる支援の状況がどのように変わったのかについて,小児慢性特定疾病対策の変更点を概説すると共に,当該対策のこれからについて紹介する.
著者
砂川 文 山口 さやか 深井 恭子 山本 雄一 粟澤 剛 内原 潤之介 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.12, pp.2567-2571, 2020

<p>症例1は35歳男性,5年前より好酸球増多症に対してプレドニゾロンやシクロスポリンで加療していたが,誘因なく四肢に紫斑と腫脹が出現した.症例2は36歳女性,誘因なく左下腿と足関節部に紫斑が出現した.2例ともAPTT延長,第VIII因子活性低下,第VIII因子インヒビター力価上昇があり,後天性血友病Aと診断し,プレドニゾロン内服を開始した.いずれの症例も治療に反応し,第VIII因子インヒビターは陰性化した.後天性血友病Aは出血による死亡例もあり,誘因なく突然出現した斑状出血の場合,本症を念頭に入れる必要がある.</p>
著者
今井 利一
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, 1962

本症の詳細なる記載は,Kuznitzky und Grabisch(1921)の"Uber myxomatose Fibrosarcome dervordere Brustwand",およびDarier and Ferrand(1924)の"Dermatofibromes progressifs et recidivants ou fibrosarcomes de la peau",更にはHoffmann(1925)の"Uver das knollentreibende Fibrosarcom der Haut"(Dermatofibrosarcoma protuberans)の標題の下に発表された論文を以て嚆矢とし,以後一般には"Dermatofibrosarcoma protuberans"乃至"Dermatofibrome von Darier und Ferrand"の名称が汎用されている.しかし,これに相当すると思われる最初の症例報告として,Hoffmann(1925),Senear,Andrews and Wills(1928)らはCoenen(1909)の2例を,Binkley(1939)はNew York Dermatological Societyに供覧したScherwell(1890)の1例を挙げているが,更にJohnston(1901),Taylor(1890)の報告例もこの疾患に該当するものと考えられる.爾後,外国文献には多数の報告例が散見され,Hoffert and Bronx(1952)は文献的に187例を集め記述したが,著者はその後の外国文献に78例を蒐集したので,今日迄に記述されている外国文献は約250例余と推定される.これに比して,本邦における記載は極めて少なく,山﨑(昭13)の2症例を以て嚆矢とし,以後,田中・林(昭15),畑(昭22),渡辺(昭28),前田・藤井(昭29),寺田・山本(昭81),有森(昭81),池田・青木(昭35)の各1例,計9例を見るに過ぎない.著者は最近,本症例の1例を経験したのでその概要を記すと共に,併せて聊かの考察を行つた.