著者
横山 友里 西村 一弘 吉﨑 貴大 串田 修
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.285-293, 2022-10-01 (Released:2022-11-16)
参考文献数
10

【目的】新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大下における配食事業者のサービス提供体制とその課題を明らかにすることを目的とした。【方法】日本栄養支援配食事業協議会に加盟する配食事業者(21社)を対象に依頼文書を送付し,調査協力への同意が得られた事業者を対象にした。2021年1月~2月に質問紙調査およびインタビュー調査を実施し,配食事業者のサービス提供体制と課題について集計分析を行った。【結果】調査協力への同意が得られた事業者は全13社であった。提供体制の課題として,配送時の感染対策や体制整備,スタッフの感染対策,食数や利用者の増加に対する製造体制の整備,受注業務の体制整備,人材確保等が挙げられた。また,事業者の業態やサービスの特性によっては,医療機関での栄養指導等の減少により,患者に対して配食サービスを紹介する機会が減少していることや,見守りや安否確認が対面でできず,利用者の様子が把握しづらくなっていることも課題として挙げられた。【結論】本研究では,COVID-19の感染拡大下における配食事業者の提供体制に関する課題を整理した。本研究で得られた成果は,感染症発生時に対応した強靭な食環境を整備するうえで重要な基礎資料となるとともに,行政や配食事業者が,感染症の流行に備え,適切に配食サービスを届けるための体制を構築するうえで役立つことが期待される。
著者
衛藤 久美 中西 明美 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.113-125, 2014 (Released:2014-07-19)
参考文献数
39
被引用文献数
4 4

【目的】小学5年生及び中学2年生の家族との夕食共食頻度及び食事中の自発的コミュニケーションと,中学2年生時の食態度,食行動,QOLとの関連を明らかにすること。【方法】2006年度に埼玉県坂戸市内全13小学校5年生,及び3年後に全中学2年生を対象に行われた2回の質問紙調査データがマッチングでき,有効回答が得られた598名(男子303名,女子295名)を対象とした。夕食共食頻度及び自発的コミュニケーション(以下,自発的)を用いて,共食≧週4日で自発的が多いA群,共食≧週4日で自発的が少ないB群,共食≦週3日で自発的が多いC群,共食≦週3日で自発的が少ないD群の4群に分け,小5の4群と中2の食態度,食行動,QOLの関連(縦断的研究),中2の4群と同時期の食態度,食行動,QOLの関連(横断的研究)を検討し,さらに共分散構造分析を行った。【結果】小5の4群と中2の食態度,食行動,QOLとの関連は一部のみで見られた。中2の4群は中2の食態度,食行動,QOLの多くの項目と関連が見られた。A群はB群やD群に比べ,食態度が積極的で,食行動の実践頻度が高く,QOLが高かった。共分散構造分析の結果,小5ではなく中2の夕食共食頻度と自発的コミュニケーションが中2のQOLの各変数に影響していた。【結論】中学2年生の食態度,食行動,QOLは,小学5年生よりも同時期の共食頻度や自発的コミュニケーションの関連が多いことが示唆された。
著者
土田 満 伊達 ちぐさ 中山 健夫 山本 卓 井上 真奈美 山口 百子 岩谷 昌子 陳 浩 田中 平三
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.35-44, 1991 (Released:2010-04-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

健康な20歳代男子5人を被験者として, 連続3日間, ナトリウム (Na), カリウム (K), カルシウム (Ca), リン (P), マグネシウム (Mg), 亜鉛 (Zn) の出納実験を行った。この結果に基づいて, 摂取量と糞中, 尿中排泄量または血清中濃度との相関を解析した。1) 出納実験より, Na, K, Pは摂取量の大部分が尿中へ排泄されていた。摂取量に対する尿中への排泄率はNaが85%と最も高く, Pが84%, Kが74%であった。逆にCa, Mg, Znは糞中へ排泄される割合が高く, 尿中への排泄率はCaが38%, Mgは25%と低かった。 Znのそれは7.1%であった。2) 摂取量と糞中排泄量との相関を検討してみると, Kのみが統計学的に有意の正相関を示した。3) 摂取量と尿中排泄量との間には, Na (r=0.974) とK (r=0.891) が統計学的に有意な正相関を示した。4) 各ミネラルの摂取量と血清中濃度との間には, 統計学的に有意な相関関係が認められなかった。5) Na, K, Ca, P, Mg, Znの尿中, 糞中の量, 血清中濃度から各ミネラル摂取量を推定するには, 尿中クロール排泄量からの方法がよく知られている。今回の実験では, これをNa, Kの24時間尿中排泄量から求める方法の有用についても示した。
著者
笹岡 歩 河本 高伸 青江 誠一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.253-258, 2015 (Released:2016-04-06)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

【目的】本研究は大麦の健康機能に着目し,大麦粉ホットケーキの摂取が小麦粉ホットケーキと比較して食後血糖値の上昇を抑制するかを検証するため実施した。【方法】対象は空腹時の血糖値が正常な成人12名(男性6名,女性6名)とした。糖質 50 g分の大麦粉ホットケーキ(試験食)と小麦粉ホットケーキ(対照食)のそれぞれを摂取し,摂取前および摂取開始から15分,30分,45分,60分,90分,120分後の血糖値を測定した。なお,試験は無作為化,単盲検,クロスオーバー試験とし,統計解析は各変数の正規性を確認後,血糖値変化量(Δ血糖値)の経時変化の解析は乱塊法二元配置分散分析を,血糖値上昇下面積(IAUC)の解析はFriedman検定を行った。また,ホットケーキシロップを添えた場合についても同様の試験を実施した。【結果】ホットケーキシロップ無しおよび有りの試験について,大麦粉ホットケーキを摂取した場合,小麦粉ホットケーキと比較して,0~120分間の全平均Δ血糖値およびIAUCが有意に低下した。【結論】大麦粉ホットケーキには,小麦粉ホットケーキと比較して血糖値の上昇を抑制する効果が確認された。
著者
江田 真純 河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.134-141, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】食費に対する態度の変容による食生活改善の可能性を探ることを目指し,食費に「お金を掛けることは惜しまない」女子大学生の特徴,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度と食費に対する態度を検討した。【方法】2018年11月,女子大学生1,388人を対象に,自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,属性,食費に対する態度,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度であった。χ2 検定,Kruskal-Wallis検定,Mann-WhitneyのU検定,ロジスティック回帰分析を用いて,食費に対する態度別に属性,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度を検討した。【結果】541人が回答し(回収率39.0%),対象外であった大学院生や回答不備の者を除き,483人を解析対象とした(解析対象率34.8%)。食費に「お金を掛けることは惜しまない」者は,管理栄養士養成課程の者(p=0.013),暮らし向きにゆとりがある者が多かった(p<0.001)。ロジスティック回帰分析で,これら属性を調整した結果,食費に「お金を掛けることは惜しまない」者より,「お金を掛けたいが,ゆとりがない」者の主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度が低かった(オッズ比[95%信頼区間]=0.46[0.24~0.87])。【結論】食費に「お金を掛けることは惜しまない」女子大学生は,より健康的な食生活を送っていることが示唆された。
著者
越田 詠美子 岡田 知佳 岡田 恵美子 松本 麻衣 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.14-26, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
67

【目的】本研究は,今後の日本での食事摂取基準の策定における参考資料となるよう,日本と諸外国の策定状況とその活用目的を比較検討することを目的とした。【方法】食事摂取基準に関する情報は,各国の策定機関のホームページ等から収集した。調査対象国は日本,アメリカ/カナダ,イギリス,オーストラリア/ニュージーランド,European Unionとし,調査項目は,策定機関,改定の周期と対象,摂取量の指標,基準値が策定されている栄養素,活用目的とした。【結果】食事摂取基準は,各国の政府や公的機関等が主導して策定をしていた。改定の周期は,日本は全栄養素を対象に5年ごと,日本以外の国は栄養素ごとに,必要に応じて不定期に行っていた。摂取量の指標は,日本とおおよそ同様の指標が諸外国でも用いられており,さらに,イギリスでは推定平均必要量から2標準偏差を差し引いた値である下限栄養素摂取基準値も定められていた。基準値が策定されている栄養素数は,アメリカ/カナダが最多であった。活用目的は各国共通で,栄養・食事管理,栄養指導,食事ガイドライン/フードガイドの策定,栄養表示に用いられていた。その他,日本以外のすべての国で軍隊に対する活用がされていた。【結論】本研究により日本と諸外国における食事摂取基準の相違点が明らかとなり,今後の日本での策定において参考になるとともに,日本の課題も浮き彫りとなった。
著者
原田 まつ子 相良 多喜子 宇和川 小百合 塩入 輝恵 斎藤 禮子 平山 智美 西村 純一 苫米地 孝之助
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.403-411, 1995 (Released:2010-04-30)
参考文献数
24

石川県金沢市内に在住する単身赴任の男性37人を対象に, 健康状態, 栄養素及び食品群別摂取量状況調査, 性格調査 (谷田部・ギルフォード法) を行い, 単身赴任歴3年未満と3年以上, 性格の情緒安定因子と向性因子の性格特性とこれらとの関連を検討し, 次の結果を得た。1) 単身赴任歴の3年未満の者は, 3年以上に比べて“風邪をひきやすい”と回答した者が多く (p<0.05), 関連の度合が大きい。2) 単身赴任歴の3年未満の者は, 3年以上に比べて, 栄養素の摂取量でみると, ビタミンAを除く全ての栄養素が低値であり, 食品群別において, 特に緑黄色野菜の摂取量が少ない (p<0.05)。3) 情緒不安定な者は平均または安定な者に比べ, また, 積極型の者は平均または消極型の者に比べ“風邪をひきやすい”と回答した者が多く, 有意差が認められた (p<0.05)。4) 栄養素及び食品群別摂取量では, 情緒不安定な者は鉄, 野菜類の摂取量が有意に少なく, また, カルシウム, ビタミンC, 豆類も野菜類と同様に, 情緒不安定の者のほうが摂取量が少なかった。一方, 積極型は平均または消極型に比べ, 脂質量が多く, 緑黄色野菜の摂取量は有意に低値で, ビタミンCは少なかった。5) 性格特性の情緒安定因子とは, カルシウム, 鉄, 豆類, 野菜類が, また, 向性因子には脂質, ビタミンC, 乳類, 緑黄色野菜とに関連が認められた。
著者
飯野 久和 青木 萌 重野 千奈美 西牟田 みち代 寺原 正樹 粂 晃智 水本 憲司 溝口 智奈弥 小泉 明子 竹田 麻理子 尾﨑 悟 佐々木 一 内田 勝幸 伊藤 裕之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.171-184, 2013 (Released:2013-09-11)
参考文献数
44
被引用文献数
2 3

【目的】プロバイオティクスを添加していないブルガリアヨーグルトの整腸作用を調べるため,ブルガリアヨーグルトの摂取による糞便中ビフィズス菌増加作用をランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験で評価する。【方法】女子学生62名をヨーグルト摂取群(ブルガリアヨーグルトを摂取する群)と酸乳摂取群(ヨーグルトと同じ乳成分からなる乳飲料に乳酸を加えてヨーグルトと同じpHとした酸性乳飲料を摂取する群)に分けた。両群ともに摂取前観察期(2週間),ブルガリアヨーグルトまたは酸乳を1日 100 ml摂取する摂取期(4週間:前半2週間,後半2週間),摂取後観察期(2週間)を設け,糞便中の腸内細菌叢の解析を2週間毎に行い,糞便中ビフィズス菌数を調べた。【結果】試験の除外対象者(過敏性腸症候群様の者,抗生剤の使用者等)および脱落者を除いた女子学生(ヨーグルト摂取群が20名,酸乳摂取群が25名)を評価対象として統計解析した。試験食品を4週間摂取した際の糞便中ビフィズス菌の生菌数は,酸乳摂取群に比較してヨーグルト摂取群が有意に高値となった。【結論】以上の結果より,ブルガリアヨーグルトの摂取によって糞便中ビフィズス菌数が増加し,腸内細菌叢が改善されることが示された。
著者
横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 竹林 純 瀧本 秀美 石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.162-173, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
48
被引用文献数
1

【目的】食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品を区分またはランク付けする「栄養プロファイルモデル(以下,NPモデル)」が諸外国の栄養政策で活用されている。本研究では,諸外国のNPモデルを調査し,日本版NPモデル策定のための基礎資料の作成および課題整理を行うことを目的とした。【方法】第41回コーデックス委員会栄養・特殊用途食品部会の議題「NPモデル策定のための一般ガイドライン」で共有された既存のNPモデル(97件)の一覧表を用い,対象モデルを抽出した。【結果】採択条件に該当しないモデル(計75件)を除き,調査対象のモデル22件の開発国の内訳は,中南米(1件),北米(5件),欧州(5件),中東(1件),大洋州(2件),アジア(6件),国際機関(WHOの地域事務所)(2件)であった。食品の包装前面の表示(11件),ヘルスクレーム付与に対する制限(5件)を目的としたモデルは一般集団が対象であり,広告規制を目的としたモデル(6件)は子供が対象であった。モデルタイプは閾値モデルが16件,スコアリングモデルが5件,混合モデルが1件で,多くのモデルで摂取を制限すべき栄養素等として,熱量,脂質,飽和脂肪酸,トランス脂肪酸,糖類,ナトリウムを設定していた。【結論】日本版NPモデルの策定にむけた検討課題として,対象栄養素,食品のカテゴリー分類,モデルタイプの設定等が示された。
著者
中西 朋子 小切間 美保 林 芙美 北島 幸枝 大久保 公美 飯田 綾香 鈴木 志保子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.Supplement, pp.S44-S56, 2019-12-01 (Released:2020-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

【目的】本研究は,管理栄養士のめざす姿とその実現に向けて求められる資質・能力,さらに具現化するために必要となる組織・環境・教育について,現役管理栄養士の視点から検討することを目的とした。【方法】対象者は公益社団法人日本栄養士会会員の現役管理栄養士203名とし,自記式質問紙法にて調査を行った。解析対象者は管理栄養士のめざす姿に関する設問に回答の得られた200名とした。自由記述で得られた管理栄養士のめざす姿および求められる資質・能力,組織・環境・教育に対する回答は質的に分析を行った。【結果】管理栄養士のめざす姿は62のカテゴリーが示され,①エビデンスに基づいた知識を有して多職種と連携できること,②対象者に寄り添った支援ができること,③専門的な知識を基に栄養指導を行うことの3項目に大別された。その実現のために求められる資質・能力は「コミュニケーションスキル」「専門知識」「情報収集能力・情報リテラシー」「プレゼンテーション力」が多く,そのために必要な組織・環境・教育は「研修や学会に参加しやすい体制の充実」「多職種連携ができる教育体制」「継続的に学ぶ機会の提供」「養成施設における現場で活用できるような教育」が多かった。【結論】本研究から,現役管理栄養士のめざす姿は3つに集約され,その実現に向けた資質・能力が示されるとともに,組織・環境・教育の整備の必要性が検討できた。
著者
赤松 利恵 小澤 啓子 串田 修 小島 唯 阿部 絹子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.355-364, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
13

【目的】管理栄養士・栄養士養成施設における食環境整備に関する教育の推進に向けて,その教育の実態を把握し,関連する要因を検討すること。【方法】厚生労働省委託事業「令和2年度管理栄養士専門分野別人材育成事業」の食環境整備に係る人材育成検討部会が行った教員(管理栄養士養成施設432人,栄養士養成施設224人)を対象としたデータを用いて,養成施設別に,食環境整備に関する教育に関わる個人要因と環境要因,食環境整備に関する教育の実施状況をMann-WhitneyのU検定,Kruskal-Wallis検定,ロジスティック回帰分析を用いて調べた。【結果】管理栄養士養成施設(210人,48.6%)では,教育の実施高得点群に,食環境整備に関する研究と社会活動の経験(オッズ比[95%信頼区間]各々2.45[1.09~5.48],3.64[1.59~8.31])等の要因が関係していた一方で,栄養士養成施設(73人,32.6%)では,所属施設内の管理栄養士養成課程の有無(8.74[1.44~53.25])の環境要因が関係していた。栄養学教育モデル・コア・カリキュラム(以下,コアカリ)の活用は,両施設で関係していた(各々2.83[1.22~6.58],11.37[2.28~56.71])。【結論】食環境整備の教育には,教員の専門性と職場環境が関連していた。また,養成施設での教育において,コアカリの活用を推進する必要性が示された。
著者
深澤 向日葵 吉井 瑛美 會退 友美 赤松 利恵 長谷川 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.338-344, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
18

【目的】幼児の偏食と健康状態,夕食における食品群別摂取量,栄養素等摂取量との関連を検討することを目的とした。【方法】2018年12月,1次調査として幼児を持つ母親を対象にインターネット調査を実施し,そのうち希望者から抽出された者を対象に2019年3~5月,2次調査として写真法による食事調査を実施した。1次調査より幼児の偏食,健康状態,属性を用い,2次調査より幼児の夕食の食品群別摂取量,栄養素等摂取量を用いた。偏食得点の三分位値で分けた低群,中群,高群の属性,健康状態および食品群別摂取量,栄養素等摂取量の違いを,χ2 検定,Kruskal-Wallisの検定および多重比較で検討した。【結果】1次調査の解析対象者は1,899人,2次調査は118人であった。幼児の偏食得点三分位値は14,17点であり,低群614人(32.3%),中群708人(37.3%),高群577人(30.4%)となった。偏食低群には,発熱しにくい者,風邪をひきにくい者,疲れにくい者が多かった(それぞれp<0.001)。食品群別摂取量では野菜類に有意差がみられ,偏食高群で摂取量が少なかった(p=0.016)。栄養素等摂取量は,偏食3群間で違いはみられなかった。【結論】偏食低群の幼児の健康状態は良好であった。偏食高群の幼児は,夕食で野菜類の摂取量が少なかったが,栄養素等摂取量は偏食の程度による違いはみられなかった。
著者
田原 遠
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.13-23, 2020-02-01 (Released:2020-03-19)
参考文献数
31

【目的】あいりん地域に生活の拠点を置く者の生活状況,栄養学的特性について明らかにすることを目的とした。【方法】大阪社会医療センター付属病院通院中の患者と高齢者特別清掃事業参加者に対し,半定量食物摂取頻度調査票による栄養調査と身体状況・生活状況調査を行い計255名より完全回答を得た。うち生活困窮度の低い5名を除いた250名(生活保護受給者=生保群とする123名,生活保護未受給者=未受給群とする127名)を対象者とした。対象者が平成26年国民健康・栄養調査における所得の低い集団(低所得群とする)が示している特徴を有しているかどうか,また生活保護受給の有無で対象者の特性に差異が生じるかどうかの検討を行った。【結果】本対象者は残歯20本未満の者が79.2%,喫煙者は58.8%と共に極めて多く,野菜類摂取量は極めて少なかった。両群間の比較では,生保群において仕事をしている者がより少なく,肥満者はより多く,野菜類,果実類,きのこ類,乳類の摂取量はより多かったが,飲酒習慣者の割合や嗜好飲料類の摂取量はより少なかった。【結論】本対象者は低所得群の特徴を有しており,なおかつ低所得群よりもより顕著な傾向を示した。両群間の比較より,生保群においては活動量に見合った摂取量に関する栄養教育が,未受給群においては飲酒に関する教育,外食や中食でも野菜類を摂取できるような栄養教育が必要であると考えられた。
著者
高畑 彩友美 小谷 清子 吉本 優子 福田 小百合 尾崎 悦子 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.293-301, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
33

【目的】京都府内の大学の学生食堂において,行政が推進する地産地消・食環境整備事業の登録と,食事と食情報の提供実態を明らかにし,大学生の健康増進のための食環境改善について検討すること。【方法】京都府内の全34大学11短期大学の全72食堂の食堂運営者を対象とした自記式質問調査を2017年に実施した。運営主体によって組合事業組織が運営する食堂(以下,「組合」)と,一般事業者が運営する食堂(以下,「一般」)に区分,さらに,行政が推進する食環境整備事業への登録状況から,登録群と非登録群に分けて比較した。調査項目は,食環境整備事業への登録,食事提供の形態,食事の内容,食・健康情報の提供内容等の12項目である。【結果】63食堂(「組合」33件,「一般」30件, 回答率87.5%)から回答を得た。行政が推進する食環境整備事業への登録は「組合」20.0%,「一般」34.5%であった。「一般」では非登録群と比較して,登録群では野菜料理,米飯量の調節,魚料理,定食の提供の割合が有意に高値であった。食情報の提供の割合は,登録群,非登録群間に差はなく「一般」より「組合」で高値であった。【結論】食環境整備事業への登録が「一般」での健康的な食事の提供と関連している可能性が示唆された。今後,行政,大学及び食堂運営者が連携し,学生食堂の食環境の改善と新しい形態の食情報提供により,学生の健康増進を図ることが望まれる。
著者
神原 知佐子 野村 希代子 中磯 知美 岡 壽子 杉山 寿美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.320-329, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
22

【目的】医療施設における栄養管理において,管理栄養士・栄養士がどのような目的と意識を持って治療食献立に牛乳を組み込んでいるのかを明らかにするために治療食献立への牛乳の使用実態を調査した。【方法】関東・関西・中国・四国地方の200床以上の医療施設967施設に,常食,糖尿病食,腎臓病食,高血圧症食,高中性脂肪血症食,高コレステロール血症食における牛乳使用を郵送による無記名紙面自記式アンケート調査を行った。【結果】234施設から回答を得た(回収率24.2%)。牛乳は毎日朝食時に提供されることが多く,その理由として「院内約束食事箋の栄養基準に適合させるため」「その時間での摂取が一般的」「その時間の食事の栄養量が少ない」「その時間の食事の品数が少ない」が多く回答された。また,管理栄養士・栄養士は,献立作成や栄養教育の場面では,嗜好性よりも牛乳に含まれる栄養素の量を優先していた。しかし,患者からの要望への対処方法としては「代替食品を利用する」との回答が多く,「牛乳提供の理由を説明する」は少なかった。【結論】医療施設の管理栄養士・栄養士は,牛乳に含まれる栄養素を患者に摂取させるために,治療食献立に牛乳を組み込んでいた。患者個人の嗜好に配慮した場合には,栄養学的な役割を患者に説明することは少なく,牛乳でない代替食品を提供していた。
著者
中村 愛美 吉田 智 西郊 靖子 林 静子 鈴木 靖志
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.59-70, 2012 (Released:2012-02-27)
参考文献数
22
被引用文献数
8 8

【目的】デンプン系,グアーガム系,キサンタンガム系およびその他の各種市販とろみ調整食品が緑茶,牛乳,オレンジジュースおよび味噌汁に与える影響を物性面から解析し,性能に基づくとろみ調整食品の分類を行うことを目的とした。【方法】15種類のとろみ調整食品を4種類の食材に溶解して調製した各種とろみ液の粘度およびテクスチャーを測定し,とろみ調整食品の機能性を反映する指標として,粘度力価,添加時および安定時粘度ばらつき,初期粘度発現率および付着性を算出した。さらにこれら5つの指標を用いて主成分分析およびクラスター分析を行った。【結果】粘度力価は4種の食材すべてについてグアーガム系が大きかった。添加時および安定時の粘度のばらつきはとろみ調整食品の種類と食材の組合せによって傾向が異なった。初期粘度発現率は食材によって特徴があり,緑茶ではキサンタンガム系が,オレンジジュースではデンプン系が高い値を示した。付着性は4種の食材すべてについてデンプン系が大きかった。5つの指標を用いて食材別に主成分分析を行なうと,とろみ成分による分類とは異なる分布を示した。一方,全食材の5つの指標を説明変数にとり,クラスター分析を行った結果,とろみ成分に応じたクラスターが形成された。【結論】市販とろみ調整食品が食材の物性に及ぼす影響をもとに分類を行なうと,各とろみ剤の特徴が食材の種類によって異なることが明らかとなった。したがって,とろみを付与する食材や目的に応じて適切な製品を選択することが重要である。
著者
門脇 真也 蕪木 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.51-59, 2016 (Released:2016-07-12)
参考文献数
32
被引用文献数
1 2

【目的】低糖質高たんぱく質(low carbohydrate-high protein; LC-HP)食の非肥満者への影響は,動脈硬化性疾患につながる生体内酸化ストレスの関与を含め不明な点が多い。よって本実験ではLC-HP食の短期(2w)および長期的摂取(13w)の影響について非肥満マウスを用いて検討した。【方法】6週齢のC57BL/6J雄マウスを 2wおよび 13w飼育し検討を行った。飼料はLC-HP食(PFCエネルギー比率;40,16,44),または,普通食(PFCエネルギー比率;20,16,64)を摂取させた。【結果】LC-HP食群は普通食群に比し,体重増加率,副睾丸周囲脂肪組織重量および脂肪細胞面積が有意に低値,腎臓重量は有意に高値を示した。肝臓中スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性は,LC-HP食群で普通食群に比し有意に低値を示した。血清中アディポサイトカイン,インスリン,酸化生成物の指標とした肝臓中チオバルビツール酸反応性物質および酸化LDLの指標とした血清中レクチン様酸化LDL受容体結合アポリポたんぱく質Bでは,LC-HP食の影響を認めなかった。【結論】非肥満下でのLC-HP食は,体重増加および副睾丸周囲脂肪細胞の肥大化を抑制した。一方でLC-HP食は,肝臓SOD活性の低下による酸化ストレス増大を介し,動脈硬化性疾患発症に影響することが示唆された。
著者
南 里佳子 玉浦 有紀 赤松 利恵 藤原 恵子 酒井 雅司 西村 一弘 角田 伸代 酒井 徹
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.198-209, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
25

【目的】維持血液透析患者の食事・水分管理アドヒアランス改善に向けて,関連する信念を評価する尺度を作成し,その信頼性と基準関連妥当性を検討する。【方法】3都市4施設で外来維持血液透析を受療中の患者378人を対象に,質問紙調査を実施し,食事・水分管理の信念に関する40項目と,主観的指標による食事・水分管理アドヒアランス状況をたずねた。同時にカルテから,属性とドライウエイト,透析間体重増加率,生化学検査データを収集した。探索的・確証的因子分析により,信念尺度の因子構造を検討した後,抽出された下位尺度の信頼性(クロンバックα)と基準関連妥当性(客観的/主観的指標によるアドヒアランス状況との関連)を確認した。【結果】尺度作成の結果,食事・水分管理の実施に関する信念として「食事管理の障害」「食事に対する懸念」「環境からの影響」「楽観性」の4下位尺度17項目,動機に関する信念として「重要性」の1下位尺度8項目が得られた。クロンバックαは0.531~0.830と概ね良好な値だった。また,各下位尺度の得点は,客観的または主観的指標によるアドヒアランス状況(良好群・不良群)と妥当な結果がみられ,基準関連妥当性が確認された。【結論】維持血液透析患者の食事・水分管理に関する信念尺度として,実施と動機に関する信念の2つの尺度の信頼性と基準関連妥当性を確認した。
著者
松枝 秀二 小野 章史 松本 義信 平川 文江 平田 圭 守田 哲朗 長尾 憲樹 長尾 光城
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.233-239, 2001-10-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
25

Effects of 8-weeks low-intensity aerobic training on the body composition and basal metaboli sm were evaluated in untrained young females. Twelve subjects randomly divided into two groups. One group was sedentary control. The other half exercised at an intensity of 50% of the maximal aerobic capacity for 30 minutes per day, 4days a week for 8 weeks. Altough maximal aerobic capacity was improved by training the body weight, percent of fat, and lean body mass were not different between before and after training. The basal metabolic rates (BMR), expressed by per day, per body weight, and per lean body mass, decreased significantly (p<0.05) after training, -9%, -8%, -8%, respectively. The blood thyroid hormone, T3, concentration was significantly reduced after training (p<0.001), and T4 and free T4 concentrations also decreased significantly (p<0.05). However, no significant correlation was observed between the decrease of the thyroid hormone level and that of BMR. There were no differense in the daily energy intake of the subjects between before and after training. Interestingly, the estimated daily energy expenditure was reduced after training. This might be related to an increase of sleep-time, and decrease of daily activity level. These results suggest that 8-weeks low-intensity aerobic training did not change body composition in untrained young females, because training resulted reducing the daily activity level, and consequently decreased of BMR and blood thyroid hormone concentrations.