著者
河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.254-263, 2020-12-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
26
被引用文献数
3

【目的】植物性食品を中心とした食事パターンに関する研究の基礎資料とするために,先行研究で開発された「植物性食品指数」をわが国の女子大学生の食事調査データに適用し,各指数と栄養素等摂取量・Body Mass Index(BMI)との関連を示すことを目的とした。【方法】女子大学生281名を対象に,簡易型自記式食事歴法質問票から得た食物摂取頻度及びエネルギー・栄養素等摂取量のデータを用いて,「総植物性食品指数」「健康な植物性食品指数」「不健康な植物性食品指数」を算出した。これらの指数と,エネルギー及び栄養密度法で示した栄養素等摂取量,BMIとの相関係数を算出した。【結果】対象者のBMIの中央値(四分位範囲)は20.0(18.8,21.2)kg/m2 だった。健康な植物性食品指数と,コレステロールを除く全ての微量栄養素の摂取量との間に正の相関がみられた(ρ=0.147~0.645, p<0.050)。一方,不健康な植物性食品指数と,植物性脂質エネルギー比と飽和脂肪酸エネルギー比を除く全ての微量栄養素の摂取量との間に負の相関がみられた(ρ=-0.718~-0.127, p<0.050)。3指数とBMIとの間に相関関係はみられなかった。【結論】健康な植物性食品指数が高い程,多くの栄養摂取状況が良好だった一方,不健康な植物性食品指数が高い程,エネルギー摂取量や多くの栄養素等摂取量が不足していた。
著者
尾立 純子 藤田 忠雄 神戸 保 大柴 恵一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.267-273, 1980
被引用文献数
1

圧力鍋と常圧鍋を用いで炊く, 煮る, 蒸す調理をそれぞれ質玄米, 大豆, さつまいもで行い, 調理後のビタミン類の残存量とアミノ酸の煮汁中への溶出量を比較した。<br>1. 玄米を炊いた場合のB<sub>1</sub>残存量は, 圧力鍋で56~64%常圧鍋で72%となり, 圧力鍋での損失量が約10%大きかった。<br>2. 大豆を煮た場合のB<sub>1</sub>残存量は, 圧力鍋で65~70% (豆中57~60%, 煮汁中8~9%), 常圧鍋で51% (豆中50%, 煮汁中1%) となり, 圧力鍋での損失量が約15~20%少なかった。<br>3. さつまいもを蒸した場合のB<sub>1</sub>とCの残存量は, でんぷんα化度約90%で比較すると, 圧力鍋でB<sub>1</sub> 73%, C54%, 常圧鍋で, B<sub>1</sub>, Cともに85%となり, 圧力鍋での損失量がB<sub>1</sub>で約10%, Cで約30%大きかった。<br>4. 大豆調理時の煮汁中への窒素とアミノ酸の溶出量は圧力鍋で常圧鍋の約1.5倍大きかった。また溶出されやすいアミノ酸はトリプトファン, アルギニン, アラニン, グルタミン酸, セリンの順で, アミノ酸の溶出パターンは, 両鍋で差異はなかった。
著者
野口 知里 小林 身哉 小山 洋一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.120-128, 2012 (Released:2012-04-24)
参考文献数
25
被引用文献数
3 5

【目的】サプリメントとしてのコラーゲンの経口摂取による効果に関する報告は多いが,食事から摂取したコラーゲン量の詳細に関してはほとんど報告されていない。そこで,男性に比べてコラーゲンの効果に関心が高いと思われる女性を対象にして,食事由来のコラーゲン摂取量を明らかにすることとした。【方法】対象者は20代から50代までの女性61名とし,平日2日間の全食事内容を目安量記録法により調査した。動物性食材中のコラーゲン量は,コラーゲンに特徴的なアミノ酸であるヒドロキシプロリン量から算出した。【結果】20代から50代女性の1日あたりのコラーゲン摂取量は平均 1.9 gであった。全対象者が2日間で摂取した食材ごとの摂取量を算出したところ,肉類からのコラーゲン供給率が60.5%と多く,その中でも特に豚肉由来のコラーゲン摂取量が全体の33.4%と高く,摂取頻度も最も高かった。一方,魚類の摂取頻度は豚肉の7割程度で,摂取量も豚肉の約6割であり,全体として魚類からのコラーゲン摂取量が少ない結果となった。コラーゲンを多く含む魚の皮の摂取率は54.0%であった。さらに,コラーゲンの摂取量は米を主食とした食事で有意に高く,パンと麺を主食とした食事では低かった。この主食別のコラーゲン摂取量の差は,副食の品数に関係していることが明らかとなった。【結論】今回調査した成人女性の1日あたりのコラーゲン摂取量は平均 1.9 gであった。食事からのコラーゲン摂取量には,食材の選択だけでなく主食の種類と副食の品数も関与していることが示唆された。
著者
中村 正和
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.213-222, 2002-10-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
28
被引用文献数
5 4

An overview is presented of the psychological theories and models that underlie the intervention used in many individual-based health behavior change programs to show theoretically based strategies for health behavior change.Reviewed are the stimulus response theory, social learning theory, health belief model, decisional balance model, and stages of change model. A number of psychobehavioral strategies based on these theories and models can be used by health promotion specialists to motivate clients toward healthier behavior changes and to guide the clients' actions while they make these changes. Theoretical frameworks can help health promotion specialists during the various stages of planning, implementing, and evaluating an intervention. All interventions for health behavior change need to be planned and evaluated according to proven theories and models.The theories and strategies discussed in this paper are focused on the individual-centered approach to health behavior change. Health promotion intervention must be integrated with the social environment-centered approach for influencing behavior at the group, organization, and community levels.
著者
Yoko Hosoyamada Kimiko Miyahara
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.Supplement, pp.S50-S63, 2018-07-01 (Released:2018-08-28)
参考文献数
48
被引用文献数
3

Purpose: A systematic review was undertaken for the purpose of determining trends in food and nutrition education utilizing school lunches following the enactment of the Shokuiku Basic Act in 2005.Method: A search for academic papers published over the 12-year period from 2005 to 2016 was conducted using the database of the Japan Medical Abstracts Society as well as a manual search. The criteria for selection were as follows: Firstly, papers had to be published in reviewed academic journals. Secondly, papers had to be original articles. Thirdly, the subjects of the papers had to be Japanese elementary school or junior high school students. Fourthly, the contents had to relate to the school lunch program. Fifthly, the papers had to contain statistical analyses.Results: A total of 165 papers were selected from the database search and 86 papers from the manual search. Eleven papers were ultimately chosen. The contents of these papers comprised food and nutrition education taught in the classroom (eight papers) and food and nutrition education that utilized school lunch times (three papers). The reports were published following the enactment of the Shokuiku Basic Act in 2005 and the School Lunch Act in 2008. Three papers were published in the period 2005 to 2010 and eight in the period 2011 to 2016.Conclusion: In recent years there has been an increase in the number of reports relating to food and nutrition education using school lunches with the recommendation that this method of education becomes part of the curriculum.
著者
掃部 美咲 吉本 優子 小松万里子 八竹 美輝 森 加容子 渡邊 英美 小切間 美保
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.65-76, 2018-08-01 (Released:2018-09-21)
参考文献数
27
被引用文献数
1

【目的】小学生に調理を伴う食育活動が実施されていることから「調理経験が食事観,自尊感情,心身の健康,学習に対する意欲・関心と関連する」という仮説を立て,検証した。【方法】2015年12月~2016年4月,近畿圏の市街地に位置する小学校3校の4~6年生749名を対象に自記式質問紙調査を行った。分析対象者は全ての質問項目に回答した485名とした。質問紙を6分類94項目で構成し,調理経験34項目,食事観8項目,自尊感情22項目,学習意欲12項目,教科に対する関心12項目,心身の健康6項目とした。分類ごとに探索的因子分析を行い,得られた因子を用いて仮説モデルを構築し,共分散構造分析により検証した。【結果】探索的因子分析の結果,全17因子が得られた。調理経験では6因子,食事観では1因子,自尊感情では4因子,学習意欲では2因子,教科に対する関心では3因子,心身の健康では1因子が抽出された。共分散構造分析を行ったところ,調理経験,食事観,自尊感情,教科に対する関心の4変数によるモデルの適合度は良好な値を示した(GFI=0.967,AGFI=0.939,RMSEA=0.045)。調理経験は食事観,自尊感情に対して有意なパス係数0.87,0.68を示し(p<0.001),食事観,自尊感情はいずれも教科に対する関心に対して有意なパス係数0.25,0.57を示した(p<0.001)。【結論】小学生の調理経験は,食事観,自尊感情に直接影響を及ぼし,間接的に教科に対する関心に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
小谷 清子 古谷 佳世 猿渡 綾子 和田 小依里 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.5-12, 2020-02-01 (Released:2020-03-19)
参考文献数
30

【目的】家庭での共食の推進と地場産物の活用を目指した食育の効果を評価することを目的とした。【方法】研究デザインはクラスター割付比較対照試験とし,保護者の回答により評価した。2011年7月,京都府宮津市の幼稚園2園と保育所2所を,介入群と比較群に1園1所ずつ割り付け,両群の3~5歳児236人の保護者に,食育前後に無記名自記式調査を行った。食育前調査は属性,身体特性,食習慣,アカモクの利用に関する計8項目,食育後調査は身体特性を除く計4項目である。栄養教育として,介入群では,幼児にはアカモクに関する授業とアカモク料理の給食提供を実施し,保護者にはリーフレットを配布した。その後,情報提供として,両群の保護者に,地場産物を取り入れた,主食,主菜,副菜の揃った献立を配布した。解析対象は食育前158人(介入87,比較71)(66.9%),食育後181人(介入104,比較77)(76.7%)であった。【結果】食育前の両群は全ての項目に有意差はなかった。食育後,介入群で夕食の共食摂取頻度(p=0.042)とアカモクの認知度(p=0.007)が有意に上昇し,アカモクへの食意欲が上昇傾向(p=0.055)にあった。比較群では,全ての項目に有意な変化はなかった。【結論】地場産物を活用した食育を保護者の回答により評価したところ,夕食共食摂取頻度が上昇し,地場産物の認知を高める可能性が示唆された。
著者
永井 成美 脇坂 しおり 高木 絢加 山口 光枝 森谷 敏夫
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.17-27, 2012 (Released:2012-02-27)
参考文献数
35
被引用文献数
5 1

【目的】我々はこれまでに,腹壁電極から胃の活動電位(胃電図)を導出・解析する方法により胃運動を測定し,飲水(冷水・温水)が胃運動を一過性に増大させることや,胃運動の強さと食欲には関連がみられたことを報告している。本研究では,刺激味を有する液体が胃運動や食欲感覚へ及ぼす影響を検討することを目的として,香辛料(カレーパウダーとコンソメ)を含むスープ(Spice)と等エネルギー・等Na量で風味がないプラセボスープ(Control)を用いて比較試験を行った。【方法】若年女性12名に異なる2日間の朝9時に,SpiceまたはControlをランダムな順序で負荷した。ベッド上で胃電図,鼓膜温,心拍数をスープ負荷20分前から負荷40分後まで測定し,食欲感覚(空腹感,満腹感,予想食事量,満足感)は,負荷20分前,負荷直後,40分後の3回測定した。胃運動の強さは,胃電図から徐波,正常波,速波の各パワー値を計算し負荷前を基準としたパワー比を評価に用いた。【結果】Spice負荷後の胃運動は,徐波,正常波,速波パワー比ともにControlと比較して高い傾向が示された。Spice負荷後の食欲感覚は,満腹感と満足感でControlと比較して有意に高値を示した。鼓膜温,心拍数は両スープとも負荷後に上昇したが,鼓膜温(増加量)はSpiceでControlよりも有意に高値を示した。【結論】香辛料を含むスープ摂取後には,胃運動が増大する傾向があること,満腹感と満足感が高まること,負荷直後の体温が上昇することが等エネルギー・等ナトリウムのプラセボスープとの比較により示唆された。
著者
塩原 由香 村山 伸子 山本 妙子 石田 裕美 中西 明美 駿藤 晶子 硲野 佐也香 野末 みほ 齋藤 沙織 吉岡 有紀子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.66-77, 2020-04-01 (Released:2020-05-27)
参考文献数
28

【目的】本研究は,小学生の日常の食卓に並び,かつ喫食した料理から1食の食事パタンの出現状況を明らかにする。【方法】対象者は,K県の小学5年生235人のうち,4日間の食事記録がある185人(有効回答78.7%)。調査は,2013年10~11月の平日,休日の各2日の連続する4日間に児童自身が写真法を併用した秤量法または目安量記録法によって実施した。解析対象の食事は,185人の朝・昼・夕の3食×4日間の12食/人のうち,学校給食の2食を除く1,850食から,欠食を除いた1,820食とした。料理は食事記録に記載された料理名,主材料並びに食事の写真を照合し,16の料理区分(主食,主菜,副菜,主食と主菜等を合せた料理等)に分類した。食事パタンは,料理区分を組合せた13の食事パタン(「主食+主菜+副菜」「主食と主菜等を合せた料理+主菜+副菜」等)に分けた。解析方法はχ2 検定を用いた。【結果】13の食事パタン全てが出現した。多い順に「主食」19.9%,「主食+主菜+副菜」17.3%であった。食事区分別では,朝食は平日・休日共に「主食」が30.8%,33.4%と多かった。夕食は「主食+主菜+副菜」が多かったが,4割以下の出現に留まった。【結論】食事パタンは全体で「主食」が多かった。夕食は平日・休日共に「主食+主菜+副菜」が多かったが,出現数は4割に留まり,その他10種以上の食事パタンが出現した。
著者
林 芙美 野口 真希 宇野 薫 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.24-36, 2020-02-01 (Released:2020-03-19)
参考文献数
39
被引用文献数
1 3

【目的】妊婦を対象に,主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度と栄養・食物摂取状況との関連を検討し,さらに食知識,食態度,食行動,周囲のサポート等との関連を把握すること。【方法】2015年1~3月,群馬県T市S病院にて妊婦健診・母親学級に訪れた妊婦(11~20週)に研究参加を呼びかけ,141名から自記式質問紙及び簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)に回答を得た。身長,妊娠前体重,調査時体重はカルテより把握した。最終的に118名を分析対象者とし,主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度別に3群(1日2回以上,1日1回,1日1回未満)間で,年齢,妊娠期区分,妊娠回数,世帯構成,暮らし向きを調整した共分散分析を用いて栄養・食物摂取状況を比較した。関連要因の検討には,多重ロジスティック回帰分析を用いた。【結果】主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度が高い者ほど,いも類,野菜類,肉類の摂取量が多かった(p for trend<0.05)。1日1回未満群に比べて,1日2回以上群は1食の量とバランスの知識があり,調理が好きで大切だと感じており,食事を整える自信があり,欠食がなく,家族との朝食共食がほぼ毎日で,専門的な学習の経験者が多かった。また,1日1回群でも食事を整える自信がある者が多かった。【結論】主食・主菜・副菜がそろう食事の実現には,適切な食知識や食事づくりに対する前向きな姿勢が重要であると示唆された。
著者
渡辺 優奈 善方 裕美 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.89-97, 2016 (Released:2016-09-06)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

【目的】本研究は,1年以上授乳を続けた女性における,妊娠初期から授乳期および卒乳後までの鉄栄養状態の実態を明らかにすることで,妊婦,授乳婦への栄養指導に活用できる資料を得ることを目的とした。【方法】対象者は授乳期間が1年以上であった女性30名とし,妊娠初期(妊娠5~12週),出産時,産後1ヵ月,産後6ヵ月,産後1年,卒乳後(卒乳後3~6ヵ月)の6時点を解析対象とした。妊娠初期から卒乳後までの鉄関連指標(赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値,血清鉄濃度,フェリチン濃度)および鉄摂取量の推移,卒乳後フェリチン濃度に関連する指標の検討を行った。【結果】赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および血清鉄濃度は,妊娠期に低下したが産後1ヵ月で回復し,卒乳後まで変化はみられなかった。妊娠期に低下したフェリチン濃度は,産後1年までに徐々に回復傾向を示したが,卒乳後には再び妊娠初期よりも低値となった。また,妊娠初期から卒乳後まで鉄摂取量に変動はなかった。卒乳後のフェリチン濃度は,月経再開からの期間と負の相関(r=-0.424,p=0.020),妊娠初期のフェリチン濃度とも正の相関(r=0.444,p=0.014)がみられた。【結論】フェリチン濃度は,妊娠期に低下し産後1ヵ月では回復しないが,授乳継続により,その間に漸次増加する傾向がみられた。これより,授乳期に積極的な鉄摂取を促すことで,産後の鉄貯蔵を増加させることが期待できる。
著者
福田 里香 出口 純子 井元 淳 豊永 敏宏 岩本 幸英
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.167-175, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
31

【目的】男性単身世帯者が簡便に実施できる「野菜摂取量増加」と「食事量を腹八分目にする」に重点をおいた介入プログラムを作成・実践し,野菜摂取量や体組成に変化があるか否か検証した。【方法】研究デザインは,単群の前後比較試験とした。2企業で働く単身世帯の健常男性16名(42.4±5.4歳)を対象とした。介入期間は12週間で,初回に前述2項目を実施するための行動目標を対象者が設定し,行動目標実行度を10段階評価で4回聴取した。それぞれの企業の会議室にて,各企業4,5人のグループで30分程度の調理実演を2回実施した。評価項目として食事調査は半定量食事摂取頻度調査を用いてエネルギーおよび食品群別摂取量(1,000 kcalあたりで表示)を算出した。また身体活動量,体組成,内臓脂肪面積および皮下脂肪面積の測定を行なった。各項目について介入前後で比較検討を行なった。【結果】行動目標実行度は,「今よりも野菜の摂取量を増やす」では上昇傾向に,「食事量を腹八分目にする」では下降傾向であった。介入前後でエネルギー摂取量に有意な差は認められなかったが,緑黄色野菜とその他の野菜の摂取量は有意に増加した。また,体脂肪率は減少傾向にあり,骨格筋率,上腕筋肉率,体幹筋肉率が有意に増加した。【結論】対象者が自ら決定した行動目標実行度の聴取や手軽で簡単な調理を実演することで行動変容が促され,野菜摂取量は増加し,体組成に変化がもたらされた。
著者
高橋 啓子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.161-169, 2003-06-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
24
被引用文献数
19 24

The food frequency questionnaire method is more time-, cost- and labor-effective than the 24-h dietary recall and recording method. Such a food frequency questionnaire based on food groups is more convenient than one using a food list, because there are fewer questions.We have developed a food frequency questionnaire (FFQg), which is based on 29 food groups and 10 types of cooking, for estimating the energy and nutrient intakes of an individual subject during the past 1-2 months. This questionnaire was evaluated by comparing with weighted dietary records for 7 continuous days (7-d records) for 66 subjects aged 19-60 years.The correlation coefficients between FFQg and the 7-d records for the energy, protein, fat, carbohydrate and calcium intakes were 0.47, 0.42, 0.39, 0.49 and 0.41, respectively. The intakes of 26 of 31 nutrients were not significantly different by a paired t-test between the two methods (p≥0.05). The ratio of the value obtained by the FFQg method against that by the 7-d record method ranged from 72% (vitamin B12) to 121% (niacin), the average ratio being 104%.The correlation coefficients for the intakes of rice, bread, meat, fish, milk, dairy products, green-yellow vegetables, other vegetables, and fruits were 0.66, 0.76, 0.27, 0.27, 0.72, 0.58, 0.46, 0.53, and 0.64, respectively, between the FFQg and 7-d record methods, and there was significant correlation between the two methods at the p<0.05 level for 22 of the 29 food groups.Apart from those food groups for which “less than once a month or never” was selected by 50% respondents or more, 34% of the respondents could estimate a portion size in the FFQg with an error of less than 25%, indicating that this FFQg is a useful instrument for estimating individual energy and nutrient intakes.
著者
高木 絢加 岸田 菜々 鈴木 麻希 武田 一彦 木村 理恵 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.165-173, 2016 (Released:2017-01-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

【目的】我々は,温スープ摂取後の安堵感の上昇にはスープの嗜好性が,体温上昇にはスープの温度が関連することを若年女性において見出したが,スープ中のナトリウム(Na)の影響の程度は不明であった。本研究の目的は,日常で摂取している容量のNaが嗜好性・安堵感や主観的温度感覚,深部・末梢体温の上昇に及ぼす影響を,スープと食塩のみを除いたスープ(食塩無スープ)を用いた実験により明らかにすることである。【方法】前夜から絶食した若年女性12名に対し,スープ(Na 440 mg)摂取,食塩無スープ(Na 61 mg)摂取,スープ摂取なし(ブランク)の3試験を異なる日の朝9時より無作為な順序で行った。サンプル(65°C,150 ml)は5分間で摂取し,直後に嗜好調査を行った。深部体温(鼓膜温),末梢体温(手先温・足先温),心拍数は,摂取10分前から65分後まで測定し,安堵感と主観的温度感覚は質問紙で6回測定した。【結果】スープでは食塩無スープと比べて嗜好得点が有意に高く,摂取後の足先温(曲線下面積:AUC)も有意に高かった。重回帰分析より,足先温上昇に嗜好得点が関連していることが示された。安堵感,主観的温度感覚,心拍数の各AUCは,両スープともにブランクより高かったがスープ間での差はなかった。【結論】スープに含まれるNaは,食塩としてスープの嗜好性を高め,摂取後の足先温上昇に関与することが示唆された。一方,両スープ摂取後の安堵感,主観的温度感覚,鼓膜温,心拍数は類似した経時変化を示したため,本研究で用いたサンプルのNa濃度の影響は限定的だと考えられる。
著者
黒谷 佳代 中出 麻紀子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.77-88, 2018-08-01 (Released:2018-09-21)
参考文献数
38
被引用文献数
8

【目的】主食・主菜・副菜を組み合わせた食事と健康・栄養状態および食物・栄養素摂取との関連について国内の研究動向を把握した。【方法】2000~2017年に発表された論文を対象に,医学中央雑誌とNII学術情報ナビゲータ(CiNii)を用い「主食AND主菜AND副菜」で検索した。表題,抄録,本文を,本研究の以下の採択基準と照合・精査し,包含基準(日本人対象,分析疫学研究,曝露が主食・主菜・副菜を組み合わせた食事摂取,アウトカムが食物・栄養素摂取状況及び健康・栄養状態,対象集団の特徴明記)と除外基準(介入研究,ケースレポート,ケースシリーズ,エコロジカル研究)を満たす12件を採択した。【結果】採択論文はすべて横断研究で,研究対象者は成人期が最も多かった。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の把握は,質問紙調査法によるものが過半数を占め,それらの質問項目は様々であった。食物・栄養素摂取との関連を検討した研究6件では,いずれも主食・主菜・副菜の揃った食事回数の多い人ほど,エネルギー,たんぱく質,各種ビタミン・ミネラルの摂取量が多く,日本人の食事摂取基準に合致していることが報告されていた。健康・栄養状態との関連を検討した8件の研究は,一貫した結果を示さなかった。【結論】主食・主菜・副菜を組み合わせた食事は必要な栄養素の十分な摂取に関連していることが示唆された。健康指標との関連については,縦断研究を含めたさらなる研究が必要である。
著者
梅垣 敬三
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.67-75, 2019-06-01 (Released:2019-07-03)
参考文献数
35
被引用文献数
1

【目的・方法】健康に有益な影響を与える食品が大きな注目を集めている。それらの食品は様々な用語で呼ばれているが,その中で保健機能食品は健康の保持増進効果が表示できるもので,特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品という3つのカテゴリーに分類される。保健機能食品は消費者が希望する製品を選ぶ際に適切な情報を提供する上で大きな役割を果たしている。しかし,食品表示システムは複雑で,消費者や医療関係者にも十分に理解されていない。本稿では,保健機能食品の安全性と有効性の実態,その適切な使用法に関する概要を述べる。【結果】保健機能食品を安全かつ効果的に使用するためには,4つの基本的なことを理解する必要がある。それらは,薬との違い,有効性と安全性のエビデンス,表示されている有効性の限界,そして安全かつ上手に使用する方法である。保健機能食品の不適切な利用は,健康に害を及ぼすので,オンラインデータベースを介したエビデンスに基づく情報の提供,その情報の消費者や医療関係者の間の共有が必要である。また,保健機能食品との関連が疑われる有害事象を市販後にできるだけ収集して評価することが重要である。【結論】保健機能食品は生活習慣の重要性の認識や改善の「気づき」に利用することが適切である。それが実践できれば保健機能食品は多くの人に役立ち,増大する医療費の削減にも貢献することが可能である。
著者
木林 悦子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.29-38, 2019-02-01 (Released:2019-03-05)
参考文献数
29

【目的】中学2年生の低いQOL(Quality of life)と食・生活習慣との関係を明らかにすること。【方法】兵庫県A市の公立中学校(2校)に在籍する2年生325名を対象に断面調査をした。QOLの測定には,中学生用のQOL尺度(Kiddo-KINDLR)を用いた。食・生活習慣は,12項目の質問紙及び半定量食物摂取頻度調査票を用いた。対象者全員のQOL総得点の中央値で低QOL群と高QOL群の2群に分け,両群の食・生活習慣を男女別に比較した。また,QOLを目的変数,食・生活習慣を説明変数,性別を調整変数として,ロジスティック回帰分析を行った。【結果】低QOL群は高QOL群に比べ,男女ともに食・生活習慣12項目の合計数と,男子の食事摂取状況の評価点が低かった。また,低QOL群において,食・生活習慣の項目ごとの行動を毎日行っている者が「はい」に対し,「いいえ」と答えた者のオッズ比は,「朝,気持ちよく起きられる」,「朝,7時までに起きる」,「朝食を毎日食べる」,「夕食を家族で食べる」,「食事は1日3食 食べる」,「食事の時間を楽しく過ごしている」,「夜,12時までに寝る」において高かった。【結論】中学2年生において,寝起きが悪い,7時以降の起床,朝食欠食,夕食の孤食・欠食,食事が楽しくない,夜12時以降の就寝の他に,男子については食事摂取状況の低評価が低いQOLと関係することが示唆された。
著者
菊池 節子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.251-260, 1985

福島県を会津, 県北, 県南, 浜通りの4地区に分け, それぞれの中心都市の小・中学生を対象に豆腐摂取の実態を把握する目的で調査を行った。内容は, 小・中学生には豆腐の嗜好について, その家庭の調理担当者には豆腐料理, 喫食の理由ならびに頻度および購入方法などについて調査を行った。結果は次のとおりである。<br>1) 豆腐の嗜好は, 好きが, 小学生66.9%, 中学生38.0%, ふつうが, 小学生27.8%, 中学生53.4%, 嫌いが, 小学生5.3%, 中学生8.6%であり, 小学生に好きと答えた人が多く, 小・中学生間に危険率1%で有意差がみられた。小・中学生の好きな豆腐料理は, 味噌汁, 麻婆豆腐, 冷奴, 湯豆腐などである。<br>2) 調理担当者の作る豆腐料理は, 味噌汁, 湯豆腐, 冷奴, 麻婆豆腐で約85%を占め, 炒り豆腐, 煮物, 白和え, 揚げ出し豆腐は, それぞれ6%以下であった。<br>3) 豆腐喫食の理由は, 栄養があるが約50%を占め, 豆腐は栄養的にすぐれた食品であると認識されていることがわかった。次いでおいしい, 好き, 調理が簡単, 経済的などの理由があげられた。<br>4) 豆腐料理の喫食頻度は, 小学生の家庭では, 週2回27.6%, 週3回25.6%, 中学生の家庭では, 週2回29.9%, 週3回27.1%で, 平均すると週2.9回であった。<br>5) 豆腐の種類別嗜好は, 地区平均では, 木綿豆腐59.6%, 絹ごし豆腐39.2%であった。しかし会津地区では, 木綿豆腐26.6%, 絹ごし豆腐68.8%で, 他地区との間に危険率1%で有意差がみられた。その他県北と県南, 県南と浜通り間にも危険率1%で有意差がみられた。<br>6) 豆腐の購入先はいずれの地区でもスーパーマーケットからの購入がほとんどで, 豆腐屋からの購入は少ない。また購入店の指定については, いずれの地区も指定していない家庭が多い。<br>7) 現在の豆腐に対する要望は, 固さ, 大きさ, 形, 包装について, 今のままでよいが約80%であったが, 固さにおいてもっと固く, 形において料理別にほしいという要望があった。