著者
石見 佳子 笠岡(坪山) 宜代
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.39-46, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
22
被引用文献数
2

【目的】栄養表示は食品を選択する上で重要な情報であり,食による健康の保持・増進の拠り所となる情報である。栄養参照量は栄養表示をする際の基準となる値であるが,その策定方法は国によって異なる。本報告では,食のグローバル化を見据え,コーデックス委員会及び各国の栄養参照量を調査し,日本の値と比較することを目的とした。【方法】コーデックス,米国,カナダ,EU,オーストラリア・ニュージーランド,中国,韓国,日本の栄養参照量またはこれに相当する基準値について,各国の栄養表示を管轄する政府機関のウエブサイト及び担当官への聞き取り調査により調査した。【結果】コーデックス及び各国とも,ビタミン・ミネラルの栄養参照量については,食事摂取基準の推奨量に当たる値を基準に策定していた。ナトリウムについてはWHOの推奨値(2,000 mg)を採用している国が多かったが,カリウムについては必要量または非感染性疾患のリスク低減を目的とした量の両方が策定されていた。日本においては,両者とも生活習慣病の予防を目的とした目標量を採用している。各国の栄養参照量は,基本的にはコーデックス委員会の策定基準を採用しているが,細部においては独自の算定方法を採用していた。【結論】表示を目的とした栄養参照量の設定には,国際的な考え方との整合性のみならず,各国の栄養素摂取状況などの公衆栄養上の特徴を考慮することも重要であると考えられた。
著者
Kyoko Morimoto Kimiko Miyahara
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.Supplement, pp.S23-S37, 2018-07-01 (Released:2018-08-28)
参考文献数
57
被引用文献数
3

Objective: This study aimed to ascertain the philosophy and utilization of the current dietary reference intakes of school lunch programs in terms of nutritional management and indicate the role thereof by examining the changes in nutritional management implemented on the basis of the School Lunch Act enacted in 1954.Methods: We summarized the role of nutritional management of school lunches by carefully examining the information required for nutritional management through an examination of the history, laws, results of surveys serving as indicators of nutritional management reforms, revisions in nutritional management of school lunches and the circumstances surrounding those revisions, survey reference materials on current nutritional management of school lunches, and a search of the literature, including previous researches regarding changes in nutritional management of school lunches in Japan from World War II to the present.Results: The School Lunch Act was enacted following the World War II for the purpose of indicating basic nutritional standards and standard dietary composition tables relating to nutritional management, and nutrition and meal plans have since been implemented on the basis thereof. The menu contents of school lunches have been periodically revised based on survey results accompanied by changes in Japanese eating habits, and menu plans have been devised in consideration of incorporating a diverse range of foods and regional characteristics, with school lunches incorporating more than one-third of those nutrients unlikely to be consumed in the home each day.Conclusion: The nutritional management of school lunches in Japan following the World War II has been revised in response to the changing times based on the School Lunch Act. The dietary pattern of school lunches in Japan established as full meal consisting of staple food, milk and an accompanying dish. Nutritional Standards were set to higher standard values than one-third of the daily energy requirement and one-third or more of the daily nutrient intake based on the actual circumstances surrounding the schoolchildren. Menu controls were developed by suitably combining a diverse range of foods while considering such factors as regional characteristics based on the Nutritional Standard values and contribute to the daily dietary intake status of schoolchildren.
著者
山田 沙奈恵 沼尻 幸彦 和田 政裕 山王丸 靖子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.109-120, 2018-10-01 (Released:2018-11-06)
参考文献数
32
被引用文献数
2

【目的】我が国の健康食品について,医療従事者を含む消費者が持つ知識・認識等について調査し,表示認識およびニーズの実態を明らかにすることを目的とした。【方法】2015年1月~8月に一般消費者,薬剤師,管理栄養士,助産師を対象(合計有効回答数:1,502名)に,健康食品に対するイメージ,知識・認識等に関する無記名自記式質問紙調査を実施し,集団間の違いについて包括検定および対比較(χ2 検定,steel-dwass法)により検討した。本調査における健康食品とは,「健康の維持向上を目的としたすべての食品」と定義した。【結果】健康食品の知識は,一般消費者よりも医療従事者の正答率が高い傾向を示し,一般消費者と管理栄養士との間では有意な差が認められた。一般消費者と比較して医療従事者のポジティブイメージは有意に低い項目が多く,ネガティブイメージは有意に高い項目が多かった。どの集団でも,健康食品の認可機関としては「国」を希望する者が最も多く,機能性表示としてふさわしい段階は「健康増進に効果があること」,「病気のリスクを低減すること」の順となった。安全性に関するニーズは助産師が高い傾向を示した。【結論】一般消費者と医療従事者及び,医療従事者間にも健康食品に対するイメージ,知識・認識等には差が見られ,医療従事者であっても知識は十分ではなかった。表示の認可機関と機能性表示に対する期待の程度は,医療従事者の専門性により異なる傾向を示した。
著者
赤松 利恵 衛藤 久美 稲山 貴代 神戸 美恵子 岸田 恵津 中西 明美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.89-97, 2018-08-01 (Released:2018-09-21)
参考文献数
11

【目的】学校における食育の計画並びに評価の実施状況と関連する知識を把握し,管理栄養士免許の有無と免許取得時期による比較検討を行うこと。【方法】2016年5~12月,栄養教諭・学校栄養職員(1,406人)を対象に,食育計画と評価と関連する知識について,横断的調査を行った。記述統計後,管理栄養士免許の有無,および旧カリキュラムと新カリキュラムでの免許取得で,各項目の回答の違いをχ2 検定およびMann–WhitneyのU検定で検討した。さらに,属性等を調整し,各項目を独立変数,管理栄養士免許または免許取得時期を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】904人(回収率64.3%)が回答した。食育計画の実施状況では,約半数が実態把握の実施や行動目標の設定を行っている一方で(各々45.5%,49.1%),7割以上の者が評価指標や数値目標の設定を計画時に行っていないと回答した(各々70.9%,73.3%)。また,数値を用いた目に見える形での子どもの変化を評価している者は14.1%であった。群間の比較では,管理栄養士免許所有者および新カリキュラムでの取得者で,知識はある者が多かったが,実施状況に違いはなかった。ロジスティック回帰分析でも同様の結果であった。【結論】学校における食育の計画と評価の実施状況を調査した結果,目に見える形での子どもの変化を評価している者は約1割であった。また,新カリキュラムでの管理栄養士免許取得者の知識は高かったが,実践している者は少なかった。
著者
坂手 誠治 柳沢 香絵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.13-19, 2016 (Released:2016-04-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】水中運動実施者の運動時の発汗および水分摂取の実態を明らかにするとともに,より安全な水中運動実施のための基礎資料を得ることを目的とした。【方法】調査は,公共の室内プール2か所で実施した。水中運動前後に体重,鼓膜温,口渇感,飲水量の測定を行った。発汗量は{=(運動前体重+飲水量)-運動後体重-尿量},発汗率は{=(発汗量/運動前体重)×100}の式より,それぞれ算出した。尿量は排尿前後の体重差より算出した。実施種目間での各測定項目の比較,実施種目別等にみた運動中の水分摂取状況,各測定項目間の関係について検討した。検討対象は男性34名,女性22名の計56名(60.6±16.6歳)とした。【結果】発汗量は 155.0 g(60.0・365.0),発汗率は0.3%(0.1・0.6)であった。水泳(p<0.01),水泳および水中歩行実施者(p<0.05)の飲水量はアクアビクス実施者に比較し有意に少なかった。水分摂取率(=飲水量/発汗量×100)も同様の結果であった。運動中に全く水分摂取を行わない者は全体の76.8%であり,水泳実施者で多くみられた。運動前の口渇感と飲水量との間に有意な正の相関関係(rs=0.392,p=0.003)がみられた。【まとめ】公共の室内プールでの運動実施者では,運動中に水分摂取を行う者が少なく,特に水泳実施者で多かった。運動前口渇感は運動時の発汗による脱水に影響する可能性が示唆された。健康増進を目的とした水中運動時においても,脱水予防のための適切な水分摂取の必要性が示された。
著者
安井 有香 東山 幸恵 永井 亜矢子 久保田 優
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.213-218, 2012 (Released:2012-06-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

【目的】入院患者の食物アレルギー対応食の実態を調査し,その課題を検討する。【方法】食物アレルギー対応食に関する調査用紙を作成し,2010年7~9月に近畿圏の60総合病院に郵送した。【結果】回答は34病院から得られた(回収率57%)。患者自身の申告に基づいたアレルゲンは,全体(小児+成人)では1位魚類(67%),2位甲殻類(33%),3位そば(22%)であり,小児では1位鶏卵(96%),2位乳製品(82%),3位小麦(24%)であった。病院毎に作成しているアレルギー確認用紙が送付された9病院を比較したところ,小児のアレルゲンに頻度の高い鶏卵・乳製品・小麦は9病院全ての確認項目に含まれていた。一方,成人に頻度の高いアレルゲンである甲殻類・そばは1病院(11%),魚類は2病院(22%),果物類は7病院(89%)で確認項目に含まれていなかった。アレルギー患者への管理栄養士の訪問は90%以上の病院で実施されていたが,他職種との月1回以上の話し合いは4病院(13%)でしか行われていなかった。ヒヤリ・ハットの報告は,誤配(59%)や調理過程でのアレルゲン混入(41%)が多かったが,その対策の面からは誤配に比べ調理過程への混入の対策が十分でないことが窺われた。【結論】食物アレルギー対応食に関して,確認用紙は小児だけでなく成人にも配慮した確認項目を作成する,他職種との話し合いの機会を増やす,調理過程でのアレルゲン混入への対策を進める,等の改善対策が必要と思われる。
著者
小島 唯 赤松 利恵
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.213-220, 2015
被引用文献数
1

【目的】学校給食における赤黄緑の3色食品群の群別の食品の出現割合を調査し,3色食品群に掲載する食品の内容を検討すること。<br>【方法】2012年5~7月,東京都の公立小学校19校を対象に,2011年度の学校給食献立予定表を各校12日分ずつ収集した。主食と季節を分け,4区分の季節ごとに,献立の主食が米飯の日の献立,主食がパンの日の献立,主食が麺の日の献立各1日分を,各校の学校栄養職員・栄養教諭の任意で選択させた。献立表より,すべての食品を抽出し,文部科学省の3色食品群に沿って食品を3色または未分類に分類した。各群の食品の出現割合(%)を主食別に算出した(食品の出現回数/解析した主食別の献立の日数×100)。<br>【結果】計16校(回収率84.2%)から主食が米飯の日,パンの日,麺の日各64日分,計192日分の献立を回収した。対象の食品は,210食品,延べ4,813食品となった。赤群の出現割合は,いずれの主食でも牛乳(63回,98.4%)が最も高かった。米飯の日では,次いで,みそ,肉類,大豆製品,魚,わかめ等が上位であり,パンの日では,上位10品目の中に,肉類,乳製品が多く含まれた。麺の日では,肉類,みそ,わかめ,チーズ等が上位に含まれた。<br>【結論】赤黄緑の各群において,出現割合の高い食品が示された。また,出現割合上位の食品の中には,既存の食品群の教材に含まれない食品もみられた。
著者
寺本 民生
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.3-13, 2013 (Released:2013-03-15)
参考文献数
78
被引用文献数
4 5

【目的】わが国は,戦後急速な経済復興と共に,生活習慣の欧米化が進み,それに伴い肥満,脂質異常症,糖尿病などの心血管疾患の危険因子が増加している。わが国では,血圧コントロールと共に,脳血管疾患による死亡率は減少し,最近はほぼ心血管疾患と肩を並べるところまで減少した。これは食塩摂取制限により,高血圧の頻度が減少し,それゆえに脳出血が劇的に減少したことによる。このような動脈硬化性疾患の危険因子として,高血圧に変わって問題になったのがコレステロールや肥満・糖尿病の問題である。わが国では,生活習慣の欧米化に伴い,コレステロールレベルは増加の一途をたどり,ほぼアメリカ並みになった。重要なことは,心血管イベントの発症には数十年を要するということであり,それゆえ,わが国のガイドラインは心血管イベントの増加を予防するためのガイドラインと位置付ける事ができる。心血管イベント予防のためには,血圧,糖尿病,喫煙などの包括的管理が重要であるが,脂質異常症は冠動脈疾患予防のためには最も重要なことである。わが国の食形態は,動脈硬化予防のためには適していると考え,わが国の疫学研究をもとに動脈硬化予防のための食事について検討した,その結果,動物性脂肪摂取を抑え,魚類などのn3系多価不飽和脂肪酸摂取を多くし,大豆,果物,野菜などを中心とした伝統的日本食が動脈硬化予防のためには適しており,推奨されるものと考えられた。
著者
伊藤 至乃 天野 幸子 殿塚 婦美子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.39-52, 1993 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
7 3

母子を組 (429) にして児童及び母親の食事に対する意識や態度を調査した結果, 次のことが明らかになった。1) 児童の家の食事と給食の満足, 不満足の主な要因は, 食事の内容と食卓を囲む人間関係や食事をつくる人とのコミュニケーションの問題であることが明らかにされた。家族や友だちと一緒に食べることや食事づくりの手伝いは, 満足度を高める要因である。ただし給食当番は, 家庭での手伝いほど満足度に影響を与えていなかった。2) 食事に満足している母親は, 家族と密なコミュニケーションがあり, 食事づくりにかける時間が長い。3) 子どもの意識や態度を通しての母親の意識や態度の観察では, 次の3点に違いがみられた。(1) 家の食事に満足している子どもの母親は, 献立に子どもの嫌いな物を考える時に工夫をし, 食事づくりに時間をかけていた。(2) 手伝いをよくする子どもの母親は, 手伝いの期待が高かった。(3) 食べ物の好き嫌いが少ない子どもの母親は, 献立に子どもの嫌いな物を考える時に, 好き嫌いは考えないと工夫しているとに分かれた。好き嫌いを考えない母親は, 家族とのコミュニケーションが親密であり, 互いの期待に応えようとする態度がうかがわれた。(4) 母親の意識・態度を通しての子どもの意識・態度の観察では, 子どもの嫌いな物に対する態度にのみ違いがみられた。子どもが嫌いな物を食べ残した時に何もいわない母親の子どもは, 家の食事に不満足で好き嫌いがあり, 食事も残す。このような母親の子どもに対する消極的な態度とコミュニケーション不足が, 子どもの食事に対する意識や態度に反映されていた。
著者
岸田 典子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.27-36, 1980

こんにゃくの嗜好及び消費消況について, 世代及び居住地域の異なる女性を対象として調査し, つぎのような結果が得られた。<br>1) 板・糸こんにゃくに対する嗜好では, どの対象者でもともに少し好んでおり, 世代別間では有意差が認められ, 大学生に好まれていた。嗜好について, 好き, 普通, 嫌いのものの割合をみると, 板こんにゃくでは大学生を除き, 普通と答えたものがもっとも多く, 好きと答えたものがそれについでいた。糸こんにゃくでは好きと答えたものが多かったのは, 中学・高校生, 大学生, 広島市周辺及び仙台市における対象者であった。嫌いと答えたものは, 板・糸こんにゃくともに非常に少なかった。<br>2) 消費状況について, 1人1回当たりの消費量, 現在の消費頻度, 将来の消費希望頻度, 1人1日当たりの消費量及び充足率をみると, いずれの項目もどの対象者でも板こんにゃくの方が糸こんにゃくより多かった。そして, 各項目の対象者の相違による違いは, 概して, 世代別間において有意差が認められた。<br>3) 食べる理由の「有」ものの割合は, 対象者により異なり, 28.4~80.0%であった。それは, 世代別間で有意差が認められ, 高齢者ほど「有」のものが多かった。その内容をみると, 各対象者とも, 砂おろし, おいしいが上位をしめ, 栄養面と嗜好面の両面がみられた。<br>4) 6種の新しいこんにゃく料理について, 食用経験, 食用意欲及び作製意欲が「有」のものの割合をみると, 各対象者とも酢の物が一番多かった。そして, 食用意欲及び作製意欲は, 世代別及び地域別間で有意差が認められ, 若年層, 島しょ部に低かった。<br>5) 改良すべきと答えたものは, どの対象者においても, におい, 色, 味に多かった。そして, 色, 形, におい, かたさは世代別間で, 味は世代別及び地区別間でそれぞれ有意差が認められ, 若年層, 郡部に多かった。<br>6) 嗜好と消費状況との関係をみると, 好きなものは嫌いなものに比べ, 現在の消費頻度よりも将来の消費希望頻度の方が多く, こんにゃくを食べる理由の「有」もの多く, 理由の内容としては, 栄養面と答えたものが少なかった。
著者
後藤 桂葉 服部 イク 大野 知子 中野 典子 石川 昌子 熊沢 昭子 磯部 しづ子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.223-237, 1982

1940年以後日本において行われた栄養調査のうち, 高校生, 短大生, 大学生を対象とした栄養調査について経年的にその特徴を明らかにすることを試みた。<br>1) 文献数の最も少ないものは高校生を対象としたもので, 多かったのは女子短大生の調査であった。<br>2) 女子大生および短大生調査では, 家政科系でしかも普通の学生生活を営む学生を対象とした報告が多い。栄養素摂取量は1965年以後VAとCaを除き, バラツキの幅が少なくなる傾向がみられる。しかし, VAは1970年以後, 中部地区の調査において低値の報告がみられるところから, 今後の動向が注目される。<br>3) 女子大生調査の傾向は, 短大生と類似していた。<br>4) 食品群別摂取量の記載は, 1965年以後に多くみられた。このうち, 多くの報告に緑黄色野菜の少ないことを示していた。<br>5) 男子大学生は寮生, 寮食の調査が多くみられた。栄養素量では, たん白質摂取量は1958年以後77g程度に集中していた。<br>6) 各文献の報告者が指摘する問題点としてあげられている栄養素は, いずれのライフステージにおいてもVAとCa, 次いで, VB<sub>1</sub>, VB<sub>2</sub>など微量栄養素であった。
著者
石川 みどり 横山 徹爾 村山 伸子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.290-297, 2013
被引用文献数
9

【目的】地理的要因における食物入手可能性(自宅から店までの距離,店舗の種類)と食物摂取状況との関連について先行研究から知見をえることを目的とした。<br>【方法】データベースPubMedを用い,検索式は("food" [MeSH] OR "nutrient")AND("environment" [MeSH] OR "availability")AND("diet" [MeSH] OR "intake")とした。検索された論文238編のうち,ヒト以外を対象としたもの,開発途上国の問題を扱ったもの,栄養生理学研究等の目的とは異なるものを除外し,残りの論文48編の全文を精読した結果,12編を採用した。<br>【結果】地理的要因の距離について,7編では,徒歩で自宅から店まで行くことができる半径 800 m(0.5マイル)を基準としていた。食物摂取状況との関連がみられた店舗の種類には,スーパーマーケット(5編),ファストフード店(5編),フードアウトレット店(2編),コンビニエンスストア(2編)等があった。そのうち,スーパーマーケットは野菜・果物摂取量との正の関連,ファストフード店,コンビニエンスストアはアイスクリーム,塩味のスナック,肉類,菓子類,砂糖入り飲料摂取量との正の関連,野菜・果物,低脂肪食品摂取量との負の関連を報告していた。<br>【結論】地理的要因における食物入手可能性と食物摂取状況との関連があることが示唆された。
著者
森 博康 丹羽 正人
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.12-20, 2014

【目的】本研究の目的は,適切な栄養管理下におけるコンバインドエクササイズ直後のホエイたんぱく質の摂取が,高齢者の身体組成と身体機能に与える影響について検証することである。<br>【方法】対象者は地域在住の高齢者24名(男性6名と女性18名,66.2±4.8歳)とし,ホエイたんぱく質飲料を摂取する群(PRO群:12名)とカロリーゼロのプラセボ飲料を摂取する群(PLA群:12名)の2群に無作為に分けた。運動介入は,週2回9週間に渡るレジスタンス運動と有酸素性運動を組み合わせたコンバインドエクササイズとした。栄養介入方法は,PRO群はコンバインドエクササイズ直後にホエイたんぱく質飲料を,PLA群はコンバインドエクササイズ直後にプラセボ飲料を摂取させた。さらに本研究では,介入中の対象者の栄養状態を把握し,栄養管理を適切に行った。また,介入前後に身体組成や膝伸展筋力,Timed Up & Go(TUG),5 m最大歩行速度などの身体機能を測定した。<br>【結果】PRO群は介入後の除脂肪量(LBM)と膝伸展筋力,TUG,5 m 最大歩行速度の値が,介入前と比べ有意に高い値であった(<i>p</i><0.01)。また,PRO群のΔLBMとΔ膝伸展筋力,ΔTUG,Δ5 m最大歩行速度は,PLA群と比べ有意に高い値であった(Δ膝伸展筋力とΔTUG:<i>p</i><0.05,ΔLBMとΔ5 m最大歩行速度:<i>p</i><0.01)。<br>【結論】本研究の結果より,適切な栄養管理の実施とコンバインドエクササイズ直後のホエイたんぱく質の摂取は,高齢者の骨格筋量や身体機能を改善させる可能性が示唆された。

2 0 0 0 OA スポーツ栄養

著者
樋口 満
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-12, 1997-02-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
21
被引用文献数
1
著者
岸田 典子 上村 芳枝
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.211-218, 1992
被引用文献数
1 2

近年, 日本家庭に伝承されている料理 (以下, 伝承料理とする) が健康面から見直され, その摂食回数も増加してきた。本研究は, 伝承料理 (さしみ・焼き魚・煮魚・高野豆腐の含め煮・煮豆・白和え・ごま和え・酢の物・煮しめ) の世代による意識の違いをアンケート調査により, 女子学生468人, 母親426人を対象として, 比較検討したものである。<br>1) 伝承料理に関する情報を母親から得る割合は, 学生約70%, 母親60%で, 世代間で有意差が認められ, 学生のほうが高かった。学校, テレビ, 本などから得る割合は, 両者とも約15%で, 同一であった。<br>2) 摂食回数の得点は, 酢の物・煮しめ・ごま和え・煮魚について世代間で有意差が認められ, 学生のほうが摂食回数は少なかった。嗜好の得点でみると, さしみを除いた8種の伝承料理は, 学生のほうには好まれていなかった。伝承料理をつくる際のイメージに関しては, 白和えを除く8種の料理について, 母親に比べて学生のほうが面倒であるととらえていた。<br>3) 伝承料理の手づくり割合では, 煮しめ・高野豆腐の含め煮・さしみについて世代間で有意差が認められ, 学生のほうが低かった。今後消費を増やしたい意向の強い料理は, 学生では焼き魚・煮しめ・煮魚, 母親では高野豆腐の含め煮・白和えであった。
著者
宇和川 小百合 斎藤 禮子 苫米地 孝之助
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.227-235, 1992
被引用文献数
2

全国の100歳以上の長寿者220人を対象にした食物摂取状況調査 (1日分) から, 栄養素等摂取状況, 食品群別摂取量及び摂取食品数を調査した結果は次のとおりであった。<br>1) 栄養素等摂取量を栄養所要量 (試算) と比較すると, 男性はビタミンB<sub>2</sub>, ビタミンCが, 女性はビタミンB<sub>1</sub>, ビタミンB<sub>2</sub>, ビタミンCが満たされていた。しかし, 男性, 女性ともに, 鉄及びビタミンAは低く, 特に鉄は60%に達していなかった。<br>2) 食品群別摂取量は比較すべき数値がないが, 国民栄養調査の結果などを勘案すると, 海草類を除き, いずれも低く, 特に肉類, 油脂類の摂取量が少ない傾向がうかがわれた。<br>3) 日常生活状態別では, 栄養素等摂取量は身体レベルと対応していた。すなわち, エネルギー, たん白質等の多くの栄養素において,"ほとんど寝たきり"群に比し,"寝たり起きたり, または起きてるが動かない"群及び"少し動く, または活発に動く"群のほうが摂取量が多く, 有意の差がみられた。<br>4) 生活場所の影響では, 栄養素等摂取量はすべての栄養素が, 食品群別摂取量は砂糖・菓子類と卵類を除いたほとんどすべての食品が, 入院または入所者のほうに多かった。<br>5) 平均摂取食品数は, 1日16.4±6.6食品で, 食生活指針の1日30食品に比べるとかなり少ない。また, 日常生活状態別でみると"ほとんど寝たきり"群は, 他の群に比べ, 間食を除いて摂取食品数はいずれも有意に少ない結果を得た。
著者
森田 みすゑ
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.204-213, 1973-09-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
16

The dietary attitude which is so good as to maintain life and active energy at old age needs desirable management of nutrition as well as the proper management of life.The dietary habits of long existing from the past have close relations with man's span of life, and under the influence of both natural and social environments, they have deep relations with man's life and regional environments.The subjects of this survey were long lived persons, 52 men and women, over seventy years old of Oki island, Shimane profecture.The results of their nutrient intake are summarized as follows.The relations between dietary habits and longevity, and the background produced remarkable results were discussed.1) The caloric intake was considerably different among individuals. The protein intake of the men reached the target intake. The energy value of both sex and the protein intake of the women nearly reached the target intake.2) It was made clear that all subjects consumed animal protein by taking fresh-mild taste fishery products. Therefore, the tendency to ward the consumption of animal protein and fat can be said to be desirable.3) On the contrary, the intake of micronutrient elements was fairly low on the whole. A considerable intake is needed.4) There was a marked tendency to eat fish shellfish, seaweeds, vegetables, and pulses, together with a large quantity of rice.5) Consequently, it was revealed that longevity has close relations with both natural and social environments.