著者
山内 有信 稲井 玲子 東元 稔
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.25-29, 2008-02-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4

Guava (Psidium guajava L.) has traditionally been used as a remedy for diabetes mellitus among people in the tropical and subtropical regions. To investigate the preventive effect of guava leaf tea (GLT) on the increase in blood sugar level, several studies were performed both in vitro and in vivo. An in vitro study showed some inhibitory effects of GLT on the activity of α-amylase, a group of starch-hydrolyzing enzymes. It was found that GLT markedly restrained the gastrointestinal transport and absorption of glucose in the small intestine after an oral administration of 1g of glucose to rats. GLT also suppressed the increase in blood sugar levels induced by the glucose administration. These results suggest that the inhibitory effect of GLT on the increase in blood sugar levels may be attributable to its inhibition of saccharolytic enzyme activity, as well as of the gastrointestinal transport and absorption of glucose in the small intestine.
著者
今枝 奈保美 徳留 裕子 藤原 奈佳子 永谷 照男 構 実千代 恒川 鈴恵 佐藤 信子 時実 正美 小出 弥生 宮井 好美 牧 信三 徳留 信寛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.67-76, 2000-04-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
26
被引用文献数
2 11

本報では, 107人の栄養士を対象に, 四季, 各季連続7日間の秤量法食事調査において, 記録原票の内容確認面接, 入力過誤修正の方法, 食品成分表の取り扱い, 食品のコーディング, 重量換算, 主要料理の標準レシピなどを検討したので報告した。延べ2,925日の食事記録は, 149,187行の食品コード・重量データとしてコーディングされ, 総出現食品数は1,160食品であった。成分表未収載食品や調理済み食品などのコード化が困難な事例は414食品あり, 今後の食事調査で参照するために分類整理して処理した。入力過誤の修正は, 目視により原票を照合した後, 各食品コードごとに生じやすい過誤の例を,“入力過誤検索用食品一覧データベース”にして, 食品コード・重量データを検索し修正した。その結果, 春期・夏期のデータでは, 73,266行中1,112行の過誤データが見つかり, 特に食品コードの修正に効果があった。大量の入力データの過誤修正にはコンピュータ検索が不可欠であった。食品コーディングや重量換算の精度を保つためには, 記録を確認する面接や詳細なマニュアルが必要であった。フォローアップ成分表未収載食品の取り扱い方法によって, 脂肪酸, 食物繊維摂取量を過小評価, あるいは過大評価する可能性があった。秤量法食事記録調査における入力過誤の修正と調査方法の標準化が必要であることが示唆された。
著者
土元 喜美子 高橋 貴美子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5-6, pp.183-194, 1966 (Released:2010-10-29)
参考文献数
6
被引用文献数
1

In order to standardize the cookery method and to develope rice boiling experiment, the authors surveyed the cooking practice in 113 mass feeding kitchens and studied cooking better method of “boiled rice” through experiments using square type rice boiler.The authors pointed out two factors for quality “boiled rice”: The hours from the beginning of cooking to the point raising the temperature of rice at 100°C and keeping this temperature of rice over 30 minutes.
著者
大内 実結 赤松 利恵 新保 みさ 小島 唯
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.202-209, 2023-10-01 (Released:2023-11-23)
参考文献数
38

【目的】飲酒に関する教育の一助となることを目指し,飲酒状況と機能的,伝達的,批判的の3つのヘルスリテラシー(以下,HL)との関連を示すことを目的とした。【方法】2020年11月実施のインターネット調査のデータを用い,20~64歳の男性3,010人,女性2,932人を対象とした。HLは,機能的,伝達的,批判的の3つのレベルごとに用いた。飲酒状況は,「非飲酒・生活習慣病のリスクを高める飲酒量(以下,高リスク量)未満」「高リスク量」に分類した。HL得点は,男女それぞれの中央値で高群と低群に分類した。HLを独立変数,飲酒状況を従属変数として,ロジスティック回帰分析により各HL高群における「高リスク量」のオッズ比を男女別に算出した。【結果】属性を調整した結果,女性では飲酒状況とレベルごとのHLに関連はみられなかったものの,HL総得点高群に高リスク量の者が少なかった (オッズ比 [95%信頼区間]:0.69 [0.54~0.88])。男性において,属性を調整しない結果では,高リスク量の者が機能的HL高群に少なく,批判的HL高群に多かったが,属性の調整により飲酒状況と各HLに関連はみられなくなった。【結論】本研究では飲酒状況とレベルごとのHLの関連を検討したが,有意な関連はみられなかった。女性では,生活習慣病のリスクを高める飲酒量の防止に向け,総合的なHLを高める重要性が示唆された。
著者
髙泉 佳苗
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.210-218, 2023-10-01 (Released:2023-11-23)
参考文献数
27

【目的】食生活リテラシーと食環境の認知(食品へのアクセス,情報へのアクセス)および食行動との因果関係を明らかにすることを目的とした。【方法】社会調査会社に登録している30~59歳のモニターから9,030人を層化抽出し,web調査による縦断研究を実施した。ベースライン調査は2018年10月に実施し,追跡調査は2019年10月に実施した。ベースライン調査と追跡調査を回答した解析対象者は2,331人(男性1,200人,女性1,131人)であった。食生活リテラシー得点,食品へのアクセス得点,情報へのアクセス得点,食行動得点の変化量(2019年-2018年)を算出し,因果モデルを作成してパス解析を行った。【結果】男性の食生活リテラシー得点は2018年から2019年で有意に減少していた(p=0.027)。食生活リテラシー得点の変化量は,食品へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.01)と情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.14,p<0.001),食行動得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.05)に影響していた。女性の食生活リテラシー得点は有意な経時変化を認めず(p=0.47),食生活リテラシー得点の変化量は,情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.10,p<0.01)と食行動得点の変化量(パス係数=0.13,p<0.001)に影響していた。【結論】食生活リテラシー得点の向上が食環境の認知得点と食行動得点の向上に及ぼす影響度は強くないが,食生活リテラシーは食環境の認知および食行動の促進要因の一つであることが示された。
著者
野末 みほ 猿倉 薫子 由田 克士
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.36-41, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

エネルギー及び栄養素摂取量を把握するために食事調査が用いられる。ほとんどの思い出し調査の方法では,食事の記録の際,目安量が用いられる。そのため,目安量から実際に摂取した重量を推定する必要がある。しかしながら,各書籍や栄養計算ソフトに収載されている食品の目安量は様々であり,特に野菜,果物,魚,肉などの生鮮食品の重量についての研究は少ない。従って,本研究では,青果物の規格の面から,階級やその重量等が地域によって,どの程度異なるのかを明らかにすることを目的とした。さらに,食事調査において,青果物を目安量から重量に換算する際の問題点や課題等について検討した。青果物により階級の数及び名称は複数にわたり,なすでは13の階級,いちごでは28の階級があった。さらに,各階級における重量等にも幅があり,いちごのMにおいては,下限の最小値が7g,最大値が74gであった。これらのことから,食事調査において,目安量によって食品が記録された場合に,対象者と調査員,さらに調査員の間で,その目安量に関して共通の認識を持っていることが確認できることが望ましいと考えられる。実際の青果物の摂取量を過大あるいは過小に評価してしまうことを避けるためには,目安量の設定,つまりどの目安をどの重量で採用するのかを十分に配慮する必要がある。(オンラインのみ掲載)
著者
芳賀 文子 小峰 洋美 近藤 栄昭 鍬野 信子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.225-234, 1984 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
4 3

酒石酸カリウム, クエン酸二カリウム, 塩化カリウムを添加した大根煮, ホワイトソースの調理食品, ならびにホワイトソースと同調味濃度の調味水溶液に対し, 官能テストを行い, K塩の調味効果について検討を試み, 次のような結果を得た。1) 試料に用いたK塩の味覚の特徴は, 酒石酸カリウムは塩辛味, 酸味, 苦味, 渋味いずれも弱く, クエン酸二カリウムは酸味が強く, 塩化カリウムは苦味が特に強かった。2) K塩を調味料として添加した大根煮では, K塩の味覚の特徴がストレートに感じられ, 全ての試料に有意の差がみられた。調味水溶液でも同様の傾向であった。しかし, ホワイトソースでは, 有意の差はなく, これらK塩の味の発現が抑制された。3) Kを必要とする患者に対し, 食事による補給の方法として, K塩を調理食品に添加する場合, 芳香性の食品, 油脂類, たん白質性食品を使用し, 不快味に対するマスク作用をはかったり, 呈味性の弱いK塩を用いたほうがよいように思われた。4) 塩化カリウムは, 塩辛味はあるが, 苦味が強く, 酒石酸カリウム, クエン酸二カリウムは塩辛味は弱く, 実験に供したK塩の食塩代替性は乏しかった。
著者
大澤 絵里 石川 みどり 曽根 智史
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.147-155, 2014 (Released:2014-07-19)
参考文献数
42

【目的】本研究の目的は,子どもに対する高脂肪・糖分・塩分(High in Fat, Sugar or Salt (HFSS))食品・飲料のマーケティング規制政策の国際的動向を把握し,子どもたちが健康的な食習慣を身につけるための政策開発の今後の課題を提示することである。【方法】WHO, Consumer International, International Association for the Study of Obesityの報告書に記載された各国の子どもに対するHFSS食品・飲料のマーケティング規制の政策を整理し,法的規制,政府のガイドライン,自主規制の3分類の一覧を作成した。法的規制政策を展開しているイギリス,韓国,および企業の自主規制が特徴的であるアメリカについて,上記報告書の引用文献を参考に,情報を収集し,規制主体,規制主体の権限,“子ども”の定義,規制内容,HFSS食品・飲料の定義について,3か国で比較検討した。【結果】12歳未満が,3カ国の共通するマーケティング規制対象の子どもの年齢であった。キャラクター使用や無料おまけの使用禁止や使用基準の作成,子どもの視聴が多い時間帯では,放送時間および広告内容の規制,規約の実施が明らかとなった。しかし,HFSS食品・飲料の定義については,3カ国で異なるものであった。【結論】12歳未満に対しては,購買意欲を抑えることが,規制政策の鍵となることが明らかとなった。HFSS食品・飲料の定義は各国で異なり,政策の子どもの食習慣への影響評価の早期実施,および健康増進等の他政策を考慮した検討が必要となる。
著者
上田 遥
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.129-137, 2023-06-01 (Released:2023-07-12)
参考文献数
27

【目的】2022年に施行された「食農教育法」下における台湾の食育政策を明らかにする。【方法】WEB入手可能文献(主に政策文書)をもとに同法の背景・体系を分析する。【結果】台湾の食農教育法は,中央レベルでの推進委員会の組織,中央・地方の両レベルでの基本計画策定,食育に関する専門職業の養成,政府・食農産業・学校・地域社会の連携による全国運動としての食育推進という点で,基本的には日本の食育基本法と内容が共通している。しかし,農業の重視,家族・ジェンダーへの配慮,食文化の多様性と開放性など,いくつかの点で日本の課題を克服しうるものであった。【結論】日本や韓国から遅れをとったものの,台湾の食農教育法から学ぶべきことは多い。ただし同法における「食為先,農為本」の思想がどの程度現場で実践されるかについては,さらなる検証が必要である。
著者
Makiko Sekiyama Takayo Kawakami Reisi Nurdiani Katrin Roosita Rimbawan Rimbawan Nobuko Murayama Hiromi Ishida Miho Nozue
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.Supplement, pp.S86-S97, 2018-07-01 (Released:2018-08-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3 4

Objectives: In Indonesia, many schools do not have school feeding programs, and children usually buy snacks from school canteens or vendors. The history of the country's school feeding programs is not well documented. This study examined Indonesia's nutritional problems and previous school feeding programs. It also investigated the implementation and related challenges in a current pilot national school feeding program known as PROGAS.Methods: We conducted situational analysis by reviewing secondary data and the existing literature. We also measured the impact of PROGAS on students' nutritional status.Results: The review revealed that Indonesia has considerable experience in establishing school feeding programs starting from 1991. The government has established a system from the school to central government level for the quality control, monitoring, and assessment of the pilot program. That program is characterized by its wide scope including improvement in students' dietary intake, promotion of local food, improvement in local agriculture, and community empowerment. However, due to the limited resources allocated to human development, diversity in the country, and difficulty in governance, the low coverage of the program (0.05% in 2013 and 0.14% in 2016) is still a major challenge. Among the students who joined PROGAS project, nutritional intake significantly increased during the project, while there were no changes in the control group.Conclusions: Low coverage of the school feeding program is still a major challenge in Indonesia. In the future, government regulations to increase the program's coverage and nutrition education on all forms of malnutrition targeting school-aged children is necessary.
著者
長島 未央子 齋藤 和人 萩 裕美子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.107-111, 2009 (Released:2011-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1

We investigated the effect of kurozu, a brewed vinegar, on the NK cell activity and peripheral blood cells in 18 university student cyclists. They were assigned to two groups, one of 11 drinking kurozu, and the other of 7 cyclists not drinking it. The drinking group was given 30 ml of kurozu a day for 80 days. Both groups performed an equal amount of training for 80 days. The NK cell activity was significantly decreased by 80 days of training in the non-drinking group (from 71.9 ± 15.9% to 61.9 ± 11.3%) (p < 0.05), but not in the drinking group. Kurozu therefore prevent the degradation of NK cell activity by intense training, suggesting its contribution to the physical condition of student bicycle racers.
著者
佐藤 徳子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.153-158, 1958 (Released:2010-10-29)
参考文献数
7

Similarly the part 1, comparative studies are made on the girth of the chest ratio, the sitting height ratio, Rohrer's index, Kaup's index and the girth of the upper arm of blind and normal school-children (6-19 year) in four prefectures of Tohoku district, and the following characteristics are found.(1) In the weight and the girth of the chest, blinds are not so inferior to normals as in the height, therefore the girth of the chest ratio and Rohrer's index of blinds are somewhat greater than normals'.(2) The sitting height ratio of blinds are greater than normals' in spite of the height of blinds are inferior to normals' so it seems that blinds have shorter legs than normals.(3) Kaup's index of blinds are inferior to normals'.(4) The girth of the upper arm of blinds are greater than normals' at the young ages, but the elder ages in school-life are inferior to normals.
著者
長嶺 晋吉 久我 達郎 山川 喜久江 鈴木 慎次郎 鈴木 一正
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.227-232, 1959 (Released:2010-10-29)
参考文献数
9

健康な男子4名を被験者として, 1日の生活行動を規定した所要熱量の約30%に当る熱量をアルコールで日本酒にして約1l (アルコールとして121g, 858Calを含む) を毎日10日間にわたつて与え, 体重推移の上から熱量出納に基いてアルコールのエネルギー利用価を検討した。その結果を要約すると, 次の如くである。1. 一定の所要熱量下で糖質に替えアルコールを与えた1週間後には体重は平均約1.0kgの減少を来たし, その減少は投与アルコール量の約1/3に当る熱量を糖質で補うことによつて元の体重に復した。この結果を熱量出納に基いて計算するとアルコールのエネルギー利用価は約65%となつた。2. アルコールの1日尿中排泄量は投与アルコール量の1.1%であつた。3. 1日尿量は対照期の平均1740ccに対しアルコール投与期には2320ccに増量した。4. アルコール投与期間基礎代謝は平均約8%の上昇を示した。
著者
奥 恒行 中村 禎子 岡崎 光子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.89-99, 1998-04-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
16
被引用文献数
1

女子大生について, 排便及び便性状 (形, 量, 色, 臭い) に及ぼす低分子化アルギン酸-Na含有飲料 (1缶150ml, 低分子化アルギン酸-Na4g) 摂取の影響をプラセボ飲料摂取と比較した。結果は次のとおりである。1) 1週間当たりの排便日数は, アルギン酸飲料1缶以上を摂取した時“軽い便秘群”において用量依存的に有意に増加したが,“正常排便群”においては有意な改善は認められなかった。また, プラセボ飲料摂取では,“軽い便秘群”,“正常排便群”のいずれにおいてもこのような改善は認められなかった。2) アルギン酸飲料1缶以上を摂取した時“軽い便秘群”の便形状は軟化して“正常排便群”の形状に近づいたが, プラセボ飲料摂取ではこのような改善はみられなかった。3) アルギン酸飲料1缶以上の摂取で“正常排便群”の便量に増大がみられ, 2缶摂取では“軽い便秘群”に顕著な増量効果が出現して“正常排便群”の便量に近づいた。プラセボ飲料摂取ではこのような改善はみられなかった。4) アルギン酸飲料1缶以上の摂取で“正常排便群”と“軽い便秘群”に便の色の改善がみられたが, 2缶摂取では“軽い便秘群”の効果が顕著になり,“正常排便群”の便の色に近づいた。プラセボ飲料摂取ではこのような改善はみられなかった。5) アルギン酸飲料1缶摂取で“軽い便秘群”に便臭の改善がみられたが, 2缶摂取では“正常排便群”にも改善がみられた。プラセボ飲料摂取ではこのような改善はみられなかった。以上の結果, アルギン酸飲料 (150ml/缶, 低分子化アルギン酸-Na4g) 1缶以上の摂取によって排便及び便性状 (形, 量, 色, 臭い) の改善効果が期待できるとの示唆を得た。
著者
殿塚 婦美子 笹島 道雄 松本 仲子 鈴木 久乃
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.217-225, 1983 (Released:2010-04-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

竪型炊飯器を用い, 米の予備浸水の有無が飯の品質に及ぼす影響について, 次の結果が得られた。1) 浸水した米の飯の脱水速度は, 浸水しないものに比べてその速度が遅かった。2) テクスチュロメーターで測定した結果は, 浸水した米の飯はしないものに比べて, 粘りが大きく, 硬さ, 凝集性, 咀嚼性が小さい傾向を示した。3) 加熱に先だって浸水したものは, 加熱条件を変えて炊飯した場合, いずれの加熱条件においても, 浸水しないものより官能検査による評価が高い傾向を示した。4) 炊飯後保温したものについても, 浸水したものは, 浸水しないものより高い評価が得られたが, その差は炊飯直後のものに比べて小さい傾向がみられた。5) 保温した飯は浸水の有無にかかわらず, 炊飯直後のものに比べて食味が劣る結果が得られた。
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.32-36, 1973-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
17
被引用文献数
5 5

24種類の蔬菜類のペクチンを定量した結果, 新鮮物可食部に対するペクチン酸カルシウムとしての全ベクチン含有量は, 次のようであった。1) 2.00%以上: えだまめの豆。2) 1.00~1.99%: オクラ, かぼちゃ, にんにく, ごぼう。3) 0.50~0.99%: エシャロット, ビート, くわい, じゃがいも, にんじん, やまといも, さやえんどう, ピーマン, さやいんげん。4) 0.10~0.49%: さといも, なす, ルバーブ, うど, たまねぎ, だいこん, かぶ, きゅうり, ししとうがらし, れんこん。全ペクチン中の各抽出区分の比率について, W-Sはごく低く, H-Sがもっとも高いものが多く, つづいてP-Sが高い。H-Sが50%以上をしめるものは11試料, P-Sが50%以上をしめるものが7試料であった。これらのH-S, P-Sは, 細胞膜を形成し, 組織の硬さや水分保持に役立っている。全ペクチン含有量についてのみ考えるならば, 果実類と蔬菜類の間には, 総体的に大差はみとめられなかったが, 化学構造上かなりの相違点が推測できる。今後, これらの問題についても研究を展開して行きたいと考えている。
著者
江上 いすず 長谷川 昇 大矢 みどり
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.191-198, 1995 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17

BMI 23.1以上の健康な肥満傾向の女子学生を対象に, 性格特性と食行動についての調査を行い, 類型化された摂食パターン及び性格特性と食行動の関係を探り, 以下の結果を得た。1) 肥満傾向の女子学生は, 性格特性における“反社会性”が低く (p<0.01) 現れた。2) 女子学生全体の食行動を因子分析した結果, 4因子が抽出され (累積寄与率は85%),“不規則因子”,“抑制力なし因子”,“外因性因子”,“ストレス因子”と解釈した。3) 女子学生の食行動因子の中で,“不規則因子”では肥満傾向のファーストフード志向の者に高く (p<0.01),“ストレス因子”ではボリューム志向の者に高く (p<0.05) 現れた。4) 肥満傾向の女子学生は性格特性の“情緒性”,“誠実さ”と食行動因子の“抑制力なし因子”,“ストレス因子”について, 正の相関が現れた。
著者
澤田 めぐみ 冨田 知里 原田 萌香 岸 昌代 田中 寛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.273-284, 2022-10-01 (Released:2022-11-16)
参考文献数
40

【目的】女子大学生を対象に鉄欠乏の実態を調査し,血清フェリチン値正常群の赤血球関連検査値を明らかにすることを目的とした。【方法】成人女子大学生177人を対象に赤血球関連検査値からフェリチン低値群(フェリチン 12 ng/ml未満)のスクリーニングについて検討した。また食事調査(BDHQ)でフェリチン低値群と減少群(フェリチン 12 ng/ml以上,25 ng/ml未満)を合わせたフェリチン不足群の食生活の特徴を探索した。【結果】鉄欠乏性貧血は3.3%,鉄欠乏で貧血を認めない潜在性鉄欠乏は18.1%と高頻度であった。赤血球関連検査値から鉄欠乏をスクリーニングする場合のカットオフ値は,MCH28.6 pgとすると感度は89.4%,特異度は76.3%と最も良好であった。食事調査において,フェリチン減少群は充足群に比べ鶏肉の摂取量が有意に多かった。フェリチン低値群は充足群に比べハムの摂取量が有意に少なく,洋菓子の摂取量が有意に多かった。またフェリチン不足群を充足群と比較すると,脂ののった魚や納豆の摂取が有意に少なく,コーヒーの摂取が有意に多かった。1,000 kcalあたりの鉄摂取量は中央値で充足群,減少群,低値群の順に 4.83 mg,4.52 mg,4.42 mgであったが有意差はなかった。【結論】女子大学生の21.4%に鉄欠乏を認めた。MCH28.6 pgをカットオフ値とすると,感度,特異度とも高値で鉄欠乏をスクリーニングできた。フェリチン不足群は洋菓子やコーヒーの摂取が有意に多く,食生活のバランスを欠いている可能性が考えられた。
著者
渡辺 優奈 善方 裕美 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.Supplement1, pp.S26-S38, 2013 (Released:2013-05-24)
参考文献数
33
被引用文献数
4 1

【目的】妊娠期を通じた横断的および縦断的な鉄摂取量と鉄栄養状態の実態を明らかにし,妊娠期の鉄摂取基準の妥当性を検討した。【方法】妊娠5~12週の妊婦160名をリクルートし,妊娠初期,中期,末期,出産時,産後1ヵ月の調査で身体計測,出産時および新生児調査,鉄剤投与の有無,血液検査,食事記録調査のデータがすべてそろった103名に対し,鉄摂取量と鉄栄養状態を評価した。【結果】妊娠期の鉄摂取量において妊婦の鉄の推奨量を下回った者の割合は妊娠初期71.8%,中期98.1%であった。一方,鉄栄養状態は妊娠初期と比較して中期,末期では赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および血清鉄濃度は有意に減少したが,産後1ヵ月までに初期と同様の値まで回復した。また妊娠貧血(Hb<11.0 g/dl,Ht<33.0%)の割合は妊娠初期4.9%,中期41.7%,末期53.4%であったが,MCV,MCHの中央値は基準範囲(MCV: 79.0~100.0 fl,MCH: 26.3~34.3 pg)の下限値を下回ることはなかった。なお,低出生体重児は3名,早産児は1名のみであった。【結論】本研究で明らかになった鉄の摂取量で十分であったとはいえないが,鉄需要の亢進にともなう鉄吸収の亢進の可能性が示唆され,現在の妊婦の鉄の摂取基準ほど多くの鉄を摂取せずに鉄栄養状態が維持された。また,鉄の吸収がどの程度亢進しているかまではわからず,体内の総鉄量も評価できなかった。今後は妊婦の体内総鉄量の動態を評価することなど,さらなる検討が必要である。